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乙女ゲームの王子様
婚約者の幼馴染み
しおりを挟む「セラフィナさん、酷いです…。自分だけ逃げるなんてずるい…」
「あら、逃げてませんわよ?私は身内ですしね。それに、私はクレイオ兄様に抱き上げられただけですわ」
「カーネリアンさん怖かった…っ」
「次期辺境侯ですからね、お父様は戦闘派ですけどリアン兄様は違いますから。あの笑顔は私も時折…、ええ。」
「ひぇぇ」
相当リアン兄様達が怖かったようで、ぐったりとしているアレク様に労いの意味を籠めた微笑みを向けると、逆に余計に怯えてました。簡単に御されているようでチョロイアレク様が、ちょっとだけ心配です。
陛下は宰相様の言葉を本気にしていなかった事が、せめてもの救いかもしれませんわね。宰相に全面同意されていたら、フローライト家は独立宣言してたかもしれませんもの。アレク様を人質にするのも厭いません。
だからと言って、本気にされなかったからって、第一王子に無い事無い事吹き込む宰相様も、如何な者かと思いますけどね。
(乙女ゲームって、そんなに屑な内容でしたかしら?)
自分は公爵なのに、ジークフリート侯爵家の莫大な資産や領民の人気が憎らしいから、第一王子の幼馴染みとして登城して遊び相手をしていた、イオフィエル嬢を取り上げて第二王子の婚約者にするとか、辺境の地に追いやって果ての無い魔物討伐ばかりの日々にしたにも関わらず、その素材や魔石などの副産物で領地が豊かな上に領民からの人望厚く、有能な冒険者を輩出するフローライト領が目障りとか。
全く持って、自分勝手な宰相様ですわよね。
「ジークフリート家は隣国とも交易を通じて友好な関係を作っているから、俺の母上とも親交が深いんだ。その関係でイオフィエル嬢が俺の遊び相手として兄妹で選ばれたんだ」
「イオフィエル嬢は令嬢としてもかなり優秀ですからね、我が家とは教育からして違いますわ」
侯爵家と辺境侯爵家は、実は領地が隣り合っているのです。地図でざっくり言えば、南側にジークフリード家北側にフローライト家その上に黒の森を挟んでの隣国です。
ですので、同じ年のイオフィエルとはお茶会に呼び合う仲ですし、イオフィエルのお兄様もルシアン兄様と同じ年なので、学園で仲良くしているようです。
「イーフィは笑顔が可愛くておっとりしていて、少しドジってイメージだな。直ぐに転んで泣き出すとか」
「何だその萌え属性。しかも婚約者の前で他の令嬢褒めるとか、駆逐がお望みですの?」
「同意じゃねーの!?というかごめんなさい!!」
「おっとりは同意しますけど、ドジなのは違いますわよ?第一王子が振り回して連れまわすから、着いていけなくて転んでいたのですわ。イーフィはしっかり者ですから」
「まさかの俺の所為!?」
昔、精霊使いとしての術を使うのが楽しくて仕方なかった時に、こっそりイーフィのステータスを見た事があったんですよね。私は精霊使いとしてのレベルが上でしたが、令嬢としてはイーフィの方が断然上でした。その時でコレですもの。
*******************
【名前】イオフィエル・ステラ=ジークフリード
【種族】人族
【年齢】五歳
【職種/レベル】
・侯爵令嬢 Lv 15
・舞踊 Lv 10
・刺繍 Lv 10
・マナー Lv 15
【スキル】
・なし
【称号】
・王子の幼馴染み
*********************
(畑仕事とか調合をするような令嬢なんて、早々いませんからね。自業自得ですわね)
令嬢レベルの低さに項垂れたのも、お約束ですよね。私のは器用貧乏な感じがしますわ。ついでにアレク様も見てみようかしら?精霊の腕輪にオウガの石がセットされているのをこっそりと確認し、クオン達と遊んでいるオウガを呼び寄せました。
(オウガ、鑑定眼発動。目の前のアレク様にお願い)
『んなー』
*********************
【名前】アレクシス=ガーデンクォーツ
【種族】人族
【年齢】十歳
【職種/レベル】
・王子Lv 5
【スキル】
・言語学 Lv5
・政治 Lv3
・舞踊 Lv5
・マナー Lv2
【称号】
・転生者
・ガーデンクォーツ王国第一王子
*********************
「ひっく!」
「え?何?急に」
「いえ、申し訳ありません。思わず声に出てしまったようですわ」
コレで王子様ってのは駄目でしょう!?これは暫くフローライト家で指導しなくてはいけませんわね。お父様とリアン兄様に泣きついてでも、我が家に最低一年は滞在させないといけませんわ。
「セラフィナさん?今、なんだか背中に悪寒が…」
「まぁ、風邪がぶり返しましたかしら?いけませんわ。ルビィ!アレク様のお部屋の仕度をお願い。しっかりと完治するまで、フローライト家でお世話させていただきますわ」
「え?何でそんな展開になるの?え、ちょっと!?」
逃げたそうに戸惑うアレク様の首根っこをしっかりと確保し、腹に黒い何かを含んだ笑みを浮かべて屋敷の中へと向かいました。
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