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突撃! 新婚さんの晩御飯 【廻 side】
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ーーーー…
『あれ? 君、こんなところで何してるの? 迷子?』
初めて会った時、私は金色の天使に会ったんだと思った。
それが怖くて怖くてたまらなかった時に現れたせいなのかはわからない。でも、不安でいっぱいだったその時に目にした彼は、私の心を救ってくれた。
他人に触れるどころか、口を開くことすらもできなかった時に、彼は私の手を引いて、そこから助け出してくれた。
初恋の人は、長い金髪にアメジストの瞳を持っていた。女の子だと思っていただけに、ああ私はやっぱり同性の子にしか興味がないんだって思った。男の人を好きになることなんてできないんだって。でも、彼は男の人で、初めて心を開くことの出来た異性だった。
そうだって知った時、私も男の人を好きになることが出来るんだって嬉しくなった。彼ならいいって心から思うことができた。
だから、そんな彼が他の男の腕の中にいたところを目にした時、嫉妬した。そして、同時に……
「……」
書斎の前に着いた。あの人は、ここにいるらしい。
柳と一緒に楽しく夕食の手伝いをしていたけど、少しだけ抜けさせてもらった。二人だけの貴重な時間だったけれど、これを逃せばたぶん、あの男の人と二人きりになることなんてもう二度とないと思ったから。
スッと短く息を吸って、覚悟を決めてノックをする。しばらくすると、「はい」と短い返事があった。
「牧村廻です。少しだけ、お話があります」
「どうぞ」
もしかしたら駄目かもしれない。そう思っていただけに、間髪入れることなく返ってきた返事に不安になる。男の人は苦手だ。昔、誘拐や拉致、痴漢なんかに遭ったせいで、男の人が全て同じように見えてしまうから。
でも、これは一人でなくちゃ意味がない。他の人間がいる前では頼めないことなんだから。
私は書斎のドアノブに手をかけた。カチャリと控えめに開くと、その先にはあの赤い髪の男の人が書斎机の上にあるパソコンを前にして椅子に座っていた。仕事をしていると聞いていたから、話は短めにしなければ……。私は部屋に上がらせてもらうと、ドア近くで立たせてもらう。
整然とされた部屋だった。書斎とだけあって、様々な本が並んでいる。リビングにあったような漫画や雑誌なんかはない。経済、経営に関する本や、専門的な医学書なんかも揃えてあった。
近くのソファに腰掛けるよう勧められたけど、私は首を横に振って断った。この男の人が、私を特に気にしているわけではないと知っていても、私には抵抗があったから。
赤い人は依然座ったまま、私の方に身体を向けると、「何の用ですか?」と、特に表情を変えることなく尋ねてきた。
ああ。この人は、本当に柳にしか興味がないんだなって。そう思えるような目をしていた。私は少しだけ気持ちが軽くなったのがわかると、この人の目を真っ直ぐに見据えた。
「貴方に、言いたいことがあります」
「何です?」
「私は、女の子が好きです」
「……」
唐突なカミングアウト。普通なら、ここで何を言ってるんだ? って顔をされるところだけれど、この人は表情も変えなかったし、何も言わなかった。
良かったと思いながら、私はカミングアウトを続ける。
「男の人が苦手です。正直、貴方とこうして二人きりでいるのも、鳥肌が立ってしまうし嫌悪すら感じる。ここからすぐにでも、逃げ出したい気持ちでいっぱいです」
「……」
失礼なことを言っているのもわかっている。けれど、どうしようもなかった。
心の中で、この人は大丈夫だろうとわかってはいても、身体の方が拒んでしまう。いまだに、仲の良くなった葉月や真実ですら、手を繋ぐことですら拒んでしまうのだから。
その点、女の子なら大丈夫。嫌悪感も抱かないし、お話すると楽しいし、触れることだってできる。だから、私は女の子が好きな人間なんだって思ってた。将来、結婚が難しい人間になるんじゃないかって思ってた。
どころか、そんな人間の私を受け入れられる人間はいないって、そう思ってた。
「でも、柳はそんな私を、偏見の目で見ることなく、受け入れてくれました」
初めてだった。こんな私を、気持ち悪いって目で見ることなく、受け入れてくれた人は。そしてこんな私の話を全部聞いてくれて、受け入れてくれたのは柳が初めてだった。
一人ぼっちで悩んでいた私を救ってくれたのは、柳だった。
『あれ? 君、こんなところで何してるの? 迷子?』
初めて会った時、私は金色の天使に会ったんだと思った。
それが怖くて怖くてたまらなかった時に現れたせいなのかはわからない。でも、不安でいっぱいだったその時に目にした彼は、私の心を救ってくれた。
他人に触れるどころか、口を開くことすらもできなかった時に、彼は私の手を引いて、そこから助け出してくれた。
初恋の人は、長い金髪にアメジストの瞳を持っていた。女の子だと思っていただけに、ああ私はやっぱり同性の子にしか興味がないんだって思った。男の人を好きになることなんてできないんだって。でも、彼は男の人で、初めて心を開くことの出来た異性だった。
そうだって知った時、私も男の人を好きになることが出来るんだって嬉しくなった。彼ならいいって心から思うことができた。
だから、そんな彼が他の男の腕の中にいたところを目にした時、嫉妬した。そして、同時に……
「……」
書斎の前に着いた。あの人は、ここにいるらしい。
柳と一緒に楽しく夕食の手伝いをしていたけど、少しだけ抜けさせてもらった。二人だけの貴重な時間だったけれど、これを逃せばたぶん、あの男の人と二人きりになることなんてもう二度とないと思ったから。
スッと短く息を吸って、覚悟を決めてノックをする。しばらくすると、「はい」と短い返事があった。
「牧村廻です。少しだけ、お話があります」
「どうぞ」
もしかしたら駄目かもしれない。そう思っていただけに、間髪入れることなく返ってきた返事に不安になる。男の人は苦手だ。昔、誘拐や拉致、痴漢なんかに遭ったせいで、男の人が全て同じように見えてしまうから。
でも、これは一人でなくちゃ意味がない。他の人間がいる前では頼めないことなんだから。
私は書斎のドアノブに手をかけた。カチャリと控えめに開くと、その先にはあの赤い髪の男の人が書斎机の上にあるパソコンを前にして椅子に座っていた。仕事をしていると聞いていたから、話は短めにしなければ……。私は部屋に上がらせてもらうと、ドア近くで立たせてもらう。
整然とされた部屋だった。書斎とだけあって、様々な本が並んでいる。リビングにあったような漫画や雑誌なんかはない。経済、経営に関する本や、専門的な医学書なんかも揃えてあった。
近くのソファに腰掛けるよう勧められたけど、私は首を横に振って断った。この男の人が、私を特に気にしているわけではないと知っていても、私には抵抗があったから。
赤い人は依然座ったまま、私の方に身体を向けると、「何の用ですか?」と、特に表情を変えることなく尋ねてきた。
ああ。この人は、本当に柳にしか興味がないんだなって。そう思えるような目をしていた。私は少しだけ気持ちが軽くなったのがわかると、この人の目を真っ直ぐに見据えた。
「貴方に、言いたいことがあります」
「何です?」
「私は、女の子が好きです」
「……」
唐突なカミングアウト。普通なら、ここで何を言ってるんだ? って顔をされるところだけれど、この人は表情も変えなかったし、何も言わなかった。
良かったと思いながら、私はカミングアウトを続ける。
「男の人が苦手です。正直、貴方とこうして二人きりでいるのも、鳥肌が立ってしまうし嫌悪すら感じる。ここからすぐにでも、逃げ出したい気持ちでいっぱいです」
「……」
失礼なことを言っているのもわかっている。けれど、どうしようもなかった。
心の中で、この人は大丈夫だろうとわかってはいても、身体の方が拒んでしまう。いまだに、仲の良くなった葉月や真実ですら、手を繋ぐことですら拒んでしまうのだから。
その点、女の子なら大丈夫。嫌悪感も抱かないし、お話すると楽しいし、触れることだってできる。だから、私は女の子が好きな人間なんだって思ってた。将来、結婚が難しい人間になるんじゃないかって思ってた。
どころか、そんな人間の私を受け入れられる人間はいないって、そう思ってた。
「でも、柳はそんな私を、偏見の目で見ることなく、受け入れてくれました」
初めてだった。こんな私を、気持ち悪いって目で見ることなく、受け入れてくれた人は。そしてこんな私の話を全部聞いてくれて、受け入れてくれたのは柳が初めてだった。
一人ぼっちで悩んでいた私を救ってくれたのは、柳だった。
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