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第一章
んじゃ、お望み通りにしてやるよ 9
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「話せ」
シンの容赦ない命令が、男を促した。男はガチガチと奥歯を鳴らしながら、レイヴンへの罰について話し始めた。
「こ、この地は、大昔から……不思議な力を使う聖女が生まれる唯一の村で……聖女が女だった時は、とても……とても栄えていたというんだ。俺の爺ちゃんの、その前の、前の、前の……うんと前のことだ。それが、それが……ある時、男の聖女が生まれ、この村は迫害されるようになった……その聖女が大昔にっ、村を燃やしやがったと……! ちょっとやそっとの火じゃない。燃え上がる炎は、この村だけで終わらず……隣近所の村も巻き込むほどだったという……落とし前は必要だ……だから、その聖女を殺した。殺したのに……! それ以降も生まれてくるのは男ばかり……こんなの不吉以外の何ものでもねえ……それで皆で話し、決めたんだ……男の聖女が生まれたら、罰を下す……! 男としての尊厳を奪う為に、レイヴンを……聖女を穢す……! それがこの村の、昔からの慣わしだ……だから、だから、男で聖女の力を持つそいつは……レイヴンは、責任をとらなくちゃあならないっ……こんな貧困の村にしやがった、レイヴンには……!」
シンは最後まで黙って聞いていた。レイヴンも同様に、男から明かされる自身の罪に顔を伏せていた。
突如として掘り起こされたレイヴンの記憶の中には、燃え上がる炎を見つめる自分の姿があった。轟々と燃える炎はとても熱く、喉の奥が焼けるような痛みを感じた。まるで今しがたそれを体験したかのように、鮮明に残っている。
転生が始まったのはそれからだ。村の人々は知らずとも、奇しくも村を燃やした本人が罰を受け続けている。これが別の誰かであったなら、理不尽な罰に歯向かうこともあっただろうが、罪の意識があるレイヴンには受け入れるしか術がなかった。
自分の犯した罪を聞いて、シンは何と思っただろう。抱き上げられたこの身体を、今すぐ落とされてもおかしくない。レイヴンはおずおずと顔を見上げた。
そこには、げんなりとした様子のシンの顔があった。
「燃やされて当然だろ。こんな村」
「えっ……?」
思わず声が上がってしまったのは、レイヴンだけではなかった。シンのまさかの反応に、明かした男本人と、その場にいる誰もが目を丸くさせた。
「なん……なんで……なんでだよ……だって、そいつは……そいつが、村を……」
「もう少し、まともな意見が聞けるのかと思いきや……何だ、そのクソみてえな理由は。ただ自分達の現状を嘆いて、寄ってたかって一人に八つ当たりをしているだけじゃねえか」
「や、八つ当たり、だと……?」
「口を挟むな」
「むぐうっ!」
見えない力が男の唇を真一文字にさせる。
シンは盛大に嘆息した後、指を僅かに動かした。同時に、小屋の屋根、壁がすべて吹き飛ぶように破壊された。ゴウッと勢いよく入り込むは夜の風だ。凍てつくほどの冷気が流れるように男達の隙間を縫っていく。
暖炉の炎も消え、辺りが暗澹とした闇に包まれた。
シンの容赦ない命令が、男を促した。男はガチガチと奥歯を鳴らしながら、レイヴンへの罰について話し始めた。
「こ、この地は、大昔から……不思議な力を使う聖女が生まれる唯一の村で……聖女が女だった時は、とても……とても栄えていたというんだ。俺の爺ちゃんの、その前の、前の、前の……うんと前のことだ。それが、それが……ある時、男の聖女が生まれ、この村は迫害されるようになった……その聖女が大昔にっ、村を燃やしやがったと……! ちょっとやそっとの火じゃない。燃え上がる炎は、この村だけで終わらず……隣近所の村も巻き込むほどだったという……落とし前は必要だ……だから、その聖女を殺した。殺したのに……! それ以降も生まれてくるのは男ばかり……こんなの不吉以外の何ものでもねえ……それで皆で話し、決めたんだ……男の聖女が生まれたら、罰を下す……! 男としての尊厳を奪う為に、レイヴンを……聖女を穢す……! それがこの村の、昔からの慣わしだ……だから、だから、男で聖女の力を持つそいつは……レイヴンは、責任をとらなくちゃあならないっ……こんな貧困の村にしやがった、レイヴンには……!」
シンは最後まで黙って聞いていた。レイヴンも同様に、男から明かされる自身の罪に顔を伏せていた。
突如として掘り起こされたレイヴンの記憶の中には、燃え上がる炎を見つめる自分の姿があった。轟々と燃える炎はとても熱く、喉の奥が焼けるような痛みを感じた。まるで今しがたそれを体験したかのように、鮮明に残っている。
転生が始まったのはそれからだ。村の人々は知らずとも、奇しくも村を燃やした本人が罰を受け続けている。これが別の誰かであったなら、理不尽な罰に歯向かうこともあっただろうが、罪の意識があるレイヴンには受け入れるしか術がなかった。
自分の犯した罪を聞いて、シンは何と思っただろう。抱き上げられたこの身体を、今すぐ落とされてもおかしくない。レイヴンはおずおずと顔を見上げた。
そこには、げんなりとした様子のシンの顔があった。
「燃やされて当然だろ。こんな村」
「えっ……?」
思わず声が上がってしまったのは、レイヴンだけではなかった。シンのまさかの反応に、明かした男本人と、その場にいる誰もが目を丸くさせた。
「なん……なんで……なんでだよ……だって、そいつは……そいつが、村を……」
「もう少し、まともな意見が聞けるのかと思いきや……何だ、そのクソみてえな理由は。ただ自分達の現状を嘆いて、寄ってたかって一人に八つ当たりをしているだけじゃねえか」
「や、八つ当たり、だと……?」
「口を挟むな」
「むぐうっ!」
見えない力が男の唇を真一文字にさせる。
シンは盛大に嘆息した後、指を僅かに動かした。同時に、小屋の屋根、壁がすべて吹き飛ぶように破壊された。ゴウッと勢いよく入り込むは夜の風だ。凍てつくほどの冷気が流れるように男達の隙間を縫っていく。
暖炉の炎も消え、辺りが暗澹とした闇に包まれた。
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西条ネア
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