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三章 ―旅立ちの時― (ここからが本番)

―不穏な予兆― ?

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【とある国の廃墟にて】


「時は満ちた。さあ、俺達の復讐戦いを始めよう」
 満月を背に爛々とアメジストの瞳を輝かせる男性は、思わず畏怖してしまうほど美しく、そして神々しかった。
「私達の敵は全ての人間と魔族、そして私達の計画を邪魔しようとする全ての存在よ」
 男性の隣にはあでやかな女性が立ち、憎しみを写すアメジストは目が離せないほど綺麗だった。
「我らの目下の目的は人間王とその血族を根絶やしにする事。まず王族から排除し、一気に人間を衰退させよ」
 どこか人形のような美しさを持ち、アメジストの瞳を憂いに染める人間は胸が締め付けられるほど儚かった。
 壇上に立つ三人はどこか現実離れをした美しい紫色の瞳を持ち、三人の言葉を聞いた仲間は誰もが見惚れ、彼らの言葉に心酔したようにうっとりと聞いていた。
「ようやく、わらわも動くことができるのう。黒羽くろは虎影とらかげ、そち達の働きに期待するぞ」
「はい、姫様」
「はい、姫君の為なら何でもしますよ。同胞殺しさえも、ね」
 艶やかな黒髪と黒曜石を思わせる黒い瞳の男女は、その瞳に憎しみの炎をちらつかせ、腐りきった祖国を憎む。
「……チビ巫女。俺がお前の足になってやる。俺の背に乗れ」
 茶褐色の髪の亜人はヒトの姿から獅子の姿になり、金色の瞳に密かな恋情をちらつかせ、巫女を見つめる。
「私はルヴィラよ。チビ巫女と呼ばないで」
 人間のせいで右脚の機能を失った小さな巫女は、壇上にいる人間の髪と同じ色の瞳に憎しみを覗かせる。
「エルフを守るダークエルフさんがいるなんて珍しいわね。ねぇ、私達とチームを組みましょう?」
「私達、人間が大嫌いなの。戦闘特化のダークエルフさんと一緒に人間を殺したいわ」
 白い髪に綺麗な青い瞳を持つ亜人の双子は、息を呑むほどの殺意を瞳に宿して両脇にそれぞれ腕を絡め、ダークエルフを見上げる。
「……俺の目的の邪魔をしないと約束するなら、承諾する」
 赤い瞳に絶望と失意を色濃く映すダークエルフは、双子の殺意は利用できると踏み承諾する。
「……」
 喪のドレスに身を包み壇上の人間を静かに見上げる女性は、ベールの奥の暗い瞳に密かな悲しみと愛を交錯させてただ静かにそこにいた。
今度こそ・・・・、人間を滅びへ導かん」
 壇上の男は手に持っていた盃を掲げてそう言うと、酒を一気に飲み干し、魔力で盃を粉々に砕いた。それに続いてその場にいた全員が盃を煽り、盃を魔力で粉々に砕いた。
「健闘を祈る」
 男がそう言うと各々が各々の復讐戦いを果たすために各地へ散っていったのだった。
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