帯刀医師 田村政次郎

神部洸

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第七話 悲壮の剣 中編

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 時は戻り、場所は綱氏が陽の追跡を諦めた、うどん屋たま、の二階。
 ここに一人の男と一人の女が居た。女の方は陽である。
「陽よ。あの男との始末は着いたのか。」
男が陽へと問いかけた。すると、陽が平伏して答えた。
「あと少しのところだったのですが、しくじりまして、逃げておりましたら、さらに邪魔者が入りまして…」
「で、どうなったのだ。」
答えを急く男に陽が答える。
「申し訳ありません。お頭。あと少し、あと少し時間を頂戴いたしたく。」
「時は無い。急げ。」
どうやら二人は主従の関係にある様だ。そう言うと男は手を振り、それに従って陽はその場から去った。
「陽よ、時は無いのだ。」
男は一人、そうつぶやいた。



場所はまた代わり、時間も夜となった。ここは政次郎の家、今は政次郎とお花の二人が居間にてお茶をすすっている。
 そんな政次郎の家の屋根には、黒い装束に身を包んだ忍達が取り囲んでいた。
 お花が居間から出ようと立ち上がったその時、居間に面していた中庭に、その忍達が十五人程降り立った。皆抜刀していて、その切っ先は政次郎たちに向いている。
 政次郎はすぐさま近くに置いていた義光を手に取り鯉口を切って正眼に抜刀した。
「何者だ。」
政次郎は聞いたが答えは沈黙で帰ってきた。政次郎の右手には義光が、左手は政次郎の後ろにいるお花を庇っている。
 すると、忍集団の一人が政次郎めがけて忍者刀を打ち落としてきた。政次郎はこれを義光で払い、背中を峰で打って気絶させた。
「殺さぬか。面白い。」
頭らしき男はそう言うと、自らの忍者刀を政次郎に向けた。
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