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5歳
家族2
しおりを挟む「……」
気まずい。ものすごく気まずい。月都兄様はこっちを向いてニコニコしてるけど、何故か怖い。黒いオーラが漂っているような…
クスッ
「どうしたの優?」
き、気の所為かな気の所為だよねとりあえず兄様達早く来てえぇぇ!!!
ガチャ
扉の開く音と共に兄様達が入ってきた。
「兄さま(救世主)!!!!」
俺は全力で兄の元へ走り飛びつく。
「こらこらお行儀が悪いよ。それに走ったら体がびっくりしちゃうでしょ?」
兄弟の中でも1番過保護だと思うのがこの兄有栖川 直哉 。あのあーんが好きな兄さまだ。有栖川家の長男で16歳。
耳まである父親譲りの黒い髪は天パなのだろう緩くパーマがかかっている。
そしてぱっちり二重の優しそうな目、王子様って感じだな。
「ゆう」
呼ばれた方に視線を移すと俺を真顔で見つめる三男 有栖川 寿人 12歳と目が合った。
他の兄達より短いその黒色のスポーティな髪型は整った顔の綺麗さを際立たせている。
正直謎な男ナンバーワンだ。
無口で終始真顔な寿人は何を考えているのか全く分からない。
「ひさと兄さまこんばんは」
ニコッと笑ってみせる。
「…………あぁ」
……
俺の笑顔返してっ……!!!!
「優!」
この少し高い声の主は唯一の姉、有栖川 茜15歳。
長身でスラッとしており長い髪を一つにまとめて後ろで結っている。
可愛いと言うより綺麗でかっこいいと言った方が正しい。
「姉さま!おかえりなさい!」
月都兄様から離れて姉様に抱きつくと俺を持ち上げて抱っこしてくれた。
……なんかいい匂いする…
「お利口さんにしていた?」
「はい!」
「そう。偉かったわね」
そう言うと優しく微笑んで頭を撫でてくれる。
姉様が帰ってくる時はいつもこれをしてくれる。俺はこれがすごく好きだ。
最近不思議に思ってる事がある。5歳の優に精神が引き寄せられている気がするのだ。
少し怒られたただけなのに何故か悲しくなって涙がでたり、撫でられたりキスされたりする事も記憶が戻った初めは羞恥心があったが今は嬉しいと思う程だ。
いつか俺の前世の大事な思い出がさっぱり消えて無くなるんじゃないかって思うことがある。
もし、そうなるのなら徐々に消えていくのではなく、一気に消えてくれた方が悲しくないだろう。
いや、こんな考えもうやめよう。
ブンブンと首を振り何も考えないようにした。
「優?大丈夫?」
心配そうに俺の顔を覗き込む姉様にニコリと笑う。
「だいじょーぶです!姉さま!ご飯たべましょ!」
今日は俺の大好きなステーキだ!!!
ワクワクしながら席に着いた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「ごちそうさまでした」
美味しかった
サシの入ってるお肉もいいけどやっぱり赤身の肉肉しい感じが好きなんだよなぁ
けど1つだけ不満があったとしたら肉が二切れしか食べられなかったこと。
直哉兄様が病人だからダメだって、俺以外みんなお肉なのに俺だけスープだけだった。
確かにスープ1杯位しか俺の胃には入らないけど流石に酷すぎる。そんなことをもんもんと考えていたら涙がでてきてそれに焦った直哉兄様が二切れだけくれたのだ。
……ケチ。
いや、この空気なら。
俺が泣いてソワソワしてるこの感じなら!
よし。この流れで外に出てもいいか聞いてみよう。
「母さま、兄さまたち、姉さま。おねがいしたいことがあります!」
「優ちゃん?珍しいわね!優ちゃんの願い事ならなーんでも聞いてあげるわ!」
「うん。そうだね!どんなお願いだい?」
嬉しそうに俺に聞く直哉兄様。
「あの、僕。お外にでたいです!」
ガチャン!!!!!
寿人兄様が手に持っていたフォークがお皿に落ちて大きな音がなった
シーン
え、まってなんでこんな静かになってんの?え?なんかみんな固まってない??
「あ、あ「ダメだ。」
寿人兄様の低い声がダイニングルームに響いた。
「優ちゃんごめんね。それは聞けないわ」
「だってさっきなんでもきくって!」
言ったじゃん!!!!
「お母様の言うとうりだよ。優はすぐ熱が出るんだから。お外に行ったらまたすぐ熱が出ちゃうよ?」
「…欲しいものがあれば私が買ってくるから。」
ほら言ってごらん?と姉様が俺の頭を撫でる
「……お外にいきたいんだもん……」
月都兄様は何か考えてるようで、もしかしたら外に出ることを考えてくれてるのかも!
「つきと兄さま!お外「優」
クスッ
「僕が許すと思ってるの?」
逆になんで許してくれないの?!
「なんでだめなの?!みんなはお外にでてるのに僕だけずっと家にいるの?おへやにずっといるのいやだ!」
玄関からある正門までの長い道の脇にはずっと綺麗なお花が沢山並んでいる。ここの庭はものすごく大きい。兄様達が何気なく通っているのをみると少し羨ましく感じる。
外に出れたらゲーセンとかコンビニ、ファストフード店にも行きたい。
……いつ出れるか分からないけど。
「ごめんね。みんなゆうが大切なんだ。ゆうが可愛くて可愛くて仕方ないんだよ。家にいるだけで熱が出ちゃうんだからお外に行って怪我でもしたら僕どうなるか分からない」
悲しそうに眉毛を下げる直哉兄様。
「優。だから大人しく部屋に居るんだよ」
そんな脅迫めいた月都兄様の目が怖くて今回は折れることにした。
いつまでたっても家を出れる気がしないんだが…
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