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「ゲーム1」3(※)

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※グロ、猟奇的な描写があります。苦手な方はご注意ください。





「くそっ……! こんなもん、聖なる力でとっとと消し炭にしてや……うわあああ!?」

 雅が聖なる力とやらを使おうと両手を広げるも、蛇達はそれを阻止するかのごとく、外からは彼の手が見えなくなるまでみっちりと絡みついた。腕一本に、何十匹……いや何百匹の蛇が絡んでいるのだろう。蛇が好きな人間でも、こんな大量の蛇に絡まれて喜ぶやつはただのマゾだ。それに顔がない分、不気味さが増している。

 広がる光景は、見ているこっちが吐き気を催しそうになるほど残酷だった。

「クッ……ひいっ、やめっ……やめろっ……うわああっ……!?」

 蛇達は雅の着ている上着を難なく捲り上げると、彼の上体を外に晒した。筋がくっきりと浮き出る自慢の腹筋や厚い胸周りを、蛇達はチロチロと舐め始めた。蜂蜜や砂糖水の類でも纏われているのだろうか? 蛇達は執拗に、そして美味そうに彼の身体を舌で舐めまくる。ぷっくりと膨らむ二つの乳首や脇の下なども、数多の舌で舐められ雅は身悶えた。

「はあっ……あっ……んっ……はあ、はあっ……や、やめっ……やめれっ……んっ……ッ……んんっ……んぎいいっ!?」

「雅っ……!?」

 舐められることでの擽り地獄により、雅の顔は紅潮さえしていた。しかし、ビクビクと悶えていたそれが一変する。蛇達は待ってましたとばかりに、ギザギザの鋭い歯をもって雅の身体へ一斉に噛みつき始めた。

「いでっ……い……いだあっ……っ……いっだあああ!?」

 雁字搦めとなってしまった雅は絶叫する。その表情は、苦悶に満ちていた。そうだろう。一匹、一匹は小さくとも、無数の針が乱暴に刺さっているようなものなんだ。身体中に穴を開けられて、苦しくないはずがない。

「う、うぐっ……ひっ、ひっく……ぐううっ……!」

 これはあの雅なんだろうか? 涙と鼻水で顔をグシャグシャにさせた彼は、別の何かに見えた。いつも俺を見下し、馬鹿にしていたあの高慢ちきな自信家の姿は、今やこれっぽちも見当たらない。

 確かに雅は酷いやつだ。俺に対してカツアゲしたり、力ずくで言うことを聞かせたりと、およそ兄に対する接し方ではなかった。そんな彼に、俺は何もできなかった。言えなかった。少しでも反論しようものなら、口を塞がれて頭を床や壁に無理やり押し付けられたから。

 だから、日頃の行いはいつかその身に返ってくるぞと、心の中で思っていた。でも、でも……こんな残虐な報いは、一ミリたりとも望んじゃいない。

「う、ぎっ……っく……もお、ひっく……噛むなっ……っ……噛むなああ!」

「みや、び……」

 雅は嗚咽を漏らしながらも力を振り絞り、壁面に向かって怒号した。

「うぉ、い……っ……ぺ、ペナルティはあっ……生贄が、う、受けんだろぉ!? 俺はっ……俺は……っ……プレイヤーらぞっ……! あにっ……兄貴をっ……やれよぉ……な、なんれ……俺が、こんな目に……がぼおっ!?」

 しかし怒鳴ったことで大口いっぱいに開けたそこから、数匹の蛇がしめしめと侵入する。雅の口は閉じれなくなった。うぞうぞと蠢く蛇の中で、ガキッ、と何かが外れたような音が響いた。

「み、みや……」

「うぐっ……ぶっ、うぶぶう!?」

 自分の顔面から血の気が引いていくのがわかる。これは凌辱なんてものじゃない。拷問だ。

 白目を剥いてボロボロと涙を流す彼を前に、吊るされた俺は為す術がなかった。ただ呆然と、カチカチと奥歯を鳴らしながら、それが終わるのを見続けるしかなかった。

「ゆる……ゆるじ……ん、ぶ……んんんー!!」

 懇願するような声が聞こえた気がした。

 次第に雅の身体は増え続ける大量の蛇で見えなくなっていった。それが人の形から丸い球体のようなものへと変貌すると、蛇の塊はそのままゆっくり床へと沈んでいった。

「み……雅っ、雅ー!」

 俺は沈んでいく蛇達に向かって叫んだ。でも、そこから雅の声は返ってこない。蛇の塊はズブズブと沈み、やがて姿を消した。

 雅のいた場所には何も残らなかった。まるで、そこには最初から何もなかったかのように、髪の毛の一本すら見当たることなく綺麗になっていた。

「そんな……こんなの……こんなのって……」

 俺の瞳から、ポロポロと涙が零れた。

 どうしてだ? いったいなぜ、俺ではなく雅が罰を受けたんだ? だって、ゲームのルールには、生贄にとってとっても怖いお仕置きが待ってるって……

『ただし、ゲームをクリアできなかった場合はペナルティです。生贄の人、ざーんねん。とっても怖いお仕置きが、あなたを待っていますよ』

 俺はあの時の文面を思い出した。ゲームをクリアできなかった場合はペナルティ。そう書かれていた。でもそのペナルティを生贄が受けろ、とは書かれていなかった。

「ま、さか……」

 俺はごくりと唾を飲み込んだ。まさか、この残酷な光景を見ることこそが、俺にとっての怖いお仕置きなのか?
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