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第一章

聖なる力の秘密 4

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 すると、その様子を見ていたシンが……

「で、レイヴンが混ぜたのは薬? それとも毒?」

「え……?」

「これと一緒に何かを混ぜただろう?」

 と、笑みを浮かべながら、レイヴンの行動について問いかけた。心臓がきゅっと掴まれたような気がして、レイヴンは言葉を詰まらせる。

「そ、それは……えと…………は、蜂蜜……です」

「蜂蜜だけ?」

「う……」

 見られていた? レイヴンは逃げるように俯き、口を噤んだ。

 血を混ぜている間、シンの視線は彼の手元にあったはずなのに、あたかもこちらの様子を始終見ていたかのような口振りだ。

「そういや昨日も、口の中に何かを入れられたな……」

 続けられたその言葉に、レイヴンの心臓はさらに強く締めつけられる。

 気を失っていたのだから気づくはずがないと、高を括っていた。しかし、黙っていてはシンがそれを飲むことはない。

 正直に告白しようにも、きっと信じてはくれないだろう。万が一シンが信じたとしても、その後に自分を見る目が変わるかもしれない。最悪の場合、村の外へそれが知れ渡ってしまう。

 かといって、血を入れたという事実だけを告げたとなれば、さすがのシンも憤慨して乳を捨ててしまうかもしれない。

「その……」

 いったい何が正解なのかとレイヴンが考え倦ねていると、シンは意外にもそれ以上は問い質すことなく、

「まあ、どっちでもいいんだけど」

 と、カップに口をつけてゴクゴクと喉を鳴らしながらそれを飲み干した。

 ポカンと口を開けてその様子を見つめるレイヴンは、シンがカップから口を離すなり尋ねた。

「な、何で……飲んだんですか……?」

「何でって……レイヴンがくれたからだけど?」

 けろりと返すシンに、レイヴンには妙な罪悪感が生まれた。自身のカップを握りながら、おずおずと味の感想を尋ねる。

「不味くなかった……ですか?」

「そうだな……匂いは独特だけど、これはこれで美味かったよ。蜂蜜が入っていたから甘みもあった。ごちそうさま。ありがとな」

 空になったカップを返され、レイヴンはそれを受け取りながらシンに向かって頭を下げた。

「ごめんなさい……」

 そして、レイヴンはカップの中に入れたものについて、正直に答えたのだ。

「それ……僕の血を、混ぜました……」

「ああ、血か」

 シンは驚くでもなく、納得したようにうんうんと頷きながら、レイヴンへと聞き返した。

「オレから血が流れたからってわけじゃないな? どうして?」

「えっと……信じられないかも、しれないけれど……」

 促され、その後に自然と言葉が続いたのは、相手がシンだからだろう。外見からして自身とさほど変わらないような年齢に見える彼は、父のような度量の広さを感じていた。

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