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新婚生活スタートです

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 思いもしない事態に声が発せず、目を白黒させる僕。

 えっ、僕を? 好き? 宮本さんが?

 中学の時から僕を知ってて……好き!?

 こんな平凡な僕を?

 likeじゃないんですよね? いわゆるloveのほうなんですよね?

 まじで!?

「私……牧村さんみたいに可愛くないから、好みじゃないかもしれないけど……」

 恋ってやつを知らない僕に、好みとかはよくわかんないけど。

 宮本さんは十分可愛いと思うよ。

 いやいや、それよりも。

「僕だって平凡だよ?」

 そう言って自分を指さしてみせると。

 宮本さんはすごい剣幕で否定した。

「そんなことない! 柳くんはすごく格好いいよ! か、片岡くんよりもずっと……」

「葉月よりも?」

 あのすごく人気のある葉月よりも格好いいなんて……。

「格好いいよ! 私、外見で柳くんのことが好きなんじゃないもの。そりゃあ、中学のときと、見た目が大分変わっちゃったけど……」

 変わっ、た……?

「変わった、かな……」

 ぽつりと呟いた一言が聞こえなかったんだろう。

 宮本さんはそのまま、僕の知らない僕を語り始めた。

「受験もいよいよ大詰めってときから急に学校に来なくなっちゃったよね。卒業式も出なかったし……私、柳くんに何かあったんだと思った。でも、連絡先わからなくて……すごくすごく気になったまま、高校に進学したの。でも……でもね。廊下で見かけたときはすごくビックリした。全然違う柳くんがこの学校にいたんだもの。何かの見間違えだって思ったくらいよ」

「……」

「でも、柳くんだった。中学のときとは全然違うのに、名前も顔もあなただった。もっとよく確かめたくて、友達に頼んであなたに話しかけてもらったの。私は離れた所で様子を見てたけど、受け答えする柳くんはやっぱりどこか違ってた……でも、私のこの気持ちは変わらなかった」

「……」

「恋、してるの……」

 黙ってしまった僕に不安を覚えたのか、彼女はたまらないといった様子で、泣き出しそうな顔になる。

「変だよね。気持ち、悪いよね……柳くんにはわかんないよね。だって、私が勝手に好きなだけなんだもん。でも、私っ……私はっ……!」

「わかるよ」

「……え?」

 宮本さんの言葉を遮って、僕は一言呟いた。

 そんな僕に、彼女は信じられないといった様子で瞠若する。

「わかる……」

「柳、くん?」

 尋ねる宮本さん。

 でも、僕はそれに答えることなく、口だけを動かした。

「すごくすごく好きなのに、相手はどう想っているか、わかんない。知るのが怖い。でも知りたい。そしてもし、相手の気持ちが自分と一緒だったなら、とっても嬉しいんだろうなって。もっともっと、近づけたらいいのになって……」

 ……つまりはさ。

「そういうことだろ?」

「あ……柳、くん?」

 彼女は戸惑いながら、僕の名を確かめるように尋ねてくる。

 なんて顔、してるんだろ。そんな間の抜けたような顔、似合わないよ?

「しょうがないよ。気づいたら好きになってるんだもん。格好いいとか、可愛いとか、そんなの後からでもついてくることだろ。でも、誰かを好きになるのはそんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。きっかけこそあれ、それ以上に人を好きになることに、理由なんてあるのか?」

 僕には理由なんて、なかった。きっかけは、たくさんあったような気がするけど、いつの間にかあの人を好きになってた。

 とは言っても、僕の「好き」と彼女の言う「想い」は違うんだろうな。

 でも。

「恋とは違うのかもしんないけどさ。わかるんだ……こんな僕にも」

 あったからさ。

「だから、君がすごく勇気を出して声をかけてくれたんだって……わかるよ」

「柳くん……」

「こういうとき……ううん。こんなときじゃなくてもさ。真剣な想いを拒絶されたり、嘘を言われたり……振られたりすることがどんなに傷つくか……わかってる。だから嘘はつかない。僕の本当の気持ちを、ちゃんと伝えようと思う」

 僕はスッと息を吸い込んだ。

「ありがとう。好きになってくれて。でも、ごめん……君と付き合うことは、今の僕にはできない」

「……っ」

 宮本さんは俯き、顔を両手で覆った。

 ……まぁ。わかっちゃいたけどさ。

 泣かせちゃったなぁ。女の子。

「ひっく……ふっ……」

 僕は何も言わずに、泣き止むまで彼女の傍についていた。

「……っ……ひっく……りゅう……柳くんは、やっぱり……」

 ん?

「変わんないね……」

 涙でぐしゃぐしゃだったけど。

 宮本さんは顔を上げてニッコリ、笑った。

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