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新婚生活スタートです
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―――――…
教室へ戻ると、僕の机の前に、七~八人くらいの男女がそわそわしながら待っていた。
そしてその中の一人が、僕を見つけるなり。
「待ってたぞ、メガネ! 廻ちゃんにこれ、渡しておいてくれ」
「ねぇ、ねぇ。葉月くんにこのプレゼントと手紙、渡して。 返事はいいの! わかってるから……うっ、うぇ~ん」
「なぁ、牧村さんって赤と黄色、どっちが好きかなぁ?」
「放課後お腹空くでしょ? これ片岡くんに渡してくれる? 君の分もちゃんとあるから。あ、でもこっちはダメ! 片岡くんのなんだから!」
と、男子生徒を始めに、一気に僕へと押し寄せてきた。
うわ。最近欠席していたせいか、今回は多いな。
僕はちょっと待ってね、と皆に言うと、教室後ろに置いてある段ボール箱を二つ持ち、机の前にそれぞれ並べてから着席する。
さ、いつもの仕分けをしますか。
「はいはい~。こっちは葉月、そんでこっちは廻の受付です。手紙を用意している人は必ずプレゼントと一緒にしてくださ~い。用件のみでも縦に並んで順番にね」
と。
葉月、及び廻のファンたちは、ちゃっと動いて、順番に並び始めた。
なんとなくわかったかも知れないけど、これは葉月と廻が好きだという子達が、本人を前にはなかなか声をかけずらい(まぁ、二人は恋人設定だしね)、でも二人の傍にいるメガネなら声を掛けやすいし、物も頼みやすい、ってことから始まった、いわばパシり業務です。
そして、本人に直接渡そうとするより(なんか、ほとんど断られるらしい)、僕を介しての方が物が確実に渡る(ちゃんと受けとるのにな、二人とも)ということから、ここ一年くらいは続いてる僕のお仕事なんだ。
これがある前までは僕の机に人が集まるなんてことなかったのにね。
でも、そろそろ僕の名前、覚えて欲しいかな。旧姓でいいから。
そして三分後。
「ふぃ~。今日はこれで終わりかな」
「……、……くん」
「わっ、これアイス!? なま物と溶けるものはやめてって言ってるのに……」
「し……くん……、……りゅ、うくん」
「ん?」
いま、呼ばれた?
声がする方に顔をあげれば、一人の女子生徒がいた。大人しそうな女の子だ。
葉月のファンかな?
「あの……私、隣のクラスの宮本っていうんだけど。……名字、変わったんだよね?」
「うん、そう。紫瞠って言うんだ。こんにちは」
僕が答えると、彼女は旧姓と今の姓を交互に呼んでいたらしい。でも、僕が目先のことで気づかなかったとか。
うわ、ごめん。名字であんまり呼ばれなれてなくて。
「……あの」
「葉月か廻へのプレゼント? それだったらこっちが……」
「き、今日の!」
「え?」
「今日の放課後、空いてませんか?」
……。
「えっと……僕?」
自分に指を向けながら、彼女……宮本さんに尋ねてみる。
彼女はコクリと、深く頷いた。しかも、なんかすごく思いつめてるっぽい。
ほっぺ、真っ赤だ。
「時間、そんなに取らせないから……ダメ、かな……?」
加えて、ちょっぴり涙目で頼まれた僕はわたわたと慌ててしまった。
女の子の涙に、僕はめっぽう弱いんだ。
「今日は大事なお客さんが、マン……家にいらっしゃるから。六時までには帰らないといけないんだけど」
それまでだったら、放課後付き合うよ。だから、泣かないで? ね?
立ちあがった僕は宮本さんの両肩に手をかけて、顔を覗き込んだ。すると、彼女はさらに顔を真っ赤にさせて、「あ、ありがっ……とっ……」と、消え入りそうなほどか細く小さなお礼を言って俯いた。
えっ、ちょっと顔上げて? 泣かれちゃったら困るから! いろいろと!
クラスメートの遠慮ない視線が痛い中、宮本さんはすごく小さな声で僕に言う。
「じゃあ、放課後すぐ……北校舎の裏で待ってるから……一人で、来てね」
「僕一人で?」
教室へ戻ると、僕の机の前に、七~八人くらいの男女がそわそわしながら待っていた。
そしてその中の一人が、僕を見つけるなり。
「待ってたぞ、メガネ! 廻ちゃんにこれ、渡しておいてくれ」
「ねぇ、ねぇ。葉月くんにこのプレゼントと手紙、渡して。 返事はいいの! わかってるから……うっ、うぇ~ん」
「なぁ、牧村さんって赤と黄色、どっちが好きかなぁ?」
「放課後お腹空くでしょ? これ片岡くんに渡してくれる? 君の分もちゃんとあるから。あ、でもこっちはダメ! 片岡くんのなんだから!」
と、男子生徒を始めに、一気に僕へと押し寄せてきた。
うわ。最近欠席していたせいか、今回は多いな。
僕はちょっと待ってね、と皆に言うと、教室後ろに置いてある段ボール箱を二つ持ち、机の前にそれぞれ並べてから着席する。
さ、いつもの仕分けをしますか。
「はいはい~。こっちは葉月、そんでこっちは廻の受付です。手紙を用意している人は必ずプレゼントと一緒にしてくださ~い。用件のみでも縦に並んで順番にね」
と。
葉月、及び廻のファンたちは、ちゃっと動いて、順番に並び始めた。
なんとなくわかったかも知れないけど、これは葉月と廻が好きだという子達が、本人を前にはなかなか声をかけずらい(まぁ、二人は恋人設定だしね)、でも二人の傍にいるメガネなら声を掛けやすいし、物も頼みやすい、ってことから始まった、いわばパシり業務です。
そして、本人に直接渡そうとするより(なんか、ほとんど断られるらしい)、僕を介しての方が物が確実に渡る(ちゃんと受けとるのにな、二人とも)ということから、ここ一年くらいは続いてる僕のお仕事なんだ。
これがある前までは僕の机に人が集まるなんてことなかったのにね。
でも、そろそろ僕の名前、覚えて欲しいかな。旧姓でいいから。
そして三分後。
「ふぃ~。今日はこれで終わりかな」
「……、……くん」
「わっ、これアイス!? なま物と溶けるものはやめてって言ってるのに……」
「し……くん……、……りゅ、うくん」
「ん?」
いま、呼ばれた?
声がする方に顔をあげれば、一人の女子生徒がいた。大人しそうな女の子だ。
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「あの……私、隣のクラスの宮本っていうんだけど。……名字、変わったんだよね?」
「うん、そう。紫瞠って言うんだ。こんにちは」
僕が答えると、彼女は旧姓と今の姓を交互に呼んでいたらしい。でも、僕が目先のことで気づかなかったとか。
うわ、ごめん。名字であんまり呼ばれなれてなくて。
「……あの」
「葉月か廻へのプレゼント? それだったらこっちが……」
「き、今日の!」
「え?」
「今日の放課後、空いてませんか?」
……。
「えっと……僕?」
自分に指を向けながら、彼女……宮本さんに尋ねてみる。
彼女はコクリと、深く頷いた。しかも、なんかすごく思いつめてるっぽい。
ほっぺ、真っ赤だ。
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加えて、ちょっぴり涙目で頼まれた僕はわたわたと慌ててしまった。
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「今日は大事なお客さんが、マン……家にいらっしゃるから。六時までには帰らないといけないんだけど」
それまでだったら、放課後付き合うよ。だから、泣かないで? ね?
立ちあがった僕は宮本さんの両肩に手をかけて、顔を覗き込んだ。すると、彼女はさらに顔を真っ赤にさせて、「あ、ありがっ……とっ……」と、消え入りそうなほどか細く小さなお礼を言って俯いた。
えっ、ちょっと顔上げて? 泣かれちゃったら困るから! いろいろと!
クラスメートの遠慮ない視線が痛い中、宮本さんはすごく小さな声で僕に言う。
「じゃあ、放課後すぐ……北校舎の裏で待ってるから……一人で、来てね」
「僕一人で?」
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