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第五章
ウィニーが打ち明けた秘密
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続いてルチアとミレーナに声がかけられた。
しかし、二人ともきょとんとした様子で答えを出すのに時間を要した。
どちらも無欲のようで、控えめにささやかな報酬を頼んだだけだった。
彼らの順番が済んだところで、俺のところに回ってきた。
「さて、カイト。そなたは何を望む?」
「俺は行方知れずの友人を探すのを手伝ってほしいです。今回の作戦の途中で離れ離れになってしまって……」
言葉を崩して話しているが、国王の御前であることに変わりはない。
作戦のせいではぐれたという印象を与えては無礼な発言になりかねなかった。
俺はお願いを伝える途中で言葉を濁した。
ヴィルヘルム王は気を悪くした様子はなく、こちらを気遣うような表情を向けた。
「遠慮はいらぬ。ガスパール領内を捜索することはできぬが、マルネ領内であれば草の根かき分けてでも探すように手配しよう」
「ホントですか! ありがとうございます」
「取るに足らぬことだ。そなたらがおらねば、余がこうして玉座に戻ることはなかった」
ヴィルヘルム王は感慨深げに言った。
威厳がありながらも偉ぶらない。この人こそが君主にふさわしいと思った。
王様はしばらく談笑していたが、 少し疲れたと告げて引っこんでしまった。
表面には出さなかったものの、幽閉されていたことで消耗していたのだろう。
こんな日は王の帰還を祝うための祝宴が開かれそうな気もするが、兵士から今日のところは帰るようにと伝令があった。
仲間たちと王の間を後にしたところで、別の兵士がやってきて宿の手配を申し出てくれた。
その後はウィニーが不在ということもあり、王都で滞在して待つことになった。
翌朝、マルネ王国の王都にある宿屋で目を覚ました。
窓から朝日が差しこみ、小鳥のさえずりが耳に届く。
ベッドから起き上がり窓の外を眺めれば、行き交う人々の姿を見ることができた。
昨夜は久しぶりにふかふかのベッドで横になれて熟睡だった。
ちなみにこの宿は王都で最高級らしい。
城の関係者が直接手配してくれただけのことはある。
一人で泊まるにはもったいないぐらいの広さだった。
部屋に洗面台が設置してあり、顔を洗うための水がめが用意されていた。
洗顔を済ませてさっぱりした後、身支度を整えてから部屋を出た。
今すぐに食事を取る気分にならず、宿を出て街を歩き始めた。
こちらもガスパール王国と建築様式はそこまで違いがないようで、木組みの家が大半だった。
その一方で通行人は人族の割合が多く、エルフなどの他種族はそこまで多くない。
物珍しさに心惹かれて、街の中を歩いていく。
二つの王都の違いが分かると楽しい気持ちになる。
日本ではもちろんこと、ガスパール王国でも見たことがないような店がいくつも並んでいた。
海外旅行に憧れることもあったので、今こうして歩いていることに充実感を覚えた。
近くに川が流れる通りに差しかかったところで、道の向こう側からウィニーが歩いてきた。
パンが入った紙袋を抱えていて、空いた方の手で何かを食べながら歩いている。
王都奪還に成功したことで、以前よりも表情が緩んだように見えた。
声の届く距離になったところで、どちらともなく声をかける。
「おはよう」
「おう、昨日はよく眠れたか?」
「いいベッドだったから、見事にぐっすり」
「そいつはよかった」
ウィニーはそう言った後、紙袋からドーナツのようなものを差し出した。
ほんのりといい香りがして、とても美味しそうに見えた。
「よかったら、一つ食べるか?」
「いいね、ありがとう。歩いてたらお腹が空いちゃった」
俺はそれを受け取り、すぐに食べ始めた。
見た目はドーナツのようだが、揚げてないようで油分は控えめ。
甘さも控えてあって、朝食向きな味つけだった。
この世界ではパンに分類されるのだろう。
「お前に話そうと思っていたことがあるんだ。ちょっと付き合えよ」
「えっ、どうしたの? 時間はあるから全然いいけど」
二人でパンを食べながら歩く。
川辺に近づくと堤防のようになっており、ウィニーと土手の頂点の平坦なところに腰を下ろした。
二人で横並びに座ったところで、彼は何かに気づいたように声を上げた。
「いやー、しまった。飲みものがあればよかったな」
「たしかにのどが渇きそうな食感かも」
二人で笑いながら会話を続ける。
取るに足らないことかもしれないが、愉快な気持ちだった。
「お前に謝らないといけないことがある」
「急に改まってどうしたの?」
談笑していたところだが、ウィニーはかしこまった様子だった。
ふざけているわけではないようだ。
「お前とジンタのことで、分かっていたのに知らないふりをしたことがある」
「……どんなこと?」
ウィニーの言葉に思い当たる節はいくつもある。
勇者召喚、魔眼、それ以外にも。
彼は何について知らないふりをしたのだろう。
知ることが怖い気もするが、この流れで聞かないわけにもいかない。
「――目のことだ。おれの左目は生まれる時に何かの間違いで、魔王の影響を受けちまった」
「……えっ?」
危うく手にしたパンを落としかける。
ウィニーの言葉は思いがけないものだった。
俺以外にも魔眼持ちがいるということか。
しかし、彼は転移してきたようには見えない。
見た目の雰囲気、日常へのなじみ具合――何の違和感もなく、この世界に生まれ育った者の振る舞いそのものだった。
しかし、二人ともきょとんとした様子で答えを出すのに時間を要した。
どちらも無欲のようで、控えめにささやかな報酬を頼んだだけだった。
彼らの順番が済んだところで、俺のところに回ってきた。
「さて、カイト。そなたは何を望む?」
「俺は行方知れずの友人を探すのを手伝ってほしいです。今回の作戦の途中で離れ離れになってしまって……」
言葉を崩して話しているが、国王の御前であることに変わりはない。
作戦のせいではぐれたという印象を与えては無礼な発言になりかねなかった。
俺はお願いを伝える途中で言葉を濁した。
ヴィルヘルム王は気を悪くした様子はなく、こちらを気遣うような表情を向けた。
「遠慮はいらぬ。ガスパール領内を捜索することはできぬが、マルネ領内であれば草の根かき分けてでも探すように手配しよう」
「ホントですか! ありがとうございます」
「取るに足らぬことだ。そなたらがおらねば、余がこうして玉座に戻ることはなかった」
ヴィルヘルム王は感慨深げに言った。
威厳がありながらも偉ぶらない。この人こそが君主にふさわしいと思った。
王様はしばらく談笑していたが、 少し疲れたと告げて引っこんでしまった。
表面には出さなかったものの、幽閉されていたことで消耗していたのだろう。
こんな日は王の帰還を祝うための祝宴が開かれそうな気もするが、兵士から今日のところは帰るようにと伝令があった。
仲間たちと王の間を後にしたところで、別の兵士がやってきて宿の手配を申し出てくれた。
その後はウィニーが不在ということもあり、王都で滞在して待つことになった。
翌朝、マルネ王国の王都にある宿屋で目を覚ました。
窓から朝日が差しこみ、小鳥のさえずりが耳に届く。
ベッドから起き上がり窓の外を眺めれば、行き交う人々の姿を見ることができた。
昨夜は久しぶりにふかふかのベッドで横になれて熟睡だった。
ちなみにこの宿は王都で最高級らしい。
城の関係者が直接手配してくれただけのことはある。
一人で泊まるにはもったいないぐらいの広さだった。
部屋に洗面台が設置してあり、顔を洗うための水がめが用意されていた。
洗顔を済ませてさっぱりした後、身支度を整えてから部屋を出た。
今すぐに食事を取る気分にならず、宿を出て街を歩き始めた。
こちらもガスパール王国と建築様式はそこまで違いがないようで、木組みの家が大半だった。
その一方で通行人は人族の割合が多く、エルフなどの他種族はそこまで多くない。
物珍しさに心惹かれて、街の中を歩いていく。
二つの王都の違いが分かると楽しい気持ちになる。
日本ではもちろんこと、ガスパール王国でも見たことがないような店がいくつも並んでいた。
海外旅行に憧れることもあったので、今こうして歩いていることに充実感を覚えた。
近くに川が流れる通りに差しかかったところで、道の向こう側からウィニーが歩いてきた。
パンが入った紙袋を抱えていて、空いた方の手で何かを食べながら歩いている。
王都奪還に成功したことで、以前よりも表情が緩んだように見えた。
声の届く距離になったところで、どちらともなく声をかける。
「おはよう」
「おう、昨日はよく眠れたか?」
「いいベッドだったから、見事にぐっすり」
「そいつはよかった」
ウィニーはそう言った後、紙袋からドーナツのようなものを差し出した。
ほんのりといい香りがして、とても美味しそうに見えた。
「よかったら、一つ食べるか?」
「いいね、ありがとう。歩いてたらお腹が空いちゃった」
俺はそれを受け取り、すぐに食べ始めた。
見た目はドーナツのようだが、揚げてないようで油分は控えめ。
甘さも控えてあって、朝食向きな味つけだった。
この世界ではパンに分類されるのだろう。
「お前に話そうと思っていたことがあるんだ。ちょっと付き合えよ」
「えっ、どうしたの? 時間はあるから全然いいけど」
二人でパンを食べながら歩く。
川辺に近づくと堤防のようになっており、ウィニーと土手の頂点の平坦なところに腰を下ろした。
二人で横並びに座ったところで、彼は何かに気づいたように声を上げた。
「いやー、しまった。飲みものがあればよかったな」
「たしかにのどが渇きそうな食感かも」
二人で笑いながら会話を続ける。
取るに足らないことかもしれないが、愉快な気持ちだった。
「お前に謝らないといけないことがある」
「急に改まってどうしたの?」
談笑していたところだが、ウィニーはかしこまった様子だった。
ふざけているわけではないようだ。
「お前とジンタのことで、分かっていたのに知らないふりをしたことがある」
「……どんなこと?」
ウィニーの言葉に思い当たる節はいくつもある。
勇者召喚、魔眼、それ以外にも。
彼は何について知らないふりをしたのだろう。
知ることが怖い気もするが、この流れで聞かないわけにもいかない。
「――目のことだ。おれの左目は生まれる時に何かの間違いで、魔王の影響を受けちまった」
「……えっ?」
危うく手にしたパンを落としかける。
ウィニーの言葉は思いがけないものだった。
俺以外にも魔眼持ちがいるということか。
しかし、彼は転移してきたようには見えない。
見た目の雰囲気、日常へのなじみ具合――何の違和感もなく、この世界に生まれ育った者の振る舞いそのものだった。
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