257 / 466
トリュフともふもふ
試作品のトリュフペースト
しおりを挟む
「材料を選びたいので、ここの冷蔵庫を開けても大丈夫ですか?」
「はい、どうぞ」
「では、失礼します」
パメラの店も焼肉屋と同じように氷で冷やすかたちの簡易冷蔵庫を使っている。
取っ手を引いて中を見ると、色々な食材が目に入った。
「さっき作ってもらったのはパスタなので、何か違うものを作りたいんですよね」
「私は構いませんので、ゆっくり考えてください」
「あっ、すいません。ありがとうございます」
パメラに返事を返しつつ、食材の組み合わせを考える。
次第に少しずつアイデアが固まるような感じがした。
先に食べたパスタはバターベースなので、バター以外を使いたいところだ。
そうなると、チーズを合わせてみるといいかもしれない。
俺はチーズの入った容器を手に取り、簡易冷蔵庫のドアを閉めた。
「塩と黒コショウ、それにハチミツを借りれますか?」
「はい、お待ちください」
パメラは素早い動きで用意してくれた。
「ありがとうございます。材料は決まったので、今から作ってみます」
「完成が楽しみです」
「あと、調理場の道具を借りますね」
彼女に声をかけてから、調理を開始した。
まずは包丁で可能な限り、白トリュフを刻んでいく。
細かく砕けたホワイトチョコのようなそれを容器に移した。
同じようにチーズも刻んで、同じ容器に入れる。
続いてその中に少量の塩と黒コショウを振りかける。
それを容器の中で和えた後、適量のハチミツを垂らす。
最後にハチミツが行き渡るように混ぜたところで完成だ。
――名づけて、トリュフのチーズペースト。
調理の途中で確認したいことがあり、パメラに声をかける。
「ここのバゲットを使って大丈夫です?」
「今日の余りで明日使う予定ですが、お好きにどうぞ」
「助かります」
今度はバゲットを一枚ずつ切り分ける。
ペーストの味がぼやけてしまわないように、厚さは控えめにしておいた。
丸型の白い皿にバゲットを並べて、その上にペーストを盛りつける。
「まあ、素敵なお料理ですね」
「パン、チーズ、ハチミツは定番の組み合わせなので、そこに主役のトリュフを混ぜることを思いつきました。さあ、食べてみてください」
「では、いただきます」
パメラが一つ目を口に運んでから、こちらも完成したものを食べてみた。
普段の食事よりも口の中の感覚に注意して顎を動かす。
バゲットの食感としっとりしたペーストの相性は狙い通りだった。
トリュフの香りと他の素材が組み合わさり、まろやかな味わいになっている。
黒コショウが適度なアクセントになり、甘みや香りを引き立てていた。
「これ、すごいです! お店で出したいほどです」
「そこまで褒めてもらえると思いませんでした。自分でも納得のいく味に仕上がったので、この料理も合格ということでいいですか?」
「ええ、採用してもいいでしょう」
パメラの言葉を聞いて、思わず両手を握りしめた。
焼肉以外のことで評価されるのはうれしいものだ。
「これで、パスタとパンは決まりましたけど、もう少し脇を固めたいところです。仲間に高級な料理に詳しい人がいるので、あとは彼女の力を借りようと思います」
「お気遣いありがとうございます。時間に余裕がある時でしたら、今日のようにお手伝いできるので、遠慮なく声をかけてください」
「バターベースのパスタ、本当に美味しかったです。パメラさんのセンスなら、お店が繁盛するのも分かる気がします」
賞賛の言葉を向けると、パメラは照れくさそうな顔を見せた。
彼女の経営や料理に対するひたむきな姿を見ていると、同業者として尊敬する気持ちが自然と芽生えていた。
「一つ、お願いしてもよいでしょうか?」
「ここまで協力してもらったので、何でも聞きますよ」
「正式に料理が決まったら、食後のお茶を選ばせてください。トリュフの料理に合うものをご用意します」
パメラは遠慮がちに言った。
彼女の自己主張は珍しく感じられて、微笑ましい気持ちになる。
「そこまでしてもらえると、すごく助かります。ワインぐらいは考えてましたけど、アルコールが苦手な人もいるはずですし、パメラさんが手伝ってくれるなら、きっといいお茶が用意できると思います」
「マルクさんは褒め上手なのですね。自分の存在が認められているようで、あなたといると幸せな気持ちになります」
「ははっ、そうですか」
真面目な性格ならではの言い回しだと思うが、こちらの方が恥ずかしくなった。
彼女と顔を合わせたのはわずかなので、恋愛的な意味ではないとは思う。
「あっ、食器を洗っちゃいますね」
さりげない感じで、今の話題から離脱した。
俺は使い終わった食器や調理器具をまとめて、洗い場に移していった。
二人で試食用に作っただけなので、食器洗いはすぐに済んだ。
それから、俺とパメラは店内のテーブル席の椅子に腰を下ろした。
「今日は新鮮な経験ができました。誰かと一緒に料理を作るのは楽しいものですね」
「それならよかったです。俺も有意義な時間になって助かりました」
俺は椅子から立ち上がり、店の入り口に歩いていった。
「いつでもいらしてくださいね。歓迎します」
「今度はお茶を飲みに来るかもしれません」
にこやかな表情のパメラに見送られながら、彼女の店を後にした。
「はい、どうぞ」
「では、失礼します」
パメラの店も焼肉屋と同じように氷で冷やすかたちの簡易冷蔵庫を使っている。
取っ手を引いて中を見ると、色々な食材が目に入った。
「さっき作ってもらったのはパスタなので、何か違うものを作りたいんですよね」
「私は構いませんので、ゆっくり考えてください」
「あっ、すいません。ありがとうございます」
パメラに返事を返しつつ、食材の組み合わせを考える。
次第に少しずつアイデアが固まるような感じがした。
先に食べたパスタはバターベースなので、バター以外を使いたいところだ。
そうなると、チーズを合わせてみるといいかもしれない。
俺はチーズの入った容器を手に取り、簡易冷蔵庫のドアを閉めた。
「塩と黒コショウ、それにハチミツを借りれますか?」
「はい、お待ちください」
パメラは素早い動きで用意してくれた。
「ありがとうございます。材料は決まったので、今から作ってみます」
「完成が楽しみです」
「あと、調理場の道具を借りますね」
彼女に声をかけてから、調理を開始した。
まずは包丁で可能な限り、白トリュフを刻んでいく。
細かく砕けたホワイトチョコのようなそれを容器に移した。
同じようにチーズも刻んで、同じ容器に入れる。
続いてその中に少量の塩と黒コショウを振りかける。
それを容器の中で和えた後、適量のハチミツを垂らす。
最後にハチミツが行き渡るように混ぜたところで完成だ。
――名づけて、トリュフのチーズペースト。
調理の途中で確認したいことがあり、パメラに声をかける。
「ここのバゲットを使って大丈夫です?」
「今日の余りで明日使う予定ですが、お好きにどうぞ」
「助かります」
今度はバゲットを一枚ずつ切り分ける。
ペーストの味がぼやけてしまわないように、厚さは控えめにしておいた。
丸型の白い皿にバゲットを並べて、その上にペーストを盛りつける。
「まあ、素敵なお料理ですね」
「パン、チーズ、ハチミツは定番の組み合わせなので、そこに主役のトリュフを混ぜることを思いつきました。さあ、食べてみてください」
「では、いただきます」
パメラが一つ目を口に運んでから、こちらも完成したものを食べてみた。
普段の食事よりも口の中の感覚に注意して顎を動かす。
バゲットの食感としっとりしたペーストの相性は狙い通りだった。
トリュフの香りと他の素材が組み合わさり、まろやかな味わいになっている。
黒コショウが適度なアクセントになり、甘みや香りを引き立てていた。
「これ、すごいです! お店で出したいほどです」
「そこまで褒めてもらえると思いませんでした。自分でも納得のいく味に仕上がったので、この料理も合格ということでいいですか?」
「ええ、採用してもいいでしょう」
パメラの言葉を聞いて、思わず両手を握りしめた。
焼肉以外のことで評価されるのはうれしいものだ。
「これで、パスタとパンは決まりましたけど、もう少し脇を固めたいところです。仲間に高級な料理に詳しい人がいるので、あとは彼女の力を借りようと思います」
「お気遣いありがとうございます。時間に余裕がある時でしたら、今日のようにお手伝いできるので、遠慮なく声をかけてください」
「バターベースのパスタ、本当に美味しかったです。パメラさんのセンスなら、お店が繁盛するのも分かる気がします」
賞賛の言葉を向けると、パメラは照れくさそうな顔を見せた。
彼女の経営や料理に対するひたむきな姿を見ていると、同業者として尊敬する気持ちが自然と芽生えていた。
「一つ、お願いしてもよいでしょうか?」
「ここまで協力してもらったので、何でも聞きますよ」
「正式に料理が決まったら、食後のお茶を選ばせてください。トリュフの料理に合うものをご用意します」
パメラは遠慮がちに言った。
彼女の自己主張は珍しく感じられて、微笑ましい気持ちになる。
「そこまでしてもらえると、すごく助かります。ワインぐらいは考えてましたけど、アルコールが苦手な人もいるはずですし、パメラさんが手伝ってくれるなら、きっといいお茶が用意できると思います」
「マルクさんは褒め上手なのですね。自分の存在が認められているようで、あなたといると幸せな気持ちになります」
「ははっ、そうですか」
真面目な性格ならではの言い回しだと思うが、こちらの方が恥ずかしくなった。
彼女と顔を合わせたのはわずかなので、恋愛的な意味ではないとは思う。
「あっ、食器を洗っちゃいますね」
さりげない感じで、今の話題から離脱した。
俺は使い終わった食器や調理器具をまとめて、洗い場に移していった。
二人で試食用に作っただけなので、食器洗いはすぐに済んだ。
それから、俺とパメラは店内のテーブル席の椅子に腰を下ろした。
「今日は新鮮な経験ができました。誰かと一緒に料理を作るのは楽しいものですね」
「それならよかったです。俺も有意義な時間になって助かりました」
俺は椅子から立ち上がり、店の入り口に歩いていった。
「いつでもいらしてくださいね。歓迎します」
「今度はお茶を飲みに来るかもしれません」
にこやかな表情のパメラに見送られながら、彼女の店を後にした。
10
お気に入りに追加
3,286
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
42歳メジャーリーガー、異世界に転生。チートは無いけど、魔法と元日本最高級の豪速球で無双したいと思います。
町島航太
ファンタジー
かつて日本最強投手と持て囃され、MLBでも大活躍した佐久間隼人。
しかし、老化による衰えと3度の靭帯損傷により、引退を余儀なくされてしまう。
失意の中、歩いていると球団の熱狂的ファンからポストシーズンに行けなかった理由と決めつけられ、刺し殺されてしまう。
だが、目を再び開くと、魔法が存在する世界『異世界』に転生していた。
異世界転生!俺はここで生きていく
おとなのふりかけ紅鮭
ファンタジー
俺の名前は長瀬達也。特に特徴のない、その辺の高校生男子だ。
同じクラスの女の子に恋をしているが、告白も出来ずにいるチキン野郎である。
今日も部活の朝練に向かう為朝も早くに家を出た。
だけど、俺は朝練に向かう途中で事故にあってしまう。
意識を失った後、目覚めたらそこは俺の知らない世界だった!
魔法あり、剣あり、ドラゴンあり!のまさに小説で読んだファンタジーの世界。
俺はそんな世界で冒険者として生きて行く事になる、はずだったのだが、何やら色々と問題が起きそうな世界だったようだ。
それでも俺は楽しくこの新しい生を歩んで行くのだ!
小説家になろうでも投稿しています。
メインはあちらですが、こちらも同じように投稿していきます。
宜しくお願いします。
辺境伯令嬢に転生しました。
織田智子
ファンタジー
ある世界の管理者(神)を名乗る人(?)の願いを叶えるために転生しました。
アラフィフ?日本人女性が赤ちゃんからやり直し。
書き直したものですが、中身がどんどん変わっていってる状態です。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
社畜から卒業したんだから異世界を自由に謳歌します
湯崎noa
ファンタジー
ブラック企業に入社して10年が経つ〈宮島〉は、当たり前の様な連続徹夜に心身ともに疲労していた。
そんな時に中高の同級生と再開し、その同級生への相談を行ったところ会社を辞める決意をした。
しかし!! その日の帰り道に全身の力が抜け、線路に倒れ込んでしまった。
そのまま呆気なく宮島の命は尽きてしまう。
この死亡は神様の手違いによるものだった!?
神様からの全力の謝罪を受けて、特殊スキル〈コピー〉を授かり第二の人生を送る事になる。
せっかくブラック企業を卒業して、異世界転生するのだから全力で謳歌してやろうじゃないか!!
※カクヨム、小説家になろう、ノベルバでも連載中
昔助けた弱々スライムが最強スライムになって僕に懐く件
なるとし
ファンタジー
最強スライムぷるんくんとお金を稼ぎ、美味しいものを食べ、王国を取り巻く問題を解決してスローライフを目指せ!
最強種が集うSSランクのダンジョンで、レオという平民の男の子は最弱と言われるスライム(ぷるんくん)を救った。
レオはぷるんくんを飼いたいと思ったが、テイムが使えないため、それは叶わなかった。
レオはぷるんくんと約束を交わし、別れる。
数年が過ぎた。
レオは両親を失い、魔法の才能もない最弱平民としてクラスの生徒たちにいじめられるハメになる。
身も心もボロボロになった彼はクラスのいじめっ子に煽られ再びSSランクのダンジョンへ向かう。
ぷるんくんに会えるという色褪せた夢を抱いて。
だが、レオを迎えたのは自分を倒そうとするSSランクの強力なモンスターだった。
もう死を受け入れようとしたが、
レオの前にちっこい何かが現れた。
それは自分が幼い頃救ったぷるんくんだった。
成長チートと全能神
ハーフ
ファンタジー
居眠り運転の車から20人の命を救った主人公,神代弘樹は実は全能神と魂が一緒だった。人々の命を救った彼は全能神の弟の全智神に成長チートをもらって伯爵の3男として転生する。成長チートと努力と知識と加護で最速で進化し無双する。
戦い、商業、政治、全てで彼は無双する!!
____________________________
質問、誤字脱字など感想で教えてくださると嬉しいです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる