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新婚生活スタートです

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 ―――――――…




「ふあ~あ……!」

 あわわ。大きな欠伸が出ちゃった。

 僕は慌てて口元を手で押さえるけど、気になる周りには実は誰もいなかったりする。

 大人二人から先に入ってこいと勧められた僕は、広いお風呂でまったりリフレッシュ。そのとき、ふと葉月たちに連絡をしていないことを思い出して、風呂上がりにすぐさま携帯で連絡した。

 あ、没収された携帯ね。なぜか龍一様が持ってきてくれたんだよ。なんでだろね?

 それで、おやすみ前にみんなの声が聞けて嬉しかった僕はついついはしゃぎすぎちゃったみたいだ。長電話しちゃった。

 ……。

 お、怒られるかなぁ。

 通話料金が気になり、ちょっとだけビクビクしながらも、旦那さまの愛を信じて寝室へ向かう僕。

 そんなただいまの時刻は夜の十時半。

 カチャリ。

 うーん。いつ見てもでかいベッドだね。やっぱりキングサイズはでかかったんじゃないかな? でももう買っちゃったしね……海さんが。

 寝室中央で、その存在をアピールする、いくらなのか見当もつかないけど絶対高級だろうキングサイズのベッド。あの初夜のときのベッドよりはシンプルなブラックの寝台だけど、価格は相当なものだろう。でも、シーツやカバーは僕の希望で淡い色の、パールグリーンにしてくれた。

「よいしょっ」

 濡れた髪も乾かし、新しく買った真っ白のパジャマも着て、僕の寝る準備は万端。

 おやすみなさいをしちゃいます。

 お風呂に入る前に、先に寝ていいぞと龍一様から言われたからね。それに大人二人のお話、長そうだったし。

 もう一度だけ大きな欠伸をして、眼鏡を外してコンタクトも外す。したまんま寝たら大変なことになっちゃうからね。

 結局、打ち明けることができないこのコンタクトを入れたケースは、明日も着る制服のポケットの中に仕舞うことにする。眼鏡は伊達だと言っている以上、このコンタクトを発見されたら、絶対に理由を尋ねられるだろうから。

 眼鏡はチェストの上にそのまま置いた。

 僕は小さなため息をつくと、明かりを消して、ベッドに思い切りダイブする。

「ふかふかぁ♪」

 一度やってみたかったんだよね~♪

 今まで布団だったし、こんなに大きなベッドで寝たの初めてだもん。

 両足をバタつかせ、ゴロゴロと寝転がる。

 やっぱり気持ちい~♪

「でもあんまりはしゃぐと埃が舞っちゃうよね……」

 そう考えたら、ピタリと止まる僕の身体。

 しばらくして、黙ってモゾモゾと布団の中に潜り込みました。寒いしね。

 かたっぽの羽毛の枕に頭を乗っけて、うつ伏せになって丸まった。

「うん……いい夢見れそう」

「そうですか。それはよかった」

「うひゃっ!?」

 突然、頭上から声が落ちてきた。

 驚いてガバッと頭を上げると、真っ暗闇の中、いつのまにか海さんがベッドサイドに腰を下ろしてたんだ。

 って、なんで!?

「あ、あああ、あれ!? 海さん!?」

「そんなに驚くこともないでしょう」

「で、でもっ……龍一様は!?」

「さぁ」

「さぁ、って」

「他人よりも、妻の方が大切ですからね」

 知り合いでも一応客人の龍一様をぞんざいに扱う旦那さま。妻の方が大事と、小さく笑って自分も布団の中に潜り込んだ。

 あ、明かり消しててよかった~。今の僕、完全に武装(眼鏡&コンタクトレンズ)解除だし。

 部屋が暗ければ、瞳の色なんてわからないよね。

 でも海さん。まだ着替えてないんじゃ……あ、よかった。スーツの上着は脱いでくれてるみたいだ。そのままだと皺になっちゃうもんね。

 うんうん。

 僕は再び枕に頭を乗せ、うつ伏せになって丸まった。

 ……。

 ……?

 ちょっと待って!

「え、で、でもっ」

 あの龍一様だよ!? ほったらかしにしたら怒られちゃうよ? 怒ると角が生えるよ! にょきにょきと!

「大丈夫。先に寝てしまわれただけです」

 あ、そうなんだ?

 じゃあ大丈夫かな。毛布とかは……あ、心配いらない?

「それより、例の転校の件ですが。どうでしたか? 友人を説得できましたか?」

 あ、そういや報告してなかったね。海さん、突然のこの転校のこと、気にしてたし。

「転校先の友人は、歓迎してくれてるんですけど」

 葉月と廻が怒ったままです……。

 時に海さん。

 なんだか、すごく近くないですか?

「私が推し進めて決めてしまったようなものですからね。貴方にも、その友人にも悪いことをしてしまいました」

「僕は楽しみです。ずっと共学だったから、男子校がどんな所なのか、知らないし。わくわくしてます」

 これは本当。

 女の子のいない学園生活って、いったいどんな感じなんだろうね? 男の子ばっかでお祭りとかやっちゃうのかな?

 時に海さん。

 なんだか、僕の腰に腕が回っているような気がするんですけど。

「そう言ってもらえると、気が休まります」

「そういえば、海さんも男子校だったんですよね? 楽しかった?」

「楽しいも何も、遊ぶ場ではありませんでしたしね。教育カリキュラムは充実していたので、特に不満なく勉学に集中できました。いや、せざるを得なかったというべきですね。完全寮制でしたし。規則もかなり厳しく、外出も好き勝手にできなかったので」

 ふわぁ。聞いてるだけで厳しそうな所に通ってたんですね。僕がこれから通う学校はそうじゃないといいなぁ。

 時に海さん。

 僕の頭が海さんの胸元にあるような気がするんですけど。あと、腰に回った手がお腹を擦ってるみたいなんですけど。

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