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突撃! 新婚さんの晩御飯

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 みんなが温かいお茶で喉を潤したところで、まずは葉月から、海さんに向かっての質問が始まった。

「単刀直入に聞くけど、アンタは柳のこと、どこまで知っているの?」

「……」

 葉月がじっと見つめる先は海さんの顔。いつもの眠たそうな目とはやや違う、鋭さも窺えるキツい目つき。それが海さんにはどう映っているのかはわからないけれど、当の海さんはと言うと……。

「海さん」

「ん? どうしましたか?」

「どうして僕の方をじっと見てるの?」

 対面には、僕の四人のお友達がいるわけなんだけど、海さんはなぜか、隣にいる僕の方を見つめている。ついでとばかりに、僕の髪の毛を一房摘まんで、指に絡ませながらくるくると遊んでいたりもする。二人でいる時は大抵いつもこんな感じだけど、今は二人きりじゃないからね。葉月達が見てるし、聞いてるからね。

 だけど、海さんは答えなんか決まってると言わんばかりに微笑んで。

「そんなこと……貴方にしか興味がないからに決まっています」

「「はあ!?」」

 唐突に、噛みつかんばかりに立ちあがって声を上げたのは真実だった。や、僕もびっくりしたけどね。びっくりしたんだけども、みんなの方がびっくりしてるっぽい。葉月の眉間にはこれでもかってくらい皺が寄ってるし、無表情で色の白い廻の顔なんか桃の様にピンク色になってるし。

 こめかみに怒りマークがついちゃった四人を前にしても、海さんは気にした様子なんか微塵もなく、変わらず僕をまっすぐ見ている。そんな海さんに、葉月は何かを堪える様に、重々しく口を開いた。

「結構真面目な話、しにきてるんだ。いくら大人でもふざけないでほしいんだけど……」

「……」

 その震えるような声から、葉月は今にも怒りそうになってるのを、懸命に抑えているのがわかる。長年の付き合いでわかるよ。今の葉月、ものすご~く怒ってる。

 そんでもって、その葉月よりも先にいっちゃいそうなのが……。

「ちょっとコイツ……マジでムカつくんだけど」

「柳の同居人だろうがなんだろうが、ムカつくもんはムカつくよなぁ?」

「まぁまぁ。真、それから実も落ちついて、ね?」

 どうどう。二人の前に両手を翳して、なんとかソファに座ってもらう。「「だって~」」と言ってごねてたけど、渋々と言った様子で抑えてくれた。そしてそれは、葉月と廻も同様だ。

 こりゃ、お話以前の問題だね。

 まさかここでつまずくとは思っていなかったよ。僕のお友達といえど、お客さまの前で相変わらずな海さんの態度も良くないけれど、元々は僕が悪いんだよね。

 自己紹介。初めての人と初めての人が会う時は、きちんとしなければならない挨拶を、海さんと葉月達はまだ済ませていなかった。本来なら、彼らを知っている僕がちゃんと紹介をしなくちゃいけないのに、やって来たみんなの勢いに飲まれておざなりにしちゃったからね。

 オホン、とわざとらしくも大げさな咳払いをした僕は、まずは自分から簡単に自己紹介を始めた。

「改めてこんにちは。僕は紫瞠柳です。今はこちらの紫瞠海さんと一緒に暮らしています。特技は美味しいマドレーヌとフィナンシェを焼くことです」

 もちろん、すでにみんなが知っていることだよ。仰々しいよね。でもね、挨拶は人として大事なことだし、自己紹介や自分のアピールって、その人の印象を決めるでしょ? 僕は海さんもみんなも大好きだから、ちゃんと知ってもらいたいんだ。

「海さん。こちらは僕の大事なお友達です。左から、牧村廻さん、片岡葉月さん、橘真さん、それから橘実さんです。みんな、こちらは僕の旦那さまの紫瞠海さんです」

 自分の紹介が終わったところで、今度は海さん、そして葉月達に向けて、紹介を交互に行った。簡単だけどそれでいい。後は彼らが自分から挨拶をする番だから。
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