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本編

第三十二話 満月に祈りを込めて②*

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 早めにパーティーを切り上げたライトが馬車を向かわせた先は、王都の中心街からは少し外れた場所にある小さなホテルだった。
「ここ、は……?」
 わざわざ予約しておいたのだという部屋に足を踏み入れたルージュは、満天の星空が覗くガラスの天井にドキドキと胸を高鳴らせる。
 室内からでも夜空を見上げることのできる、王都での唯一の部屋。ライトがわざわざそこを選んだ理由は。
「この部屋からなら月が見えるから」
「……っ」
 夜空には、美しく輝く丸い月。
 ライトがなにを思ってこの日とこの場所を選んだのか、それだけで全て伝わってくる。
 ルージュの心の中にも、ナイトの存在は忘れることなく刻み込まれている。
 今も、ナイトは確かにライトの中にいるから。
「恥ずかしい?」
「っ」
 満月の下。背後からそっと抱き締められてびくりと肩が震えた。
「……っ恥ずかしい……、けど……っ」
 これからここでライトがどんなことをしようとしているのか、ルージュにもわかっている。
「うん」
 柔らかく微笑むライトに、赤くなった顔でぎゅっと目を瞑る。
「ロマンチックで素敵、だと思う……っ」
「ありがとう」
 ちゅ……っ、と嬉しそうに髪に口づけられ、緊張で身体が硬くなる。
「湯浴み、してくる?」
「っ」
「それとも一緒に入る?」
「っ、ライト……ッ!」
 くすくすと楽しそうに笑われて、心臓が壊れそうなほどの脈を打つ。
「いってらっしゃい。下調べした時に見たけど、お風呂も広くて素敵だよ」
「……うん……」
 そうして再び落ちてきた唇に送り出され、ルージュは浴室に向かうのだった。




 ◈◈✼◈◈┈┈┈┈◈◈✼◈◈




「ん……」
 初めは触れるだけのキス。
 次には角度を変えて食むようなキスを交わしながら、ゆっくりと背後のベッドへ寝かされて、ギシリ……、とスプリングの音が鳴った。
「ん……っ、ん……っ」
「ルージュ……」
 段々と深くなる口づけの合間で、熱くなったライトの吐息が落ちてくる。
「好きだよ……」
「ん……っ」
 再び唇を塞がれて、潜り込んできた舌先がルージュの口腔内をまさぐってくる。
「ん……、ふ……っ、ぁ……」
 唇と唇が離れる瞬間に漏れ聞こえる、ぴちゃり……っ、という水音が生々しくて恥ずかしい。
「ん……っ、んぅ……っ、ん……」
 それでもいつしかライトの首の後ろに腕を回し、ルージュもその口づけに応えるように舌と舌とを絡ませていた。
「ルージュ……」
「……ぁ……っ」
 ルージュの唇から離れていったライトのそれが、優しく名前を呼びながら首筋に落ちてきて、ルージュはぴくりと身体を震わせる。
 これから自分の身になにが起こるのか。ライトが自分にどんなことをしようと思っているのかはわかっている。
 すでに初体験を済ませた女の子たちから話を聞いたこともあるから、全くの無知というわけでもない。だからこれ以上ない羞恥に襲われても、ライトを受け入れる行為そのものを嫌だとは欠片たりとも思わなかった。
「ラ、イト……ッ、ぁ、ん……っ」
 ライトの舌先が首筋を舐め上げながら、片方の掌がそっと脇腹を撫で上げてきて、ルージュは小さな嬌声こえを洩らす。
「……あ……っ」
「……ずっと、こんなふうにルージュに触れたかった……」
「ぁ、ん……っ!」
 ちゅ……っ、と鎖骨の上の薄い肌を吸われ、柔らかな膨らみを確かめるように下から胸を掬い上げられると、ぞくぞくとした刺激が背筋を昇っていく。
「ぁ……っ、ラ、イト……ッ」
 縋るように薄っすらと開けた、潤んだルージュの瞳の中へ、夜空で輝く満月が浮かび上がる。
「ラ、ライト……。その……、恥ずかしい……、から……っ」
 まるで満月にこの行為を全て見つめられているようで、激しい羞恥に襲われる。
 美しい満月を見て思い出すのは、ナイトのことだ。
「恥ずかしい?」
「ん……っ」
 ライトが用意しておいてくれた白いナイトドレスは、胸元がいくつかのリボンで結ばれているタイプのもので、それをシュル……ッ、と外しながら尋ねてくるライトに、ルージュはこくりと頷いた。
「大丈夫だよ。ルージュはどこもかしこも綺麗だから」
「っ、そ、そういうことじゃ……っ」
 くすり、と笑いながら二つ目のリボンを解かれ、ルージュは真っ赤になった顔で訴える。
 ゆったりとしたナイトドレスはとても着心地が良いものだったけれど、よくよく見れば肌の色が透けそうなほどの薄生地でできていて、ルージュはそれに気づいた瞬間に沸騰した。
 まさかライトがこんな夜着を用意しているとは思わなかったが、どこまでが計算なのだろう。暗ければよくわからないかと思っていたが、満月が降り注ぐベッドの上では、ルージュの白い肌が幻想的に浮かび上がっている。
「こ、んなの……っ」
 明かりを消しても意味がない。
 全てがライトの前に晒されてしまうことに羞恥を浮かばせるルージュへと、ライトは楽しそうににこりと笑う。
「あぁ、でも、そうやって恥ずかしがるルージュも可愛いね」
「! ラ、イト……ッ! ……あ……っ」
 そんな意地の悪いセリフを口にするのは、本当にライトだろうか。
 鎖骨に舌を這わせながらやわやわと胸元を揉み込まれ、ルージュはびくりと身体を震わせる。
「可愛い、ルージュ。愛してる」
 はらり……っ、と取り払われてしまった布地から、赤い果実を実らせる白い膨らみが現れる。
「ココ、もうこんなになってる……。ルージュ、やらしいね」
「な……っ、ん……っ? あ……っ! や、ぁ……っ」
 直接胸元に触れてきた指先が、膨らみの先端にある果実を摘んできて、ぞくりとした刺激に襲われる。
「ぷっくら膨らんで……。可愛い」
「っ! ゃ、ぁあ……っ!」
 くすり、という笑みを刻んだかと思うともう片方の果実を口に含まれて、甲高い嬌声が上がった。
「あっ、ん……っ。ゃ、ぁ、あ……っ」
「ココ、こんなふうに弄られるの、好き?」
 それぞれの果実を、指と舌先でころころと転がされたり押し潰すようにされたりしていると、びくびくと腰が揺らいでしまう。
「や……っ、ん……っ、ラ、イト……ッ! 待……っ」
 腰の奥から熱が湧いてきて、勝手に零れ落ちる甘い嬌声が恥ずかしくて堪らない。あまりの恥ずかしさから制止の声を上げるも、ライトがその行為を止めてくれる様子はない。
 むしろ。
「ルージュ。教えて? ルージュを気持ちよくしたい」
「ぁあ……っ、ん……っ!」
 きゅ、と片方の果実を摘みながら、もう片方は軽く歯で甘噛みされ、眦から生理的な涙が溢れ出す。
「ゃ……っ、待……っ」
「こうされるの、気持ちいい?」
「あ……っ!」
 ルージュの胸元に執拗に触れながら窺いを立ててくるライトは、本気でルージュのことを気持ちよくしたいと思っていることが伝わってくるものの、そんなふうに聞かれると、恥ずかしくて恥ずかしくて堪らない。
「ルージュ?」
「あ……っ、そこ……っ、や、だ……ぁ……っ」
「“嫌”? 痛い?」
 ふるふると首を横に振れば、本気で疑問に思っているらしいライトが顔を上げてきて、ますます羞恥に襲われる。
「っ、違……っ、そうじゃ……、ない……っ、けど……っ」
 とはいえ、その誤解は解かなければと潤んだ瞳で否定するルージュに、その意味を察したらしいライトが、今度はくすりと楽しそうな笑みを刻んだ。
「じゃあ、どうして?」
「――――っ!」
 恐らくは、ルージュが“嫌”である理由をわかっていて尋ねてくる瞳の色に息を呑む。
 そんなルージュにライトは「あぁ」と声を洩らすと、柔らかな笑みを浮かべてみせる。
「感じすぎて恥ずかしい?」
「っ!」
 とても不埒なことをしているとは思えない表情と声色で尋ねられ、一瞬にして顔から全身へ熱が広がっていく。
「い……、いじわる……っ!」
「!」
 涙で濡れた瞳で睨むように訴えれば、僅かに驚きを見せたライトは、ほんの少しだけ申し訳なさそうな苦笑を零していた。
「そうだね、ごめん」
「あ……っ」
 謝りながら胸元を柔らかく愛撫され、微かに甘い吐息が洩れる。
「でも」
「ぁ……っ、あ……」
 再開された掌の動きに、腰からぞくぞくとした刺激が昇っていく。
「本当は俺がこういう人間だって、ルージュはもう知ってるでしょ?」
「っ!?」
 ちゅ……、と二つの膨らみの間に口づけを落としながら困ったように笑われて、ルージュの瞳は見開いた。
「真っ赤になって恥ずかしがるルージュが可愛すぎて……。もっと恥ずかしいことしたくなる」
「な……っ?」
 ライトの背後には、美しく輝く丸い月。仄かに妖しく微笑わらうライトは、本当にライトだろうかと思ってしまう。
 優しい雰囲気も口調もライトに間違いないというのに、ルージュを見つめる瞳と落とされる囁きは、色濃い欲が孕んでいる。
「脱がせるよ?」
「え……」
 有無を言わさない笑みを向けられて、ルージュは言われた内容がよく理解できずにライトを見返した。
「すごく似合ってるけど、これ以上は服が邪魔で触れないから」
 中途半端に脱がされていたナイトドレスを取り払おうと伸びる腕。
「ゃ……っ!? 待……っ」
 少し遅れた抵抗虚しく、ライトの手は器用に夜着を脱がせてしまい、ライトの眼下に晒された自分の身体に、ルージュはぎゅ、と目を瞑って羞恥に耐える。
「……綺麗だ……」
「……っ!」
 そうしてライトの感動したかのような吐息が聞こえ、ルージュはびくりと身体を震わせる。
 ライトの瞳が、じ……、と自分の全身を見つめているのがわかって全身が赤く染め上がる。
 明かりは全て落としていても、室内には輝く月の光が差し込んでいて、ルージュの身体を幻想的に浮かび上がらせていた。
「ルージュのこの綺麗な身体中に、俺のものだって跡つけたい」
「あ……っ!」
 言いながら、ライトの唇が胸の下や腹部に落とされていき、ルージュの口からは甘い吐息が零れ落ちる。
「ぁ……っ、あ、ん……っ、ん……」
 上半身をライトの手と唇で余すことなく愛撫され、びくびくと腰が揺れる。
「あ……っ、ぁあ……っ」
 脚の間がじわりと濡れ、いつしかルージュの内股はもどかしそうに擦り合うような動きを見せるようになっていた。
「ルージュ……」
「ぁ……っ!」
 ルージュのそんな無意識の反応を見て取ったのか、するりと太腿を撫で下ろしてきたライトの手に、びくっ! と腰が大きく跳ねた。
「あ……っ!?」
 ぐい……っ、と脚を開かされ、驚きに目を見張る。
「ルージュはどこもかしこも綺麗で美味しそうだね」
「あ……っ」
 微笑んだライトが、ちゅ……っ、と内股に口づけてきて、ぴくんっ、と下肢が反応する。
「ゃ……、ぁ、あっ、あ……っ」
 内股から膝の裏、ふくらはぎまで、余すことなく愛されて、お腹の奥がきゅん、と切なく収縮する。その度に、蜜壺がじんわりとした温かなもので満たされていくのを感じ、ルージュは恥ずかしそうに甘い声を上げていた。
「ねぇ、ルージュ。気持ちいい?」
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