124 / 241
突撃! 新婚さんの晩御飯
3
しおりを挟む
みんなが温かいお茶で喉を潤したところで、まずは葉月から、海さんに向かっての質問が始まった。
「単刀直入に聞くけど、アンタは柳のこと、どこまで知っているの?」
「……」
葉月がじっと見つめる先は海さんの顔。いつもの眠たそうな目とはやや違う、鋭さも窺えるキツい目つき。それが海さんにはどう映っているのかはわからないけれど、当の海さんはと言うと……。
「海さん」
「ん? どうしましたか?」
「どうして僕の方をじっと見てるの?」
対面には、僕の四人のお友達がいるわけなんだけど、海さんはなぜか、隣にいる僕の方を見つめている。ついでとばかりに、僕の髪の毛を一房摘まんで、指に絡ませながらくるくると遊んでいたりもする。二人でいる時は大抵いつもこんな感じだけど、今は二人きりじゃないからね。葉月達が見てるし、聞いてるからね。
だけど、海さんは答えなんか決まってると言わんばかりに微笑んで。
「そんなこと……貴方にしか興味がないからに決まっています」
「「はあ!?」」
唐突に、噛みつかんばかりに立ちあがって声を上げたのは真実だった。や、僕もびっくりしたけどね。びっくりしたんだけども、みんなの方がびっくりしてるっぽい。葉月の眉間にはこれでもかってくらい皺が寄ってるし、無表情で色の白い廻の顔なんか桃の様にピンク色になってるし。
こめかみに怒りマークがついちゃった四人を前にしても、海さんは気にした様子なんか微塵もなく、変わらず僕をまっすぐ見ている。そんな海さんに、葉月は何かを堪える様に、重々しく口を開いた。
「結構真面目な話、しにきてるんだ。いくら大人でもふざけないでほしいんだけど……」
「……」
その震えるような声から、葉月は今にも怒りそうになってるのを、懸命に抑えているのがわかる。長年の付き合いでわかるよ。今の葉月、ものすご~く怒ってる。
そんでもって、その葉月よりも先にいっちゃいそうなのが……。
「ちょっとコイツ……マジでムカつくんだけど」
「柳の同居人だろうがなんだろうが、ムカつくもんはムカつくよなぁ?」
「まぁまぁ。真、それから実も落ちついて、ね?」
どうどう。二人の前に両手を翳して、なんとかソファに座ってもらう。「「だって~」」と言ってごねてたけど、渋々と言った様子で抑えてくれた。そしてそれは、葉月と廻も同様だ。
こりゃ、お話以前の問題だね。
まさかここでつまずくとは思っていなかったよ。僕のお友達といえど、お客さまの前で相変わらずな海さんの態度も良くないけれど、元々は僕が悪いんだよね。
自己紹介。初めての人と初めての人が会う時は、きちんとしなければならない挨拶を、海さんと葉月達はまだ済ませていなかった。本来なら、彼らを知っている僕がちゃんと紹介をしなくちゃいけないのに、やって来たみんなの勢いに飲まれておざなりにしちゃったからね。
オホン、とわざとらしくも大げさな咳払いをした僕は、まずは自分から簡単に自己紹介を始めた。
「改めてこんにちは。僕は紫瞠柳です。今はこちらの紫瞠海さんと一緒に暮らしています。特技は美味しいマドレーヌとフィナンシェを焼くことです」
もちろん、すでにみんなが知っていることだよ。仰々しいよね。でもね、挨拶は人として大事なことだし、自己紹介や自分のアピールって、その人の印象を決めるでしょ? 僕は海さんもみんなも大好きだから、ちゃんと知ってもらいたいんだ。
「海さん。こちらは僕の大事なお友達です。左から、牧村廻さん、片岡葉月さん、橘真さん、それから橘実さんです。みんな、こちらは僕の旦那さまの紫瞠海さんです」
自分の紹介が終わったところで、今度は海さん、そして葉月達に向けて、紹介を交互に行った。簡単だけどそれでいい。後は彼らが自分から挨拶をする番だから。
「単刀直入に聞くけど、アンタは柳のこと、どこまで知っているの?」
「……」
葉月がじっと見つめる先は海さんの顔。いつもの眠たそうな目とはやや違う、鋭さも窺えるキツい目つき。それが海さんにはどう映っているのかはわからないけれど、当の海さんはと言うと……。
「海さん」
「ん? どうしましたか?」
「どうして僕の方をじっと見てるの?」
対面には、僕の四人のお友達がいるわけなんだけど、海さんはなぜか、隣にいる僕の方を見つめている。ついでとばかりに、僕の髪の毛を一房摘まんで、指に絡ませながらくるくると遊んでいたりもする。二人でいる時は大抵いつもこんな感じだけど、今は二人きりじゃないからね。葉月達が見てるし、聞いてるからね。
だけど、海さんは答えなんか決まってると言わんばかりに微笑んで。
「そんなこと……貴方にしか興味がないからに決まっています」
「「はあ!?」」
唐突に、噛みつかんばかりに立ちあがって声を上げたのは真実だった。や、僕もびっくりしたけどね。びっくりしたんだけども、みんなの方がびっくりしてるっぽい。葉月の眉間にはこれでもかってくらい皺が寄ってるし、無表情で色の白い廻の顔なんか桃の様にピンク色になってるし。
こめかみに怒りマークがついちゃった四人を前にしても、海さんは気にした様子なんか微塵もなく、変わらず僕をまっすぐ見ている。そんな海さんに、葉月は何かを堪える様に、重々しく口を開いた。
「結構真面目な話、しにきてるんだ。いくら大人でもふざけないでほしいんだけど……」
「……」
その震えるような声から、葉月は今にも怒りそうになってるのを、懸命に抑えているのがわかる。長年の付き合いでわかるよ。今の葉月、ものすご~く怒ってる。
そんでもって、その葉月よりも先にいっちゃいそうなのが……。
「ちょっとコイツ……マジでムカつくんだけど」
「柳の同居人だろうがなんだろうが、ムカつくもんはムカつくよなぁ?」
「まぁまぁ。真、それから実も落ちついて、ね?」
どうどう。二人の前に両手を翳して、なんとかソファに座ってもらう。「「だって~」」と言ってごねてたけど、渋々と言った様子で抑えてくれた。そしてそれは、葉月と廻も同様だ。
こりゃ、お話以前の問題だね。
まさかここでつまずくとは思っていなかったよ。僕のお友達といえど、お客さまの前で相変わらずな海さんの態度も良くないけれど、元々は僕が悪いんだよね。
自己紹介。初めての人と初めての人が会う時は、きちんとしなければならない挨拶を、海さんと葉月達はまだ済ませていなかった。本来なら、彼らを知っている僕がちゃんと紹介をしなくちゃいけないのに、やって来たみんなの勢いに飲まれておざなりにしちゃったからね。
オホン、とわざとらしくも大げさな咳払いをした僕は、まずは自分から簡単に自己紹介を始めた。
「改めてこんにちは。僕は紫瞠柳です。今はこちらの紫瞠海さんと一緒に暮らしています。特技は美味しいマドレーヌとフィナンシェを焼くことです」
もちろん、すでにみんなが知っていることだよ。仰々しいよね。でもね、挨拶は人として大事なことだし、自己紹介や自分のアピールって、その人の印象を決めるでしょ? 僕は海さんもみんなも大好きだから、ちゃんと知ってもらいたいんだ。
「海さん。こちらは僕の大事なお友達です。左から、牧村廻さん、片岡葉月さん、橘真さん、それから橘実さんです。みんな、こちらは僕の旦那さまの紫瞠海さんです」
自分の紹介が終わったところで、今度は海さん、そして葉月達に向けて、紹介を交互に行った。簡単だけどそれでいい。後は彼らが自分から挨拶をする番だから。
0
お気に入りに追加
575
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
スキル『日常動作』は最強です ゴミスキルとバカにされましたが、実は超万能でした
メイ(旧名:Mei)
ファンタジー
この度、書籍化が決定しました!
1巻 2020年9月20日〜
2巻 2021年10月20日〜
3巻 2022年6月22日〜
これもご愛読くださっている皆様のお蔭です! ありがとうございます!
発売日に関しましては9月下旬頃になります。
題名も多少変わりましたのでここに旧題を書いておきます。
旧題:スキル『日常動作』は最強です~ゴミスキルだと思ったら、実は超万能スキルでした~
なお、書籍の方ではweb版の設定を変更したところもありますので詳しくは設定資料の章をご覧ください(※こちらについては、まだあげていませんので、のちほどあげます)。
────────────────────────────
主人公レクスは、12歳の誕生日を迎えた。12歳の誕生日を迎えた子供は適正検査を受けることになっていた。ステータスとは、自分の一生を左右するほど大切であり、それによって将来がほとんど決められてしまうのだ。
とうとうレクスの順番が来て、適正検査を受けたが、ステータスは子供の中で一番最弱、職業は無職、スキルは『日常動作』たった一つのみ。挙げ句、レクスははした金を持たされ、村から追放されてしまう。
これは、貧弱と蔑まれた少年が最強へと成り上がる物語。
※カクヨム、なろうでも投稿しています。
乙女ゲーム?悪役令嬢?王子なんて喜んで差し上げます!ストーカーな婚約者など要りません!
愛早さくら
恋愛
リジーは公爵令嬢だ。当然のように幼い頃から、同じ年の王太子スペリアの婚約者だった。
よくある政略結婚。
しかしリジーは出来ればスペリアから逃れたいと思っていた。何故なら……――スペリアがリジーの、とんでもないストーカーだったからだった……。
愛が重いを通り越して明確にストーカーな婚約者スペリアから逃れたいリジーの的外れな暗躍と、それを凌駕するスペリアのストーカー力!
勝つのはどっちか?
今、滑稽な戦いが幕を開ける……!
・キャプションには語弊があります。
・基本的にはコメディベースの明るい印象のお話にするつもりです!
・地味に他の異世界話と同じ世界観。
・魔法とかある異世界が舞台。
・CPは固定です。他のキャラとくっつくことはありません。
・当て馬イッパイぱらだいす。
・主人公は結局ストーカーからは逃れられませんが多分ハッピーエンド。
30年待たされた異世界転移
明之 想
ファンタジー
気づけば異世界にいた10歳のぼく。
「こちらの手違いかぁ。申し訳ないけど、さっさと帰ってもらわないといけないね」
こうして、ぼくの最初の異世界転移はあっけなく終わってしまった。
右も左も分からず、何かを成し遂げるわけでもなく……。
でも、2度目があると確信していたぼくは、日本でひたすら努力を続けた。
あの日見た夢の続きを信じて。
ただ、ただ、異世界での冒険を夢見て!!
くじけそうになっても努力を続け。
そうして、30年が経過。
ついに2度目の異世界冒険の機会がやってきた。
しかも、20歳も若返った姿で。
異世界と日本の2つの世界で、
20年前に戻った俺の新たな冒険が始まる。
召喚されたけど要らないと言われたので旅に出ます。探さないでください。
udonlevel2
ファンタジー
修学旅行中に異世界召喚された教師、中園アツシと中園の生徒の姫島カナエと他3名の生徒達。
他の三人には国が欲しがる力があったようだが、中園と姫島のスキルは文字化けして読めなかった。
その為、城を追い出されるように金貨一人50枚を渡され外の世界に放り出されてしまう。
教え子であるカナエを守りながら異世界を生き抜かねばならないが、まずは見た目をこの世界の物に替えて二人は慎重に話し合いをし、冒険者を雇うか、奴隷を買うか悩む。
まずはこの世界を知らねばならないとして、奴隷市場に行き、明日殺処分だった虎獣人のシュウと、妹のナノを購入。
シュウとナノを購入した二人は、国を出て別の国へと移動する事となる。
★他サイトにも連載中です(カクヨム・なろう・ピクシブ)
中国でコピーされていたので自衛です。
「天安門事件」
闇を照らす愛
モカ
BL
いつも満たされていなかった。僕の中身は空っぽだ。
与えられていないから、与えることもできなくて。結局いつまで経っても満たされないまま。
どれほど渇望しても手に入らないから、手に入れることを諦めた。
抜け殻のままでも生きていけてしまう。…こんな意味のない人生は、早く終わらないかなぁ。
ある日愛する妻が何も告げずに家を出ていってしまった…
矢野りと
恋愛
ザイ・ガードナーは三年前に恋人のロアンナと婚姻を結んだ。将来有望な騎士の夫ザイと常に夫を支え家庭を明るく切り盛りする美人妻のロナは仲睦まじく周りからも羨ましがられるほどだった。
だがロナは義妹マリーの結婚式の翌日に突然家を家を出て行ってしまう。
夫であるザイに何も告げずに…。
必死になって愛する妻を探す夫はなぜ妻が出て行ってしまったかを徐々に知っていくことになるが…。
※この作品の設定は架空のものです。
※お話の内容があわないは時はそっと閉じてくださいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる