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第一章

んじゃ、お望み通りにしてやるよ 3(☆)

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(ガキ共……? そうか。この人達、あの場にいた他の子供達の親か)

 鳩尾を蹴った男が苦しみ喘ぐレイヴンの髪を掴んで、無理やり身体を起こした。痛苦に顔を歪めるレイヴンだが、喘鳴と共にこの数日間の嘘を口にする。

「そ……それ、は……た、体調が……ぅ……悪く、て……奥さん、に……つ、伝えて……あっ……て……」

 もしかしたら、村の女から男の方に伝わっていなかったのかもしれないと弁明を付け加えるものの、それは耳に入らないのか、男はレイヴンに向かって能面のような笑みを貼り付けた。

「そーか、そーか。奇遇だなぁ。ここにいる俺達もなぁ、体調が悪かったんだよ。お前を甚振ることができなくてなぁ!」

 そして他の男二人がレイヴンの両腕を捕らえると、そのまま引き摺るように身体を起こして歩かせた。

 まさかこのまま、山を下るのだろうか。では山を下った先は? その先に待ち受けるものなど一つしかない。顔からサッと血の気が引いていくのがわかったレイヴンは、踵に重心をかけた。

「やっ……待って……待って、くださいっ……! せめて……せめてあと二日……」

「うるせぇなあ!!」

「うぐっ……!」

 怒号と共に、首を絞められたレイヴンは、言いかけた言葉を強制的に飲み込んだ。飲み込まざるを得なかった。

 目の前の男の激しい憤怒の形相は、まるで幼い頃に聞かされた鬼のようだと思った。

「てめぇに拒否権なんてねえんだよ! いいから、黙って罰を受けろ!」

 パクパクと口を開閉させるレイヴンからは、返事ではなく唾液が漏れる。それを微塵も気にする様子のない両隣の男が、喘ぐレイヴンをせせら笑った。

「こいつ、自分が罪人だっていう自覚が足りないんじゃねえの?」

「違いねえ。村にいる男共、全員に声を掛けるぞ。この聖女様の曲がった性根を叩き直してやろうぜ!」

 殺す気はないのか、男はパッと手を離し再び先頭を歩き出した。

 酸欠となり気を失ったレイヴンは、男二人によってそのままズルズルと引き摺られていった。村の男の平均的な体重よりうんと下回るレイヴンではあるものの、気絶した人間を運ぶことは用意ではない。重くて気が立ったのか、それとも気を失うことが気に入らないのか、腕を抱える男の一人が苛立たしげに彼の頬を叩いた。

「チッ! 早く目を覚ませよ!」

「いっ……!」

「おいおい、顔は傷つけるな、顔は! 萎えるだろうが!」

「だってよぉ、腹立つじゃねえか! 罰を受けるやつが呑気に寝てるなんてよぉ!」

 気がつくと、男達が言い争いをしていた。頭、顔、鳩尾、脚、とにかく全身に痛みが走るレイヴンは、だらんと首を落としていたものの、もう一人の男の言葉によって改めて己の本分を思い知らされた。

「そもそも聖女なんてもんがいなけりゃ、この村だって飢えに苦しむこともなかったってのに……こんな、こんなやつがのうのうと生きてやがるなんて……許せねえ!」

「……っ……ご、めん……なさ……むぐっ!?」

 ついて出た言葉だった。今の自分を苦しめるのはこの男達だが、大昔の罪によって彼らを苦しめているのは他ならない自分なのだ。

 そんな謝罪の言葉も……いや、言葉だからこそ聞き入れられないのか、レイヴンの口は先頭の男の手によって塞がれた。

「だから、口を開くなってんだ。いっそここでヤってやろうか?」

「……っ!」

 レイヴンは首を左右に振った。恐怖に怯えるその様を見て、気を良くした男は掴んだ手をそのままに、レイヴンの顔を持ち上げた。

「よしよし、いい子だぁ。そんないい子にはちゃ~んと油を使ってやるからなぁ。嫌だよなぁ。痛ぇのは、よ」

「…………っ」

 そうしてレイヴンは、男達が彼を罰する為の根城とする小屋へと連れて行かれた。逃げられないよう柱に括られる形で縄で縛られ、他の男達が集まるまで放置された。

 日が暮れる前、彼らは早めの食事を済ませた後、そこへ集まった。ぞろぞろと小屋へ入った男達は、暖炉に火を放ちつつ、舌舐めずりをしながら着ている服を脱ぎ出した。

 まるで凶器のような無数の雄の象徴が、その猛々しい様をレイヴンへと向ける。

「さあ、数日分の報いだ。たっぷり可愛がってやるからな。覚悟しろよ? レイヴン」
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