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本編
第六話 満月の密会①*
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「ラ、ライト……ッ? どうしたの……?」
ついガラリと窓を開ければ、ひやりとした夜風が部屋の中へ流れ込んでくる。
全寮制の建物は男女で棟が別れていて、当然互いの行き来は禁止されている。真面目なライトがそんな規律違反を犯すとは驚きで、それと同時に、確かこの週末はライトは実家に戻っているはずだということも思い出す。
つまり、それが意味することは。
「部屋、入れてくれない?」
夜闇に紛れた黒猫のように、きらりと意味深に光る双眸。
「……ナ……、ナイト……?」
もしかして、と。ぎくりと身を引くルージュに、ライト――、否、ナイトの口元がくす、と小さな笑みを刻んだ。
「入れてよ」
「……っ」
規則で禁止されていることはもちろん、恋人でもない男性を部屋に入れることなどできるはずもない。当然躊躇の色を見せるルージュに、ナイトは「やれやれ」とばかりに小さな吐息を零すと勝手に窓を全開する。
「お邪魔しまーす」
「ちょ……っ、ナイト……ッ!」
そうして軽い身のこなしで窓枠を乗り越えてきたナイトに、ルージュは批難の目を向ける。
だが、品行方正なライトとは違い、ナイトは飄々とした態度で全く悪びれる様子がない。
「へー。ここがルージュの部屋? 男子寮と作りは同じでも、やっぱり雰囲気は全然違うんだな」
ナイトがぐるりと見回した室内は、机とベッドがあるだけの小さな部屋だが、それでもあちらこちらにルージュの好む装飾品が飾られている。
当然ライトすら見たことのない部屋だが、ナイトのその言い様は、まるで男子寮を知っているかのようだった。
「……ライトの部屋に行ったことがあるの?」
ナイトはこの学園に通っていない。つまり、男子寮を覗く機会があるとすれば、それはライトの部屋に行ったことがあるということを意味している。
「気になる?」
「っ」
と、悪戯っぽい瞳を向けられて、ルージュは思わず息を呑む。
このままではナイトの思う壺だと、本能のようなものが訴える。
「……貴方は、誰?」
乾いた声色で問いかけるルージュに、ナイトの顔へどこか嘘くさい笑みが浮かんだ。
「だからライトの双子の弟だって」
「嘘」
その一点張りで譲る様子の見えないナイトに、ルージュは疑いの目を返す。
「だからどうしてそう思うわけ?」
「どうして、って……」
そんなことは、今さら問い返されるまでもない。
「……ライトに双子の弟がいるなんて、聞いたこともなければそんな様子が見えたこともないもの」
ルージュとナイトはただの婚約者同士ではない。幼い頃から家族ぐるみで交流のある幼馴染でもあるのだ。
だから、もしライトに双子の弟がいたとしたならば、その存在をルージュに隠し通すことはさすがに不可能だろう。
「それが理由?」
「っ、だって……!」
くす、と可笑しそうに笑うナイトに、ルージュの瞳は戸惑うように揺れ動く。
ライトと全く同じ顔で、同じ声で。そんな人間がいるとしたら、それは双子だと考える方が自然の流れだろう。
にも関わらず、なぜそこまで双子の存在を否定したくなるのかわからない。
――否。本当は、見たくない現実を突きつけられそうなことが怖いのだ。
「もし、生まれた時からずっと、オレの存在が忌むべきものとして隠されていたとしたら?」
「っ、そんなことが……っ」
ドクン……ッ! と心臓が嫌な鼓動を刻み、ルージュは急速に身体が冷えていくような感覚を味わった。
「絶対にない、って言える?」
「!」
まるでルージュをからかうような瞳を向けられて、返す言葉を見失う。
「“双子は不吉だ”って。聞いたことない?」
「……嘘……っ!」
確かにナイトの言う通り、大昔には双子が不吉の象徴として忌み嫌われていた時代もあったかもしれない。けれどそれは、あくまで遠い昔のこと。現代ではそんなことはありえない。
ライトの家族はみな優しく、この時代に双子で生まれた子供を忌み子として扱うようなことをするはずがない。
ライトはもちろんのこと、あの優しい笑顔の裏で。
そんなこと、あるはずがない。
「……優しいルージュは、オレの存在を認めてくれるよな?」
「な……、にを……」
「ライトみたいに……、ライトの家族みたいに、オレをいないものとして抹消しようとしたりしないよな?」
「!」
ふいに切なげな瞳に射貫かれて心臓が跳ね上がる。
「……っライトはそんなこと……っ」
誰にでも分け隔てなく優しく、品行方正のライトが。
あの、優しい家族が。
「優しいライトはそんなことしない、って?」
「!」
ルージュの言いたいことを察したのだろう。自嘲気味に苦笑され、ルージュの大きな瞳がさらに大きく見開いた。
そんなこと、あるはずがない、と。本気でそう思うのに。
「アイツが一番オレのことを嫌悪してるのに」
「――っ!」
――ウィーズリー家の人間の中で誰よりも。
言外でそう告げられて、完全に言葉を失った。
清廉潔白なライトだからこそ、許せない“なにか”があるのだとしたら、それはそれで理由になってしまう気がしたのだ。
「……好きだ」
真っ直ぐルージュを見つめてくる真剣な瞳。
「ルージュのことが好きなんだ」
ルージュが大好きな、ルージュの恋人であるライトと同じ顔。同じ声。
窓の外には、美しく輝く丸い月。
「幼い頃から……、ずっと影からルージュを見てた」
「っ」
ルージュからは見えない場所で。人知れずルージュのことを見ていたというのだろうか。
もし、それが本当のことだとしたら……。それはどれほど哀しいことだろう。
「……ルージュと触れ合えるアイツのことが……、ライトのことが、羨ましくて妬ましくて仕方なかった」
ずっと、ずっと。
幸せそうに笑い合う双子の兄とその恋人の姿を見ていたというのだろうか。
「だから」
真剣で……、切なげな瞳。
「オレを選んでくれ」
「っ」
ゆっくりと近づいてくるナイトの前から逃げられないのは、ライトと同じ顔だからか、同情か。
「ルージュがオレの存在を認めて、ライトよりもオレのことを選んでくれたら……」
ナイトの願いは、そんなささいなもの。
優しい家族にさえ存在しないものとされている自分を、たった一人、ルージュだけが認めてくれたなら。
「そしたら、やっとオレは報われる」
苦し気な声色に、どう反応したらいいのかわからない。
「それだけでいいんだ」
懇願するような目を向けられて、目の前に立ったナイトを拒めない。
「ルージュがオレを選んでくれれば、それだけで」
ルージュへと伸ばされる腕。
もう片方の手は、ルージュの頬に添えられて。
「ルージュ……」
「……ナイ……、ん……」
眼前に迫るナイトの顔に、指先一つ動かせないまま、唇に柔らかな感触が降りてきた。
「ん……っ、ん……っ!?」
また、キスをされているのだと理解して、意外にも逞しい胸を押し返そうとするも無駄だった。
「……ルージュ……」
吐息が触れる距離からルージュを見下ろしてくる熱い眼差し。
「ナイ……ッ」
一人用の狭い部屋は、数歩後ろに下がってしまえば、そこにはベッドが置いてある。
「!?」
ドサ……ッ、と。バランスを崩すように背後のベッドへ押し倒され、ルージュは驚愕に目を見張る。
「ナ、イト……ッ!」
「ルージュがほしい」
「!」
その言葉の意味がわからないほど無知ではない。
ベッドへと乗り上げてきたナイトの重みでギシリ……ッ、とスプリングが軋み、ルージュの顔へと影が差す。
「ん……っ」
すぐに塞がれた唇に目を見開いた。
「ん……っ!? んんん……っ!? ん、ぅ……っ」
ルージュが驚いている隙を突いて口腔内へと生温かな感触が潜り込んできて、逃げることを許されずに舌と舌とを絡ませる深いキスをされる。
「ん……っ、ふ……、ぁ……っ」
ぴちゃ……っ、という水音がして離れていったナイトの唇は赤く濡れていて、それが生々しくて涙が滲んだ。
「……その表情、めちゃくちゃ可愛い。そそられる」
「ん……っ!」
欲の覗く瞳で見下ろされ、再度落ちてきた唇を、成す術もなく受け止める。
「ふ……っ、ん、ん……っ、ふぁ……っ」
「可愛い……、ルージュ……。愛してる……」
少しだけ上がった吐息で告げられて、酸素不足になった頭は霞がかかってぼんやりとしてしまう。
「!? あ……っ!」
だが、首筋に熱い吐息がかかり、そこにナイトの唇と舌先の感触を覚えた瞬間、ルージュはハッと我に返っていた。
「や……っ! ナイ、ト……ッ!」
首筋を舐め取られ、ちく……っ、と走った僅かな痛みに、ルージュは慌ててナイトを押し返そうと手を伸ばす。
けれどそんな抵抗などあっさりと封じられ、両手首を一纏めにされて掴まれたかと思うと、もう片方の手が胸元のボタンを外してくる。
「すごく甘い匂いがする……。誘ってる?」
「っ! そんなわけ……っ、ぁ……っ」
胸元へと埋められるナイトの顔。
胸の谷間の上辺りに唇を這わされて、びく……っ、と身体が反応する。
「あ……っ!」
そっと。優しく胸の膨らみに触れてくる大きな掌。
「や……っ、待……っ、て……っ、ナ、イト……ッ!」
「……胸、柔らかい……」
「!」
そのままやわやわと優しく揉み込まれ、ルージュの顔は恥ずかしさから真っ赤になる。
「ずっと、こんなふうに触れてみたかった……」
「……ぁ……っ、や、ぁ……っ」
胸元のそこかしこに唇と舌を這わせながら胸の膨らみを愛撫され、腰の奥からじわじわとした熱が湧いてくる。
それが性的な快楽だと気づいてしまえば、恥ずかしくて情けなくて涙が滲む。
こんなことはダメだと思うのに、ライトそっくりの姿と声で迫られると、身体は勝手に勘違いしてしまう。
「ココ、も……」
「あ……っ!」
つん……、と指先で胸の先端に触れられて、びくんっ、と身体が揺れた。
「美味しそう……」
「! や……っ、ゃ、だ……ぁ……っ」
舌先でそっと舐め上げられ、もう片方の果実は二本の指先でそっと挟むようにして刺激され、自分のものとは思えない甘ったるい声が上がる。
「あ、固くなって膨らんできた。もしかして、感じてる?」
「違……っ」
嬉しそうに笑うナイトの声に愕然とする。
「気持ちいいんだ?」
「っ、違……ぁ……っ」
「ルージュ可愛い」
「あ……っ!」
ぱく、と見せつけるように口に含まれたかと思うと舌先でころころと転がされ、背筋へとぞくぞくとした刺激が昇っていく。
「や……っ、だ……ぁ……、だめ、ぇ……っ、やめ……っ」
いつの間にか手首の拘束が外されていてもそれに気づくこともなく、大した抵抗もできずにルージュはふるふると首を振る。
「ルージュ……。好きだ……っ、ルージュ……ッ」
「ぁあ……っ、んん……っ」
ナイトは熱に浮かされたかのようにルージュの名を呼び、手や唇での愛撫はどんどんと下へ下がっていく。
「ルージュ……ッ、ほんと、可愛いな……っ?」
「あ……っ?」
ぐいっ、と脚を開かされて驚愕する。
「ナイト……ッ!? 待……っ!」
「誰にも見せたことないところ、オレに見せて?」
そう嬉しそうに笑ったナイトが身を屈めたその先には。
ついガラリと窓を開ければ、ひやりとした夜風が部屋の中へ流れ込んでくる。
全寮制の建物は男女で棟が別れていて、当然互いの行き来は禁止されている。真面目なライトがそんな規律違反を犯すとは驚きで、それと同時に、確かこの週末はライトは実家に戻っているはずだということも思い出す。
つまり、それが意味することは。
「部屋、入れてくれない?」
夜闇に紛れた黒猫のように、きらりと意味深に光る双眸。
「……ナ……、ナイト……?」
もしかして、と。ぎくりと身を引くルージュに、ライト――、否、ナイトの口元がくす、と小さな笑みを刻んだ。
「入れてよ」
「……っ」
規則で禁止されていることはもちろん、恋人でもない男性を部屋に入れることなどできるはずもない。当然躊躇の色を見せるルージュに、ナイトは「やれやれ」とばかりに小さな吐息を零すと勝手に窓を全開する。
「お邪魔しまーす」
「ちょ……っ、ナイト……ッ!」
そうして軽い身のこなしで窓枠を乗り越えてきたナイトに、ルージュは批難の目を向ける。
だが、品行方正なライトとは違い、ナイトは飄々とした態度で全く悪びれる様子がない。
「へー。ここがルージュの部屋? 男子寮と作りは同じでも、やっぱり雰囲気は全然違うんだな」
ナイトがぐるりと見回した室内は、机とベッドがあるだけの小さな部屋だが、それでもあちらこちらにルージュの好む装飾品が飾られている。
当然ライトすら見たことのない部屋だが、ナイトのその言い様は、まるで男子寮を知っているかのようだった。
「……ライトの部屋に行ったことがあるの?」
ナイトはこの学園に通っていない。つまり、男子寮を覗く機会があるとすれば、それはライトの部屋に行ったことがあるということを意味している。
「気になる?」
「っ」
と、悪戯っぽい瞳を向けられて、ルージュは思わず息を呑む。
このままではナイトの思う壺だと、本能のようなものが訴える。
「……貴方は、誰?」
乾いた声色で問いかけるルージュに、ナイトの顔へどこか嘘くさい笑みが浮かんだ。
「だからライトの双子の弟だって」
「嘘」
その一点張りで譲る様子の見えないナイトに、ルージュは疑いの目を返す。
「だからどうしてそう思うわけ?」
「どうして、って……」
そんなことは、今さら問い返されるまでもない。
「……ライトに双子の弟がいるなんて、聞いたこともなければそんな様子が見えたこともないもの」
ルージュとナイトはただの婚約者同士ではない。幼い頃から家族ぐるみで交流のある幼馴染でもあるのだ。
だから、もしライトに双子の弟がいたとしたならば、その存在をルージュに隠し通すことはさすがに不可能だろう。
「それが理由?」
「っ、だって……!」
くす、と可笑しそうに笑うナイトに、ルージュの瞳は戸惑うように揺れ動く。
ライトと全く同じ顔で、同じ声で。そんな人間がいるとしたら、それは双子だと考える方が自然の流れだろう。
にも関わらず、なぜそこまで双子の存在を否定したくなるのかわからない。
――否。本当は、見たくない現実を突きつけられそうなことが怖いのだ。
「もし、生まれた時からずっと、オレの存在が忌むべきものとして隠されていたとしたら?」
「っ、そんなことが……っ」
ドクン……ッ! と心臓が嫌な鼓動を刻み、ルージュは急速に身体が冷えていくような感覚を味わった。
「絶対にない、って言える?」
「!」
まるでルージュをからかうような瞳を向けられて、返す言葉を見失う。
「“双子は不吉だ”って。聞いたことない?」
「……嘘……っ!」
確かにナイトの言う通り、大昔には双子が不吉の象徴として忌み嫌われていた時代もあったかもしれない。けれどそれは、あくまで遠い昔のこと。現代ではそんなことはありえない。
ライトの家族はみな優しく、この時代に双子で生まれた子供を忌み子として扱うようなことをするはずがない。
ライトはもちろんのこと、あの優しい笑顔の裏で。
そんなこと、あるはずがない。
「……優しいルージュは、オレの存在を認めてくれるよな?」
「な……、にを……」
「ライトみたいに……、ライトの家族みたいに、オレをいないものとして抹消しようとしたりしないよな?」
「!」
ふいに切なげな瞳に射貫かれて心臓が跳ね上がる。
「……っライトはそんなこと……っ」
誰にでも分け隔てなく優しく、品行方正のライトが。
あの、優しい家族が。
「優しいライトはそんなことしない、って?」
「!」
ルージュの言いたいことを察したのだろう。自嘲気味に苦笑され、ルージュの大きな瞳がさらに大きく見開いた。
そんなこと、あるはずがない、と。本気でそう思うのに。
「アイツが一番オレのことを嫌悪してるのに」
「――っ!」
――ウィーズリー家の人間の中で誰よりも。
言外でそう告げられて、完全に言葉を失った。
清廉潔白なライトだからこそ、許せない“なにか”があるのだとしたら、それはそれで理由になってしまう気がしたのだ。
「……好きだ」
真っ直ぐルージュを見つめてくる真剣な瞳。
「ルージュのことが好きなんだ」
ルージュが大好きな、ルージュの恋人であるライトと同じ顔。同じ声。
窓の外には、美しく輝く丸い月。
「幼い頃から……、ずっと影からルージュを見てた」
「っ」
ルージュからは見えない場所で。人知れずルージュのことを見ていたというのだろうか。
もし、それが本当のことだとしたら……。それはどれほど哀しいことだろう。
「……ルージュと触れ合えるアイツのことが……、ライトのことが、羨ましくて妬ましくて仕方なかった」
ずっと、ずっと。
幸せそうに笑い合う双子の兄とその恋人の姿を見ていたというのだろうか。
「だから」
真剣で……、切なげな瞳。
「オレを選んでくれ」
「っ」
ゆっくりと近づいてくるナイトの前から逃げられないのは、ライトと同じ顔だからか、同情か。
「ルージュがオレの存在を認めて、ライトよりもオレのことを選んでくれたら……」
ナイトの願いは、そんなささいなもの。
優しい家族にさえ存在しないものとされている自分を、たった一人、ルージュだけが認めてくれたなら。
「そしたら、やっとオレは報われる」
苦し気な声色に、どう反応したらいいのかわからない。
「それだけでいいんだ」
懇願するような目を向けられて、目の前に立ったナイトを拒めない。
「ルージュがオレを選んでくれれば、それだけで」
ルージュへと伸ばされる腕。
もう片方の手は、ルージュの頬に添えられて。
「ルージュ……」
「……ナイ……、ん……」
眼前に迫るナイトの顔に、指先一つ動かせないまま、唇に柔らかな感触が降りてきた。
「ん……っ、ん……っ!?」
また、キスをされているのだと理解して、意外にも逞しい胸を押し返そうとするも無駄だった。
「……ルージュ……」
吐息が触れる距離からルージュを見下ろしてくる熱い眼差し。
「ナイ……ッ」
一人用の狭い部屋は、数歩後ろに下がってしまえば、そこにはベッドが置いてある。
「!?」
ドサ……ッ、と。バランスを崩すように背後のベッドへ押し倒され、ルージュは驚愕に目を見張る。
「ナ、イト……ッ!」
「ルージュがほしい」
「!」
その言葉の意味がわからないほど無知ではない。
ベッドへと乗り上げてきたナイトの重みでギシリ……ッ、とスプリングが軋み、ルージュの顔へと影が差す。
「ん……っ」
すぐに塞がれた唇に目を見開いた。
「ん……っ!? んんん……っ!? ん、ぅ……っ」
ルージュが驚いている隙を突いて口腔内へと生温かな感触が潜り込んできて、逃げることを許されずに舌と舌とを絡ませる深いキスをされる。
「ん……っ、ふ……、ぁ……っ」
ぴちゃ……っ、という水音がして離れていったナイトの唇は赤く濡れていて、それが生々しくて涙が滲んだ。
「……その表情、めちゃくちゃ可愛い。そそられる」
「ん……っ!」
欲の覗く瞳で見下ろされ、再度落ちてきた唇を、成す術もなく受け止める。
「ふ……っ、ん、ん……っ、ふぁ……っ」
「可愛い……、ルージュ……。愛してる……」
少しだけ上がった吐息で告げられて、酸素不足になった頭は霞がかかってぼんやりとしてしまう。
「!? あ……っ!」
だが、首筋に熱い吐息がかかり、そこにナイトの唇と舌先の感触を覚えた瞬間、ルージュはハッと我に返っていた。
「や……っ! ナイ、ト……ッ!」
首筋を舐め取られ、ちく……っ、と走った僅かな痛みに、ルージュは慌ててナイトを押し返そうと手を伸ばす。
けれどそんな抵抗などあっさりと封じられ、両手首を一纏めにされて掴まれたかと思うと、もう片方の手が胸元のボタンを外してくる。
「すごく甘い匂いがする……。誘ってる?」
「っ! そんなわけ……っ、ぁ……っ」
胸元へと埋められるナイトの顔。
胸の谷間の上辺りに唇を這わされて、びく……っ、と身体が反応する。
「あ……っ!」
そっと。優しく胸の膨らみに触れてくる大きな掌。
「や……っ、待……っ、て……っ、ナ、イト……ッ!」
「……胸、柔らかい……」
「!」
そのままやわやわと優しく揉み込まれ、ルージュの顔は恥ずかしさから真っ赤になる。
「ずっと、こんなふうに触れてみたかった……」
「……ぁ……っ、や、ぁ……っ」
胸元のそこかしこに唇と舌を這わせながら胸の膨らみを愛撫され、腰の奥からじわじわとした熱が湧いてくる。
それが性的な快楽だと気づいてしまえば、恥ずかしくて情けなくて涙が滲む。
こんなことはダメだと思うのに、ライトそっくりの姿と声で迫られると、身体は勝手に勘違いしてしまう。
「ココ、も……」
「あ……っ!」
つん……、と指先で胸の先端に触れられて、びくんっ、と身体が揺れた。
「美味しそう……」
「! や……っ、ゃ、だ……ぁ……っ」
舌先でそっと舐め上げられ、もう片方の果実は二本の指先でそっと挟むようにして刺激され、自分のものとは思えない甘ったるい声が上がる。
「あ、固くなって膨らんできた。もしかして、感じてる?」
「違……っ」
嬉しそうに笑うナイトの声に愕然とする。
「気持ちいいんだ?」
「っ、違……ぁ……っ」
「ルージュ可愛い」
「あ……っ!」
ぱく、と見せつけるように口に含まれたかと思うと舌先でころころと転がされ、背筋へとぞくぞくとした刺激が昇っていく。
「や……っ、だ……ぁ……、だめ、ぇ……っ、やめ……っ」
いつの間にか手首の拘束が外されていてもそれに気づくこともなく、大した抵抗もできずにルージュはふるふると首を振る。
「ルージュ……。好きだ……っ、ルージュ……ッ」
「ぁあ……っ、んん……っ」
ナイトは熱に浮かされたかのようにルージュの名を呼び、手や唇での愛撫はどんどんと下へ下がっていく。
「ルージュ……ッ、ほんと、可愛いな……っ?」
「あ……っ?」
ぐいっ、と脚を開かされて驚愕する。
「ナイト……ッ!? 待……っ!」
「誰にも見せたことないところ、オレに見せて?」
そう嬉しそうに笑ったナイトが身を屈めたその先には。
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