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新婚生活スタートです

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 嫌だっ……!!

「……んっ、……う?」

 え?

 いま。唇に何かが……触れて……

「ふっ……っ、……ん」

「柳……」

 名を呼ばれる。誰だろうと、僕はゆっくりと瞼を上げた。

「海、さん」

 ああ、そうだった。

 今、僕の目の前にいるのは旦那さま。僕をもらってくれた人だ。

 こんな僕を、もらってくれた人だった。

「海さ……」

「嫌なら嫌と、拒めばいい。そう言っただろう?」

「んむっ……」

 あ、れ?

 なんだか……口調、変わってない?

 しかしそんなことよりだ!

「ぅ、……んん」

 どうしよう。どうしよう。

 僕、いま……

「んっ……ぁ……」

 大人のキス、されてる。

「んっ、む……んぅ……」

 でもなんだろ。初夜の時にされた荒々しいものとは全然違う、どこか優しさを感じるキスだ。

 これも、キス……なんだよね?

 僕は今、それを受けているんだ。

 嫌なら拒めと言った旦那さま……海さんは、仰向けに寝かせた僕の上に覆い被さって、唇を食むように、ちゅ、ちゅ、て音を立ててキスをしてきた。

 それがなんだか、段々とじれったくなってきた僕は、少しだけ唇を開いたんだ。

 すると、海さんはゆっくりとその間に舌を滑り込ませてきて、歯列をなぞるように割って僕の舌にそれを絡ませた。

 くちゅ、くちゅって。

 湿っぽさと粘りっぽさ、それから空気を叩く音が混じって、なんだか聞いてて身体が熱くなるほど恥ずかしくなる。

「……んぁっ、……ん、んぅ……」

 息をする鼻から、変な声が漏れる。初夜の時もそうだったけど、今は優しくされてるから、そこまで息苦しくはない。なのになんで、こんな声が出るんだろ?

 聞いててすごく嫌になる。だってこれ、自分の声なんだもん。

 いや。嫌だ……。

「……っん、……ぁっ、んん……」

 でもっ……

「……そう、上手だ」

「ん……ぁ……」

 気持ちいい。

 これ、すごく気持ちいい。

 頭の中が蕩けるみたい。

 僕は自然と、手が伸びて海さんのシャツを握った。

 もっと欲しい。ちょうだい、って。求めたんだと思う。

 それでもたまらなくなってきた僕は、海さんが絡ませる舌に自分のを絡ませようと動かした。

 すると、「焦らなくていい」と吸うように、海さんが優しく唇を食んでくる。

 そしてまた、僕の舌にそれを絡ませながら、気持ちいいって感じる部分を舐め上げる。

 刺激が強すぎて、ビクン、と身体がすくんだけど、海さんは唇から離れない。

 優しく。優しく。

 僕にキスを続ける。

「……ぁん、……ん……か、いさ……」

「ん……柳……」

 どうしよう。

 すごく、気持ちいい……。

「……んんっ」

 でも海さんが僕から離れると、急に全身から力が抜け落ちた。

 もともとベッドに沈んでいた体が、ズシリとさらに沈んだ気がした。

「はぁ……、はぁ……」

 重い身体。それがなんだか、変な感じ。

 変、というか。その、完全に……なっちゃったわけなんだけど。

 でも。

「よかったか?」

「……っ」

 聞かないで欲しい。

 そして笑わないで欲しい。キスだけでこんなになっちゃった僕だから、可笑しいのかもしれないけどさ。

 明かりが消えててもわかるんだよ。そんなに意地悪っぽく笑わないで。

 恥ずかしくて俯くけど、海さんにはわかってるんだろう。僕の今の状態が。

 だから、もうそっとしといて欲しいのに。どうしてこんなに触れてくるの?

 触るのが楽しいから? いじめるのが好きだから?

 わかんないよ。

 海さんはいったい、僕をどうしたいの? 僕とどうありたいの?
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