51 / 180
冬に咲く花
オマケ(追加分・一人称視点)
しおりを挟む
俺は今悩んでいる。でも答えのない問題は苦手で、一向に解決しない。
ソコトラ村に着いた初めの晩。
ルイとカダンは魔法剣作りを、カウルとマリーは晩御飯作り。そして俺は周囲を誤魔化す偽の、偽の呪文を作ると言う仕事を課せられてしまった。
でも違和感のない呪文なんて、まったく思いつかない。
水の魔法を練習していた時は杖を使っていた。
俺が思いつく呪文なんてメラとか、ホイミとかくらいだ。
それをカウルに言うと、変な顔をされた。ゲームの呪文だからな。当然かもしれない。
「魔法を使うのに大切なのは、術式を理解しているかどうか。呪文はそれを発動させる鍵で、想像を補うものだから、ある程度の決まりのはあるけど、割と人によってバラバラだから」
というありがたい助言を、何故かマリーから頂きました。同じ地球人としては差を付けられているようで、面白くないんですが。
言い訳じゃあないけど、マリーと鈴木さんが、魔法事に詳しいのはちゃんとした理由がある。
この世界の知識も言葉もなかった二人。
ルイは魔法で百科辞典の中身を、そのまま二人の頭に移した……らしい。本を○〇一冊移植すれば言葉も喋れるようになるし、知識も付くから一石二鳥というわけだ。
だから一人に付き百科事典一つを使った……と言っていた。
よって、言葉の喋れた俺には、その魔法を使わなかったという事らしいが、でもそれは建前で、きっと理由は別にあると思っている。
この国でも百科事典は決して安くない。
俺の場合、言葉が喋れても魔法の知識まである訳じゃない。だから二人に差を付けられて当然なんだ。
「ルイが使っているのを適当に真似すればいいだろう。大概師匠の真似してるやつがほとんどだしな。ルイは母さんのを真似てるんだよ。気負う必要はないさ」
カウルはそう言うけど、その適当が分からないから困っているんだけど、でもそれを訴えても、奴等に俺を手伝う余裕はないだろうな。
なぜなら、中で魔剣(仮)を作る為、集中しているルイに気遣って外に出たけど、俺と同じように外にいる二人が、相変わらずマジでかなり鬱陶しいからだ。
「ねえ、この野菜こんな切り方で良い?もっと小さい方が良い?」
「そうだな、大小より、揃える方が大事かな。マリーって本当は料理苦手?」
「うう、カウルは意地悪ね」
「拗ねるなよ。俺が教えてやるよ。って言っても、俺も簡単な物しか作れないけどな。内で一番料理が上手なのはカダンなんだ」
「そうなの?………でも教わるのはカウルが良いな」
「何でだよ。カダンの方が上手いぞ?」
「何でって……何で聞くのよ?バカね」
あいつらの中に、俺の存在はすでに無いだろうな。だからこいつらと一緒にいるの嫌なんだ。こっちは会いたくても会えないって言うのに。
今思ったんだが?まさかとは思うけど?この会話、車の中にまで聞こえてるんじゃないか?
俺は音を立てないよう、車の中をそっと覗いてみた。
ルイは今まさに、魔剣を完成させようとしている所だった。
剣をいろんな角度でランプにかざし、たぶん術式を確認している……のか。
俺の腕輪を作っていた時より、表情がヤバい。すごい集中力だ。よし、外の会話は聞こえてないかもしれない。うん、大丈夫だろ、たぶん。
ルイの横で、カダンが散らばった本を片付けていた。車の中を覗く俺に気が付いて、ほほ笑んで、というか苦笑いをして、人差し指を口に縦に当てた。
やっぱり今邪魔するのは不味いな。あの二人にも静かにいるよう、言っておこう。
ってキスしてるううううううううううううう!!!???
俺がいなくなったからか!?うっそだろう!?何でそうなる?
マジで勘弁してくれ。料理してたんじゃないのかよ。周囲に気を使えよ。ああ、いよいよ出づらくなってしまった。
仕方ないから、俺は車の陰に座り込んだ。 本当はたき火の側が良いんだけど、出て行きづらい。
しまったな、呪文まったく思いつかない。
どうしよう……っていうか、マリーの為に一所懸命なルイの立場って………いや、考えないでおこう。
ああ、もう。本当に答えのない問題って苦手だ。
ソコトラ村に着いた初めの晩。
ルイとカダンは魔法剣作りを、カウルとマリーは晩御飯作り。そして俺は周囲を誤魔化す偽の、偽の呪文を作ると言う仕事を課せられてしまった。
でも違和感のない呪文なんて、まったく思いつかない。
水の魔法を練習していた時は杖を使っていた。
俺が思いつく呪文なんてメラとか、ホイミとかくらいだ。
それをカウルに言うと、変な顔をされた。ゲームの呪文だからな。当然かもしれない。
「魔法を使うのに大切なのは、術式を理解しているかどうか。呪文はそれを発動させる鍵で、想像を補うものだから、ある程度の決まりのはあるけど、割と人によってバラバラだから」
というありがたい助言を、何故かマリーから頂きました。同じ地球人としては差を付けられているようで、面白くないんですが。
言い訳じゃあないけど、マリーと鈴木さんが、魔法事に詳しいのはちゃんとした理由がある。
この世界の知識も言葉もなかった二人。
ルイは魔法で百科辞典の中身を、そのまま二人の頭に移した……らしい。本を○〇一冊移植すれば言葉も喋れるようになるし、知識も付くから一石二鳥というわけだ。
だから一人に付き百科事典一つを使った……と言っていた。
よって、言葉の喋れた俺には、その魔法を使わなかったという事らしいが、でもそれは建前で、きっと理由は別にあると思っている。
この国でも百科事典は決して安くない。
俺の場合、言葉が喋れても魔法の知識まである訳じゃない。だから二人に差を付けられて当然なんだ。
「ルイが使っているのを適当に真似すればいいだろう。大概師匠の真似してるやつがほとんどだしな。ルイは母さんのを真似てるんだよ。気負う必要はないさ」
カウルはそう言うけど、その適当が分からないから困っているんだけど、でもそれを訴えても、奴等に俺を手伝う余裕はないだろうな。
なぜなら、中で魔剣(仮)を作る為、集中しているルイに気遣って外に出たけど、俺と同じように外にいる二人が、相変わらずマジでかなり鬱陶しいからだ。
「ねえ、この野菜こんな切り方で良い?もっと小さい方が良い?」
「そうだな、大小より、揃える方が大事かな。マリーって本当は料理苦手?」
「うう、カウルは意地悪ね」
「拗ねるなよ。俺が教えてやるよ。って言っても、俺も簡単な物しか作れないけどな。内で一番料理が上手なのはカダンなんだ」
「そうなの?………でも教わるのはカウルが良いな」
「何でだよ。カダンの方が上手いぞ?」
「何でって……何で聞くのよ?バカね」
あいつらの中に、俺の存在はすでに無いだろうな。だからこいつらと一緒にいるの嫌なんだ。こっちは会いたくても会えないって言うのに。
今思ったんだが?まさかとは思うけど?この会話、車の中にまで聞こえてるんじゃないか?
俺は音を立てないよう、車の中をそっと覗いてみた。
ルイは今まさに、魔剣を完成させようとしている所だった。
剣をいろんな角度でランプにかざし、たぶん術式を確認している……のか。
俺の腕輪を作っていた時より、表情がヤバい。すごい集中力だ。よし、外の会話は聞こえてないかもしれない。うん、大丈夫だろ、たぶん。
ルイの横で、カダンが散らばった本を片付けていた。車の中を覗く俺に気が付いて、ほほ笑んで、というか苦笑いをして、人差し指を口に縦に当てた。
やっぱり今邪魔するのは不味いな。あの二人にも静かにいるよう、言っておこう。
ってキスしてるううううううううううううう!!!???
俺がいなくなったからか!?うっそだろう!?何でそうなる?
マジで勘弁してくれ。料理してたんじゃないのかよ。周囲に気を使えよ。ああ、いよいよ出づらくなってしまった。
仕方ないから、俺は車の陰に座り込んだ。 本当はたき火の側が良いんだけど、出て行きづらい。
しまったな、呪文まったく思いつかない。
どうしよう……っていうか、マリーの為に一所懸命なルイの立場って………いや、考えないでおこう。
ああ、もう。本当に答えのない問題って苦手だ。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
新人神様のまったり天界生活
源 玄輝
ファンタジー
死後、異世界の神に召喚された主人公、長田 壮一郎。
「異世界で勇者をやってほしい」
「お断りします」
「じゃあ代わりに神様やって。これ決定事項」
「・・・え?」
神に頼まれ異世界の勇者として生まれ変わるはずが、どういうわけか異世界の神になることに!?
新人神様ソウとして右も左もわからない神様生活が今始まる!
ソウより前に異世界転生した人達のおかげで大きな戦争が無い比較的平和な下界にはなったものの信仰が薄れてしまい、実はピンチな状態。
果たしてソウは新人神様として消滅せずに済むのでしょうか。
一方で異世界の人なので人らしい生活を望み、天使達の住む空間で住民達と交流しながら料理をしたり風呂に入ったり、時にはイチャイチャしたりそんなまったりとした天界生活を満喫します。
まったりゆるい、異世界天界スローライフ神様生活開始です!
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
シスターヴレイヴ!~上司に捨て駒にされ会社をクビになり無職ニートになった俺が妹と異世界に飛ばされ妹が勇者になったけど何とか生きてます~
尾山塩之進
ファンタジー
鳴鐘 慧河(なるがね けいが)25歳は上司に捨て駒にされ会社をクビになってしまい世の中に絶望し無職ニートの引き籠りになっていたが、二人の妹、優羽花(ゆうか)と静里菜(せりな)に元気づけられて再起を誓った。
だがその瞬間、妹たち共々『魔力満ちる世界エゾン・レイギス』に異世界召喚されてしまう。
全ての人間を滅ぼそうとうごめく魔族の長、大魔王を倒す星剣の勇者として、セカイを護る精霊に召喚されたのは妹だった。
勇者である妹を討つべく襲い来る魔族たち。
そして慧河より先に異世界召喚されていた慧河の元上司はこの異世界の覇権を狙い暗躍していた。
エゾン・レイギスの人間も一枚岩ではなく、様々な思惑で持って動いている。
これは戦乱渦巻く異世界で、妹たちを護ると一念発起した、勇者ではない只の一人の兄の戦いの物語である。
…その果てに妹ハーレムが作られることになろうとは当人には知るよしも無かった。
妹とは血の繋がりであろうか?
妹とは魂の繋がりである。
兄とは何か?
妹を護る存在である。
かけがいの無い大切な妹たちとのセカイを護る為に戦え!鳴鐘 慧河!戦わなければ護れない!
女神から貰えるはずのチート能力をクラスメートに奪われ、原生林みたいなところに飛ばされたけどゲームキャラの能力が使えるので問題ありません
青山 有
ファンタジー
強引に言い寄る男から片思いの幼馴染を守ろうとした瞬間、教室に魔法陣が突如現れクラスごと異世界へ。
だが主人公と幼馴染、友人の三人は、女神から貰えるはずの希少スキルを他の生徒に奪われてしまう。さらに、一緒に召喚されたはずの生徒とは別の場所に弾かれてしまった。
女神から貰えるはずのチート能力は奪われ、弾かれた先は未開の原生林。
途方に暮れる主人公たち。
だが、たった一つの救いがあった。
三人は開発中のファンタジーRPGのキャラクターの能力を引き継いでいたのだ。
右も左も分からない異世界で途方に暮れる主人公たちが出会ったのは悩める大司教。
圧倒的な能力を持ちながら寄る辺なき主人公と、教会内部の勢力争いに勝利するためにも優秀な部下を必要としている大司教。
双方の利害が一致した。
※他サイトで投稿した作品を加筆修正して投稿しております
ハズレ職業の料理人で始まった俺のVR冒険記、気づけば最強アタッカーに!ついでに、女の子とVチューバー始めました
カティア
ファンタジー
疲れ切った現実から逃れるため、VRMMORPG「アナザーワールド・オンライン」に没頭する俺。自由度の高いこのゲームで憧れの料理人を選んだものの、気づけばゲーム内でも完全に負け組。戦闘職ではないこの料理人は、ゲームの中で目立つこともなく、ただ地味に日々を過ごしていた。
そんなある日、フレンドの誘いで参加したレベル上げ中に、運悪く出現したネームドモンスター「猛き猪」に遭遇。通常、戦うには3パーティ18人が必要な強敵で、俺たちのパーティはわずか6人。絶望的な状況で、肝心のアタッカーたちは早々に強制ログアウトし、残されたのは熊型獣人のタンク役クマサンとヒーラーのミコトさん、そして料理人の俺だけ。
逃げるよう促されるも、フレンドを見捨てられず、死を覚悟で猛き猪に包丁を振るうことに。すると、驚くべきことに料理スキルが猛き猪に通用し、しかも与えるダメージは並のアタッカーを遥かに超えていた。これを機に、負け組だった俺の新たな冒険が始まる。
猛き猪との戦いを経て、俺はクマサンとミコトさんと共にギルドを結成。さらに、ある出来事をきっかけにクマサンの正体を知り、その秘密に触れる。そして、クマサンとミコトさんと共にVチューバー活動を始めることになり、ゲーム内外で奇跡の連続が繰り広げられる。
リアルでは無職、ゲームでは負け組職業だった俺が、リアルでもゲームでも自らの力で奇跡を起こす――そんな物語がここに始まる。
おっさんの神器はハズレではない
兎屋亀吉
ファンタジー
今日も元気に満員電車で通勤途中のおっさんは、突然異世界から召喚されてしまう。一緒に召喚された大勢の人々と共に、女神様から一人3つの神器をいただけることになったおっさん。はたしておっさんは何を選ぶのか。おっさんの選んだ神器の能力とは。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる