上 下
5 / 30
5歳

作戦ノート

しおりを挟む



「では失礼致します。何かありましたらそこのブザーを押してください。」


「うん!わかってるよ!」


頭を下げて俺の部屋から出ていく美紅さん。

部屋の端に、王子様が出る映画にありそうなクイーンサイズのベッドの横に丸い赤いボタンがある。家族の全部屋にあるそれは使用人の控え室に繋がっていてその時にいる人が部屋へと向かう。
大体は自分の専属が来てくれるが、休んでいる深夜などは夜勤の人が来てくれる。
ずっと美紅さんが居てくれるし美紅さんが居ない時はわざわざ呼びだすのが申し訳なくて1度も使ったことがない。




20時…か。
お風呂とか寝る準備をしてたらこんな時間になってしまった。

後1時間で寝なければいけない
21時には寝ろと言われているのでその時間になると寝ているか見に来るのだ。まぁあ寝れない日もあるのが分かっているから寝顔までは確認しに来ない。部屋が暗くなっていてベッドに入ってたら良いらしい。
けど俺はどこにも行っていないのにすぐに寝落ちしてしまう。
5歳はこんなもんだろう。

いつもなら寝るまで本を読むが今日は違う!

机の引き出しからノートと鉛筆を取り出して少し高いベッドに登る。

「よいしょと」

登るのも一苦労だ。

4歳まで母様と一緒に寝ていたから抱っこして上げてくれたけど今は誰も居ないから1人で上がるしかない。
何故か4歳の時に急に母と寝るのが恥ずかしくなってそこからめちゃめちゃ説得して1人で寝ている。

大変だけどここくらいしか体を動かしているって感じしないしいいんだけどね


スウッ


「俺の脱出大しゃく戦~!!!!!」

大きく息を吸って小声で叫ぶ

…おほん。少し噛んだのは5歳だし許して欲しい。

小声なのはもし誰か居たとしたらヤバいし、声に出さなくても言いけどやっぱり雰囲気は大切だ、雰囲気は…



さて、どんな作戦を立てようか。


正直ここまで却下されると思わなかった

…説得は長期戦になりそうなので徐々にしていくことにするとして、とりあえず誰にもバレずに抜け出して誰にもバレずに帰ってくるしか出る方法はないはず。

だって絶対共犯になってくれる人は居ない。使用人の方達は父が雇ってる訳だし、しかも何故だかここには過保護な人しか居ない。

まぁあ俺可愛いしな。


……いや、凄くイタイことを言ってるのは分かる、うん。分かるよ!

前世の俺が言ってたらまじでドン引きされてたと思う。
けど今の容姿ならそんな事を言っても、まあ、確かにって賛同されるんじゃないかな?
鏡を見る度に思う。これまじで俺なの?ってなる。



けど髪色だけは好かない。
兄弟、家族誰一人こんなに明るい髪をした人がいないからだ。

…たまに、ほんとにたまに本当の家族ではないんじゃ?って思う時がある。

けどそんな心配は要らないだろう。
母様の綺麗な碧色の目は俺と同じだし、それより顔がそっくりだ。

母様がハーフなら隔世遺伝ってこともあるよなぁ……



違う違う。脱出の方法を考えなきゃ。


抜け出すには深夜しかないんじゃないか…?
だって1日のほとんど美紅さんと居るし、寝る時間のすぐ後だと俺の様子を見に来る人がいる。これは深夜に決行するしかないだろう。

けど俺起きてられるかな?
いや、体調を崩した振りをして夜まで部屋にこもって寝ていよう。
そしたらその時には寝すぎで目が覚めて寝れないだろう。もし万が一眠くなってしまったら好きな本を読んでいよう。
よし。これでいい。


あとは家族だ。運悪く脱出時間に部屋に来てしまうかもしれない。

…確か3ヶ月後に姉様も兄様達も期末テストがあるはずだ

そのテストが終わった日にしよう

1週間も試験があるから多分その1週間は特に頑張って勉強するはず!

母様と父様か……帰って来れない日が多い2人がその日に部屋に来る確率は相当低いと思う多分……多分!


考えたことをノートに書き込む。
5歳の手では字が書きにくい…
少し、いや。相当汚いが自分では何となく分かるのでこれでいい。


どこにしまおうか…

ここでいいや。
机の上に小さい棚があるのだがここにはこの部屋に大量にある絵本や5歳でも読める小説の感想が事細かに書いているノートがある。
その日によって楽しい話悲しい話ハラハラする話など読みたい本が変わるため、このノートを読んで何を読むか考えるのだ。
しかも8冊もある。
けど字が汚すぎてこれが小説の感想だなんて思わないだろう多分ただの落書きか日記だと思われてる。
前世の記憶が無い5歳になりたての頃に始めたやつだ。
テレビもないから暇すぎて大量にある本を読んでたらハマってしまい、ノートに感想までつけてしまった。
だからここに同じ色の脱出大作戦のノートを入れても多分バレない。題名も同じにしておけば、尚バレないだろう。

真ん中位に入れておこう。

これが脱出の作戦ノートだなんて誰も思わないだろう。

よし。おっけー


ふいに時計を見ると20時50分を指していた。



ふぁあ

寝よう…



この作戦が上手くいきますように。


窓から見える星に願った。
























しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

ある日、人気俳優の弟になりました。

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。顔良し性格良し真面目で穏やかで王子様のような人。そんな評判だったはずが……。 「俺の命は、君のものだよ」 初顔合わせの日、兄になる人はそう言って綺麗に笑った。とんでもない人が兄になってしまった……と思ったら、何故か大学の先輩も優斗を可愛いと言い出して……? 平凡に生きたい19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の三角関係のお話。

ある日、人気俳優の弟になりました。2

雪 いつき
BL
母の再婚を期に、立花優斗は人気若手俳優、橘直柾の弟になった。穏やかで真面目で王子様のような人……と噂の直柾は「俺の命は、君のものだよ」と蕩けるような笑顔で言い出し、大学の先輩である隆晴も優斗を好きだと言い出して……。 平凡に生きたい(のに無理だった)19歳大学生と、24歳人気若手俳優、21歳文武両道大学生の、更に溺愛生活が始まる――。

6回殺された第二王子がさらにループして報われるための話

あめ
BL
何度も殺されては人生のやり直しをする第二王子がボロボロの状態で今までと大きく変わった7回目の人生を過ごす話 基本シリアス多めで第二王子(受け)が可哀想 からの周りに愛されまくってのハッピーエンド予定

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

案外、悪役ポジも悪くない…かもです?

彩ノ華
BL
BLゲームの悪役として転生した僕はBADエンドを回避しようと日々励んでいます、、 たけど…思いのほか全然上手くいきません! ていうか主人公も攻略対象者たちも僕に甘すぎません? 案外、悪役ポジも悪くない…かもです? ※ゆるゆる更新 ※素人なので文章おかしいです!

弟は僕の名前を知らないらしい。

いちの瀬
BL
ずっと、居ないものとして扱われてきた。 父にも、母にも、弟にさえも。 そう思っていたけど、まず弟は僕の存在を知らなかったみたいだ。 シリアスかと思いきやガチガチのただのほのぼの男子高校生の戯れです。 BLなのかもわからないような男子高校生のふざけあいが苦手な方はご遠慮ください。

君のことなんてもう知らない

ぽぽ
BL
早乙女琥珀は幼馴染の佐伯慶也に毎日のように告白しては振られてしまう。 告白をOKする素振りも見せず、軽く琥珀をあしらう慶也に憤りを覚えていた。 だがある日、琥珀は記憶喪失になってしまい、慶也の記憶を失ってしまう。 今まで自分のことをあしらってきた慶也のことを忘れて、他の人と恋を始めようとするが… 「お前なんて知らないから」

地味で冴えない俺の最高なポディション。

どらやき
BL
前髪は目までかかり、身長は160cm台。 オマケに丸い伊達メガネ。 高校2年生になった今でも俺は立派な陰キャとしてクラスの片隅にいる。 そして、今日も相変わらずクラスのイケメン男子達は尊い。 あぁ。やばい。イケメン×イケメンって最高。 俺のポディションは片隅に限るな。

処理中です...