悪役執事

梛桜

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花の朔祭編

其の二

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「おはようございます、リーユ様。本日は花茶をお持ちしました」
「ありがとう、ルファ」
「少し熱いですから、気をつけて下さいね」

 手渡されるティーカップから上がる湯気に、いつもより熱いことを感じさせられる。それにリーユお嬢様も気がついたのをルファの手に重ねてじっと見つめられる。

「ルファ、熱くて飲めませんわ。冷まして?」
「はい、仰せのままに」

 微笑みを浮かべて、お茶を二人で冷ましている姿はとても愛らしいです。最初は偶然かとも思いますが、何度か見ているとルファも態とやってますよね。花茶はお気に召したようで、ほんのりと色付いた頬が緩んでいます。
 花の朔祭りの為の服とヴェールの準備をし、着替えのための侍女を呼ぶと、丁度お茶を飲み終わり片付けたルファと一緒に部屋を出ました。

「今日は盛大な祭りになるでしょうね」
「氷の月でも、人混みに埋まりましたからね」

 祭りの話をしていると、聞きつけたゼルクとイスラが顔を出して楽しそうに会話に入って来ます。リーユお嬢様が喜ばれる事が一番ですが、楽しみすぎて問題が起きない事を願いますよ。

「人混みが心配なら、お嬢様は私が抱き上げてお連れしましょうか?」
「体力馬鹿」
「ルファは出来ないからな」
「リーユお嬢様でしたら、僕でもお連れできそうですよ?」
「お前はお嬢様の靴の用意でもしてろ!」

 じゃれあう三人に注意をして、私はリーユお嬢様のヴェールを取り付ける為にお部屋へ。遊んでいた三人は食堂へと移動していきました。
 リーユお嬢様の本日のお召し物は、亡き奥様が残された袖が特徴的な東の国の民族衣装の着物を模してある動きやすいドレスです。人混みに入りますので、装飾品はリーユお嬢様を傷つけないように控えめな物を選びました。花のように結ばれた帯がよく目立ちます。

「リーユお嬢様ブーツをお持ちしました」
「今日は靴じゃないの?」
「このドレスでしたら、ブーツの方が疲れませんので。今日はお祭りに行くんですから、沢山歩きますよ」
「疲れたらゼルクかイスラが抱っこしてくれる?」
「勿論です!」

 椅子に座るリーユお嬢様の足にブーツを履かせながら照れた笑みを向けるイスラに、お嬢様もニコニコと応えています。口調はまだ馴れ馴れしいのが治りませんが、コレはリーユお嬢様もお許しになっているので大目に見る事に致します。

「失礼致します、おはよう御座いますお嬢様。朝食の準備が整いました」
「おはようゼルク」

 履き慣れていないブーツの為、ゼルクに腕を伸ばしそれを読み取ったゼルクが軽々とリーユお嬢様を抱き上げます。ルファエルが言っていた通り、体力馬鹿のゼルクのだらしなく嬉しそうな顔が目の前に。後で別の仕事でも言いつけましょうか。

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