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第一章 本当に当たる占い師
第四話 操作協力
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「ねぇ。なんで僕はまたここに放置されてるんですか?」
僕は一日前と同じ状況に置かれていて、向こう側からだけ見えるガラスの向こうにいる刑事たちに問いかける。
「なんでだろうなぁ。署長、渋滞にでもハマっちゃったかなぁ?」
顔も見せずに若い男性警察官が大きな声で言った。気づいていないふりをしてもムダなのに……。
ことの始まりは、今から3時間前に遡る。
僕は上野公園に放置されていた同級生二人を家まで送り届けて、帰宅していた。
「あれ?閉めたはずの鍵が開いている…」
え?空き巣?と思って身構えながら扉を開けると、そこには一人くつろぐおじさんの姿があった。
「不法侵入ですよ。河野刑事。」
僕の部屋に入っていた犯人は、先日僕を誤認逮捕した張本人である河野刑事だった。
「おう。赤髪。おかえり。」
「おかえり。じゃないですよ。それから、僕の名前は赤田伸彦。赤髪じゃないです。」
「細かいなぁ」と少し顔を渋らせてあたかも自分は悪くないとでも言いたいようなおじさん刑事は、その後も自分のペースを譲らなかった。
「真犯人が捕まったんだよ。ひったくりの。」
「まるで誰かが犯人だったかのような言い草ですね。」
「佐藤照。27歳。面白いことにこいつは金髪だった。」
このジジイの言う面白いとは、赤髪の僕と比較してのことなのか?それを言ったらお前は白髪じゃねえか。
「そうですか。じゃあ、」
「そんで、驚くことにお前さんが昨日言ったとおり、佐藤は近くの銭湯を利用していた。」
「そこで服を着替えたんですよね。銭湯なら、誰も怪しまずに服を着替えることができるから。」
「そうだ。そのとおりだ。佐藤もそう供述している。」
ここまでの河野刑事との会話は、ひたすら事件の結果を紹介、いや伝えられただけだ。この話がどうやってどこに落ちるのか全く想像がつかない。
「それでな、佐藤は…」
「河野さん。ちょっと待ってください。」
「ん?どうした赤髪。」
また赤髪って呼んだとも思ったが、話が進まないのでここは飲み込む。
「今日はなんでうちに来たんですか?犯人が捕まった。昨日はすまない。それだけの事だったら電話でもいいはずでは?」
「じゃあ本題に入る。」
じゃあって何!?僕が話を振らなければずっと話し続けてたの!?この人!?
「実は、君に頼みたいことがある。」
「なんですか?」
「署まで来てくれ。」
「嫌です。」
それから時が過ぎて今に至る。どうやら大杉署長が僕を呼んだらしいが、その張本人は本庁に出て戻る最中で事故渋滞にあったようだ。
「いやーごめんごめん。遅くなった遅くなった。待たせて悪かったね、赤田くん。」
昨日と変わらない朗らかな笑顔で、大杉署長は取調室に入ってきた。
「僕になんのようですか?」
「いきなり来るねぇ。実は君にお願いしたいことがあって呼んだんだ。」
「嫌です。」
「そう言わずにさぁ。話だけでも聞いてってよ。」
「嫌です。」
「犯人として捕まった佐藤なんだけどさ、」
「話聞いてます!?」
「ううん。逆に聞いてくれる?」
だめだ。なんだか自分のペースを保てない。大杉署長は、恐ろしいくらい自分のペースで喋り続ける。
「佐藤はどうやら犯罪グループの末端人員のようなんだ。ただ、元締は愚かその組織さえよく分かっていないんだ。」
「それは大変ですね(棒)」
「と、言うことで手伝ってくれよぉ。バイト代は出すから。」
バイト代。その一言で少し気持ちが変わった。
「警察からですか?」
「いやいや。わたしのポケットマネーからだよ。」
やります。やらせてください。
このとき、大杉署長がニヤリと不思議な笑みを浮かべた理由を見抜けなかった僕は、つくつぐ馬鹿だったと思う。
僕は一日前と同じ状況に置かれていて、向こう側からだけ見えるガラスの向こうにいる刑事たちに問いかける。
「なんでだろうなぁ。署長、渋滞にでもハマっちゃったかなぁ?」
顔も見せずに若い男性警察官が大きな声で言った。気づいていないふりをしてもムダなのに……。
ことの始まりは、今から3時間前に遡る。
僕は上野公園に放置されていた同級生二人を家まで送り届けて、帰宅していた。
「あれ?閉めたはずの鍵が開いている…」
え?空き巣?と思って身構えながら扉を開けると、そこには一人くつろぐおじさんの姿があった。
「不法侵入ですよ。河野刑事。」
僕の部屋に入っていた犯人は、先日僕を誤認逮捕した張本人である河野刑事だった。
「おう。赤髪。おかえり。」
「おかえり。じゃないですよ。それから、僕の名前は赤田伸彦。赤髪じゃないです。」
「細かいなぁ」と少し顔を渋らせてあたかも自分は悪くないとでも言いたいようなおじさん刑事は、その後も自分のペースを譲らなかった。
「真犯人が捕まったんだよ。ひったくりの。」
「まるで誰かが犯人だったかのような言い草ですね。」
「佐藤照。27歳。面白いことにこいつは金髪だった。」
このジジイの言う面白いとは、赤髪の僕と比較してのことなのか?それを言ったらお前は白髪じゃねえか。
「そうですか。じゃあ、」
「そんで、驚くことにお前さんが昨日言ったとおり、佐藤は近くの銭湯を利用していた。」
「そこで服を着替えたんですよね。銭湯なら、誰も怪しまずに服を着替えることができるから。」
「そうだ。そのとおりだ。佐藤もそう供述している。」
ここまでの河野刑事との会話は、ひたすら事件の結果を紹介、いや伝えられただけだ。この話がどうやってどこに落ちるのか全く想像がつかない。
「それでな、佐藤は…」
「河野さん。ちょっと待ってください。」
「ん?どうした赤髪。」
また赤髪って呼んだとも思ったが、話が進まないのでここは飲み込む。
「今日はなんでうちに来たんですか?犯人が捕まった。昨日はすまない。それだけの事だったら電話でもいいはずでは?」
「じゃあ本題に入る。」
じゃあって何!?僕が話を振らなければずっと話し続けてたの!?この人!?
「実は、君に頼みたいことがある。」
「なんですか?」
「署まで来てくれ。」
「嫌です。」
それから時が過ぎて今に至る。どうやら大杉署長が僕を呼んだらしいが、その張本人は本庁に出て戻る最中で事故渋滞にあったようだ。
「いやーごめんごめん。遅くなった遅くなった。待たせて悪かったね、赤田くん。」
昨日と変わらない朗らかな笑顔で、大杉署長は取調室に入ってきた。
「僕になんのようですか?」
「いきなり来るねぇ。実は君にお願いしたいことがあって呼んだんだ。」
「嫌です。」
「そう言わずにさぁ。話だけでも聞いてってよ。」
「嫌です。」
「犯人として捕まった佐藤なんだけどさ、」
「話聞いてます!?」
「ううん。逆に聞いてくれる?」
だめだ。なんだか自分のペースを保てない。大杉署長は、恐ろしいくらい自分のペースで喋り続ける。
「佐藤はどうやら犯罪グループの末端人員のようなんだ。ただ、元締は愚かその組織さえよく分かっていないんだ。」
「それは大変ですね(棒)」
「と、言うことで手伝ってくれよぉ。バイト代は出すから。」
バイト代。その一言で少し気持ちが変わった。
「警察からですか?」
「いやいや。わたしのポケットマネーからだよ。」
やります。やらせてください。
このとき、大杉署長がニヤリと不思議な笑みを浮かべた理由を見抜けなかった僕は、つくつぐ馬鹿だったと思う。
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