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王都出立編
【幕間】王都でもふもふ
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騒乱の事後処理が落ちついたので、気分転換に王都を散策していた。
まだバラムへの帰還は叶わないため、こうして出歩くことで退屈した気分にならずに済んでいる。
王都はランス王国一番の街だけあって何でもある。
食事をする店の種類は幅広く、よそでは見かけないようなちょっといかがわしい類の店まで存在している。
ちなみに王都は人や建物が密集している割に面積が広いため、歩き回るだけでいい運動になる。
のどが渇いた俺は通りすがりに見つけたカフェに立ち寄った。
「いらっしゃいませー。店内とテラス席のどちらにされますか?」
「えーと、天気もいいので、外の席にします」
「それでは、お好きな席へどうぞ。後ほど注文を伺います」
給仕の店員と話してから、店の外側にある席の椅子に腰かけた。
日当たり良好で路地を見渡すことでき、なかなかいい場所が見つかった。
「おっ、色々あるな」
メニューを手に取り、どれにするか決める。
バラムでは見かけないような洒落た飲みものが目に入るが、ここは無難にアイスティーにしておこう。
「ご注文はお決まりですか?」
「はい、アイスティーを一つ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員は丁寧な対応をして、店内に戻っていった。
「暗殺機構の件があったけど、街の様子は大丈夫そうで安心だな」
全てが普段通りというわけではないが、ほとんどが落ちついた雰囲気だった。
街の人たちは悪くないわけでなので、余波が続くようでは胸が痛む。
「お待たせしました。アイスティーをお持ちしました」
「ありがとうございます」
「こちらはサービスのプチスイーツです」
店員は小皿に乘ったプリンのようなものをテーブルに置いた。
「へえ、美味しそうですね」
「オーナーはお菓子作りが得意なので、おすすめできる味です!」
彼女はニコリと笑みを見せてから、店内へと戻っていった。
小腹が空いていたこともあり、早速プリンの味を試してみる。
ティースプーンのような小さなスプーンでそっとすくう。
「うーん、甘くてプルプルしてる」
添えられた生クリームとの相性がよく、ほどよい甘みが口の中に広がる。
サイズがプチということで、あっという間に食べ終わってしまった。
「ここのスイーツは美味しいですわね」
ふいに声をかけられて振り向くと、お嬢様風の人物がこちらを見ていた。
「そうですね。ここの常連さんですか?」
「ええ、よく来ますわ」
「俺はマルクです」
「私はレナエル。この近くに住んでいますわ」
彼女のテーブルにはケーキセットが並んでいた。
高貴な人物にティーカップはよく似合う。
二人で話しているとどこからか視線を感じた。
「あっ、かわいいワンちゃんですね」
レナエルの足元には茶色い毛並みの犬が座っていた。
つぶらな瞳でこちらを見ている。
耳はピンと立っており、柴犬に近い見た目だった。
「マロンという名前ですの。とても愛くるしいでしょう」
「人懐っこそうな感じですね」
「よろしければ、触ってみます?」
「えっ、いいんですか!」
レナエルの言葉に甘えて、席を立ってマロンに近づく。
マロンはおすわりの状態から立ち上がって、尻尾を振っている。
俺は近くで屈むとマロンの頭を撫でた。
見た目通りに人懐っこいようで、気持ちよさそうにしている。
転生前に犬を飼いたいと思うことはあったが、何かとタイミングが合わないまま、実際に飼う機会はなかった。
マロンを撫でていると、そんなことを思い出した。
「マルクさんは犬がお好きですのね」
「はい、まあ」
マロンのもふもふ感を堪能していたので、何だか恥ずかしい気持ちになった。
レナエルはこちらの反応を気にすることなく、さわやかな笑顔を見せていた。
「またマロンを撫でたくなったら、この店に来るとよいですわ」
「ははっ、ありがとうございます」
レナエルの厚意に胸が温かくなる気持ちだった。
あとがき
お読みいただき、ありがとうございます。
次話から新しい章に入ります。
まだバラムへの帰還は叶わないため、こうして出歩くことで退屈した気分にならずに済んでいる。
王都はランス王国一番の街だけあって何でもある。
食事をする店の種類は幅広く、よそでは見かけないようなちょっといかがわしい類の店まで存在している。
ちなみに王都は人や建物が密集している割に面積が広いため、歩き回るだけでいい運動になる。
のどが渇いた俺は通りすがりに見つけたカフェに立ち寄った。
「いらっしゃいませー。店内とテラス席のどちらにされますか?」
「えーと、天気もいいので、外の席にします」
「それでは、お好きな席へどうぞ。後ほど注文を伺います」
給仕の店員と話してから、店の外側にある席の椅子に腰かけた。
日当たり良好で路地を見渡すことでき、なかなかいい場所が見つかった。
「おっ、色々あるな」
メニューを手に取り、どれにするか決める。
バラムでは見かけないような洒落た飲みものが目に入るが、ここは無難にアイスティーにしておこう。
「ご注文はお決まりですか?」
「はい、アイスティーを一つ」
「かしこまりました。少々お待ちください」
店員は丁寧な対応をして、店内に戻っていった。
「暗殺機構の件があったけど、街の様子は大丈夫そうで安心だな」
全てが普段通りというわけではないが、ほとんどが落ちついた雰囲気だった。
街の人たちは悪くないわけでなので、余波が続くようでは胸が痛む。
「お待たせしました。アイスティーをお持ちしました」
「ありがとうございます」
「こちらはサービスのプチスイーツです」
店員は小皿に乘ったプリンのようなものをテーブルに置いた。
「へえ、美味しそうですね」
「オーナーはお菓子作りが得意なので、おすすめできる味です!」
彼女はニコリと笑みを見せてから、店内へと戻っていった。
小腹が空いていたこともあり、早速プリンの味を試してみる。
ティースプーンのような小さなスプーンでそっとすくう。
「うーん、甘くてプルプルしてる」
添えられた生クリームとの相性がよく、ほどよい甘みが口の中に広がる。
サイズがプチということで、あっという間に食べ終わってしまった。
「ここのスイーツは美味しいですわね」
ふいに声をかけられて振り向くと、お嬢様風の人物がこちらを見ていた。
「そうですね。ここの常連さんですか?」
「ええ、よく来ますわ」
「俺はマルクです」
「私はレナエル。この近くに住んでいますわ」
彼女のテーブルにはケーキセットが並んでいた。
高貴な人物にティーカップはよく似合う。
二人で話しているとどこからか視線を感じた。
「あっ、かわいいワンちゃんですね」
レナエルの足元には茶色い毛並みの犬が座っていた。
つぶらな瞳でこちらを見ている。
耳はピンと立っており、柴犬に近い見た目だった。
「マロンという名前ですの。とても愛くるしいでしょう」
「人懐っこそうな感じですね」
「よろしければ、触ってみます?」
「えっ、いいんですか!」
レナエルの言葉に甘えて、席を立ってマロンに近づく。
マロンはおすわりの状態から立ち上がって、尻尾を振っている。
俺は近くで屈むとマロンの頭を撫でた。
見た目通りに人懐っこいようで、気持ちよさそうにしている。
転生前に犬を飼いたいと思うことはあったが、何かとタイミングが合わないまま、実際に飼う機会はなかった。
マロンを撫でていると、そんなことを思い出した。
「マルクさんは犬がお好きですのね」
「はい、まあ」
マロンのもふもふ感を堪能していたので、何だか恥ずかしい気持ちになった。
レナエルはこちらの反応を気にすることなく、さわやかな笑顔を見せていた。
「またマロンを撫でたくなったら、この店に来るとよいですわ」
「ははっ、ありがとうございます」
レナエルの厚意に胸が温かくなる気持ちだった。
あとがき
お読みいただき、ありがとうございます。
次話から新しい章に入ります。
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