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第六話 悲壮の剣 前編
六
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陽は、自らの長屋へと入ると、部屋の隅にある押し入れを開けて、そこから新しそうな着物を取り出して、その着物に袖を通した。
陽は着替え終えると、今度は玄関の戸を開けて、外へと出て行った。
「おかしいな。今日襲われたばかりだと言うのに、外へと出歩くなど…」
怪しんだ綱氏は、勿論陽の後を追った。
表通りに出た陽は、普通の者なら使わないような裏道を使い、錦糸町近くにある『たま』と言う名のうどん屋ヘと入った。綱氏は追跡を続けようと思ったが、そのうどん屋から気になる気を感じて、すぐにその場から離れ、政次郎の待つ、診療所へと戻った。
一連の事を政次郎達に報告すると、全員が首をかしげた。
「今日襲われたばかりの身が、またすぐに外へと出ようと思うものなのだろうか。」
政次郎もその気が知れなかった。
「ねえ綱氏さん。陽さんは新しめの着物を着て出かけたのでしょう?」
「そうなんだ。それがちゃんとした着物を着ると化けたんだよ。」
少し鼻の下を伸ばして言う綱氏を善五郎がたしなめた。
「うどん屋ヘ行った事も気になる。綱、すまないが、当分の間陽殿を調べてくれないか。」
政次郎が頼むと、綱氏は、「元々そのつもりだ。」と言い、お花が出した茶を一気に飲み干した。
その日の夜、お花と一緒に自宅へと戻った政次郎であったが、二人の後ろには黒い人影が付いていたのだった。
陽は着替え終えると、今度は玄関の戸を開けて、外へと出て行った。
「おかしいな。今日襲われたばかりだと言うのに、外へと出歩くなど…」
怪しんだ綱氏は、勿論陽の後を追った。
表通りに出た陽は、普通の者なら使わないような裏道を使い、錦糸町近くにある『たま』と言う名のうどん屋ヘと入った。綱氏は追跡を続けようと思ったが、そのうどん屋から気になる気を感じて、すぐにその場から離れ、政次郎の待つ、診療所へと戻った。
一連の事を政次郎達に報告すると、全員が首をかしげた。
「今日襲われたばかりの身が、またすぐに外へと出ようと思うものなのだろうか。」
政次郎もその気が知れなかった。
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