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初夜でした
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すると。
格好良さは魅色ちゃんお墨付きの僕の旦那さまが、戻ってくるのが遅い僕たちを心配したのか、様子を見にバスルームまでやってきた。
「いつまで妻を独占しているつもりですか。魅色」
「あら。先輩奥様が新米奥様を気にかけちゃいけなくて?」
「必要ありません」
海さんは魅色ちゃんを冷ややかな目で一瞥した後、そのまま僕の方へとやってきて、僕を……
「うぶっ!」
自身の胸の中に閉じ込めるように抱きしめた。
まるで、魅色ちゃんから僕を守るかのようなこの体勢。
そして、改めて思い知らされる僕と旦那様とのこの体格差。
……。
だ、大丈夫。僕はまだ成長期。
これからだから!
そうだよ。これからボーン! って大きくなって、ムキーン! って、海さんより逞しくなって、バーン! って、格好いい奥さまになるんだ。
そしたら。
そ、そしたら……その……今後、今回みたいにえっちな展開になったとしても。突っ込まれるようなことになったとしても!
身体が大きくて、逞しくなって、ムキムキになった漢おとこの僕に海さんは絶対安心。僕だってどっからでもかかってこいやー! 状態で、彼を受け入れられるはずだ。
おお。成長した僕すごい。
よし。まずは牛乳の量を増やすところからだな。
海さんの中で、一人もくもくと今後の成長プランを考える僕は、彼と魅色ちゃんの間に流れるダイヤモンドダストに全く気づいていなかった。
「そんなに邪険にしなくてもいいんじゃなくて? 取って喰おうなんて考えてないんだし」
「考えていなくとも手をつけることはできるでしょう。触れることは大目に見ますが、彼は私のモノです」
「物? 物ですって? ムカつくわね。その言い方」
「どうとでも」
「……でも、ま。一旦は認めたんですから、とりあえず、引き下がるわよ。そのかわり」
「そのかわり?」
「新居を教えてちょうだい。どこかに用意したんでしょ。これからだって柳ちゃんに会うことくらいは許してもいいんじゃなくて?」
「……」
「ね? 柳ちゃんだって、今までみたいに私とお茶したり、お話したり、遊んだりしたいわよね?」
「うん! ゴリマッチョになって待ち受けるよ!」
「「は?」」
あ、ごめん。
魅色ちゃんがコホン、と一つ咳払い。
「とにかく。新居を教えてちょうだい」
魅色ちゃんは海さんを見て、そしてその海さんが僕を見た。じっと、見つめる彼のその目が、僕に答えを任すと言っているようで。
僕は首を縦に振った。
「考慮します」
その答えに、魅色ちゃんは満足そうに僕に微笑みかけた。
あ、よかったっぽい。
「それから、今夜はここに泊らせてもらうわ」
「え?」
ここって……ここに? 魅色ちゃんが? 一人で?
「いいでしょ? こんな深夜遅くに女一人を帰らすわけ?」
そりゃ、そうだけど。でも……。
「旦那を寄越せばいいでしょう」
うんうん。旦那さまが心配するよ?
「嫌よ。怒ってるんだから、あの人に」
あれ。めずらしく魅色ちゃんが旦那さまに対して顰め面だ。頬を膨らませて怒った表情を作る彼女が、少しだけ可愛く見える。
「喧嘩でもしたの?」
「だって、このこと黙ってたんだもの」
「?」
「あら、あの人言わなかった? ちゃんと今日……いえもう昨日ね。柳ちゃんに会ったはずなんだけど、私の旦那」
「魅色ちゃんの?」
はて。魅色ちゃんの旦那さまって誰だろ?
結婚してたことは知ってるけど、実は魅色ちゃんの旦那さまって紹介されたことがないから、顔を知らないんだよね。
う~ん。
今日出会った人って言えば、真城の人間と、海さんと、ホテル内で出会った人と、それから……。
考え込む僕から、いつまでたっても答えに辿りつかないだろうと踏んだ魅色ちゃんは、海さんに人差し指を向けてそうそうに解答を口にする。
「そこの美形の秘書よ。昨日、柳ちゃんを迎えに行ったでしょ?」
車で。
「ええ!? あの、寡黙な運転手さん!?」
格好良さは魅色ちゃんお墨付きの僕の旦那さまが、戻ってくるのが遅い僕たちを心配したのか、様子を見にバスルームまでやってきた。
「いつまで妻を独占しているつもりですか。魅色」
「あら。先輩奥様が新米奥様を気にかけちゃいけなくて?」
「必要ありません」
海さんは魅色ちゃんを冷ややかな目で一瞥した後、そのまま僕の方へとやってきて、僕を……
「うぶっ!」
自身の胸の中に閉じ込めるように抱きしめた。
まるで、魅色ちゃんから僕を守るかのようなこの体勢。
そして、改めて思い知らされる僕と旦那様とのこの体格差。
……。
だ、大丈夫。僕はまだ成長期。
これからだから!
そうだよ。これからボーン! って大きくなって、ムキーン! って、海さんより逞しくなって、バーン! って、格好いい奥さまになるんだ。
そしたら。
そ、そしたら……その……今後、今回みたいにえっちな展開になったとしても。突っ込まれるようなことになったとしても!
身体が大きくて、逞しくなって、ムキムキになった漢おとこの僕に海さんは絶対安心。僕だってどっからでもかかってこいやー! 状態で、彼を受け入れられるはずだ。
おお。成長した僕すごい。
よし。まずは牛乳の量を増やすところからだな。
海さんの中で、一人もくもくと今後の成長プランを考える僕は、彼と魅色ちゃんの間に流れるダイヤモンドダストに全く気づいていなかった。
「そんなに邪険にしなくてもいいんじゃなくて? 取って喰おうなんて考えてないんだし」
「考えていなくとも手をつけることはできるでしょう。触れることは大目に見ますが、彼は私のモノです」
「物? 物ですって? ムカつくわね。その言い方」
「どうとでも」
「……でも、ま。一旦は認めたんですから、とりあえず、引き下がるわよ。そのかわり」
「そのかわり?」
「新居を教えてちょうだい。どこかに用意したんでしょ。これからだって柳ちゃんに会うことくらいは許してもいいんじゃなくて?」
「……」
「ね? 柳ちゃんだって、今までみたいに私とお茶したり、お話したり、遊んだりしたいわよね?」
「うん! ゴリマッチョになって待ち受けるよ!」
「「は?」」
あ、ごめん。
魅色ちゃんがコホン、と一つ咳払い。
「とにかく。新居を教えてちょうだい」
魅色ちゃんは海さんを見て、そしてその海さんが僕を見た。じっと、見つめる彼のその目が、僕に答えを任すと言っているようで。
僕は首を縦に振った。
「考慮します」
その答えに、魅色ちゃんは満足そうに僕に微笑みかけた。
あ、よかったっぽい。
「それから、今夜はここに泊らせてもらうわ」
「え?」
ここって……ここに? 魅色ちゃんが? 一人で?
「いいでしょ? こんな深夜遅くに女一人を帰らすわけ?」
そりゃ、そうだけど。でも……。
「旦那を寄越せばいいでしょう」
うんうん。旦那さまが心配するよ?
「嫌よ。怒ってるんだから、あの人に」
あれ。めずらしく魅色ちゃんが旦那さまに対して顰め面だ。頬を膨らませて怒った表情を作る彼女が、少しだけ可愛く見える。
「喧嘩でもしたの?」
「だって、このこと黙ってたんだもの」
「?」
「あら、あの人言わなかった? ちゃんと今日……いえもう昨日ね。柳ちゃんに会ったはずなんだけど、私の旦那」
「魅色ちゃんの?」
はて。魅色ちゃんの旦那さまって誰だろ?
結婚してたことは知ってるけど、実は魅色ちゃんの旦那さまって紹介されたことがないから、顔を知らないんだよね。
う~ん。
今日出会った人って言えば、真城の人間と、海さんと、ホテル内で出会った人と、それから……。
考え込む僕から、いつまでたっても答えに辿りつかないだろうと踏んだ魅色ちゃんは、海さんに人差し指を向けてそうそうに解答を口にする。
「そこの美形の秘書よ。昨日、柳ちゃんを迎えに行ったでしょ?」
車で。
「ええ!? あの、寡黙な運転手さん!?」
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