28 / 54
「ゲーム2」3
しおりを挟む
バイロンは悲痛そうに眉を寄せて、俺の前で頭を下げた。
「俺達がついていながら、ミヤビを守ってやることができなかった。すまない」
責められるものだとばかり思っていた。だからバイロンのこの言動は予想外で、俺は狼狽えることしかできなかった。
「そんな……そんなの……謝るのはバイロンじゃなくてっ……」
「すまない」
「か、顔を上げて、バイロン。雅が罰を受けたのは、バイロン達のせいじゃ……」
そこまで言ってハッとした。これはついさっき、セルの前で俺が言ったことと同じじゃないのか? と。そしてようやく気づいたんだ。
そうだ。雅が罰を受けたのは、誰のせいでもない。この理不尽な状況を作った黒幕のせいなんだ、と。
ゲームに参加しなければ脱出できないというルールから、すべてに従わなければならないとつい思い込んでしまっていた。だからといって、この中の誰かが罰を受けていいはずがない。それは俺自身にも言えることだったんだ。
俺はバイロンに顔を上げてもらい、彼の首元に巻きつけられている首輪に視線をやった。
「今さらだけど、バイロンがここに来て、首にそれをつけてるってことは、次のプレイヤーはバイロンってことでいいんだよな?」
「ああ。戻ってきたセルから端的に説明は受けた。あの壁面に表示されるルールに従えばゲームクリアになり、ここから脱出できるんだろう?」
「うん。でも、そのゲーム数が残りいくつあるのかはわからないんだけどね。『チュートリアル』はただのクイズ……問答だったんだけど、本番からその…………き、キス……しろって……傾向がガラッと変わっちゃって……」
「それも見ていたから知っている。あの状況でセルと接吻を始めたものだから、ルイスと共に少々驚いてしまったが……」
「う……」
そう言われて、俺は俯いた。ゲームの一部始終を見られていたことはわかっていたはずなのに、セルとのあの濃厚なベロチューまでバイロン達に見られていたのかと思うと、顔から火が出るようだ。
ついでにセルの唇の感触まで思い出してしまった。うう……同じ男なのに滑らかで、柔らかかったなぁ。俺は自分の唇を隠すように、手の甲で押さえた。
「今後も……そ、そういったルールが表示されるのかもしれない。その時は……ごめん……」
相手が俺で、という意味でバイロンに謝ると、彼は首を傾げた。
「何故、スグルが謝るんだ?」
「なぜって……相手がこんな俺、だからだよ……」
これが絶世の美女相手なら、命懸けのゲームでもやりがいはあっただろう。しかし実際の生贄は、大して見た目もよくないただの陰キャ映画オタクだ。しかも男。キス以上のことが待っていたら、雅のように拒否されても仕方がないけれど、命が懸っているのはプレイヤー自身だからな……。嫌だろうが吐きそうだろうが、やるしかない。
せめて魔法で顔くらい変えられればいいんだろうけれど、無能の俺にそんな芸当ができるはずもない。できるのは、こうやって事前に謝っておくことくらいだ。
「……スグル。一つ、質問をしてもいいか?」
「え? うん」
何だろう? と、俺はバイロンを見上げた。
「セルとの接吻は嫌だったか?」
「へ?」
いきなり何の質問だ? と呆気にとられてしまったけれど、バイロンは「どうなんだ?」と言わんばかりの顔で俺を見つめた。
俺は「ええと……」と、考えるように視線だけを天井にやった。
「命が懸かっていたし……嫌とか、不快とか、嫌悪を感じている暇も、なかった……かな」
「つまり嫌ではない、と」
「う、うん」
むしろあちらの方が嫌だったんじゃないだろうか。俺は頷きながらそう思った。
するとバイロンは、自分の顎に拳を添えながらボソッと呟くように言った。
「なら……大丈夫か」
「え、何? よく聞こえなかっ……」
「それより、壁面の文字が変化したみたいだぞ」
「えっ?」
俺が聞き返すよりも先に、バイロンが壁面を見上げながら指をさした。そこには……
『ゲーム2。
・プレイ人数2人。プレイヤー1、生贄1。
・クリア条件→プレイヤーが生贄の両手あるいは両足の爪をすべて剥ぐこと。もしくはプレイヤーが生贄の半身(上半身、下半身のどちらか)を余すことなく舌で舐めきること。どちらか一方を選び、実行しなさい。制限時間は30分。
・注意事項→魔法の使用は可。時間切れ、または生贄が気絶した場合、失格とする』
「俺達がついていながら、ミヤビを守ってやることができなかった。すまない」
責められるものだとばかり思っていた。だからバイロンのこの言動は予想外で、俺は狼狽えることしかできなかった。
「そんな……そんなの……謝るのはバイロンじゃなくてっ……」
「すまない」
「か、顔を上げて、バイロン。雅が罰を受けたのは、バイロン達のせいじゃ……」
そこまで言ってハッとした。これはついさっき、セルの前で俺が言ったことと同じじゃないのか? と。そしてようやく気づいたんだ。
そうだ。雅が罰を受けたのは、誰のせいでもない。この理不尽な状況を作った黒幕のせいなんだ、と。
ゲームに参加しなければ脱出できないというルールから、すべてに従わなければならないとつい思い込んでしまっていた。だからといって、この中の誰かが罰を受けていいはずがない。それは俺自身にも言えることだったんだ。
俺はバイロンに顔を上げてもらい、彼の首元に巻きつけられている首輪に視線をやった。
「今さらだけど、バイロンがここに来て、首にそれをつけてるってことは、次のプレイヤーはバイロンってことでいいんだよな?」
「ああ。戻ってきたセルから端的に説明は受けた。あの壁面に表示されるルールに従えばゲームクリアになり、ここから脱出できるんだろう?」
「うん。でも、そのゲーム数が残りいくつあるのかはわからないんだけどね。『チュートリアル』はただのクイズ……問答だったんだけど、本番からその…………き、キス……しろって……傾向がガラッと変わっちゃって……」
「それも見ていたから知っている。あの状況でセルと接吻を始めたものだから、ルイスと共に少々驚いてしまったが……」
「う……」
そう言われて、俺は俯いた。ゲームの一部始終を見られていたことはわかっていたはずなのに、セルとのあの濃厚なベロチューまでバイロン達に見られていたのかと思うと、顔から火が出るようだ。
ついでにセルの唇の感触まで思い出してしまった。うう……同じ男なのに滑らかで、柔らかかったなぁ。俺は自分の唇を隠すように、手の甲で押さえた。
「今後も……そ、そういったルールが表示されるのかもしれない。その時は……ごめん……」
相手が俺で、という意味でバイロンに謝ると、彼は首を傾げた。
「何故、スグルが謝るんだ?」
「なぜって……相手がこんな俺、だからだよ……」
これが絶世の美女相手なら、命懸けのゲームでもやりがいはあっただろう。しかし実際の生贄は、大して見た目もよくないただの陰キャ映画オタクだ。しかも男。キス以上のことが待っていたら、雅のように拒否されても仕方がないけれど、命が懸っているのはプレイヤー自身だからな……。嫌だろうが吐きそうだろうが、やるしかない。
せめて魔法で顔くらい変えられればいいんだろうけれど、無能の俺にそんな芸当ができるはずもない。できるのは、こうやって事前に謝っておくことくらいだ。
「……スグル。一つ、質問をしてもいいか?」
「え? うん」
何だろう? と、俺はバイロンを見上げた。
「セルとの接吻は嫌だったか?」
「へ?」
いきなり何の質問だ? と呆気にとられてしまったけれど、バイロンは「どうなんだ?」と言わんばかりの顔で俺を見つめた。
俺は「ええと……」と、考えるように視線だけを天井にやった。
「命が懸かっていたし……嫌とか、不快とか、嫌悪を感じている暇も、なかった……かな」
「つまり嫌ではない、と」
「う、うん」
むしろあちらの方が嫌だったんじゃないだろうか。俺は頷きながらそう思った。
するとバイロンは、自分の顎に拳を添えながらボソッと呟くように言った。
「なら……大丈夫か」
「え、何? よく聞こえなかっ……」
「それより、壁面の文字が変化したみたいだぞ」
「えっ?」
俺が聞き返すよりも先に、バイロンが壁面を見上げながら指をさした。そこには……
『ゲーム2。
・プレイ人数2人。プレイヤー1、生贄1。
・クリア条件→プレイヤーが生贄の両手あるいは両足の爪をすべて剥ぐこと。もしくはプレイヤーが生贄の半身(上半身、下半身のどちらか)を余すことなく舌で舐めきること。どちらか一方を選び、実行しなさい。制限時間は30分。
・注意事項→魔法の使用は可。時間切れ、または生贄が気絶した場合、失格とする』
43
お気に入りに追加
890
あなたにおすすめの小説
モブの俺が甥っ子と同級生からエロいいじめをうけまくるのは何故だ
爺誤
BL
王立魔法学園のモブとしてごく普通に生きていた俺は、ある日前世の自分が現代日本人だったことを思い出す。だからといってチートがあるわけではなく、混乱している間に同い年の甥っ子に性的な嫌がらせを受けてメス堕ちしてしまう。そこから坂を転げ落ちるように、あちこちからエロいいじめを受けるようになり……。どうなってんの俺!?
※なんでも美味しく食べられる方向けです。地雷のある方はご遠慮ください。
ムーンライトノベルズにも投稿しています。
R18禁BLゲームの主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成りました⁉
あおい夜
BL
昨日、自分の部屋で眠ったあと目を覚ましたらR18禁BLゲーム“極道は、非情で温かく”の主人公(総攻め)の弟(非攻略対象)に成っていた!
弟は兄に溺愛されている為、嫉妬の対象に成るはずが?
R18、最初から終わってるオレとヤンデレ兄弟
あおい夜
BL
注意!
エロです!
男同士のエロです!
主人公は『一応』転生者ですが、ヤバい時に記憶を思い出します。
容赦なく、エロです。
何故か完結してからもお気に入り登録してくれてる人が沢山いたので番外編も作りました。
良かったら読んで下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる