45 / 241
新婚生活スタートです
10
しおりを挟む
思いもしない事態に声が発せず、目を白黒させる僕。
えっ、僕を? 好き? 宮本さんが?
中学の時から僕を知ってて……好き!?
こんな平凡な僕を?
likeじゃないんですよね? いわゆるloveのほうなんですよね?
まじで!?
「私……牧村さんみたいに可愛くないから、好みじゃないかもしれないけど……」
恋ってやつを知らない僕に、好みとかはよくわかんないけど。
宮本さんは十分可愛いと思うよ。
いやいや、それよりも。
「僕だって平凡だよ?」
そう言って自分を指さしてみせると。
宮本さんはすごい剣幕で否定した。
「そんなことない! 柳くんはすごく格好いいよ! か、片岡くんよりもずっと……」
「葉月よりも?」
あのすごく人気のある葉月よりも格好いいなんて……。
「格好いいよ! 私、外見で柳くんのことが好きなんじゃないもの。そりゃあ、中学のときと、見た目が大分変わっちゃったけど……」
変わっ、た……?
「変わった、かな……」
ぽつりと呟いた一言が聞こえなかったんだろう。
宮本さんはそのまま、僕の知らない僕を語り始めた。
「受験もいよいよ大詰めってときから急に学校に来なくなっちゃったよね。卒業式も出なかったし……私、柳くんに何かあったんだと思った。でも、連絡先わからなくて……すごくすごく気になったまま、高校に進学したの。でも……でもね。廊下で見かけたときはすごくビックリした。全然違う柳くんがこの学校にいたんだもの。何かの見間違えだって思ったくらいよ」
「……」
「でも、柳くんだった。中学のときとは全然違うのに、名前も顔もあなただった。もっとよく確かめたくて、友達に頼んであなたに話しかけてもらったの。私は離れた所で様子を見てたけど、受け答えする柳くんはやっぱりどこか違ってた……でも、私のこの気持ちは変わらなかった」
「……」
「恋、してるの……」
黙ってしまった僕に不安を覚えたのか、彼女はたまらないといった様子で、泣き出しそうな顔になる。
「変だよね。気持ち、悪いよね……柳くんにはわかんないよね。だって、私が勝手に好きなだけなんだもん。でも、私っ……私はっ……!」
「わかるよ」
「……え?」
宮本さんの言葉を遮って、僕は一言呟いた。
そんな僕に、彼女は信じられないといった様子で瞠若する。
「わかる……」
「柳、くん?」
尋ねる宮本さん。
でも、僕はそれに答えることなく、口だけを動かした。
「すごくすごく好きなのに、相手はどう想っているか、わかんない。知るのが怖い。でも知りたい。そしてもし、相手の気持ちが自分と一緒だったなら、とっても嬉しいんだろうなって。もっともっと、近づけたらいいのになって……」
……つまりはさ。
「そういうことだろ?」
「あ……柳、くん?」
彼女は戸惑いながら、僕の名を確かめるように尋ねてくる。
なんて顔、してるんだろ。そんな間の抜けたような顔、似合わないよ?
「しょうがないよ。気づいたら好きになってるんだもん。格好いいとか、可愛いとか、そんなの後からでもついてくることだろ。でも、誰かを好きになるのはそんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。きっかけこそあれ、それ以上に人を好きになることに、理由なんてあるのか?」
僕には理由なんて、なかった。きっかけは、たくさんあったような気がするけど、いつの間にかあの人を好きになってた。
とは言っても、僕の「好き」と彼女の言う「想い」は違うんだろうな。
でも。
「恋とは違うのかもしんないけどさ。わかるんだ……こんな僕にも」
あったからさ。
「だから、君がすごく勇気を出して声をかけてくれたんだって……わかるよ」
「柳くん……」
「こういうとき……ううん。こんなときじゃなくてもさ。真剣な想いを拒絶されたり、嘘を言われたり……振られたりすることがどんなに傷つくか……わかってる。だから嘘はつかない。僕の本当の気持ちを、ちゃんと伝えようと思う」
僕はスッと息を吸い込んだ。
「ありがとう。好きになってくれて。でも、ごめん……君と付き合うことは、今の僕にはできない」
「……っ」
宮本さんは俯き、顔を両手で覆った。
……まぁ。わかっちゃいたけどさ。
泣かせちゃったなぁ。女の子。
「ひっく……ふっ……」
僕は何も言わずに、泣き止むまで彼女の傍についていた。
「……っ……ひっく……りゅう……柳くんは、やっぱり……」
ん?
「変わんないね……」
涙でぐしゃぐしゃだったけど。
宮本さんは顔を上げてニッコリ、笑った。
えっ、僕を? 好き? 宮本さんが?
中学の時から僕を知ってて……好き!?
こんな平凡な僕を?
likeじゃないんですよね? いわゆるloveのほうなんですよね?
まじで!?
「私……牧村さんみたいに可愛くないから、好みじゃないかもしれないけど……」
恋ってやつを知らない僕に、好みとかはよくわかんないけど。
宮本さんは十分可愛いと思うよ。
いやいや、それよりも。
「僕だって平凡だよ?」
そう言って自分を指さしてみせると。
宮本さんはすごい剣幕で否定した。
「そんなことない! 柳くんはすごく格好いいよ! か、片岡くんよりもずっと……」
「葉月よりも?」
あのすごく人気のある葉月よりも格好いいなんて……。
「格好いいよ! 私、外見で柳くんのことが好きなんじゃないもの。そりゃあ、中学のときと、見た目が大分変わっちゃったけど……」
変わっ、た……?
「変わった、かな……」
ぽつりと呟いた一言が聞こえなかったんだろう。
宮本さんはそのまま、僕の知らない僕を語り始めた。
「受験もいよいよ大詰めってときから急に学校に来なくなっちゃったよね。卒業式も出なかったし……私、柳くんに何かあったんだと思った。でも、連絡先わからなくて……すごくすごく気になったまま、高校に進学したの。でも……でもね。廊下で見かけたときはすごくビックリした。全然違う柳くんがこの学校にいたんだもの。何かの見間違えだって思ったくらいよ」
「……」
「でも、柳くんだった。中学のときとは全然違うのに、名前も顔もあなただった。もっとよく確かめたくて、友達に頼んであなたに話しかけてもらったの。私は離れた所で様子を見てたけど、受け答えする柳くんはやっぱりどこか違ってた……でも、私のこの気持ちは変わらなかった」
「……」
「恋、してるの……」
黙ってしまった僕に不安を覚えたのか、彼女はたまらないといった様子で、泣き出しそうな顔になる。
「変だよね。気持ち、悪いよね……柳くんにはわかんないよね。だって、私が勝手に好きなだけなんだもん。でも、私っ……私はっ……!」
「わかるよ」
「……え?」
宮本さんの言葉を遮って、僕は一言呟いた。
そんな僕に、彼女は信じられないといった様子で瞠若する。
「わかる……」
「柳、くん?」
尋ねる宮本さん。
でも、僕はそれに答えることなく、口だけを動かした。
「すごくすごく好きなのに、相手はどう想っているか、わかんない。知るのが怖い。でも知りたい。そしてもし、相手の気持ちが自分と一緒だったなら、とっても嬉しいんだろうなって。もっともっと、近づけたらいいのになって……」
……つまりはさ。
「そういうことだろ?」
「あ……柳、くん?」
彼女は戸惑いながら、僕の名を確かめるように尋ねてくる。
なんて顔、してるんだろ。そんな間の抜けたような顔、似合わないよ?
「しょうがないよ。気づいたら好きになってるんだもん。格好いいとか、可愛いとか、そんなの後からでもついてくることだろ。でも、誰かを好きになるのはそんなんじゃない。そんなんじゃないんだ。きっかけこそあれ、それ以上に人を好きになることに、理由なんてあるのか?」
僕には理由なんて、なかった。きっかけは、たくさんあったような気がするけど、いつの間にかあの人を好きになってた。
とは言っても、僕の「好き」と彼女の言う「想い」は違うんだろうな。
でも。
「恋とは違うのかもしんないけどさ。わかるんだ……こんな僕にも」
あったからさ。
「だから、君がすごく勇気を出して声をかけてくれたんだって……わかるよ」
「柳くん……」
「こういうとき……ううん。こんなときじゃなくてもさ。真剣な想いを拒絶されたり、嘘を言われたり……振られたりすることがどんなに傷つくか……わかってる。だから嘘はつかない。僕の本当の気持ちを、ちゃんと伝えようと思う」
僕はスッと息を吸い込んだ。
「ありがとう。好きになってくれて。でも、ごめん……君と付き合うことは、今の僕にはできない」
「……っ」
宮本さんは俯き、顔を両手で覆った。
……まぁ。わかっちゃいたけどさ。
泣かせちゃったなぁ。女の子。
「ひっく……ふっ……」
僕は何も言わずに、泣き止むまで彼女の傍についていた。
「……っ……ひっく……りゅう……柳くんは、やっぱり……」
ん?
「変わんないね……」
涙でぐしゃぐしゃだったけど。
宮本さんは顔を上げてニッコリ、笑った。
0
お気に入りに追加
590
あなたにおすすめの小説
完結・虐げられオメガ妃なので敵国に売られたら、激甘ボイスのイケメン王に溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
その溺愛は伝わりづらい!気弱なスパダリ御曹司にノンケの僕は落とされました
海野幻創
BL
人好きのする端正な顔立ちを持ち、文武両道でなんでも無難にこなせることのできた生田雅紀(いくたまさき)は、小さい頃から多くの友人に囲まれていた。
しかし他人との付き合いは広く浅くの最小限に留めるタイプで、女性とも身体だけの付き合いしかしてこなかった。
偶然出会った久世透(くぜとおる)は、嫉妬を覚えるほどのスタイルと美貌をもち、引け目を感じるほどの高学歴で、議員の孫であり大企業役員の息子だった。
御曹司であることにふさわしく、スマートに大金を使ってみせるところがありながら、生田の前では捨てられた子犬のようにおどおどして気弱な様子を見せ、そのギャップを生田は面白がっていたのだが……。
これまで他人と深くは関わってこなかったはずなのに、会うたびに違う一面を見せる久世は、いつしか生田にとって離れがたい存在となっていく。
【続編】
「その溺愛は行き場を彷徨う……気弱なスパダリ御曹司は政略結婚を回避したい」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/962473946/911896785
恋した貴方はαなロミオ
須藤慎弥
BL
Ω性の凛太が恋したのは、ロミオに扮したα性の結城先輩でした。
Ω性に引け目を感じている凛太。
凛太を運命の番だと信じているα性の結城。
すれ違う二人を引き寄せたヒート。
ほんわか現代BLオメガバース♡
※二人それぞれの視点が交互に展開します
※R 18要素はほとんどありませんが、表現と受け取り方に個人差があるものと判断しレーティングマークを付けさせていただきますm(*_ _)m
※fujossy様にて行われました「コスプレ」をテーマにした短編コンテスト出品作です
とまどいの花嫁は、夫から逃げられない
椎名さえら
恋愛
エラは、親が決めた婚約者からずっと冷淡に扱われ
初夜、夫は愛人の家へと行った。
戦争が起こり、夫は戦地へと赴いた。
「無事に戻ってきたら、お前とは離婚する」
と言い置いて。
やっと戦争が終わった後、エラのもとへ戻ってきた夫に
彼女は強い違和感を感じる。
夫はすっかり改心し、エラとは離婚しないと言い張り
突然彼女を溺愛し始めたからだ
______________________
✴︎舞台のイメージはイギリス近代(ゆるゆる設定)
✴︎誤字脱字は優しくスルーしていただけると幸いです
✴︎なろうさんにも投稿しています
私の勝手なBGMは、懐かしすぎるけど鬼束ちひろ『月光』←名曲すぎ
花婿候補は冴えないαでした
一
BL
バース性がわからないまま育った凪咲は、20歳の年に待ちに待った判定を受けた。会社を経営する父の一人息子として育てられるなか結果はΩ。 父親を困らせることになってしまう。このまま親に従って、政略結婚を進めて行こうとするが、それでいいのかと自分の今後を考え始める。そして、偶然同じ部署にいた25歳の秘書の孝景と出会った。
本番なしなのもたまにはと思って書いてみました!
※pixivに同様の作品を掲載しています
運命の人じゃないけど。
加地トモカズ
BL
αの性を受けた鷹倫(たかみち)は若くして一流企業の取締役に就任し求婚も絶えない美青年で完璧人間。足りないものは人生の伴侶=運命の番であるΩのみ。
しかし鷹倫が惹かれた人は、運命どころかΩでもないβの電気工事士の苳也(とうや)だった。
※こちらの作品は「男子高校生マツダくんと主夫のツワブキさん」内で腐女子ズが文化祭に出版した同人誌という設定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる