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トリュフともふもふ
美食家直伝のポタージュ
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アデルから材料の説明があったところでジャガイモがないことが分かり、近くの青果店まで足を運ぶことになった。
買い出しから調理場に戻ると、彼女はすぐに下ごしらえを始めた。
大きめの鍋が火にかけられて、沸騰する前にジャガイモが投入された。
「ジャガイモが茹で上がるまで待機なので、俺の出番はなさそうですね」
「実際に提供する時はどうなるか分からないけれど、今回は私が完成させるわよ」
「エルフの村の時もそうでしたけど、料理をしないわけじゃないんですね」
半ば冗談交じりでアデルに伝えると、彼女は驚いたような顔を見せた。
「美味しい料理が好きなだけで、自分で作らないわけではないのよ」
「ちょっと失礼な言い方でしたね。すいません」
「いいわ、気にしてないから」
実年齢がそこそこ上だからなのか、アデルは妹のエステルほど怒りを露わにすることは少ない。
ちなみに年齢については禁句のようで、逆鱗に触れる要素の一つである。
「そろそろ、お湯から出すわね」
アデルはお玉のような調理器具を使って、鍋の中から別の容器にジャガイモを移した。
煮立ったお湯に浸かっていたので、ジャガイモからは湯気が上がっている。
「その鍋を次の工程で使うから、使えるようにしておいて」
「了解です」
俺は洗い場を借りて、熱々の鍋を使えるように洗浄した。
アデルの方に目を向けると、すりこぎ棒のようなものでジャガイモを潰している。
「さあ、できたわ。そっちの鍋はいいわよね」
「はい、使えます」
アデルはこちらの返事を聞いた後、パメラに何かを確認して戻ってきた。
「牛乳を加熱して、そこに潰したジャガイモを入れるわ」
彼女は鍋に牛乳を入れた後、かまどの火で温め始めた。
続けて先ほどのジャガイモを投入して、順番に調味料を加えていく。
「すでに牛乳は入れましたけど、その白いのは何ですか?」
「これは生クリームよ。パメラの店みたいにケーキを作る店じゃないと置いてなかったでしょうね」
「なるほど、ポタージュにコクを出すってことか」
「これでほぼ完成よ。手持ち無沙汰なら、使用済みの道具を片づけておいて」
「はい、分かりました」
アデルの言うように料理は完成が近づいている。
パメラの負担を減らすためにも、早めに片づけておいた方がいい。
残りの作業はアデルに任せて、食器洗いをすることにした。
テーブルに並んだ食器をまとめて、洗い場へと移動する。
ちょうど、パメラの店の従業員が何かを洗っているところだった。
「あっ、こっちで洗っちゃうので、そこに置いといてください!」
「すいません、いいんですか?」
「その量なら大したことないので。それにわたし、焼肉屋によく行くんですよ。あそこの店主さんの役に立ちたいんです」
若い女の従業員はそう言って、はつらつとした笑顔を見せた。
「本当に助かります。それじゃあ、お願いしますね」
「はい! 任せてください」
彼女の明るさに元気をもらった気がした。
経営者のパメラだけでなく、気持ちのいい従業員もいるのなら、この店はこれからも繁盛するだろうと思った。
洗い場の脇に食器を置いて戻ると、アデルが仕上げの作業に入っていた。
「作業は順調でしたし、手際がいいですね」
「まあね。もうすぐ完成するわよ」
生クリームの入っていたカップは空になっており、彼女は味見を始めている。
味を確かめる時の真剣な表情に、美食家としての気配が垣間見えた。
「これで完成だと思うけれど、マルクも味見してくれる?」
「もちろんです」
アデルに渡された小皿は彼女も使ったもので、普通に間接キスな気がした。
あまり動揺してしまっても気を悪くさせかねないので、何ごともない態度を装って、ポタージュの味見を始めた。
「……あれ、バラムのジャガイモって、こんな味になるんですね」
牛乳と生クリームの濃さはあるのだが、味つけはあっさりとして飲みやすい。
その中に芋の風味も残っていて、素材を活かした味だと実感させられる。
「うんうん、その顔は合格点ってところね。素材がいいから、まずく作る方が難しいけれど、上手くいってよかったわ」
「当たり前に使ってたんですけど、バラムの乳製品や野菜って質がいいんですね」
「水がいいのはもちろんのこと、丁寧な仕事ぶりの人が多いから、自然と品質がよくなるんじゃないかしら」
「いつも肉のことばかり考えていたので、新しい発見でした」
本音を吐露したところで、アデルは楽しそうに笑い声を上げた。
ポタージュの味見を終えて話していると、調理場にパメラがやってきた。
「仕事にキリがついたので、覗きに来ちゃいました。何だかいい匂いがします」
「場所と材料を提供してもらったから、あなたには味見程度じゃ失礼よね」
アデルはスープカップを用意して、完成したポタージュを注いだ。
彼女が手渡そうとすると、パメラはうれしそうに微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。美食家様の料理が食べられるなんて夢のようです」
「そんなよしてよ。そこまで手がかかる料理じゃないんだから」
「うふふっ、ではいただきますね」
パメラはスープカップを傾けて、ポタージュを口に含んだ。
「うんっ、美味しいです」
「二人の感想を聞く限り、これでよさそうね」
「大丈夫だと思いますよ」
アデルは無事に完成したことに満足そうな様子だった。
「複雑な料理ではないけれど、レシピを書いておくわね」
彼女はパメラに筆記具を借りて、ポタージュの調理法を書き始めた。
買い出しから調理場に戻ると、彼女はすぐに下ごしらえを始めた。
大きめの鍋が火にかけられて、沸騰する前にジャガイモが投入された。
「ジャガイモが茹で上がるまで待機なので、俺の出番はなさそうですね」
「実際に提供する時はどうなるか分からないけれど、今回は私が完成させるわよ」
「エルフの村の時もそうでしたけど、料理をしないわけじゃないんですね」
半ば冗談交じりでアデルに伝えると、彼女は驚いたような顔を見せた。
「美味しい料理が好きなだけで、自分で作らないわけではないのよ」
「ちょっと失礼な言い方でしたね。すいません」
「いいわ、気にしてないから」
実年齢がそこそこ上だからなのか、アデルは妹のエステルほど怒りを露わにすることは少ない。
ちなみに年齢については禁句のようで、逆鱗に触れる要素の一つである。
「そろそろ、お湯から出すわね」
アデルはお玉のような調理器具を使って、鍋の中から別の容器にジャガイモを移した。
煮立ったお湯に浸かっていたので、ジャガイモからは湯気が上がっている。
「その鍋を次の工程で使うから、使えるようにしておいて」
「了解です」
俺は洗い場を借りて、熱々の鍋を使えるように洗浄した。
アデルの方に目を向けると、すりこぎ棒のようなものでジャガイモを潰している。
「さあ、できたわ。そっちの鍋はいいわよね」
「はい、使えます」
アデルはこちらの返事を聞いた後、パメラに何かを確認して戻ってきた。
「牛乳を加熱して、そこに潰したジャガイモを入れるわ」
彼女は鍋に牛乳を入れた後、かまどの火で温め始めた。
続けて先ほどのジャガイモを投入して、順番に調味料を加えていく。
「すでに牛乳は入れましたけど、その白いのは何ですか?」
「これは生クリームよ。パメラの店みたいにケーキを作る店じゃないと置いてなかったでしょうね」
「なるほど、ポタージュにコクを出すってことか」
「これでほぼ完成よ。手持ち無沙汰なら、使用済みの道具を片づけておいて」
「はい、分かりました」
アデルの言うように料理は完成が近づいている。
パメラの負担を減らすためにも、早めに片づけておいた方がいい。
残りの作業はアデルに任せて、食器洗いをすることにした。
テーブルに並んだ食器をまとめて、洗い場へと移動する。
ちょうど、パメラの店の従業員が何かを洗っているところだった。
「あっ、こっちで洗っちゃうので、そこに置いといてください!」
「すいません、いいんですか?」
「その量なら大したことないので。それにわたし、焼肉屋によく行くんですよ。あそこの店主さんの役に立ちたいんです」
若い女の従業員はそう言って、はつらつとした笑顔を見せた。
「本当に助かります。それじゃあ、お願いしますね」
「はい! 任せてください」
彼女の明るさに元気をもらった気がした。
経営者のパメラだけでなく、気持ちのいい従業員もいるのなら、この店はこれからも繁盛するだろうと思った。
洗い場の脇に食器を置いて戻ると、アデルが仕上げの作業に入っていた。
「作業は順調でしたし、手際がいいですね」
「まあね。もうすぐ完成するわよ」
生クリームの入っていたカップは空になっており、彼女は味見を始めている。
味を確かめる時の真剣な表情に、美食家としての気配が垣間見えた。
「これで完成だと思うけれど、マルクも味見してくれる?」
「もちろんです」
アデルに渡された小皿は彼女も使ったもので、普通に間接キスな気がした。
あまり動揺してしまっても気を悪くさせかねないので、何ごともない態度を装って、ポタージュの味見を始めた。
「……あれ、バラムのジャガイモって、こんな味になるんですね」
牛乳と生クリームの濃さはあるのだが、味つけはあっさりとして飲みやすい。
その中に芋の風味も残っていて、素材を活かした味だと実感させられる。
「うんうん、その顔は合格点ってところね。素材がいいから、まずく作る方が難しいけれど、上手くいってよかったわ」
「当たり前に使ってたんですけど、バラムの乳製品や野菜って質がいいんですね」
「水がいいのはもちろんのこと、丁寧な仕事ぶりの人が多いから、自然と品質がよくなるんじゃないかしら」
「いつも肉のことばかり考えていたので、新しい発見でした」
本音を吐露したところで、アデルは楽しそうに笑い声を上げた。
ポタージュの味見を終えて話していると、調理場にパメラがやってきた。
「仕事にキリがついたので、覗きに来ちゃいました。何だかいい匂いがします」
「場所と材料を提供してもらったから、あなたには味見程度じゃ失礼よね」
アデルはスープカップを用意して、完成したポタージュを注いだ。
彼女が手渡そうとすると、パメラはうれしそうに微笑みを浮かべた。
「ありがとうございます。美食家様の料理が食べられるなんて夢のようです」
「そんなよしてよ。そこまで手がかかる料理じゃないんだから」
「うふふっ、ではいただきますね」
パメラはスープカップを傾けて、ポタージュを口に含んだ。
「うんっ、美味しいです」
「二人の感想を聞く限り、これでよさそうね」
「大丈夫だと思いますよ」
アデルは無事に完成したことに満足そうな様子だった。
「複雑な料理ではないけれど、レシピを書いておくわね」
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