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二章 ―少年から青年へ― (読み飛ばしOK)
―ドラゴンの初恋― 6
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アイネと心も身体も通わせた日の昼頃、ドラゴンはようやく城に戻れる程度に体調が回復し、上司である班長のザック、小隊長のレイゲン、団長のラエルに謝罪と報告をすることが出来た。さらに、ドラゴンを昼夜心配してミスを連発していた王とデルトア、自ら捜索をしに行こうとしていた王妃とリオにも心配をかけた事への謝罪をした。そしてこの日は心配性な大人達の強引な勧めで医務室でお世話になり、念のために解毒剤を飲んで眠りについた。
そしてようやく元気になったと認められた一週間後、ドラゴンは休んでいた約十日分の業務と訓練を取り戻すべく朝から晩まで仕事に励み、その働きぶりは周囲から若干引かれるほどだった。そして休みの日になるとアイネの所に行き、大通りを歩いて回ったり一緒に馬に乗って綺麗な景色を見に行ったりしていた。
そんな忙しくも充実した日々を送り、厳しい寒さが和らいで生き物たちが活動を始める頃になると、ドラゴンはアイネを仲間に紹介するようになり、仲間たちは美人な恋人を羨んだが幸せそうなドラゴン達を祝福した。
しかしドラゴンは久し振りに向かった情報屋で衝撃的なことを聞くことになった。
「マスター…その情報は確実なのか?」
「あぁ、この情報は確実だ」
情報屋のマスターはタバコの煙をふぅと吐き出すと、動揺するドラゴンを見てフッとからかうように笑った。
「それにしてもお前がそんなに動揺するなんて、王宮を襲撃する賊がいると教えた時と、お前の探し人をこれ以上探しても無駄だと拒否した時以来だな」
「……からかわないでくれますか。…はぁ……今マスターが言ったことが事実なら、早めに対処しないとな」
ドラゴンは仮面に手を当てて、哀しみと苦しさを混ぜたような複雑そうな表情で嗤った。
「近衛騎士サマも大変だねぇ」
「それが俺達の仕事です。あと、大きな声でそんなことを言わないでいただけますか。騎士が出入りしてると都合が悪いと言ったのはマスターですし、俺としても困ります」
「そうだったな。んじゃ、一万ヤーツだ」
「また何かあったら頼みます」
ドラゴンは丁度の金額よりも少し多めに渡して店を出ると、星を映さない暗い夜空を見上げて大きなため息をついた。
「……もう、大切な人を失いたくない。その為に俺が出来ることをしなきゃな」
ぽつりと呟いて決意を固めると、迷いを断ち切るように力強い一歩を踏み出して城へと戻り、ラエルに得た情報を報告した。
「……分かった。いつも報告してくれてありがとな。…ドラゴン、今回は──」
「俺も参加します。俺が助けたいんです。だから、参加させてください。お願いします」
深く頭を下げるドラゴンに、ラエルは腕を組んでため息をつくと苦笑を漏らした。
「分かった。そこまで言うなら認める。だが、行くからにはちゃんと仕事をしろよ」
「はいっ! ありがとうございます!」
ドラゴンはもう一度頭を下げると「失礼しました」と言ってラエルの部屋を出ていった。
そして翌日、作戦を行う王城衛兵や警邏隊を集めてドラゴンを主体に作戦を立てると何度か合同訓練をしてから解散となった。
「ドラゴン、いつになく張り切ってるね」
この日の業務や訓練が終わり食堂で夕食を食べていると、エレンが向かい側に座って山盛りの肉やパンを食べ始めた。
「エレンさん、よくそんなに食べられますね」
「毎日訓練で体力を使うからね~、ドラゴンももっと食べないと。それで? 今回張り切ってるのはガールフレンドが関わっているから?」
「……はい」
「団長から聞いたよ。アイネさんが賊の頭である…という情報が入ったらしいね」
エレンの言葉にドラゴンは苦痛を堪えるような表情になり、前髪を握りしめた。
「信じたくはないですけど……あのマスターが確実だと言った場合、デマである可能性はとても低い。だけど、自分の目で見ないと信じられないんです。だから、団長に無理を言って作戦に入れてもらいました」
「…ま、確かに自分の目で見ないと信じられないよね。特に、大切な恋人ならなおさら。…ドラゴン、どんな結果だとしても、俺達の守るべきものを見失わないようにね」
「はい、分かっています。俺が忠誠を誓ったのは次世代のこの国を…すべての人間を統べる、人間王陛下…リオ殿下です。だから、俺はどんな結末になろうともこの任務を遂行します。民の暮らしを脅かす賊は、しかるべき罰を受けなければなりませんから」
「そっか。それだけの覚悟があるなら、心配いらないね」
エレンがホッとしたように笑うとドラゴンは複雑そうな表情で「俺はもう、見習いの近衛騎士じゃないですから」と答えて水を飲み干し、「では、失礼します」と言って食べ終えた盆を返却口に返した。
「……また、笑顔を失うような事にならなきゃいいけどなぁ。もう、からかえないドラゴンはこりごりだよ」
食堂を出ていくドラゴンの背を見送りながら、エレンはぽつりと呟いて肉にかぶりついた。
翌日、ドラゴンは業務の休憩の合間にアイネの所へ向かった。着替える時間もないため制服のままだが、ドラゴンは気にすることなく裏路地に入り、アイネの家へまっすぐと向かった。
「……アイネ、いる?」
ドアをノックして少しためらいがちに声をかけると、すぐにドアが開いた。開かれたドアの向こうには、ドラゴンを見て驚いたような表情を浮かべるアイネがいて、ドラゴンは「驚かせてごめん」と苦笑をした。
「ううん、別にいいよ。でもドラゴン、いきなりどうしたの? 今日は仕事じゃ……」
「あぁ、今は仕事の休憩中なんだ。…少し中に入ってもいい?」
「え、今はちょっと…部屋が散らかってるし」
「……アイネは嘘をつくのがうまいからいつも見抜けないんだけど、今日は動揺してる? 嘘だって、顔に書いてある。中に、誰かいるね」
ドラゴンの言葉にアイネはキッと視線を鋭くしてドラゴンの胸を押した。
「帰って。中に誰がいようとあなたには関係のない人たちだから」
「………アイネ、君が賊の頭って噂があるんだけど、本当?」
直球で質問をするドラゴンに、アイネは動揺するようにドラゴンから目をそらして一歩後ずさった。ドラゴンの目を見てアイネは本能的にごまかしはきかないと悟ったのか、再びドラゴンの方を向いた時、アイネの瞳はいつもと全く異なっていた。
「……だとしたら、ドラゴンはあたしを捕まえるの?」
「……アイネ、誤解しないでほしい。俺はアイネと一緒に居たいんだ。だから、俺を君の仲間にしてほしい」
ドラゴンはそう言ってアイネを抱きしめるが、アイネはドラゴンの腕を振り払ってドラゴンを睨みつけた。
「そんな言葉、信じられるわけないわ。ドラゴンは王家に忠誠を誓ったんでしょう? それを誇らしげに話してくれたのは他でもないあなたよ。そんなあなたが、簡単に賊になりたいなんて言うはずがない。あたしを捕まえるために、そう言っているんでしょう?」
「違う。確かに、俺は王家に忠誠を誓ったし、近衛騎士であることに誇りも持っていた。だけど、それ以上に大切な人が出来たんだ。それが、アイネなんだ。だから俺は、近衛騎士であるという誇りを捨てて賊になり下がったとしても、アイネの側にいたい。お願いだ、俺を君の仲間にして、傍にいさせてくれ」
まっすぐな愛の言葉にアイネは、否応なしに赤面させられ、睨んでいたはずの目もいつの間にかうるんだ瞳に変わると、アイネはドラゴンを抱きしめた。
「……その言葉、信じてもいい?」
「あぁ、信じてほしい」
ドラゴンの言葉にアイネはポロリと涙をこぼした。
「嬉しい。ずっと…ずっと不安だったの。いつドラゴンがあたしの正体に気付いて、離れていくか…。あたしの正体を知ってもなお、一緒に居たいって言ってくれて、本当に嬉しい…!」
「アイネ、本気かよ! そいつの言葉を信用してもいいのかよ!」
「俺達は、そいつを信用することは出来ないね。頭の命令だったとしても」
中から数人の男が顔を出し、近衛騎士の制服を着ているドラゴンを怪しんで拒絶の言葉を投げ掛けた。
「なら、これならどうだ?」
ドラゴンはアイネから離れるとツカツカと家の中に入り、制服を脱いでそのまま暖炉の火の中に放り込んだ。するとすぐに制服に火が燃え移り、メラメラと火力を上げる。
「お、おい」
「近衛騎士の制服は王妃様から直接賜り、祝福を受ける。その祝福を受けた制服を着て、王に忠誠を誓うんだ。だから、近衛騎士の制服は忠誠の証でもある。俺は、その忠誠を今ここで燃やした。この行為は反逆行為だ。だからもう、俺も王家の敵だ」
暖炉の火を背にして何の感情も映し出さない瞳でそう言うドラゴンに、反対意見を言っていた男達も押し黙り、冷え冷えとするアメジストの瞳に魅入られたようにドラゴンから目をそらすことが出来なかった。
「あんた達、これでドラゴンが仲間になることに文句はないよね?」
アイネの言葉に男達は渋々といった体で頷き、ドラゴンはアイネがまとめるグループの仲間になった。
それからのドラゴンの暮らしは規則に縛られないとても自由な生活が待っていた。今まで常になんらかの緊張感に縛られていたドラゴンは、その何にも縛られない自由な生活をとても新鮮に感じた。
「こんなに何もしない日は初めてかもしれないな。とても自由で、俺にとってこういうのは新鮮だ」
「フフ、全く何もしないわけじゃないよ。明日は闇市で薬を売る予定だから」
「薬?」
「うん。気持ちよくなれる薬。結構リピーターがいるから儲かるのよ」
アイネはそう言いながら床下を開けると木箱を取り出して、その蓋を開けた。その中には小分けにされた白い粉が入っていて、そのうちの一つをドラゴンは手に取った。
「これは…、麻薬か?」
「そう。麻薬の中でも中毒性の高いものよ。…やっぱり、まだあたしのやってることに戸惑う?」
じっと麻薬の入った袋を見つめるドラゴンに、アイネは不安そうな表情でドラゴンに寄り添うと、ドラゴンはそんなアイネを抱きしめて苦笑をした。
「まあ…そうだな。でも、俺はもう取り締まる方の人間じゃない。これからアイネと一緒に暮らしていくために力を尽くすよ。でもアイネ、こんなにたくさんの薬、どうやって手に入れているんだ? 結構たくさんあるから、集めるのは大変だろう?」
「それは秘密。ドラゴンを信用しないって訳じゃないけど、まだドラゴンには教えられないわ」
ドラゴンが持っている麻薬の小袋を取り返しながら、いたずらっぽく笑うアイネに、ドラゴンは「そうか」と特に気にした様子もなくアイネの様子を眺めていた。
そうしてドラゴンは一週間ほどアイネの家で過ごしていると、路地裏に住む者達がどのような生活を送っているのかが見えるようになってきた。そして分かったことは、暗い裏路地だったとしても人々の暮らしまでもが暗いわけではないということと、王宮にいる人たち以上に結束力があるということだった。その基盤となっているのが「助け合い」であることも、ドラゴンは一週間見ていて知り、明るく逞しく生きる人々の姿にドラゴンは幸せを感じた。
しかしその一方で、アイネ達が賊として活動する姿には密かに心を痛め、暴力によって強奪する事はやはり許されざることであるという思いが消えることなくくすぶり、行動を起こせないことをもどかしく思った。
そしてさらに一週間の時が過ぎると、ドラゴンは集会場に案内された。
「そろそろドラゴンも私たちの集会場を知っておいてもいいと思うの。一緒にこれからの活動のことも話したいと思ってるし、ようやく野郎どももドラゴンのことを認め始めたしね」
「それは嬉しいな」
「とはいえ、俺達はまだ、完全にお前のことを信用したわけじゃねぇからな。少しでも変な行動を起こしたら、しかるべき対応を取らせてもらうからな」
「肝に銘じておこう」
男の言葉にドラゴンは微笑をしながらそう答え、この日の集会が始まった。この集会は、アイネ達のグループだけが集まっているわけではなく、他の賊グループも集まっているようで、多くの人達が次の襲撃の予定や最近の様子などを報告し、情報交換を行ってこの日の集会は解散となった。
「初めての集会はどうだった?」
「…色々と勉強になった。みんな縄張りを持っているんだな」
「そうよ。あと、絶対に襲撃をしちゃいけない場所とかも暗黙の了解としてあるしね」
「へぇ? そうなんだ。…あぁ、アイネ。今夜は俺、夕食いらないよ。今日、集会で知り合った人と飲みに行くから」
「もう人脈を広げるなんて、すごいわね。何時くらいに帰ってくる予定?」
「そうだね…日付が変わる前には帰ってくるよ」
「了解。気を付けてね」
チュッと軽いキスをする様子はもはや新婚夫婦さながらで、たまたま通りかかった人達から冷やかしを受けて二人とも赤面させられた。
「じゃあ、行ってくる」
ドラゴンはそう言うと逃げるようにその場から去り、約束の場所に向かった。
「お待たせしました」
「あぁ、待った。…と、言いたいところだが、俺も来たばっかりだ、気にすんな。それにしてもお前、前よりイキイキしてるな」
そこにいたのは私服に身を包んだ近衛騎士団千人隊長のリカルドだった。リカルドは相変わらずだらしなく服を着崩していて気品の欠片もなく、気だるげに酒を飲むその様子は全く騎士であるようには見えなかった。そのため、裏路地の酒場にいても全く違和感はなかった。
「それで? 上手く打ち解けているのか?」
ドラゴンが席に着くや否やどうでもよさそうな表情で聞いてくるリカルドに、ドラゴンはウェイターにエールを頼んでから「えぇ」と頷いた。
「今日、ようやく集会に参加することが出来ました」
「二週間でよくもまあそこまで信用されたなぁ。さすが、王宮で生き抜いていただけあるわ。いや、レプリカの制服を燃やしたのが効いたのか?」
「…レプリカの制服を焼く行為は結構効いていたと思います。でも、この二週間の間で何件か強奪事件に遭遇して、それに参加するのは…民を守ることを使命としている俺にとって、本当に苦しかったです」
「まあでも、それくらいしなきゃ組織に打ち解けることは出来ねぇよな。よく耐えた」
リカルドはうつむくドラゴンを肩を叩いてねぎらうと、ちょうど頼んだエールが届いて乾杯をした。
「リカルド隊長、この任務が終わったら俺、ちゃんと罰を受けます。任務のためとはいえ、賊に加担して略奪行為をしましたから」
「……ま、そうだな。しかるべき罰を受けてもらうから覚悟はしておいた方がいいかもな。だが、今はそんなことを考えるな。賊の動きを報告しろ。お前の報告によって最終的な動きと決行日が決まるんだ」
「はい。では今日得た情報から報告します」
ドラゴンは気持ちを切り替えると今日、集会にて得た情報をリカルドに報告し、さらに今まで一緒に居た中で得た情報も同様に報告した。
「ふーん。複数の賊が動くから当たり前だが、結構広範囲だな。…よし、お前の話を聞いて作戦日を今決めた。作戦日は、明後日だ。アイネが率いる賊が動く日に捕縛作戦を決行する。強奪予定地で待ち伏せをしているから、確実にそこに行くようにしろ。もし予定変更があれば、すぐに報告。俺は明日の夜もここに来る」
「了解」
「じゃ、俺は帰るわ。明日も業務があるからな」
「お疲れ様です。では、お気をつけて」
椅子から立ちヒラヒラと手を振って店を出ていくリカルドに、ドラゴンは軽く頭を下げて見送ると残りの酒とリカルドが頼んでいたらしいつまみを残さず食べてから会計を済ませて店を出ていった。
そして何事もなく襲撃前日を過ごして、とうとう襲撃当日になった。
襲撃をする場所につくとそれぞれ担当の場所に散っていき、ドラゴンもアイネの隣を陣取る。そして静かに襲撃の瞬間を待った。そしてアイネがタイミングを見計らって突撃の合図を出し、勢いよく建物の中に入った瞬間──。
「捕らえろ!」
レイゲンの鋭い声の指示に、待ち構えていた衛兵や警邏隊員が一斉に動き出し、動揺して動きを鈍らせる賊を速やかに捕らえた。
「な、なんでこんな所に……っ、ドラゴン、もしかしてあんた」
「ごめん、アイネ。俺は最初からこのつもりだった。俺は民を守る騎士だから、略奪行為や禁止薬物の販売、暴行、公務執行妨害、これら全てを許す訳にはいかない」
「でも、制服を燃やして、反逆者になったって言ったじゃない! どうして簡単に取り締まる方に戻れるのよ!」
信じられない、信じたくない、という感情がありありと表情に出ていて、それだけ愛されていたのだとドラゴンは身に沁みて感じた。そして、愛を感じると同時に騙していた罪悪感と、愛していたアイネを手放さなくてはならない哀しさに涙が溢れそうになった。
それでも、毅然とした態度でドラゴンはアイネを見つめ返す。
「……あの制服は、アイネ達を欺くための偽物だ。俺の全ての行動は、そこにいるリカルド千人隊長の責任によって認められていた。……アイネ、俺は間違った道に進む君を止めるためにここにいる。だから、大人しく捕まってくれ」
「っ、裏切り者!! あたしに近付くな!」
涙を流してドラゴンを拒絶するアイネに、ドラゴンは寂しそうな笑顔を一瞬見せると、目にも止まらぬスピードでアイネとの距離を縮め、腹を容赦なく殴ると、崩れ落ちるアイネを縄で縛り上げた。
こうしてアイネ・ハヴァロンが率いる賊は一人残らず捕縛され、その後も立て続けに賊グループを捕縛していった。
その功績から、ドラゴンが賊グループに属して略奪行為などをした罪は軽いものとなり、二週間の謹慎のみが言い渡された。
しかし言い渡された罪が軽くも、ドラゴンの胸にはアイネを裏切ったという思いが胸を締め付け、その心にさらなる傷を増やして、初恋の花を散らせたのだった。
そしてようやく元気になったと認められた一週間後、ドラゴンは休んでいた約十日分の業務と訓練を取り戻すべく朝から晩まで仕事に励み、その働きぶりは周囲から若干引かれるほどだった。そして休みの日になるとアイネの所に行き、大通りを歩いて回ったり一緒に馬に乗って綺麗な景色を見に行ったりしていた。
そんな忙しくも充実した日々を送り、厳しい寒さが和らいで生き物たちが活動を始める頃になると、ドラゴンはアイネを仲間に紹介するようになり、仲間たちは美人な恋人を羨んだが幸せそうなドラゴン達を祝福した。
しかしドラゴンは久し振りに向かった情報屋で衝撃的なことを聞くことになった。
「マスター…その情報は確実なのか?」
「あぁ、この情報は確実だ」
情報屋のマスターはタバコの煙をふぅと吐き出すと、動揺するドラゴンを見てフッとからかうように笑った。
「それにしてもお前がそんなに動揺するなんて、王宮を襲撃する賊がいると教えた時と、お前の探し人をこれ以上探しても無駄だと拒否した時以来だな」
「……からかわないでくれますか。…はぁ……今マスターが言ったことが事実なら、早めに対処しないとな」
ドラゴンは仮面に手を当てて、哀しみと苦しさを混ぜたような複雑そうな表情で嗤った。
「近衛騎士サマも大変だねぇ」
「それが俺達の仕事です。あと、大きな声でそんなことを言わないでいただけますか。騎士が出入りしてると都合が悪いと言ったのはマスターですし、俺としても困ります」
「そうだったな。んじゃ、一万ヤーツだ」
「また何かあったら頼みます」
ドラゴンは丁度の金額よりも少し多めに渡して店を出ると、星を映さない暗い夜空を見上げて大きなため息をついた。
「……もう、大切な人を失いたくない。その為に俺が出来ることをしなきゃな」
ぽつりと呟いて決意を固めると、迷いを断ち切るように力強い一歩を踏み出して城へと戻り、ラエルに得た情報を報告した。
「……分かった。いつも報告してくれてありがとな。…ドラゴン、今回は──」
「俺も参加します。俺が助けたいんです。だから、参加させてください。お願いします」
深く頭を下げるドラゴンに、ラエルは腕を組んでため息をつくと苦笑を漏らした。
「分かった。そこまで言うなら認める。だが、行くからにはちゃんと仕事をしろよ」
「はいっ! ありがとうございます!」
ドラゴンはもう一度頭を下げると「失礼しました」と言ってラエルの部屋を出ていった。
そして翌日、作戦を行う王城衛兵や警邏隊を集めてドラゴンを主体に作戦を立てると何度か合同訓練をしてから解散となった。
「ドラゴン、いつになく張り切ってるね」
この日の業務や訓練が終わり食堂で夕食を食べていると、エレンが向かい側に座って山盛りの肉やパンを食べ始めた。
「エレンさん、よくそんなに食べられますね」
「毎日訓練で体力を使うからね~、ドラゴンももっと食べないと。それで? 今回張り切ってるのはガールフレンドが関わっているから?」
「……はい」
「団長から聞いたよ。アイネさんが賊の頭である…という情報が入ったらしいね」
エレンの言葉にドラゴンは苦痛を堪えるような表情になり、前髪を握りしめた。
「信じたくはないですけど……あのマスターが確実だと言った場合、デマである可能性はとても低い。だけど、自分の目で見ないと信じられないんです。だから、団長に無理を言って作戦に入れてもらいました」
「…ま、確かに自分の目で見ないと信じられないよね。特に、大切な恋人ならなおさら。…ドラゴン、どんな結果だとしても、俺達の守るべきものを見失わないようにね」
「はい、分かっています。俺が忠誠を誓ったのは次世代のこの国を…すべての人間を統べる、人間王陛下…リオ殿下です。だから、俺はどんな結末になろうともこの任務を遂行します。民の暮らしを脅かす賊は、しかるべき罰を受けなければなりませんから」
「そっか。それだけの覚悟があるなら、心配いらないね」
エレンがホッとしたように笑うとドラゴンは複雑そうな表情で「俺はもう、見習いの近衛騎士じゃないですから」と答えて水を飲み干し、「では、失礼します」と言って食べ終えた盆を返却口に返した。
「……また、笑顔を失うような事にならなきゃいいけどなぁ。もう、からかえないドラゴンはこりごりだよ」
食堂を出ていくドラゴンの背を見送りながら、エレンはぽつりと呟いて肉にかぶりついた。
翌日、ドラゴンは業務の休憩の合間にアイネの所へ向かった。着替える時間もないため制服のままだが、ドラゴンは気にすることなく裏路地に入り、アイネの家へまっすぐと向かった。
「……アイネ、いる?」
ドアをノックして少しためらいがちに声をかけると、すぐにドアが開いた。開かれたドアの向こうには、ドラゴンを見て驚いたような表情を浮かべるアイネがいて、ドラゴンは「驚かせてごめん」と苦笑をした。
「ううん、別にいいよ。でもドラゴン、いきなりどうしたの? 今日は仕事じゃ……」
「あぁ、今は仕事の休憩中なんだ。…少し中に入ってもいい?」
「え、今はちょっと…部屋が散らかってるし」
「……アイネは嘘をつくのがうまいからいつも見抜けないんだけど、今日は動揺してる? 嘘だって、顔に書いてある。中に、誰かいるね」
ドラゴンの言葉にアイネはキッと視線を鋭くしてドラゴンの胸を押した。
「帰って。中に誰がいようとあなたには関係のない人たちだから」
「………アイネ、君が賊の頭って噂があるんだけど、本当?」
直球で質問をするドラゴンに、アイネは動揺するようにドラゴンから目をそらして一歩後ずさった。ドラゴンの目を見てアイネは本能的にごまかしはきかないと悟ったのか、再びドラゴンの方を向いた時、アイネの瞳はいつもと全く異なっていた。
「……だとしたら、ドラゴンはあたしを捕まえるの?」
「……アイネ、誤解しないでほしい。俺はアイネと一緒に居たいんだ。だから、俺を君の仲間にしてほしい」
ドラゴンはそう言ってアイネを抱きしめるが、アイネはドラゴンの腕を振り払ってドラゴンを睨みつけた。
「そんな言葉、信じられるわけないわ。ドラゴンは王家に忠誠を誓ったんでしょう? それを誇らしげに話してくれたのは他でもないあなたよ。そんなあなたが、簡単に賊になりたいなんて言うはずがない。あたしを捕まえるために、そう言っているんでしょう?」
「違う。確かに、俺は王家に忠誠を誓ったし、近衛騎士であることに誇りも持っていた。だけど、それ以上に大切な人が出来たんだ。それが、アイネなんだ。だから俺は、近衛騎士であるという誇りを捨てて賊になり下がったとしても、アイネの側にいたい。お願いだ、俺を君の仲間にして、傍にいさせてくれ」
まっすぐな愛の言葉にアイネは、否応なしに赤面させられ、睨んでいたはずの目もいつの間にかうるんだ瞳に変わると、アイネはドラゴンを抱きしめた。
「……その言葉、信じてもいい?」
「あぁ、信じてほしい」
ドラゴンの言葉にアイネはポロリと涙をこぼした。
「嬉しい。ずっと…ずっと不安だったの。いつドラゴンがあたしの正体に気付いて、離れていくか…。あたしの正体を知ってもなお、一緒に居たいって言ってくれて、本当に嬉しい…!」
「アイネ、本気かよ! そいつの言葉を信用してもいいのかよ!」
「俺達は、そいつを信用することは出来ないね。頭の命令だったとしても」
中から数人の男が顔を出し、近衛騎士の制服を着ているドラゴンを怪しんで拒絶の言葉を投げ掛けた。
「なら、これならどうだ?」
ドラゴンはアイネから離れるとツカツカと家の中に入り、制服を脱いでそのまま暖炉の火の中に放り込んだ。するとすぐに制服に火が燃え移り、メラメラと火力を上げる。
「お、おい」
「近衛騎士の制服は王妃様から直接賜り、祝福を受ける。その祝福を受けた制服を着て、王に忠誠を誓うんだ。だから、近衛騎士の制服は忠誠の証でもある。俺は、その忠誠を今ここで燃やした。この行為は反逆行為だ。だからもう、俺も王家の敵だ」
暖炉の火を背にして何の感情も映し出さない瞳でそう言うドラゴンに、反対意見を言っていた男達も押し黙り、冷え冷えとするアメジストの瞳に魅入られたようにドラゴンから目をそらすことが出来なかった。
「あんた達、これでドラゴンが仲間になることに文句はないよね?」
アイネの言葉に男達は渋々といった体で頷き、ドラゴンはアイネがまとめるグループの仲間になった。
それからのドラゴンの暮らしは規則に縛られないとても自由な生活が待っていた。今まで常になんらかの緊張感に縛られていたドラゴンは、その何にも縛られない自由な生活をとても新鮮に感じた。
「こんなに何もしない日は初めてかもしれないな。とても自由で、俺にとってこういうのは新鮮だ」
「フフ、全く何もしないわけじゃないよ。明日は闇市で薬を売る予定だから」
「薬?」
「うん。気持ちよくなれる薬。結構リピーターがいるから儲かるのよ」
アイネはそう言いながら床下を開けると木箱を取り出して、その蓋を開けた。その中には小分けにされた白い粉が入っていて、そのうちの一つをドラゴンは手に取った。
「これは…、麻薬か?」
「そう。麻薬の中でも中毒性の高いものよ。…やっぱり、まだあたしのやってることに戸惑う?」
じっと麻薬の入った袋を見つめるドラゴンに、アイネは不安そうな表情でドラゴンに寄り添うと、ドラゴンはそんなアイネを抱きしめて苦笑をした。
「まあ…そうだな。でも、俺はもう取り締まる方の人間じゃない。これからアイネと一緒に暮らしていくために力を尽くすよ。でもアイネ、こんなにたくさんの薬、どうやって手に入れているんだ? 結構たくさんあるから、集めるのは大変だろう?」
「それは秘密。ドラゴンを信用しないって訳じゃないけど、まだドラゴンには教えられないわ」
ドラゴンが持っている麻薬の小袋を取り返しながら、いたずらっぽく笑うアイネに、ドラゴンは「そうか」と特に気にした様子もなくアイネの様子を眺めていた。
そうしてドラゴンは一週間ほどアイネの家で過ごしていると、路地裏に住む者達がどのような生活を送っているのかが見えるようになってきた。そして分かったことは、暗い裏路地だったとしても人々の暮らしまでもが暗いわけではないということと、王宮にいる人たち以上に結束力があるということだった。その基盤となっているのが「助け合い」であることも、ドラゴンは一週間見ていて知り、明るく逞しく生きる人々の姿にドラゴンは幸せを感じた。
しかしその一方で、アイネ達が賊として活動する姿には密かに心を痛め、暴力によって強奪する事はやはり許されざることであるという思いが消えることなくくすぶり、行動を起こせないことをもどかしく思った。
そしてさらに一週間の時が過ぎると、ドラゴンは集会場に案内された。
「そろそろドラゴンも私たちの集会場を知っておいてもいいと思うの。一緒にこれからの活動のことも話したいと思ってるし、ようやく野郎どももドラゴンのことを認め始めたしね」
「それは嬉しいな」
「とはいえ、俺達はまだ、完全にお前のことを信用したわけじゃねぇからな。少しでも変な行動を起こしたら、しかるべき対応を取らせてもらうからな」
「肝に銘じておこう」
男の言葉にドラゴンは微笑をしながらそう答え、この日の集会が始まった。この集会は、アイネ達のグループだけが集まっているわけではなく、他の賊グループも集まっているようで、多くの人達が次の襲撃の予定や最近の様子などを報告し、情報交換を行ってこの日の集会は解散となった。
「初めての集会はどうだった?」
「…色々と勉強になった。みんな縄張りを持っているんだな」
「そうよ。あと、絶対に襲撃をしちゃいけない場所とかも暗黙の了解としてあるしね」
「へぇ? そうなんだ。…あぁ、アイネ。今夜は俺、夕食いらないよ。今日、集会で知り合った人と飲みに行くから」
「もう人脈を広げるなんて、すごいわね。何時くらいに帰ってくる予定?」
「そうだね…日付が変わる前には帰ってくるよ」
「了解。気を付けてね」
チュッと軽いキスをする様子はもはや新婚夫婦さながらで、たまたま通りかかった人達から冷やかしを受けて二人とも赤面させられた。
「じゃあ、行ってくる」
ドラゴンはそう言うと逃げるようにその場から去り、約束の場所に向かった。
「お待たせしました」
「あぁ、待った。…と、言いたいところだが、俺も来たばっかりだ、気にすんな。それにしてもお前、前よりイキイキしてるな」
そこにいたのは私服に身を包んだ近衛騎士団千人隊長のリカルドだった。リカルドは相変わらずだらしなく服を着崩していて気品の欠片もなく、気だるげに酒を飲むその様子は全く騎士であるようには見えなかった。そのため、裏路地の酒場にいても全く違和感はなかった。
「それで? 上手く打ち解けているのか?」
ドラゴンが席に着くや否やどうでもよさそうな表情で聞いてくるリカルドに、ドラゴンはウェイターにエールを頼んでから「えぇ」と頷いた。
「今日、ようやく集会に参加することが出来ました」
「二週間でよくもまあそこまで信用されたなぁ。さすが、王宮で生き抜いていただけあるわ。いや、レプリカの制服を燃やしたのが効いたのか?」
「…レプリカの制服を焼く行為は結構効いていたと思います。でも、この二週間の間で何件か強奪事件に遭遇して、それに参加するのは…民を守ることを使命としている俺にとって、本当に苦しかったです」
「まあでも、それくらいしなきゃ組織に打ち解けることは出来ねぇよな。よく耐えた」
リカルドはうつむくドラゴンを肩を叩いてねぎらうと、ちょうど頼んだエールが届いて乾杯をした。
「リカルド隊長、この任務が終わったら俺、ちゃんと罰を受けます。任務のためとはいえ、賊に加担して略奪行為をしましたから」
「……ま、そうだな。しかるべき罰を受けてもらうから覚悟はしておいた方がいいかもな。だが、今はそんなことを考えるな。賊の動きを報告しろ。お前の報告によって最終的な動きと決行日が決まるんだ」
「はい。では今日得た情報から報告します」
ドラゴンは気持ちを切り替えると今日、集会にて得た情報をリカルドに報告し、さらに今まで一緒に居た中で得た情報も同様に報告した。
「ふーん。複数の賊が動くから当たり前だが、結構広範囲だな。…よし、お前の話を聞いて作戦日を今決めた。作戦日は、明後日だ。アイネが率いる賊が動く日に捕縛作戦を決行する。強奪予定地で待ち伏せをしているから、確実にそこに行くようにしろ。もし予定変更があれば、すぐに報告。俺は明日の夜もここに来る」
「了解」
「じゃ、俺は帰るわ。明日も業務があるからな」
「お疲れ様です。では、お気をつけて」
椅子から立ちヒラヒラと手を振って店を出ていくリカルドに、ドラゴンは軽く頭を下げて見送ると残りの酒とリカルドが頼んでいたらしいつまみを残さず食べてから会計を済ませて店を出ていった。
そして何事もなく襲撃前日を過ごして、とうとう襲撃当日になった。
襲撃をする場所につくとそれぞれ担当の場所に散っていき、ドラゴンもアイネの隣を陣取る。そして静かに襲撃の瞬間を待った。そしてアイネがタイミングを見計らって突撃の合図を出し、勢いよく建物の中に入った瞬間──。
「捕らえろ!」
レイゲンの鋭い声の指示に、待ち構えていた衛兵や警邏隊員が一斉に動き出し、動揺して動きを鈍らせる賊を速やかに捕らえた。
「な、なんでこんな所に……っ、ドラゴン、もしかしてあんた」
「ごめん、アイネ。俺は最初からこのつもりだった。俺は民を守る騎士だから、略奪行為や禁止薬物の販売、暴行、公務執行妨害、これら全てを許す訳にはいかない」
「でも、制服を燃やして、反逆者になったって言ったじゃない! どうして簡単に取り締まる方に戻れるのよ!」
信じられない、信じたくない、という感情がありありと表情に出ていて、それだけ愛されていたのだとドラゴンは身に沁みて感じた。そして、愛を感じると同時に騙していた罪悪感と、愛していたアイネを手放さなくてはならない哀しさに涙が溢れそうになった。
それでも、毅然とした態度でドラゴンはアイネを見つめ返す。
「……あの制服は、アイネ達を欺くための偽物だ。俺の全ての行動は、そこにいるリカルド千人隊長の責任によって認められていた。……アイネ、俺は間違った道に進む君を止めるためにここにいる。だから、大人しく捕まってくれ」
「っ、裏切り者!! あたしに近付くな!」
涙を流してドラゴンを拒絶するアイネに、ドラゴンは寂しそうな笑顔を一瞬見せると、目にも止まらぬスピードでアイネとの距離を縮め、腹を容赦なく殴ると、崩れ落ちるアイネを縄で縛り上げた。
こうしてアイネ・ハヴァロンが率いる賊は一人残らず捕縛され、その後も立て続けに賊グループを捕縛していった。
その功績から、ドラゴンが賊グループに属して略奪行為などをした罪は軽いものとなり、二週間の謹慎のみが言い渡された。
しかし言い渡された罪が軽くも、ドラゴンの胸にはアイネを裏切ったという思いが胸を締め付け、その心にさらなる傷を増やして、初恋の花を散らせたのだった。
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