87 / 184
光あれ
5
しおりを挟む
寝台でしっかりと体を休め、朝になったらリヒトをお風呂に入れて朝食を食べさせて……離れていた間できなかったリヒトの世話を存分に焼こう、と考えていたユリウスだったが、それは果たされないままに時刻は正午を迎えてしまった。
王城へ行く時間である。
ユリウスは眠り続けるリヒトの髪を撫でながら、う~んと頭を悩ませた。
リヒトをこのまま次兄の屋敷で寝かせておくべきか。
それとも、王城へと連れていくべきか。
リヒトは夜中にユリウスと会話をしたことを夢だと思っている。この子の目が覚めたとき、もしもユリウスの姿がなく自分しか居ないとなると、やはりあれは夢だったのだと結論づけて、ガッカリすることだろう。
それに、目覚めたリヒトがどのような行動に出るのか、予測がつかない。
またひとりで外に出て行こうとするかもしれない。
ひとりで、祈ろうとするかもしれない。
……ハーゼのように。
リヒトを置いていくことには不安しかなくて、それになにより、ユリウス自身がどうしても離れたくなかったため、どうするべきか散々悩んだ結果、ユリウスはリヒトも同行させることに決めた。
腕にリヒトを抱っこして玄関ホールに現れたユリウスを見て、クラウスが軽く眉を上げた。
ユリウスはその兄の視線からリヒトを隠すべく、リヒトを包んでいる毛布を引っ張って、顔を深く覆った。
「見ないでください。減ります」
「遠征前に王城で見たときも思ったが、大きくなったな。これまではおまえが頑なに会わせてくれなかったから、ちゃんと見るのは十二年ぶりか?」
「そうでしょう。これでも大きくなったんですよ。僕がこの子を拾ったときは、まだこの半分ぐらいの身長しかありませんでしたからね」
「半分は言い過ぎじゃないか? だが……まぁ確かに小さかった。ユーリ、意地悪するな。おまえのつがいを私にもしっかり見せてくれ」
「ダメです。兄上は近づかないでください」
ユリウスはアルファである次兄から距離をとり、クラウスの横で心配げな表情を浮かべているエミールへと会釈をした。
「エミール殿、昨夜は遅くに押しかけてしまい申し訳ありませんでした。おかげで快適に休むことができました。リヒトはまだ熱があるようですが、大丈夫ですよ」
「お疲れがとれたならなによりです。ですがリヒトは……食事もまだ」
「僕のオメガはお寝坊さんなので。いいんです、いまはゆっくり寝ていて。そのことについても後でちゃんと説明します。この子が起きるときには僕が隣に居てあげたいので、このまま連れて行きますね」
腕の中のリヒトを大切に抱え直し、ユリウスはリヒトも同行させることをクラウスとエミールに説明した。
「マリウス兄上にも会わせることになるが、いいのか?」
「背に腹は代えられません」
リヒトをひとりにしないということはすなわち、国王への遠征報告の席に同席させるということで、リヒトをマリウスにも見せるということになるのだが、離れるという選択肢がない以上仕方のないことだった。
ユリウスの返事を聞いたクラウスが、苦笑をじわりと口元に浮かべ、
「それでは行こうか」
と、面々を促した。
ユリウスはリヒトを抱っこしたまま馬車へと乗り込み、王城への道を揺られた。
ユリウスの側近のロンバード、そして万が一ユリウスがリヒトから離れなければならないときのリヒトの世話役として、テオバルドも同じ馬車に乗っていたが、二人ともユリウスに「代わりましょうか」とは言わなかった。
リヒトの抱っこ役をユリウスが苦に思うはずがなかったし、それを申し出たとしても譲るはずがないということは容易に想像できたからだ。
次兄ふうふの乗った馬車が先行し、続いてユリウスたちの馬車が王城の内門を潜った。ミュラー家の家紋の入った馬車なので中を覗かれるような無礼な真似はされないが、儀礼的に通行許可証の提示は求められる。
門番に御者が応対し、一度止めた馬の足をまた徐々に速めて居館に一番近いポーチまでユリウスらを運んでくれた。
ユリウスはリヒトを抱いたまま馬車を降り、城内へと入った。
軽やかな足取りで階段を上っていると、さすがに背後からテオバルドが、
「代わりましょうか?」
と問いかけてきた。
絶対に断られることがわかっていたが、侍従としては言わずにおれなかったようだ。
ユリウスは唇の端で笑い、
「この子は軽いから大丈夫だよ」
と答えた。
「もうちょっと体重を増やすにはどうしたらいんだろうね、ねぇ、僕のオメガ」
華奢な体つきはいつまでたってもそのままで、いくら小柄な体型が多いオメガといえどもやはり心配になる。
「僕がこうやって抱っこなんてできないぐらい大きくなればいいのに」
ユリウスは本気でそう口にしたのだが、ロンバードが鼻で笑うのが聞こえて顔を巡らせてそちらを睨んだ。
「なにがおかしい」
「いやだって、あんたはリヒト様がどれだけ太っても、絶対に抱っこするだろうなと思ったんで」
片頬で笑う父親の言葉に、テオバルドが「確かに」と同意する。
指摘されたユリウスも、確かに、と思った。
リヒトがどれだけ大きくなっても、到底抱っこできないほど真ん丸になったとしても、ユリウスは意地でもリヒトを抱っこすることをやめないだろう。
「ところで本当に会議の席にも連れていくんですか? 続き部屋で寝かせておくというのは?」
「却下だ。見えない場所に居ては、この子が目覚めたときに僕が気づけない。このまま連れていく」
「了解」
頷いたロンバードが、ひょいとユリウスを追い越して走り出した。巨躯のわりに足音がない。
ロンバードは先を行っていたクラウスに追いつくとなにごとか話しかけ、飛ぶように階段を上って見えなくなった。
「父はどこへ?」
「大方、リヒトの寝る場所を作ってくれてるんだろうね」
「うわ」
それは自分の仕事ではないか、と遅まきながら気づいたテオバルドは飛び上がり、父親の後を追って走っていった。彼の場合は騎士団で鍛え上げられたロンバードの動きと違い、バタバタと足音が賑やかだ。
ユリウスは苦笑でそれを見送り、自身も階段を上った。
マリウスへの報告を行なう場所は、談話室が選ばれた。
かつてユリウスが使っていた私室でもよかったのだが、リヒトと二人で過ごした思い出の詰まる部屋に兄とはいえ他のアルファを立ち入らせるのが嫌で、談話室にしたのだった。
ユリウスがそこへ到着したとき、ちょうど大きなカウチソファが運ばれてきたところだった。
丸いテーブルを囲んで一人用の椅子が置かれている。
その壁際にソファは配置された。
テオバルドがソファに毛布を敷き、枕代わりのクッションを置く。
ユリウスは侍従たちが整えてくれたそこへ、リヒトをそっと横たえた。
エミールがリヒトの体に大判のひざ掛けを三枚重ねて、ふわりと掛けてくれた。
リヒトの眠りは深い。
まだしばらく目覚めそうになかったので、ユリウスはリヒトに一番近い椅子に腰を下ろした。左隣にはエミール、その隣にはクラウスが座る。
右側にはロンバードが座った。テオバルドはリヒトの横に控えておくと言ったが、ユリウスはロンバードの横に座るよう指示を出した。
いまからする話は、テオバルドにもしっかりと聞いていてほしい。
全員が座るのを待っていたかのように、城の侍従が洗練された動作で淹れたての紅茶を配って回った。
お茶菓子もテーブルに並べられる。
きれいな包み紙に入っているのはチョコレートだ。
後でリヒトにあげようと思い、ユリウスは三個手元に置いた。
待つというほどの時間もなく、廊下側から恭しく扉が開かれた。
「皆、ご苦労。疲れも取れぬうちに呼び出して悪いな」
国王マリウスが労いの言葉とともに入室してくる。
全員が立ち上がり、一礼しながら彼を迎え入れた。
「まずは無事の帰還、なによりだ。おまえたちの土産話が早く聞きたくて、昨夜クラウスと会ってから俺は眠れなかったんだ」
はっはっは、と豪快に国王が笑った。
相変わらずの長兄にユリウスは苦笑いを浮かべ、
「遊びに行ったわけではないんですけどね」
と呟いた。
マリウスが「そうだな」と双眸を細めた。
「遊んできたわけではないのだから、成果があるのだろう。早速話を聞こうか、ユーリ」
威厳のある声でそう促してきたかと思うと、彼はユリウス越しにソファで寝ているリヒトを見つけ、子どものように両目を輝かせた。
「おっ! その子がおまえのオメガか! なんだなんだ出し惜しみしおって! どれどれ」
「兄上! 兄上、それ以上近づかないでください。絶対に、こっちへ来ないでくださいよ」
「ユーリ、意地悪を言うな」
次兄と同じようなことを言って、マリウスは眉を下げた。
「おまえの最愛を俺にも見せてくれ」
「ダメです。一歩でも前に出たら絶交ですよ」
子どもじみたユリウスの言葉に、マリウスが絶望したかのように目を見開き、助成を求めてクラウスを見る。
「クラウス。俺は、俺たちの弟のこころがこれほど狭いとは思わなかった! 見るぐらいいいではないか! なぁ!」
「兄上。味方をしてあげたいところですが、私もユーリに嫌われたくはない。諦めてください」
「なんだなんだ! おまえまで俺を邪魔者にするのか! ユーリ。俺に会わせるつもりがないのならなぜ連れてきたんだ」
当然の質問をぶつけられて、ユリウスは肩を竦めた。
「いまはこの子をひとりにしたくないんです。それに、リヒトの状況を兄上にも見てほしかった。兄上、僕のオメガに関する報告をさせてください」
ユリウスは今回の遠征で得た情報をひとつずつ思い出しながら、マリウスに向かって話しかけた。
国王は椅子にどかりと腰を下ろすと、皆に座るよう勧め、背もたれに深くもたれかかった姿勢でユリウスを見つめた。
「よし、話せ」
マリウスの声が、響く。
ユリウスは一度リヒトへと視線をやり、よく眠っていることを確かめてから、口を開いた。
王城へ行く時間である。
ユリウスは眠り続けるリヒトの髪を撫でながら、う~んと頭を悩ませた。
リヒトをこのまま次兄の屋敷で寝かせておくべきか。
それとも、王城へと連れていくべきか。
リヒトは夜中にユリウスと会話をしたことを夢だと思っている。この子の目が覚めたとき、もしもユリウスの姿がなく自分しか居ないとなると、やはりあれは夢だったのだと結論づけて、ガッカリすることだろう。
それに、目覚めたリヒトがどのような行動に出るのか、予測がつかない。
またひとりで外に出て行こうとするかもしれない。
ひとりで、祈ろうとするかもしれない。
……ハーゼのように。
リヒトを置いていくことには不安しかなくて、それになにより、ユリウス自身がどうしても離れたくなかったため、どうするべきか散々悩んだ結果、ユリウスはリヒトも同行させることに決めた。
腕にリヒトを抱っこして玄関ホールに現れたユリウスを見て、クラウスが軽く眉を上げた。
ユリウスはその兄の視線からリヒトを隠すべく、リヒトを包んでいる毛布を引っ張って、顔を深く覆った。
「見ないでください。減ります」
「遠征前に王城で見たときも思ったが、大きくなったな。これまではおまえが頑なに会わせてくれなかったから、ちゃんと見るのは十二年ぶりか?」
「そうでしょう。これでも大きくなったんですよ。僕がこの子を拾ったときは、まだこの半分ぐらいの身長しかありませんでしたからね」
「半分は言い過ぎじゃないか? だが……まぁ確かに小さかった。ユーリ、意地悪するな。おまえのつがいを私にもしっかり見せてくれ」
「ダメです。兄上は近づかないでください」
ユリウスはアルファである次兄から距離をとり、クラウスの横で心配げな表情を浮かべているエミールへと会釈をした。
「エミール殿、昨夜は遅くに押しかけてしまい申し訳ありませんでした。おかげで快適に休むことができました。リヒトはまだ熱があるようですが、大丈夫ですよ」
「お疲れがとれたならなによりです。ですがリヒトは……食事もまだ」
「僕のオメガはお寝坊さんなので。いいんです、いまはゆっくり寝ていて。そのことについても後でちゃんと説明します。この子が起きるときには僕が隣に居てあげたいので、このまま連れて行きますね」
腕の中のリヒトを大切に抱え直し、ユリウスはリヒトも同行させることをクラウスとエミールに説明した。
「マリウス兄上にも会わせることになるが、いいのか?」
「背に腹は代えられません」
リヒトをひとりにしないということはすなわち、国王への遠征報告の席に同席させるということで、リヒトをマリウスにも見せるということになるのだが、離れるという選択肢がない以上仕方のないことだった。
ユリウスの返事を聞いたクラウスが、苦笑をじわりと口元に浮かべ、
「それでは行こうか」
と、面々を促した。
ユリウスはリヒトを抱っこしたまま馬車へと乗り込み、王城への道を揺られた。
ユリウスの側近のロンバード、そして万が一ユリウスがリヒトから離れなければならないときのリヒトの世話役として、テオバルドも同じ馬車に乗っていたが、二人ともユリウスに「代わりましょうか」とは言わなかった。
リヒトの抱っこ役をユリウスが苦に思うはずがなかったし、それを申し出たとしても譲るはずがないということは容易に想像できたからだ。
次兄ふうふの乗った馬車が先行し、続いてユリウスたちの馬車が王城の内門を潜った。ミュラー家の家紋の入った馬車なので中を覗かれるような無礼な真似はされないが、儀礼的に通行許可証の提示は求められる。
門番に御者が応対し、一度止めた馬の足をまた徐々に速めて居館に一番近いポーチまでユリウスらを運んでくれた。
ユリウスはリヒトを抱いたまま馬車を降り、城内へと入った。
軽やかな足取りで階段を上っていると、さすがに背後からテオバルドが、
「代わりましょうか?」
と問いかけてきた。
絶対に断られることがわかっていたが、侍従としては言わずにおれなかったようだ。
ユリウスは唇の端で笑い、
「この子は軽いから大丈夫だよ」
と答えた。
「もうちょっと体重を増やすにはどうしたらいんだろうね、ねぇ、僕のオメガ」
華奢な体つきはいつまでたってもそのままで、いくら小柄な体型が多いオメガといえどもやはり心配になる。
「僕がこうやって抱っこなんてできないぐらい大きくなればいいのに」
ユリウスは本気でそう口にしたのだが、ロンバードが鼻で笑うのが聞こえて顔を巡らせてそちらを睨んだ。
「なにがおかしい」
「いやだって、あんたはリヒト様がどれだけ太っても、絶対に抱っこするだろうなと思ったんで」
片頬で笑う父親の言葉に、テオバルドが「確かに」と同意する。
指摘されたユリウスも、確かに、と思った。
リヒトがどれだけ大きくなっても、到底抱っこできないほど真ん丸になったとしても、ユリウスは意地でもリヒトを抱っこすることをやめないだろう。
「ところで本当に会議の席にも連れていくんですか? 続き部屋で寝かせておくというのは?」
「却下だ。見えない場所に居ては、この子が目覚めたときに僕が気づけない。このまま連れていく」
「了解」
頷いたロンバードが、ひょいとユリウスを追い越して走り出した。巨躯のわりに足音がない。
ロンバードは先を行っていたクラウスに追いつくとなにごとか話しかけ、飛ぶように階段を上って見えなくなった。
「父はどこへ?」
「大方、リヒトの寝る場所を作ってくれてるんだろうね」
「うわ」
それは自分の仕事ではないか、と遅まきながら気づいたテオバルドは飛び上がり、父親の後を追って走っていった。彼の場合は騎士団で鍛え上げられたロンバードの動きと違い、バタバタと足音が賑やかだ。
ユリウスは苦笑でそれを見送り、自身も階段を上った。
マリウスへの報告を行なう場所は、談話室が選ばれた。
かつてユリウスが使っていた私室でもよかったのだが、リヒトと二人で過ごした思い出の詰まる部屋に兄とはいえ他のアルファを立ち入らせるのが嫌で、談話室にしたのだった。
ユリウスがそこへ到着したとき、ちょうど大きなカウチソファが運ばれてきたところだった。
丸いテーブルを囲んで一人用の椅子が置かれている。
その壁際にソファは配置された。
テオバルドがソファに毛布を敷き、枕代わりのクッションを置く。
ユリウスは侍従たちが整えてくれたそこへ、リヒトをそっと横たえた。
エミールがリヒトの体に大判のひざ掛けを三枚重ねて、ふわりと掛けてくれた。
リヒトの眠りは深い。
まだしばらく目覚めそうになかったので、ユリウスはリヒトに一番近い椅子に腰を下ろした。左隣にはエミール、その隣にはクラウスが座る。
右側にはロンバードが座った。テオバルドはリヒトの横に控えておくと言ったが、ユリウスはロンバードの横に座るよう指示を出した。
いまからする話は、テオバルドにもしっかりと聞いていてほしい。
全員が座るのを待っていたかのように、城の侍従が洗練された動作で淹れたての紅茶を配って回った。
お茶菓子もテーブルに並べられる。
きれいな包み紙に入っているのはチョコレートだ。
後でリヒトにあげようと思い、ユリウスは三個手元に置いた。
待つというほどの時間もなく、廊下側から恭しく扉が開かれた。
「皆、ご苦労。疲れも取れぬうちに呼び出して悪いな」
国王マリウスが労いの言葉とともに入室してくる。
全員が立ち上がり、一礼しながら彼を迎え入れた。
「まずは無事の帰還、なによりだ。おまえたちの土産話が早く聞きたくて、昨夜クラウスと会ってから俺は眠れなかったんだ」
はっはっは、と豪快に国王が笑った。
相変わらずの長兄にユリウスは苦笑いを浮かべ、
「遊びに行ったわけではないんですけどね」
と呟いた。
マリウスが「そうだな」と双眸を細めた。
「遊んできたわけではないのだから、成果があるのだろう。早速話を聞こうか、ユーリ」
威厳のある声でそう促してきたかと思うと、彼はユリウス越しにソファで寝ているリヒトを見つけ、子どものように両目を輝かせた。
「おっ! その子がおまえのオメガか! なんだなんだ出し惜しみしおって! どれどれ」
「兄上! 兄上、それ以上近づかないでください。絶対に、こっちへ来ないでくださいよ」
「ユーリ、意地悪を言うな」
次兄と同じようなことを言って、マリウスは眉を下げた。
「おまえの最愛を俺にも見せてくれ」
「ダメです。一歩でも前に出たら絶交ですよ」
子どもじみたユリウスの言葉に、マリウスが絶望したかのように目を見開き、助成を求めてクラウスを見る。
「クラウス。俺は、俺たちの弟のこころがこれほど狭いとは思わなかった! 見るぐらいいいではないか! なぁ!」
「兄上。味方をしてあげたいところですが、私もユーリに嫌われたくはない。諦めてください」
「なんだなんだ! おまえまで俺を邪魔者にするのか! ユーリ。俺に会わせるつもりがないのならなぜ連れてきたんだ」
当然の質問をぶつけられて、ユリウスは肩を竦めた。
「いまはこの子をひとりにしたくないんです。それに、リヒトの状況を兄上にも見てほしかった。兄上、僕のオメガに関する報告をさせてください」
ユリウスは今回の遠征で得た情報をひとつずつ思い出しながら、マリウスに向かって話しかけた。
国王は椅子にどかりと腰を下ろすと、皆に座るよう勧め、背もたれに深くもたれかかった姿勢でユリウスを見つめた。
「よし、話せ」
マリウスの声が、響く。
ユリウスは一度リヒトへと視線をやり、よく眠っていることを確かめてから、口を開いた。
125
お気に入りに追加
3,251
あなたにおすすめの小説
転生して悪役になったので、愛されたくないと願っていたら愛された話
あぎ
BL
転生した男子、三上ゆうきは、親に愛されたことがない子だった
親は妹のゆうかばかり愛してた。
理由はゆうかの病気にあった。
出来損ないのゆうきと、笑顔の絶えない可愛いゆうき。どちらを愛するかなんて分かりきっていた
そんな中、親のとある発言を聞いてしまい、目の前が真っ暗に。
もう愛なんて知らない、愛されたくない
そう願って、目を覚ますと_
異世界で悪役令息に転生していた
1章完結
2章完結(サブタイかえました)
3章連載
異世界転生しすぎたコイツと初めての俺のアルファレードぐだぐだ冒険記
トウジョウトシキ
BL
前世の記憶を思い出した。
「これ、まさか異世界転生ってやつ……本当にこんなことがあるなんて!」
「あー、今回は捨て子か。王子ルートだな」
「……え、お前隣の席の葉山勇樹?」
「今気づいたんだ。お前は夏村蓮だろ? 平凡な少年ポジか、いいところだな」
「え、何? 詳しいの?」
「あ、なんだ。お前始めてか。じゃ、教えてやるよ。異世界転生ライフのキホン」
異世界転生1000回目のユウキと異世界転生初心者の俺レンの平和な異世界ぐだぐだ冒険記。
ヘタレな師団長様は麗しの花をひっそり愛でる
野犬 猫兄
BL
本編完結しました。
お読みくださりありがとうございます!
番外編は本編よりも文字数が多くなっていたため、取り下げ中です。
番外編へ戻すか別の話でたてるか検討中。こちらで、また改めてご連絡いたします。
第9回BL小説大賞では、ポイントを入れてくださった皆様、またお読みくださった皆様、どうもありがとうございました_(._.)_
【本編】
ある男を麗しの花と呼び、ひっそりと想いを育てていた。ある時は愛しいあまり心の中で悶え、ある時は不甲斐なさに葛藤したり、愛しい男の姿を見ては明日も頑張ろうと思う、ヘタレ男の牛のような歩み寄りと天然を炸裂させる男に相手も満更でもない様子で進むほのぼの?コメディ話。
ヘタレ真面目タイプの師団長×ツンデレタイプの師団長
2022.10.28ご連絡:2022.10.30に番外編を修正するため下げさせていただきますm(_ _;)m
2022.10.30ご連絡:番外編を引き下げました。
【取り下げ中】
【番外編】は、視点が基本ルーゼウスになります。ジーク×ルーゼ
ルーゼウス・バロル7歳。剣と魔法のある世界、アンシェント王国という小さな国に住んでいた。しかし、ある時召喚という形で、日本の大学生をしていた頃の記憶を思い出してしまう。精霊の愛し子というチートな恩恵も隠していたのに『精霊司令局』という機械音声や、残念なイケメンたちに囲まれながら、アンシェント王国や、隣国のゼネラ帝国も巻き込んで一大騒動に発展していくコメディ?なお話。
※誤字脱字は気づいたらちょこちょこ修正してます。“(. .*)
貧乏Ωの憧れの人
ゆあ
BL
妊娠・出産に特化したΩの男性である大学1年の幸太には耐えられないほどの発情期が周期的に訪れる。そんな彼を救ってくれたのは生物的にも社会的にも恵まれたαである拓也だった。定期的に体の関係をもつようになった2人だが、なんと幸太は妊娠してしまう。中絶するには番の同意書と10万円が必要だが、貧乏学生であり、拓也の番になる気がない彼にはどちらの選択もハードルが高すぎて……。すれ違い拗らせオメガバースBL。
エブリスタにて紹介して頂いた時に書いて貰ったもの
白い部屋で愛を囁いて
氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。
シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。
※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。
浮気されてもそばにいたいと頑張ったけど限界でした
雨宮里玖
BL
大学の飲み会から帰宅したら、ルームシェアしている恋人の遠堂の部屋から聞こえる艶かしい声。これは浮気だと思ったが、遠堂に捨てられるまでは一緒にいたいと紀平はその行為に目をつぶる——。
遠堂(21)大学生。紀平と同級生。幼馴染。
紀平(20)大学生。
宮内(21)紀平の大学の同級生。
環 (22)遠堂のバイト先の友人。
【完結】薄幸文官志望は嘘をつく
七咲陸
BL
サシャ=ジルヴァールは伯爵家の長男として産まれるが、紫の瞳のせいで両親に疎まれ、弟からも蔑まれる日々を送っていた。
忌々しい紫眼と言う両親に幼い頃からサシャに魔道具の眼鏡を強要する。認識阻害がかかったメガネをかけている間は、サシャの顔や瞳、髪色までまるで別人だった。
学園に入学しても、サシャはあらぬ噂をされてどこにも居場所がない毎日。そんな中でもサシャのことを好きだと言ってくれたクラークと言う茶色の瞳を持つ騎士学生に惹かれ、お付き合いをする事に。
しかし、クラークにキスをせがまれ恥ずかしくて逃げ出したサシャは、アーヴィン=イブリックという翠眼を持つ騎士学生にぶつかってしまい、メガネが外れてしまったーーー…
認識阻害魔道具メガネのせいで2人の騎士の間で別人を演じることになった文官学生の恋の話。
全17話
2/28 番外編を更新しました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる