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翌日、約束通り一緒に登校し、吉良はおどおどしつつも頑張って本来の声でクラスの奴らに話しかけた。男連中はだいたい俺と似たような反応ですぐに吉良を受け入れた。野郎は単純なもんだ。女子は変わらず、いや余計にコソコソ話すようになった。何でだよ。
その理由を知らない俺は学校、昼飯、登下校など常に吉良といるようになった。他の奴とも気が知れるようになった吉良だが、なんだかんだ俺といる方がいいらしい。俺も吉良といるのが楽しかった。常にブレザーなので見てて暑苦しかったけど。
あんまりにも二人でつるむようになったもんだから、ある日コソコソ話をしてばかりだった女子の一人、眼鏡装備の委員長から……
「山木は吉良君が大好きなのね」
と、言われた。「当たり前だろ」って返したら隣にいた吉良が俯いて体をモジモジさせた。顔は相変わらず髪で隠れてよく見えないけれど、襟元から覗く首が真っ赤になっていた。はは~ん。照れてやがんな。もうちょい言ってやろ。
「何せ、一目惚れだったしな~」
「えっ!?」
吉良が驚いた様子で俺を見上げる。その時、前髪からこいつの目元が現れて、初めてはっきりとその顔立ちを目の当たりにした。
俺の方が背が高いのと、吉良がいつも俯きがちなのが相まって、なかなか拝むことのなかったその面は、デブなのが勿体ねえくらい愛らしかった。しかも目の色が茶色ときてやがる。
特別、端正というわけじゃない。けれど頬が赤く、また瞠若した表情はまるで小動物のようで……でもすぐに吉良が俯いたせいで見られたのはほんの一瞬のことだったけど。
ドキリとした。
ん? なに、そのドキリって。え……待て待て待って。意味、わかんねえんだけど。ビックリしたせい? 吉良の面を拝んでビックリしたせいか? 落ち着け~。落ち着こう、俺。そんなに驚くことじゃねえぞ~。
それに吉良! お前、そんなに照れることか? こっちまで照れるだろうがよ。妙にドキリとするだろうが。そんなに恥ずかしがんな。意味合いが変わってくるだろうが。確かに惚れたけどよ。それは声だ、声! 決してお前のことをそういう意味で惚れたってわけじゃ……
「吉良君も山木のことが好き、なの?」
「え……それは……」
って、委員長ぉ! 勝手に話を進めないでくれるぅ!?
俺は慌てて間に入った。
「おいおい。そんなん当たり前じゃねえか。わざわざ聞くことじゃねえだろ? な、吉良。お前からもなんか言ってやれ」
「そ、そうだよね」
一呼吸置いてから、吉良が意を決したように何故か俺に体を向けた。
……ん?
「僕……夏生君のこと、好き……だよ」
ん……んんんん!?
「きゃー!!」
「こらこら~! もう鐘が鳴っとるぞ。遊んでないで席に着きなさい」
促しといて何だという話だ。けれど、吉良が俺の名前を呼んだこと。俺に向かってあのイイ声で「好き」と言ったことで。
ドキリからドキンへと胸の音が変わった気がした。
いや……いやいやいや! 待て待て待て!
俺が吉良に惚れたのは声であって、そういう意味じゃない。ソッチの意味じゃないんだよ、そうだよ落ち着け俺! 俺が好きなのはムッチムチのおっぱいボインなお姉さんであって、ムッチムチの腹がバインな男じゃないわけよ! わかる!?
「ほら、山木! 鐘が鳴っとるんだぞ、わかっとるか?」
「わかるか、ボケー!!」
この後、職員室に呼ばれたのは言うまでもない。
その理由を知らない俺は学校、昼飯、登下校など常に吉良といるようになった。他の奴とも気が知れるようになった吉良だが、なんだかんだ俺といる方がいいらしい。俺も吉良といるのが楽しかった。常にブレザーなので見てて暑苦しかったけど。
あんまりにも二人でつるむようになったもんだから、ある日コソコソ話をしてばかりだった女子の一人、眼鏡装備の委員長から……
「山木は吉良君が大好きなのね」
と、言われた。「当たり前だろ」って返したら隣にいた吉良が俯いて体をモジモジさせた。顔は相変わらず髪で隠れてよく見えないけれど、襟元から覗く首が真っ赤になっていた。はは~ん。照れてやがんな。もうちょい言ってやろ。
「何せ、一目惚れだったしな~」
「えっ!?」
吉良が驚いた様子で俺を見上げる。その時、前髪からこいつの目元が現れて、初めてはっきりとその顔立ちを目の当たりにした。
俺の方が背が高いのと、吉良がいつも俯きがちなのが相まって、なかなか拝むことのなかったその面は、デブなのが勿体ねえくらい愛らしかった。しかも目の色が茶色ときてやがる。
特別、端正というわけじゃない。けれど頬が赤く、また瞠若した表情はまるで小動物のようで……でもすぐに吉良が俯いたせいで見られたのはほんの一瞬のことだったけど。
ドキリとした。
ん? なに、そのドキリって。え……待て待て待って。意味、わかんねえんだけど。ビックリしたせい? 吉良の面を拝んでビックリしたせいか? 落ち着け~。落ち着こう、俺。そんなに驚くことじゃねえぞ~。
それに吉良! お前、そんなに照れることか? こっちまで照れるだろうがよ。妙にドキリとするだろうが。そんなに恥ずかしがんな。意味合いが変わってくるだろうが。確かに惚れたけどよ。それは声だ、声! 決してお前のことをそういう意味で惚れたってわけじゃ……
「吉良君も山木のことが好き、なの?」
「え……それは……」
って、委員長ぉ! 勝手に話を進めないでくれるぅ!?
俺は慌てて間に入った。
「おいおい。そんなん当たり前じゃねえか。わざわざ聞くことじゃねえだろ? な、吉良。お前からもなんか言ってやれ」
「そ、そうだよね」
一呼吸置いてから、吉良が意を決したように何故か俺に体を向けた。
……ん?
「僕……夏生君のこと、好き……だよ」
ん……んんんん!?
「きゃー!!」
「こらこら~! もう鐘が鳴っとるぞ。遊んでないで席に着きなさい」
促しといて何だという話だ。けれど、吉良が俺の名前を呼んだこと。俺に向かってあのイイ声で「好き」と言ったことで。
ドキリからドキンへと胸の音が変わった気がした。
いや……いやいやいや! 待て待て待て!
俺が吉良に惚れたのは声であって、そういう意味じゃない。ソッチの意味じゃないんだよ、そうだよ落ち着け俺! 俺が好きなのはムッチムチのおっぱいボインなお姉さんであって、ムッチムチの腹がバインな男じゃないわけよ! わかる!?
「ほら、山木! 鐘が鳴っとるんだぞ、わかっとるか?」
「わかるか、ボケー!!」
この後、職員室に呼ばれたのは言うまでもない。
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