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ドキドキ? 学園生活♪ 【葉月 side】
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「そういえばさ! この学校の生徒会役員ってアイドルみたいだね。外の天幕で真実のブロマイドもたくさん売ってたよ。二人とも、中学の時からすでにモテモテだもんね」
柳が真実に向かってキラキラとした顔を向ける。純粋無垢ってやつかな。何も疑わず、こいつ等に羨望の眼差しを向けている。
そんな柳の顔に締まらない顔の二人がやっぱりキモかったけど……事実、この二人はモテる。とにかく昔から。それはある一方で羨むべき事だが、この二人はそうは思っていないだろう。周りから特別扱いされている廻同様、その目立つ容姿で散々な思いをしてきたのだろうから。
この狭く広い男子校という世界の中で、注意しなければならないことは山ほどある。
俺は二人に確認しなければならない、最優先事項って奴を口にした。
「さっきお前らの名前呼んで騒いでた奴らがいたけど……あれって親衛隊ってやつ?」
「しんえー、たい?」
その単語に、首を傾げるのは柳一人。対して、真実はやや鬱陶しげに表情を曇らせた。
だが、そんなこいつ等の気持ちなんか知るかってんだ。好き放題、柳にベタベタしてられるのも今だけだろ?
「こんなところ、そいつらが見たらやべーんじゃねぇの?」
追い打ちをかけてやると、実……いや、真か? 「チッ」と一つ舌打ちをした。
「うっせぇな。わかってるよ」
「もう手は打ってあるし。考えだってある。けど、そうだな……みの」
「ああ……柳」
「なに? 実」
真が実に目配せをすると、実は柳へと呼び掛ける。親衛隊の意味がわからない柳は、首を傾げたまま今度は反対の方向へコテンと首を傾げてみせた。
なにこの可愛いの。
「どしたの?」
「俺達、ここだとちょっと有名人でさ。人気者なわけ」
「でね。こうやって柳と一緒にいるところを見られるだけでも目立つんだ。けどさ、柳をそれに巻き込みたくはないんだよ」
「「だから俺ら、ここでは普通に柳と話すことができないけど……柳のことが大好きなのは絶対に変わらないから、それだけは信じてね」」
そう言い終えると、名残惜しそうに、二人は柳を抱きしめた。わけのわからないまま話が進んで、普通なら「何言ってんの?」的な突っ込みくらいあるだろう。
だけど、そこは柳だ。自分よりも大きな身体の二人をあやすように、にっこりと笑って受け止めた。
「うん。僕も真実が大好きだよ」
野郎にこんなことを言われても、正直嬉しくない言葉なのに、柳が言うと何かが違う。俺らが柳のことを好きだって想ってるからかもしれないけれど、それは贔屓目なんかじゃないと思う。
柳に好きだと言われるだけで、やべぇくらいに気分が良くなるんだ。
それはこの二人も同様のようで。
「あ~もう、どうしよ。このまま寮へ連れ帰りてぇんだけど」
「このままぷにぷにしてぇ~。なぁ、柳~。このままサボってぷにぷにしようぜ~」
何がぷにぷにしてぇだ。お前らのぷにぷには十八禁だろうが。
「いい加減に離れろ」
ムカついてきたからべりっと二人を引き剥がす。力でいけば俺の方があるからな。それは簡単にいったんだが。
双方からすんげぇ睨まれた。
柳はといえば、背中に背負っていたリュックをその身から下ろすと、チャックを開けて残念そうにその中を見ている。
ああ、そうか。その中にはあれが入っていたんだもんな。
「一緒に食べられると思って作ってきたんだけど、仕方ないよね。これ、よかったら食べてね」
中身は弁当。前の学校でも、俺や廻に作って来てくれていたからな。これからは真実とも食べられると思ってこさえてきてくれたんだ。俺としては柳と二人きりで食べられるから全然寂しくも残念でもねぇんだけどよ。
柳は寂しそうに、はい、と二人に弁当の包みを差し出した。
すると、真実は。
「昼は一緒に食べよ。俺らも楽しみにしてきたんだから」
「そのために、場所はちゃんと用意したんだし!」
「ほんと?」
なんだよ。用意してんのかよ。
「鍵も渡しとくね。柳のために合い鍵を用意したんだよ」
ポンと柳に渡されたのは、銀色の鍵。しかもご丁寧にリボンまでつけてある。気持ち悪っ。柳は「可愛い」って言って嬉しそうに受け取ったけど。これってアレだろ? 恋人に自分の部屋の合い鍵渡す的なやつだろ? マジふざけんなよ。
「これってどこの鍵なの?」
「この学校の北校舎のなんだけど、そこにある空き教室の鍵。俺らはいつもそこで飯、食べてるんだ」
「ぶっちゃけ、北校舎って存在自体はまだあるんだけど、そこ廃校舎同然なんだよね。で、管理って名目でそこの鍵持ってんの、俺らと生徒会の人間だけだから、他は誰も来ねぇし」
「「だから安心して飯が食えるよ」」
に~っこりと笑顔でハモる二人に、柳が嬉しそうにリュックのチャックを閉める。そして再びそれを背負うと。
「わかった。じゃあ、そこに行って、一緒にお弁当食べようね! みんなで!」
と、満面の笑みでそう言った。
マズイ。勃起しそう。
柳が真実に向かってキラキラとした顔を向ける。純粋無垢ってやつかな。何も疑わず、こいつ等に羨望の眼差しを向けている。
そんな柳の顔に締まらない顔の二人がやっぱりキモかったけど……事実、この二人はモテる。とにかく昔から。それはある一方で羨むべき事だが、この二人はそうは思っていないだろう。周りから特別扱いされている廻同様、その目立つ容姿で散々な思いをしてきたのだろうから。
この狭く広い男子校という世界の中で、注意しなければならないことは山ほどある。
俺は二人に確認しなければならない、最優先事項って奴を口にした。
「さっきお前らの名前呼んで騒いでた奴らがいたけど……あれって親衛隊ってやつ?」
「しんえー、たい?」
その単語に、首を傾げるのは柳一人。対して、真実はやや鬱陶しげに表情を曇らせた。
だが、そんなこいつ等の気持ちなんか知るかってんだ。好き放題、柳にベタベタしてられるのも今だけだろ?
「こんなところ、そいつらが見たらやべーんじゃねぇの?」
追い打ちをかけてやると、実……いや、真か? 「チッ」と一つ舌打ちをした。
「うっせぇな。わかってるよ」
「もう手は打ってあるし。考えだってある。けど、そうだな……みの」
「ああ……柳」
「なに? 実」
真が実に目配せをすると、実は柳へと呼び掛ける。親衛隊の意味がわからない柳は、首を傾げたまま今度は反対の方向へコテンと首を傾げてみせた。
なにこの可愛いの。
「どしたの?」
「俺達、ここだとちょっと有名人でさ。人気者なわけ」
「でね。こうやって柳と一緒にいるところを見られるだけでも目立つんだ。けどさ、柳をそれに巻き込みたくはないんだよ」
「「だから俺ら、ここでは普通に柳と話すことができないけど……柳のことが大好きなのは絶対に変わらないから、それだけは信じてね」」
そう言い終えると、名残惜しそうに、二人は柳を抱きしめた。わけのわからないまま話が進んで、普通なら「何言ってんの?」的な突っ込みくらいあるだろう。
だけど、そこは柳だ。自分よりも大きな身体の二人をあやすように、にっこりと笑って受け止めた。
「うん。僕も真実が大好きだよ」
野郎にこんなことを言われても、正直嬉しくない言葉なのに、柳が言うと何かが違う。俺らが柳のことを好きだって想ってるからかもしれないけれど、それは贔屓目なんかじゃないと思う。
柳に好きだと言われるだけで、やべぇくらいに気分が良くなるんだ。
それはこの二人も同様のようで。
「あ~もう、どうしよ。このまま寮へ連れ帰りてぇんだけど」
「このままぷにぷにしてぇ~。なぁ、柳~。このままサボってぷにぷにしようぜ~」
何がぷにぷにしてぇだ。お前らのぷにぷには十八禁だろうが。
「いい加減に離れろ」
ムカついてきたからべりっと二人を引き剥がす。力でいけば俺の方があるからな。それは簡単にいったんだが。
双方からすんげぇ睨まれた。
柳はといえば、背中に背負っていたリュックをその身から下ろすと、チャックを開けて残念そうにその中を見ている。
ああ、そうか。その中にはあれが入っていたんだもんな。
「一緒に食べられると思って作ってきたんだけど、仕方ないよね。これ、よかったら食べてね」
中身は弁当。前の学校でも、俺や廻に作って来てくれていたからな。これからは真実とも食べられると思ってこさえてきてくれたんだ。俺としては柳と二人きりで食べられるから全然寂しくも残念でもねぇんだけどよ。
柳は寂しそうに、はい、と二人に弁当の包みを差し出した。
すると、真実は。
「昼は一緒に食べよ。俺らも楽しみにしてきたんだから」
「そのために、場所はちゃんと用意したんだし!」
「ほんと?」
なんだよ。用意してんのかよ。
「鍵も渡しとくね。柳のために合い鍵を用意したんだよ」
ポンと柳に渡されたのは、銀色の鍵。しかもご丁寧にリボンまでつけてある。気持ち悪っ。柳は「可愛い」って言って嬉しそうに受け取ったけど。これってアレだろ? 恋人に自分の部屋の合い鍵渡す的なやつだろ? マジふざけんなよ。
「これってどこの鍵なの?」
「この学校の北校舎のなんだけど、そこにある空き教室の鍵。俺らはいつもそこで飯、食べてるんだ」
「ぶっちゃけ、北校舎って存在自体はまだあるんだけど、そこ廃校舎同然なんだよね。で、管理って名目でそこの鍵持ってんの、俺らと生徒会の人間だけだから、他は誰も来ねぇし」
「「だから安心して飯が食えるよ」」
に~っこりと笑顔でハモる二人に、柳が嬉しそうにリュックのチャックを閉める。そして再びそれを背負うと。
「わかった。じゃあ、そこに行って、一緒にお弁当食べようね! みんなで!」
と、満面の笑みでそう言った。
マズイ。勃起しそう。
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