悪役執事

梛桜

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花の朔祭編

其の十五

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 春の花が咲き乱れ、まるで花吹雪の様に舞い散る中、アイクロメア王国の誇る学園の卒業式です。卒業式なので、当然卒業生代表で何か言葉が当初予定されて居ましたが、やるだろうと思っていた王太子は廃嫡の上に廃太子、しかも捕縛というオマケ付きです。
 在校生は急遽不参加となり、予定していた卒業パーティも後日改めて通知がくるそうです。挨拶は特別クラスの生徒なら即興で出来たでしょうが、皆さんあの元王太子の代わりは嫌だと仰ったようで挨拶も無くなった、実に簡素な式でした。

(学園長、一気に老け込みましたね)

「流石に、在校生も居ないと寂しいですね」
「人数が少ないですし、パーティも無くなりましたからね」
「でも、コレでパートナー探しに奮闘していた人達も大人しくなって良かったじゃないですか」
「リーユお嬢様はエアヴァル様と踊れなくなったって頬膨らませてましたよ、可愛かったです」

 卒業式は旦那様は突然の捕り物で不参加となってしまい、ダンスパーティは私と踊るとリーユお嬢様が仰っていたのですが、昨日の今日ですので危険だからと学園長から中止を言い渡され、それはもう可愛らしいくらいに不機嫌になってました。

「可愛いですよね、白い頬を赤くして拗ねている顔が」
「ゼルク、人前ですよ」
「ゼルクが言うと如何わしく聞こえるんだよね、永遠に眠っとく?」
「ルファ、何気に殺気を振りまかないでください」

 こんな怖い会話をニコニコ笑顔でやっていますが、周りの主人待ちの従者には気付かれないので、本気ではなさそうです。まぁ冗談でも殺気を自由に出すのは少し止めて欲しいです。イスラが怯えますので。

「リーユお嬢様がいらっしゃいましたよー」
「相変わらず女生徒に囲まれてますね、色々と相談もお受けになってましたし」
「下手な家に嫁がなくて済んだのではないですか?さ、旦那様もお待ちでしょうから素早く動くぞ」
「畏まりました」

 お嬢様の卒業式を、旦那様はとても心配されていましたが、奥様も今回の様な危険があったため心配になっていたのでしょうね。

(何でも、マリアーナ様は旦那様や国王陛下の卒業式の日だったとか。それは記憶に深く残りますよね)

「今度、お聞きしても大丈夫でしょうかね…」
「何を?」
「奥様と旦那様の学生時代のお話をです」
「あら、だったら私がお父様に聞いてあげる。凄く嬉しそうに話してくださるのよ」
「僕も聞きたいです、公爵様の学生時代って想像出来なくって」
「イスラ、言葉」

 頭をゼルクに小突かれ呻きつつも、皆でリーユお嬢様を守るように歩くのはいつもの事。今日はこのままライラクス国へと馬車を走らせて、公爵家へと戻ることになっています。

 このまま何も無いのが一番ですが
 この先もお嬢様の幸せを脅かすものは、私達執事一同全力で排除させて頂きます。


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