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冬に咲く花

5.5(忘れてた追加分)

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 孝宏が寝た後、食卓に並んだ皿に鍋で煮込まれたスープが注がれた。白い湯気と良い香りが上がり、食欲をそそる。

「ねえ、私魔法を習いたいのだけど」
 
 この中でまともに魔術が使えるのが、ルイ一人だけなのはこの場の誰もが承知していている。当然のようにルイが頷いた。

「別にイイけど、突然どうしたのさ」

 ルイは得意気に笑った。

「一応これでも異世界から現れた勇者の条件に当てはまるの。あなたたち、彼だけがそれだと思っていたんじゃないでしょう」

 それは間違いなくそうなのだが、カウルとルイには現実感が沸いていないのと、何よりカダンが孝宏をいたく気に入っていた。

「だいたい異世界人って魔法が使えるのか?」

 カウルが言った。

「それはやってみないとわからないけど、カダンの言う世界の危機が本当に起こるとして、その時の為に私たちが呼ばれたのなら、私たちは最大の努力をする義務があると思うの」

「義務ですか。私はお二人と違って、初めは言葉も全く理解できませんでしたし、何か他に条件があるのかもしれませんね」

 鈴木が伏し目がちに、全体的には困って見える笑顔を浮かべると、すべて言い終わる前にカダンが被せて言った。

「まあ、世界の危機とやらもまだわからないし、今はできるだけのことをしよう」

「そうだな。次はマオウとかが出てくるんだっけか?何か異変がないか、父さんと母さんに聞いてみようか」

 そう言うカウルに期待感が滲み出ている。両親と言葉を交わすだけでも、最後に会ったのは三か月前になる。

「あ、ゴメン。もう二人に連絡しちゃった。異世界の情報が知りたくて…………ごめん」

「カダン……俺は別に……そ、そんなことは別にいいんだ」

 皆が苦笑いを浮かべる。はしゃぎたい気持ちを隠しきれない片割れを、ルイは肘でつついた。気まずそうに口を結んで、無理矢理に真面目な顔を作るものだから、食卓は余計に笑いに包まれた。
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