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ベナード商会と新たな遺構
三人のまったりタイム
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露店の近くまで戻るとエンリケが背中に大きな荷物を担いでいた。
キャラバンの人数は十人に満たないとしても、数日分の食料となるとけっこうな量になるのだろう。
ちなみにルカも手ぶらではなく、大きな買いもの袋を持っている。
「お疲れ様です。重そうですけど、少し持ちましょうか?」
「問題ありません。普段の業務でも力仕事が発生するので、これぐらいは日常茶飯事ですから」
「あっしもこれぐらいは平気っすわ」
槍術の使い手であるルカはもちろんのこと、エンリケの半袖から伸びた腕は筋肉質だった。
本人の言葉通りに日頃から重たいものを運び慣れているようだ。
「ちょいちょいエンリ。今日はもう探索はないし、カフェか酒場にでも寄るしかないっしょ」
「酒場はダメです。でもまあ、カフェぐらいならいいでしょう」
「いいですね。俺も行きたいです」
「ほんならカフェでもいいっすわ。マルクさんも行きましょうや」
大荷物の二人と一緒に露店の近くを離れて歩き出した。
ほどなくして、テラス席のカフェが見えてきた。
目にするのは二度目だが、落ちついた雰囲気でゆっくりすごせそうだ。
「さっき通りがかったんですけど、あそこでもいいです?」
「私の荷物だと店内は出入りが大変なので、テラス席は助かります」
「じゃあ、あそこにしましょうか」
三人で店の軒先にある席に移動した。
木の温もりが感じられる構造で柔らかな光が差しこんでいる。
ルカとエンリケが荷物を置いて腰を下ろしたところで女性店員がやってきた。
「いらっしゃいませ」
彼女は二十代から三十代の年齢に見えて、丁寧な所作でメニュー表を置いた。
ランス王国の田舎にあたる場所とはいえ共通文字で書かれているので、ルカたちも読むことができるだろう。
「あっしは決まりやした」
「ルカさん、早い」
「エンリが遅いっすわ」
「俺もまだです」
ルカが冗談めかした調子で笑う。
彼とのやりとりに慣れてきた感じがする。
それから少しして、同じ店員が戻ってきた。
「ご注文はお決まりですか?」
「あっしは濃いめのコーヒーを」
「俺は特製ハーブティーで」
「私は果実のジュースをお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員が去ると誰にともなく会話が始まる。
「セルラの町はいい雰囲気です。リブラは雑多な町ばかりですから」
「人口が多いんですか?」
「主要都市は特にそうですね。中規模でもこんなのどかなところはないと思います」
「モルネア王国も似てると思いますけど、雑多なところは苦手ですね」
盗賊に捕まって、シルバーゴブリンに助けられた苦い記憶を思い出す。
同国のムルカの街には善良な人も多くいたものの、ならず者と思われる層も一定数見かけた。
「まさかモルネアの名前が出るとは。暗殺機構があった頃のベルンもなかなかですが、モルネアも情勢が安定しない点では要注意でしょう。行商人のネットワークは色んな情報が入りまして、国王が富を独占しようとすることが一因だとか」
「そんな情報があるんですね。ランス王国からあまり出ませんし、モルネア方面に明るい行商人に知り合いはいないので」
「マルクさんは元冒険者とはいえ、この際護衛を雇うのも考えてみるのもありっすわ。あっしをブラスコ社長が雇うみたいに」
「こんな感じですが、ルカさんはブラスコ社長を危機から救ったことが何度もあります。わりと説得力があると思います」
エンリケの言葉に一考の価値があるように感じた。
ハンクが同行者ならば自動的に護衛のようになる。
しかし、彼はサクラギで結婚したため、しばらく同行する予定はない。
可能であればBランク以上の冒険者を雇いたいところだが、そうなると本腰を入れて探す必要がる。
「ランス王国もといバラム周辺だけなら問題ないですけど、旅をするとなると必要な気もしますね。近隣で実力者となれば基本的に冒険者か兵士なので、ギルドか王城でスカウトするのが現実的かなと」
「ルカさんもリブラ出身ですが、本国なら腕利きの護衛が揃います。ただ、そのためだけにリブラに行くのは遠すぎると思います」
護衛談議が盛り上がったところで、店員がトレー片手にやってきた。
俺たちが注文したドリンクが乗っている。
「お待たせしました」
ドリンクが順番にテーブルに置かれる。
目の前にマグカップが置かれて、早速ハーブティーを口にした。
お湯は適温で心地よい香りが出ている。
満たされるような感覚を味わい、マグカップをテーブルに戻す。
ルカがとても美味しそうにコーヒーを飲んでいるのが目に入った。
「もしかして、ベナード商会の影響ですか? こんな方にコーヒーが流通しているのは珍しい」
「実はブラスコ社長がお近づきの印にと近隣の町に格安で卸しています。この辺りはコーヒーを飲む習慣がないので、正規の価格だと割高に受け取られることもありまして」
「他国で大まかな相場は知りましたけど、運賃を考慮した価格だと厳しいかもしれません」
相対的に地産地消が可能な紅茶やハーブティーの方が割安になる。
気候や農業の要素が関係すると思うが、コーヒー豆はランス王国では生産されていない。
おおむねすごしやすい気候だが、コーヒー豆はもっと暑いところで作るはずだ。
キャラバンの人数は十人に満たないとしても、数日分の食料となるとけっこうな量になるのだろう。
ちなみにルカも手ぶらではなく、大きな買いもの袋を持っている。
「お疲れ様です。重そうですけど、少し持ちましょうか?」
「問題ありません。普段の業務でも力仕事が発生するので、これぐらいは日常茶飯事ですから」
「あっしもこれぐらいは平気っすわ」
槍術の使い手であるルカはもちろんのこと、エンリケの半袖から伸びた腕は筋肉質だった。
本人の言葉通りに日頃から重たいものを運び慣れているようだ。
「ちょいちょいエンリ。今日はもう探索はないし、カフェか酒場にでも寄るしかないっしょ」
「酒場はダメです。でもまあ、カフェぐらいならいいでしょう」
「いいですね。俺も行きたいです」
「ほんならカフェでもいいっすわ。マルクさんも行きましょうや」
大荷物の二人と一緒に露店の近くを離れて歩き出した。
ほどなくして、テラス席のカフェが見えてきた。
目にするのは二度目だが、落ちついた雰囲気でゆっくりすごせそうだ。
「さっき通りがかったんですけど、あそこでもいいです?」
「私の荷物だと店内は出入りが大変なので、テラス席は助かります」
「じゃあ、あそこにしましょうか」
三人で店の軒先にある席に移動した。
木の温もりが感じられる構造で柔らかな光が差しこんでいる。
ルカとエンリケが荷物を置いて腰を下ろしたところで女性店員がやってきた。
「いらっしゃいませ」
彼女は二十代から三十代の年齢に見えて、丁寧な所作でメニュー表を置いた。
ランス王国の田舎にあたる場所とはいえ共通文字で書かれているので、ルカたちも読むことができるだろう。
「あっしは決まりやした」
「ルカさん、早い」
「エンリが遅いっすわ」
「俺もまだです」
ルカが冗談めかした調子で笑う。
彼とのやりとりに慣れてきた感じがする。
それから少しして、同じ店員が戻ってきた。
「ご注文はお決まりですか?」
「あっしは濃いめのコーヒーを」
「俺は特製ハーブティーで」
「私は果実のジュースをお願いします」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員が去ると誰にともなく会話が始まる。
「セルラの町はいい雰囲気です。リブラは雑多な町ばかりですから」
「人口が多いんですか?」
「主要都市は特にそうですね。中規模でもこんなのどかなところはないと思います」
「モルネア王国も似てると思いますけど、雑多なところは苦手ですね」
盗賊に捕まって、シルバーゴブリンに助けられた苦い記憶を思い出す。
同国のムルカの街には善良な人も多くいたものの、ならず者と思われる層も一定数見かけた。
「まさかモルネアの名前が出るとは。暗殺機構があった頃のベルンもなかなかですが、モルネアも情勢が安定しない点では要注意でしょう。行商人のネットワークは色んな情報が入りまして、国王が富を独占しようとすることが一因だとか」
「そんな情報があるんですね。ランス王国からあまり出ませんし、モルネア方面に明るい行商人に知り合いはいないので」
「マルクさんは元冒険者とはいえ、この際護衛を雇うのも考えてみるのもありっすわ。あっしをブラスコ社長が雇うみたいに」
「こんな感じですが、ルカさんはブラスコ社長を危機から救ったことが何度もあります。わりと説得力があると思います」
エンリケの言葉に一考の価値があるように感じた。
ハンクが同行者ならば自動的に護衛のようになる。
しかし、彼はサクラギで結婚したため、しばらく同行する予定はない。
可能であればBランク以上の冒険者を雇いたいところだが、そうなると本腰を入れて探す必要がる。
「ランス王国もといバラム周辺だけなら問題ないですけど、旅をするとなると必要な気もしますね。近隣で実力者となれば基本的に冒険者か兵士なので、ギルドか王城でスカウトするのが現実的かなと」
「ルカさんもリブラ出身ですが、本国なら腕利きの護衛が揃います。ただ、そのためだけにリブラに行くのは遠すぎると思います」
護衛談議が盛り上がったところで、店員がトレー片手にやってきた。
俺たちが注文したドリンクが乗っている。
「お待たせしました」
ドリンクが順番にテーブルに置かれる。
目の前にマグカップが置かれて、早速ハーブティーを口にした。
お湯は適温で心地よい香りが出ている。
満たされるような感覚を味わい、マグカップをテーブルに戻す。
ルカがとても美味しそうにコーヒーを飲んでいるのが目に入った。
「もしかして、ベナード商会の影響ですか? こんな方にコーヒーが流通しているのは珍しい」
「実はブラスコ社長がお近づきの印にと近隣の町に格安で卸しています。この辺りはコーヒーを飲む習慣がないので、正規の価格だと割高に受け取られることもありまして」
「他国で大まかな相場は知りましたけど、運賃を考慮した価格だと厳しいかもしれません」
相対的に地産地消が可能な紅茶やハーブティーの方が割安になる。
気候や農業の要素が関係すると思うが、コーヒー豆はランス王国では生産されていない。
おおむねすごしやすい気候だが、コーヒー豆はもっと暑いところで作るはずだ。
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