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まずは準備運動です
可愛いけれど、兄です*
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―コンコンッ
小さく控えめなノックの音に正気になり、聞かれてなかったかと心配しつつも返事をする。直ぐに扉を開けて顔を覗かせたのは、アメーリアの兄であるアイドクレーズだった。(勿論幼児姿)
(くっ、お兄様だと解っているけど、可愛い!!)
外見では自分のが年下だけど、中身は五歳+α(ここは突っ込まないで)。生前も小さい子やモフモフが大好きだった私からすれば、あんなに可愛いショタなアイクお兄様はご褒美です大好物です。
(ああああ!もう可愛い可愛い可愛いっ、何だ兄抱き締めたいいいい!!)
本当に神様ありがとうございます!手をお祈りの形にして拝み倒しますよ!
アメーリアと違いふわっとした柔らかそうな金髪とくりくりの大きな瞳は琥珀色。私の瞳はお父様譲りの薄紫ですが、お兄様はお母様譲りの優しい色合いです。ぷくっとした柔らかそうな頬とか、つつきたい。
「あ、アリア…?どうしたの?だいじょうぶ?」
「はっ、ご、ごめんなさいアイクお兄さま、なにかごようですか?」
危ない危ない、ヨダレ出てないよね?
思わず口元に手をやって確認して、私はにっこりと笑みをアイクお兄様へと向けた。幸い、この世界では令嬢として育てられていたので、幼いながらの礼儀作法などは体が記憶してくれていた。なんてラッキー。
若干怯えを表情に残したアイクお兄様が、それでもにこりと微笑みを浮かべて手を差し出してくる。首を傾げて其の手を取れば、『お母様が呼んでるよ』と手を引いてエスコートしてくれた。
(流石はアイクお兄様、何故か攻略対象では無かったのに、数々の乙女ゲーマーから惜しまれたその優雅さは、幼くても健在か!)
仲良く手を繋いだまま長い廊下を歩いて、アイクお兄様とやってきた一つの扉の前。アメーリアの記憶では、そこはアイドクレーズとアメーリアの両親の部屋だった。アメーリアの記憶では、確かお母様は長くベッドに臥せってたらしく、遊んで欲しいのに侍女やお父様に叱られたという嫌な記憶がある。何かあったのか部屋の中でもバタバタと騒がしい。
(だけど、不穏な感じはしないよね?)
コンコンッとアイクお兄様がノックし、返事を待たずに開けた扉の先では、椅子に座って何かを抱いているお母様の姿。その腕にあるのは真っ白なおくるみに包まれた塊と、覚えのある重み。
(ああ、だからお母様は体調が悪かったんだ)
前世を思い出した私だから納得できた、お母様の体調不良の原因。それに、遊びたくてもそりゃ遊べませんよね。この時代背景は中世のヨーロッパをモデルとしているのだから、病気や出産は正しく命がけ。今なら我が儘を言ってごめんなさい、と素直に謝ることが出来ます。と言うか、謝らせてくださいお母様。
「アイク、アリア。貴方達の弟ですよ」
「可愛いです!ね?アリア」
「………」
おくるみに抱っこされた可愛い赤ちゃんの、スヤスヤと眠る顔を見た瞬間、私の瞳には堪えきれないほどの涙が溢れていた。ボロボロと頬を伝う暇なく零れていく涙は、ふかふかの絨毯へと吸い込まれていく。
私の涙に驚くお母様とアイクお兄様、そしていつもは冷静なお父様までもが目を瞠っていて、私に付けられていたけど、お産の手伝いに借り出されていた乳母が慌てて駆け寄ってきた。
「お嬢様?如何されましたか?旦那様も奥様も吃驚されてますよ」
「…っ、ふぇ…」
「アリア?」
喉に何かが詰まっている様に声が出ない、ただボロボロに零れる涙は止まってくれない。お母様の腕に抱かれた天使の寝顔、それを見た途端に思い出してしまった。あの重みの幸福感を、夢ではない、今の自分の現状を思い知ってしまった。
私は、その愛しい重みを知っている。だけど、この腕からは永遠に失われてしまったもの。
(私、もう此処で生きてるんだ…)
小さいながらも泣いている私を慰めようと、アイクお兄様はぎゅっと私を抱き締めてくれていた。その生きている温かさが、哀しくて胸が締め付けられて、でも、嬉しかった。
小さく控えめなノックの音に正気になり、聞かれてなかったかと心配しつつも返事をする。直ぐに扉を開けて顔を覗かせたのは、アメーリアの兄であるアイドクレーズだった。(勿論幼児姿)
(くっ、お兄様だと解っているけど、可愛い!!)
外見では自分のが年下だけど、中身は五歳+α(ここは突っ込まないで)。生前も小さい子やモフモフが大好きだった私からすれば、あんなに可愛いショタなアイクお兄様はご褒美です大好物です。
(ああああ!もう可愛い可愛い可愛いっ、何だ兄抱き締めたいいいい!!)
本当に神様ありがとうございます!手をお祈りの形にして拝み倒しますよ!
アメーリアと違いふわっとした柔らかそうな金髪とくりくりの大きな瞳は琥珀色。私の瞳はお父様譲りの薄紫ですが、お兄様はお母様譲りの優しい色合いです。ぷくっとした柔らかそうな頬とか、つつきたい。
「あ、アリア…?どうしたの?だいじょうぶ?」
「はっ、ご、ごめんなさいアイクお兄さま、なにかごようですか?」
危ない危ない、ヨダレ出てないよね?
思わず口元に手をやって確認して、私はにっこりと笑みをアイクお兄様へと向けた。幸い、この世界では令嬢として育てられていたので、幼いながらの礼儀作法などは体が記憶してくれていた。なんてラッキー。
若干怯えを表情に残したアイクお兄様が、それでもにこりと微笑みを浮かべて手を差し出してくる。首を傾げて其の手を取れば、『お母様が呼んでるよ』と手を引いてエスコートしてくれた。
(流石はアイクお兄様、何故か攻略対象では無かったのに、数々の乙女ゲーマーから惜しまれたその優雅さは、幼くても健在か!)
仲良く手を繋いだまま長い廊下を歩いて、アイクお兄様とやってきた一つの扉の前。アメーリアの記憶では、そこはアイドクレーズとアメーリアの両親の部屋だった。アメーリアの記憶では、確かお母様は長くベッドに臥せってたらしく、遊んで欲しいのに侍女やお父様に叱られたという嫌な記憶がある。何かあったのか部屋の中でもバタバタと騒がしい。
(だけど、不穏な感じはしないよね?)
コンコンッとアイクお兄様がノックし、返事を待たずに開けた扉の先では、椅子に座って何かを抱いているお母様の姿。その腕にあるのは真っ白なおくるみに包まれた塊と、覚えのある重み。
(ああ、だからお母様は体調が悪かったんだ)
前世を思い出した私だから納得できた、お母様の体調不良の原因。それに、遊びたくてもそりゃ遊べませんよね。この時代背景は中世のヨーロッパをモデルとしているのだから、病気や出産は正しく命がけ。今なら我が儘を言ってごめんなさい、と素直に謝ることが出来ます。と言うか、謝らせてくださいお母様。
「アイク、アリア。貴方達の弟ですよ」
「可愛いです!ね?アリア」
「………」
おくるみに抱っこされた可愛い赤ちゃんの、スヤスヤと眠る顔を見た瞬間、私の瞳には堪えきれないほどの涙が溢れていた。ボロボロと頬を伝う暇なく零れていく涙は、ふかふかの絨毯へと吸い込まれていく。
私の涙に驚くお母様とアイクお兄様、そしていつもは冷静なお父様までもが目を瞠っていて、私に付けられていたけど、お産の手伝いに借り出されていた乳母が慌てて駆け寄ってきた。
「お嬢様?如何されましたか?旦那様も奥様も吃驚されてますよ」
「…っ、ふぇ…」
「アリア?」
喉に何かが詰まっている様に声が出ない、ただボロボロに零れる涙は止まってくれない。お母様の腕に抱かれた天使の寝顔、それを見た途端に思い出してしまった。あの重みの幸福感を、夢ではない、今の自分の現状を思い知ってしまった。
私は、その愛しい重みを知っている。だけど、この腕からは永遠に失われてしまったもの。
(私、もう此処で生きてるんだ…)
小さいながらも泣いている私を慰めようと、アイクお兄様はぎゅっと私を抱き締めてくれていた。その生きている温かさが、哀しくて胸が締め付けられて、でも、嬉しかった。
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