32 / 32
花の朔祭編
其の十五
しおりを挟む春の花が咲き乱れ、まるで花吹雪の様に舞い散る中、アイクロメア王国の誇る学園の卒業式です。卒業式なので、当然卒業生代表で何か言葉が当初予定されて居ましたが、やるだろうと思っていた王太子は廃嫡の上に廃太子、しかも捕縛というオマケ付きです。
在校生は急遽不参加となり、予定していた卒業パーティも後日改めて通知がくるそうです。挨拶は特別クラスの生徒なら即興で出来たでしょうが、皆さんあの元王太子の代わりは嫌だと仰ったようで挨拶も無くなった、実に簡素な式でした。
(学園長、一気に老け込みましたね)
「流石に、在校生も居ないと寂しいですね」
「人数が少ないですし、パーティも無くなりましたからね」
「でも、コレでパートナー探しに奮闘していた人達も大人しくなって良かったじゃないですか」
「リーユお嬢様はエアヴァル様と踊れなくなったって頬膨らませてましたよ、可愛かったです」
卒業式は旦那様は突然の捕り物で不参加となってしまい、ダンスパーティは私と踊るとリーユお嬢様が仰っていたのですが、昨日の今日ですので危険だからと学園長から中止を言い渡され、それはもう可愛らしいくらいに不機嫌になってました。
「可愛いですよね、白い頬を赤くして拗ねている顔が」
「ゼルク、人前ですよ」
「ゼルクが言うと如何わしく聞こえるんだよね、永遠に眠っとく?」
「ルファ、何気に殺気を振りまかないでください」
こんな怖い会話をニコニコ笑顔でやっていますが、周りの主人待ちの従者には気付かれないので、本気ではなさそうです。まぁ冗談でも殺気を自由に出すのは少し止めて欲しいです。イスラが怯えますので。
「リーユお嬢様がいらっしゃいましたよー」
「相変わらず女生徒に囲まれてますね、色々と相談もお受けになってましたし」
「下手な家に嫁がなくて済んだのではないですか?さ、旦那様もお待ちでしょうから素早く動くぞ」
「畏まりました」
お嬢様の卒業式を、旦那様はとても心配されていましたが、奥様も今回の様な危険があったため心配になっていたのでしょうね。
(何でも、マリアーナ様は旦那様や国王陛下の卒業式の日だったとか。それは記憶に深く残りますよね)
「今度、お聞きしても大丈夫でしょうかね…」
「何を?」
「奥様と旦那様の学生時代のお話をです」
「あら、だったら私がお父様に聞いてあげる。凄く嬉しそうに話してくださるのよ」
「僕も聞きたいです、公爵様の学生時代って想像出来なくって」
「イスラ、言葉」
頭をゼルクに小突かれ呻きつつも、皆でリーユお嬢様を守るように歩くのはいつもの事。今日はこのままライラクス国へと馬車を走らせて、公爵家へと戻ることになっています。
このまま何も無いのが一番ですが
この先もお嬢様の幸せを脅かすものは、私達執事一同全力で排除させて頂きます。
0
お気に入りに追加
1,415
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
闇黒の悪役令嬢は溺愛される
葵川真衣
恋愛
公爵令嬢リアは十歳のときに、転生していることを知る。
今は二度目の人生だ。
十六歳の舞踏会、皇太子ジークハルトから、婚約破棄を突き付けられる。
記憶を得たリアは前世同様、世界を旅する決意をする。
前世の仲間と、冒険の日々を送ろう!
婚約破棄された後、すぐ帝都を出られるように、リアは旅の支度をし、舞踏会に向かった。
だが、その夜、前世と異なる出来事が起きて──!?
悪役令嬢、溺愛物語。
☆本編完結しました。ありがとうございました。番外編等、不定期更新です。
【完結】悪役令嬢の反撃の日々
アイアイ
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。
「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。
お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。
「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。
ヒロイン不在だから悪役令嬢からお飾りの王妃になるのを決めたのに、誓いの場で登場とか聞いてないのですが!?
あさぎかな@電子書籍二作目発売中
恋愛
ヒロインがいない。
もう一度言おう。ヒロインがいない!!
乙女ゲーム《夢見と夜明け前の乙女》のヒロインのキャロル・ガードナーがいないのだ。その結果、王太子ブルーノ・フロレンス・フォード・ゴルウィンとの婚約は継続され、今日私は彼の婚約者から妻になるはずが……。まさかの式の最中に突撃。
※ざまぁ展開あり
変な転入生が現れましたので色々ご指摘さしあげたら、悪役令嬢呼ばわりされましたわ
奏音 美都
恋愛
上流階級の貴族子息や令嬢が通うロイヤル学院に、庶民階級からの特待生が転入してきましたの。
スチュワートやロナルド、アリアにジョセフィーンといった名前が並ぶ中……ハルコだなんて、おかしな
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
婚約破棄された悪役令嬢は王子様に溺愛される
白雪みなと
恋愛
「彼女ができたから婚約破棄させてくれ」正式な結婚まであと二年というある日、婚約破棄から告げられたのは婚約破棄だった。だけど、なぜか数時間後に王子から溺愛されて!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる