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飛竜探しの旅
特訓の成果 その2
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コレットは溜めて撃つことはするなと言っている。
狙いを定めて短時間で魔法を発動するということだ
俺は岩に向けて手の平を掲げた後、一気に放つ感覚で発動した。
「――ファイア・ボール」
勢いだけで放ったわりには、なかなかの威力だった。
だがしかし――。
「あれ、どこへ飛んでいくんだ!?」
「はい残念」
火球はあらぬ方向へと飛んでいった。
コレット流瞬間射出方式は威力を落とさずに発動できても、精度を高めるのが難しいことが課題のようだ。
「まだ身体が慣れてないから、そんなものだよ」
「次、頑張ります」
まだまだ、魔力に余裕があったので、引き続き練習するつもりだった。
偶発的な出来事とはいえ、元気の出るスープを作ってくれたアデルに感謝しなければならない。
俺は待機時間をゼロにするようなつもりで、連続して火球を放っていった。
「……や、やった」
粘り強く続けていると、まずまずの威力の魔法を岩にぶつけることができた。
途中で森の方角など、飛んで行ったらまずい方へ向かったこともあったが、そうなりそうになった時はコレットが魔法で相殺してくれた。
「言われたことを理解してくれたみたいだね。お姉さんは満足、満足」
「シンプルな手順で発動できるというのは新鮮でした。威力と精度の両立に関してはもう少しといったところです」
「続けるうちになじんでくるから、あんまり気負わないようにしよう」
「ありがとうございます。こんなふうに魔法が使えるなんて想像もつきませんでした。短い時間で成長できた感じがします」
俺が感謝の言葉を伝えると、コレットはうれしそうに笑みを浮かべた。
「さてと、何だかお腹が空いてきたから、わたしはおうちに帰るよ」
「おやっ、もう夕方か」
コレットと特訓を始めたのは昼をすぎた辺りだと思っていたが、すでに日が傾いている。
無我夢中で魔法を放っていたので、あっという間に時間が経過していたようだ。
「さあ、ついてきて。帰り道はこっち」
「今、行きます」
コレットは奔放かつマイペースで、どこかアデルに似ている気がした。
エステルも我が道をいくようなところがあるので、エルフは同じような気質になりやすいのだろうか。
俺はコレットに遅れないようについていった。
日暮れが近づき、ところどころ木々から伸びた影で、前方の視界が不十分だった。
幸いなことに来た時と同じ道だったので、迷わずにコレットを追うことができた。
コレットと合流した小川の近くを通過して民家があるところまで入ったところで、彼女は歩みを緩めた。
「じゃあ、またねー」
「はい、また会いましょう」
コレットはご機嫌な様子で去っていった。
その背中を見送った後、宿に向かって歩き出した。
彼女の設定した水準は高いものだったが、充実感や手応えを感じていた。
一日にあれだけたくさんの魔法を発動したのは初めてだった。
「……それにしても」
魔力を使いすぎた時に生じるような疲労感はないに等しい。
アデルのスープだけが理由とは考えにくい気がする。
「……もしかして、この場所の影響?」
宿にいた時に感じた包みこまれるような感覚。
それも不思議であるし、結界で守られた場所というのも珍しい。
エルフの村には俺の知らないことが多いみたいだ。
狙いを定めて短時間で魔法を発動するということだ
俺は岩に向けて手の平を掲げた後、一気に放つ感覚で発動した。
「――ファイア・ボール」
勢いだけで放ったわりには、なかなかの威力だった。
だがしかし――。
「あれ、どこへ飛んでいくんだ!?」
「はい残念」
火球はあらぬ方向へと飛んでいった。
コレット流瞬間射出方式は威力を落とさずに発動できても、精度を高めるのが難しいことが課題のようだ。
「まだ身体が慣れてないから、そんなものだよ」
「次、頑張ります」
まだまだ、魔力に余裕があったので、引き続き練習するつもりだった。
偶発的な出来事とはいえ、元気の出るスープを作ってくれたアデルに感謝しなければならない。
俺は待機時間をゼロにするようなつもりで、連続して火球を放っていった。
「……や、やった」
粘り強く続けていると、まずまずの威力の魔法を岩にぶつけることができた。
途中で森の方角など、飛んで行ったらまずい方へ向かったこともあったが、そうなりそうになった時はコレットが魔法で相殺してくれた。
「言われたことを理解してくれたみたいだね。お姉さんは満足、満足」
「シンプルな手順で発動できるというのは新鮮でした。威力と精度の両立に関してはもう少しといったところです」
「続けるうちになじんでくるから、あんまり気負わないようにしよう」
「ありがとうございます。こんなふうに魔法が使えるなんて想像もつきませんでした。短い時間で成長できた感じがします」
俺が感謝の言葉を伝えると、コレットはうれしそうに笑みを浮かべた。
「さてと、何だかお腹が空いてきたから、わたしはおうちに帰るよ」
「おやっ、もう夕方か」
コレットと特訓を始めたのは昼をすぎた辺りだと思っていたが、すでに日が傾いている。
無我夢中で魔法を放っていたので、あっという間に時間が経過していたようだ。
「さあ、ついてきて。帰り道はこっち」
「今、行きます」
コレットは奔放かつマイペースで、どこかアデルに似ている気がした。
エステルも我が道をいくようなところがあるので、エルフは同じような気質になりやすいのだろうか。
俺はコレットに遅れないようについていった。
日暮れが近づき、ところどころ木々から伸びた影で、前方の視界が不十分だった。
幸いなことに来た時と同じ道だったので、迷わずにコレットを追うことができた。
コレットと合流した小川の近くを通過して民家があるところまで入ったところで、彼女は歩みを緩めた。
「じゃあ、またねー」
「はい、また会いましょう」
コレットはご機嫌な様子で去っていった。
その背中を見送った後、宿に向かって歩き出した。
彼女の設定した水準は高いものだったが、充実感や手応えを感じていた。
一日にあれだけたくさんの魔法を発動したのは初めてだった。
「……それにしても」
魔力を使いすぎた時に生じるような疲労感はないに等しい。
アデルのスープだけが理由とは考えにくい気がする。
「……もしかして、この場所の影響?」
宿にいた時に感じた包みこまれるような感覚。
それも不思議であるし、結界で守られた場所というのも珍しい。
エルフの村には俺の知らないことが多いみたいだ。
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