2 / 30
5歳
家族1
しおりを挟むコンコン
「はーい」
「失礼いたします。」
部屋に入り俺にお辞儀すると、黒いボブの髪を揺らしながら歩いてくる彼女はメイドの長谷川 美紅さん。俺付きで身の回りの世話をしてくれている。多分20過ぎ位で凄く美人だ。
「優様、もう少しで夕食のお時間ですのでお着替えいたしましょう」
女の人に着替えさせられるのが未だに慣れない。
1度自分でしたいって言ってみた事がある。言ってみたものの、服が複雑で1人で着るのが難しく途中で断念した。
「みくさん、今日はだれがいるの??」
「…今日は奥様、そして御兄弟様全員がいらっしゃいます。旦那様は仕事でまだお帰りになっておりません。」
この家の夕飯は家族みんなでが決まりだ。誰かが欠けていてもダイニングルームへ集まりご飯を食べるのだ。
俺がこの部屋を出られるのはこの夕食時のみ。トイレやお風呂、洗面所もこの部屋にあるから全てこの部屋で済ませられる。だから唯一の気分転換が夕食時なのだ。
…もうここまで来ると軟禁じゃないか?
いや、考えるのはやめておこう。
ふと思った。こんな豪邸に住んでいるのだから父は相当稼いでるのだろう。今更だけど父がなんの会社で働いているのかを全く知らない。
「ねえねえみくさん。父さまってどんなおしごとしてるの??」
少し驚いたような顔をして俺を見ている美紅さん
「旦那様がお帰りになられた際に優様が直接旦那様にお聞きになる方がお喜びになると思いますよ」
と嬉しそうに微笑んで俺を抱き上げて食堂へと向かった。
…とりあえず下ろしてくれないかな…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
やっぱりこの部屋には慣れないな
前世で知っている物より倍大きい細長いテーブルがこの大きい部屋にすっぽり収まっている。少し小さく思えてしまう程に。
そんなテーブルの奥の方に座っているのは先に着いていた母様だ。
「あら優ちゃん!今日は早いわね!待っていたわ私の可愛い可愛い優ちゃん」
俺に駆け寄るとチュッと頬にキスをし、抱きしめてスリスリしてくるのは俺の母親で有栖川 サクラ。
少し日本人離れした容姿は、流暢な日本語を聞くと日本人と外人のハーフなのかもしれない。
顔立ちがハッキリしていて二重で鼻が高く、胸まである少し明るい茶髪をふんわり巻いている。痛みを知らなそうな髪の毛は天使の輪っかが光っていた。
いくら若くても兄弟の年齢からすれば30歳は超えているはずなのに全く見えない。正直20と言われても信じるかもしれない。
「か、かあさま」
「あらあらごめんなさい。つい可愛くて」
愛しそうに俺を見る母様。
やっぱりめちゃくちゃ美人だ…
……これは男のロマン男のロマンみんなしたいと思ってる……神様ごめんなさい!!!
心で神に土下座しながら俺は母の大きな胸にダイブした。
「母さま(の胸が)だいすきです!」
そこから離れて上を向き上目遣いでにっこり笑う。
「きゃぁぁぁ優ちゃん可愛すぎ!」
凄い力で抱きしめられ、また天国へとダイブする。
あぁ。幸せだ……前世では経験出来なかった夢が叶った…もう未練はないっ!!!!
「お母様。優が苦しそうなのでそろそろ離してあげてください。」
そんな天国に水を差したのは次男の、有栖川 月都だった。
優しい茶色の髪の毛に二重の切れ長の目、そして高い綺麗な鼻…まぁあただのドのつくイケメンだ。確か年齢は俺の9歳上で14歳。中学校に通っているらしい。
「あらほんとだわ!優ちゃんごめんね」
名残惜しく母様から離れると後ろから脇に手を入れられ途端宙に浮く。
「ねぇ優。…そんなにお母様がいいのかい?」
耳元で甘い声が囁かれる。
少し冷たい声にビクッと震えた。
クスッ
「冗談だよ。さ、席に座って他を待とうか」
俺を席まで抱きかかえて下ろし、頭を撫でて自席へ戻って行った。
いやいやいやいやいやあれ絶対冗談じゃないでしょ声がまじだった。あれはまじだった。
1年位前の夕飯で嫌いな茄子が出てきた時、いつものように目を盗んでポケットに入れて自室のゴミ箱に捨てたのだが、それを月都に見られてしまっていたのだ。4歳の俺には大誤算だった。
「ねぇ優。いつもそんなことしての?」
と問いかけてくる兄の目は笑ってなかった。
その後散々家族に怒られたのだが、
今考えると、良く何回も成功したなと思う。子供の悪知恵というものは凄い。
そうその時と声が同じだったのだ。
まじで怖い。この兄が1番怒らせてはダメな人なのかもしれない。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
もう少しキャラの説明入ります。
41
お気に入りに追加
2,009
あなたにおすすめの小説
ホラーゲームに転生なんて聞いていない
ルルオカ
BL
プレイしていたホラーゲームに転生してしまった男子高生。
彼の命を狙い、追いかけてくるのは都市伝説筆頭の彼女。
一週間のタイムリミットが迫るなか命がけで逃げ回っていたら、思いがけない派生的な存在に遭遇して・・・。
ゲーム転生もののホラーチックなBL小説です。
これの長編小説版は電子書籍で販売中。
詳細を知れるリンクは↓にあります。
お助けキャラに転生したのに主人公に嫌われているのはなんで!?
菟圃(うさぎはたけ)
BL
事故で死んで気がつけば俺はよく遊んでいた18禁BLゲームのお助けキャラに転生していた!
主人公の幼馴染で主人公に必要なものがあればお助けアイテムをくれたり、テストの範囲を教えてくれたりする何でも屋みたいなお助けキャラだ。
お助けキャラだから最後までストーリーを楽しめると思っていたのに…。
優しい主人公が悪役みたいになっていたり!?
なんでみんなストーリー通りに動いてくれないの!?
残酷な描写や、無理矢理の表現があります。
苦手な方はご注意ください。
偶に寝ぼけて2話同じ時間帯に投稿してる時があります。
その時は寝惚けてるんだと思って生暖かく見守ってください…
よくある婚約破棄なので
おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。
その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。
言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。
「よくある婚約破棄なので」
・すれ違う二人をめぐる短い話
・前編は各自の証言になります
・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド
・全25話完結
自称ヒロインに「あなたはモブよ!」と言われましたが、私はモブで構いません!!
ゆずこしょう
恋愛
ティアナ・ノヴァ(15)には1人の変わった友人がいる。
ニーナ・ルルー同じ年で小さい頃からわたしの後ろばかり追ってくる、少しめんどくさい赤毛の少女だ。
そしていつも去り際に一言。
「私はヒロインなの!あなたはモブよ!」
ティアナは思う。
別に物語じゃないのだし、モブでいいのではないだろうか…
そんな一言を言われるのにも飽きてきたので私は学院生活の3年間ニーナから隠れ切ることに決めた。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
兄がいるので悪役令嬢にはなりません〜苦労人外交官は鉄壁シスコンガードを突破したい〜
藤也いらいち
恋愛
無能王子の婚約者のラクシフォリア伯爵家令嬢、シャーロット。王子は典型的な無能ムーブの果てにシャーロットにあるはずのない罪を並べ立て婚約破棄を迫る。
__婚約破棄、大歓迎だ。
そこへ、視線で人手も殺せそうな眼をしながらも満面の笑顔のシャーロットの兄が王子を迎え撃った!
勝負は一瞬!王子は場外へ!
シスコン兄と無自覚ブラコン妹。
そして、シャーロットに思いを寄せつつ兄に邪魔をされ続ける外交官。妹が好きすぎる侯爵令嬢や商家の才女。
周りを巻き込み、巻き込まれ、果たして、彼らは恋愛と家族愛の違いを理解することができるのか!?
短編 兄がいるので悪役令嬢にはなりません を大幅加筆と修正して連載しています
カクヨム、小説家になろうにも掲載しています。
所詮は他人事と言われたので他人になります!婚約者も親友も見捨てることにした私は好きに生きます!
ユウ
恋愛
辺境伯爵令嬢のリーゼロッテは幼馴染と婚約者に悩まされてきた。
幼馴染で親友であるアグネスは侯爵令嬢であり王太子殿下の婚約者ということもあり幼少期から王命によりサポートを頼まれていた。
婚約者である伯爵家の令息は従妹であるアグネスを大事にするあまり、婚約者であるサリオンも優先するのはアグネスだった。
王太子妃になるアグネスを優先することを了承ていたし、大事な友人と婚約者を愛していたし、尊敬もしていた。
しかしその関係に亀裂が生じたのは一人の女子生徒によるものだった。
貴族でもない平民の少女が特待生としてに入り王太子殿下と懇意だったことでアグネスはきつく当たり、婚約者も同調したのだが、相手は平民の少女。
遠回しに二人を注意するも‥
「所詮あなたは他人だもの!」
「部外者がしゃしゃりでるな!」
十年以上も尽くしてきた二人の心のない言葉に愛想を尽かしたのだ。
「所詮私は他人でしかないので本当の赤の他人になりましょう」
関係を断ったリーゼロッテは国を出て隣国で生きていくことを決めたのだが…
一方リーゼロッテが学園から姿を消したことで二人は王家からも責められ、孤立してしまうのだった。
なんとか学園に連れ戻そうと試みるのだが…
茶番には付き合っていられません
わらびもち
恋愛
私の婚約者の隣には何故かいつも同じ女性がいる。
婚約者の交流茶会にも彼女を同席させ仲睦まじく過ごす。
これではまるで私の方が邪魔者だ。
苦言を呈しようものなら彼は目を吊り上げて罵倒する。
どうして婚約者同士の交流にわざわざ部外者を連れてくるのか。
彼が何をしたいのかさっぱり分からない。
もうこんな茶番に付き合っていられない。
そんなにその女性を傍に置きたいのなら好きにすればいいわ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる