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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】

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「前みたいに脱色してカラーリングするよりかは、ウィッグをつける方が髪へのダメージは軽減するけどね。黒髪の柳君も可愛いし、いつまでも彼の金髪にこだわるのは違うでしょ」

「そりゃ、そうですけど……」

「それに、僕は君の金髪の方が違和感あるよ? そろそろ黒に戻しても良いんじゃない?」

「……これは、気に入ってるから。いいんです」

 俺の金髪を言われた。ぶっちゃけ、俺が髪を染めたのは、柳が髪を染めなくなったことが悔しかったからだ。あんな事故の所為で柳の個性をブチ壊されたことが腹立たしかったから、俺はそれを忘れないようにするため、自分の髪を弄った。

 ぶっちゃけ、染めるの面倒だし、ブリーチは痛いし、変な虫が寄ってくるから、止めたい気持ちはあるんだが……。

 簡易的な腹の処置を終えると、淹れてもらったコーヒーに口をつける。ほっと一息をついたところで、神田先生からもらったファイルをバッグから取り出した。

「「それは?」」

「神田先生からもらった。中身、少しだけ確認したけど、ボランティアを必要としている地域のイベントとか、施設とかの情報が載ってる。あの先生の伝手、すげぇ広いな」

 若い頃に俺達と似たような活動をやってたんだろうか。そうでなきゃ、こんなにも多くの法人や団体と関われないだろう。

 そもそも、俺のようなちゃらんぽらんな人間がボランティアっていう言葉を知ったのは、柳と出会って間もなくの頃だった。元々、家が病院やってた関係で医療との関わりはあったけれど、俺自身は福祉っていう分野と密接に関わることがなかった。それが、彼を通して初めてボランティア活動に参加して……人との関わりってのを知って、興味を持ち始めた。初めて参加したのは、障害を抱えている人たちの施設で開催されるお祭り設営の支援だった。空き缶拾いのイメージしかなかったそれへの偏見がなくなったきっかけでもあった。

 他の奴らもそうだった。限られた世界の中で限られた交友関係の中で、狭く狭く生きてきたせいか、この世界がとてもつまらないものだと感じていた。視野の狭い人間になっていたんだよな。それをさ、柳を通してボランティア活動をしていって、初めて「こんな人たちもいるんだな」、「こんな世界もあるんだな」って知って。それまでモノクロに見えていた世界に色がつき始めていったんだ。

 ツインズがパラパラとファイルの中身を確認すると、「「ようやく、活動できるね~」」と表情を綻ばせる。チームが解散することはなかったが、「circus」は一時的に活動を停止していたからだ。

 それが、今回の柳の結婚騒動で俺達は再び動き出した。不良チームじゃなくとも、俺達は柳を中心に動いている。柳にとって危機的な状況が迫るとなれば、ただのボランティア団体ではなく、「circus」という一つのチームで動く。前に柳が生活していたあの真城にメンバー全員で乗り込んでやろうという意見も上がったけれど、それはさすがに止めなさいと大人の楠木さんに止められたから、不良的な動きは控えていたけれどな。

 ただ、再び「circus」で本来の活動を再開したいという思いは、ずっとあったんだ。

「神田先生も『circus』の後援になってくれたし、これでボランティア活動の幅も広がってくるかな。ミーティングもまめに行ってくし。その時は楠木さん、『ロワゾ』の提供、いつも通りお願いします」

「それはいいけど、柳君にちゃんとお話した? 皆のリーダーは柳君でしょ?」

「……」

 俺達は沈黙した。リーダーだの、ヘッドだのと認めているくせに、俺達は肝心な話を柳にしていない。どころか、そのリーダー抜きで事を進めようとしていることを、楠木さんは最初から良しとしていない。俺達はチームにあるまじき行動をしているのだ。

 神田先生にも言われて覚悟を決めた。柳とちゃんと話し合うことを。そのくせ、俺はいまだに踏み切れていない。今回のハプニングにかこつけて、切り出せずにいる。

 俺は黙ったまま頷くと、楠木さんは、いつになく厳しい口調で俺達に言った。

「本当は今日、話すつもりだったんでしょう? なら、今まで柳君抜きで準備をしていたことや隠していたこと、ちゃんと謝りなさい。それから、どうして黙ってたのか、その理由もお話しすること。一気に捲し立てちゃうと柳君も混乱しちゃうと思うから、そうだね……ここより彼の家でお話しした方が良いんじゃないかな。ほら、一度も会って話したことないんでしょ? 柳君の旦那さんとやらに」

 柳の旦那って単語が出た瞬間、ピクリと身体が強張った。しかし、楠木さんは畳みかけるように言葉を続ける。

「この場を提供している者として、僕には関係ないなんて言わせないよ。柳君を一度失った君たちならわかるよね? これ以上延ばしてしまうと、今度は違う意味で後悔することになるよ」

「……っ!」

 脅しのような言葉を俺達に浴びせる。これ以上ないってくらいの、恐い言葉を。

 だが、本当のことだ。俺達は柳を一度失っている。あの時ほど恐かったことはなかった。

 あれは、二年前の中学三年の……冬のことだった。

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