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第五章
反乱の収束
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ウィニーとフリッツ――両者の視線が交差していたが、主導権を握らんとばかりにフリッツが声を上げる。
「この身に何かあれば、ヴィルヘルムの命はないと言ったのだ。まだ強がりを言う気か」
「やれやれ、論より証拠をってか」
ウィニーは頭をかいて、俺たちが入ってきた扉の方を向いた。
閉じられた扉が開くと、兵士に付き添われて一人の男性がやってきた。
少しやつれて髪の毛も乱れがちだが、風格のある顔立ち。
その佇まいからはフリッツよりも威厳と気品を感じる。
説明がなくとも誰であるかは一目瞭然だった。
「おい、そこの兵士! 幽閉したヴィルヘルムを連れ出すとは何ごとだ!」
「お言葉ですが公爵殿。私が仕えるのはこの方のみ」
兵士の明確な意思表示を前にフリッツは言葉を返せない様子だった。
ここまで連れてきた兵は一歩引いて、ヴィルヘルム王だけがこちらに歩いてきた。
王様は心配そうな顔でウィニーに問いかける。
「ウィニコット、エリシアは無事なのか?」
「陛下、もちろんですぜ」
「やはり、そなたに任せて正解だったか」
王様に公爵、それに兵長。
そんな面々が対話する中で普通の高校生に割って入る余地はない。
部屋の雰囲気も相まって、まるで物語の一幕のように感じるような状況だ
王様側の人たちの崇高な信念に心を揺さぶられた。
そして、血の通った人間である彼らの対話が続く。
「これでもまだ諦めないのか?」
人質であるヴィルヘルム王が解放されたことで、ウィニーはフリッツへの圧力を強めている。
それに対して、フリッツは苦々しげな表情で悔しさを露わにした。
「くそっ、ウィニコットと縁の深い兵士は除隊させたが、十分ではなかったか」
「そっちの一番強い手駒がルヴィンって時点で積んでたな。兵士の何割かを寝返らせたところまではよかったが、ヴィルヘルム陛下への忠誠心を越えられるわけない」
フリッツは床に手を突いてうなだれた。
いよいよ万策つきたといった様子で、高慢な態度は鳴りを潜めていた。
ヴィルヘルム王はそんな彼にじっと目を向け、神妙な面持ちで口を開く。
「フリッツよ、そなたの野望は看過できぬ。処刑は見逃してやるが、流刑は覚悟しておくのだな」
「……ぐっ」
フリッツはこれ以上の抵抗は見せず、うなだれたまま動かなかった。
威厳のある王の宣告はとても重たく響いた。
少しして申し合わせたようなタイミングで、数人の兵士が部屋にやってきた。
いずれもウィニーの仲間のようで、フリッツを拘束して連行した。
ルヴィンもフリッツと一緒にどこかへ連れていかれた。
黒幕二人がいなくなり、部屋の空気がどこか明るくなった気がした。
しばらく王の間がざわついていたが、状況が落ちついたところでヴィルヘルム王が玉座に歩いていった。
まるで、ソファーにでも腰かけるように気軽な感じで座った。
この場にいる大半の人がそれを見ていて、腰を下ろした瞬間にいくつもの声が沸き上がった。
「皆、集まってくれぬか。あっ、ひざまづいたりせんでいいから」
風格のある佇まいを前にして緊張するが、意外とフランクな一面があるようだ。
王様の娘であるエリーよりも人当たりはよさそうに見える。
呼びかけに応じて部屋にいる全員が集合して、ウィニーが先頭に立った。
俺を含めた旅団の面々はその後ろで横並びになる。
「ウィニコット、そなたを手助けしてくれた仲間たちの名を教えてくれ」
「へい、もちろん! 風の森のエルフ――サリオン。獣人族のルチア。優れた魔法使いのミレーナ。あと、イチハ族風の見た目のカイトです」
「おいおい、カイト少年はもうちょっとマシな紹介をしてあげてもよいだろう」
幽閉されていたとは思えないほど、ヴィルヘルム王は元気そうに笑った。
出会ったばかりで緊張しているが、そんな俺を気遣ってくれているようだ。
初対面の相手が萎縮しないように接してくれているのが伝わってきた。
「エリシア王女はミスティアに隠れてるんで、クラウスと合流して連れてきます」
「では早速、ウィニコットはエリシアを迎えてに向かってもらおう」
「はっ、失礼します」
ウィニーは王様の前を離れると俺たちのところに近づいた。
「ちょっくら行ってくるわ。また後でな」
彼はそれだけ告げて、足早に王の間を後にした。
ウィニーが部屋を出たところで、王様は俺を含めた旅団の面々に声をかける。
「さて、そなたたちに礼を贈ろう。ほしいものがあれば率直に申すといい」
ヴィルヘルム王は解放されたことで上機嫌な様子を保っている。
にこにこした笑顔を浮かべて、手始めにサリオンを指名した。
彼は戸惑いながらも申し出に応じた。
「風の森が周辺国の伐採で困っています。マルネ王国の力添えで解消をお願いできれば幸いです」
「風の森に面した国はいくつかあるわな。この後で詳しいことを聞かせてもらえるか?」
「はい、もちろんです」
サリオンの故郷が困っていることは初耳だった。
おそらく、重要なことだからこそ打ち明ける機会がなかったのだろう。
王様は彼の説明をしっかりと聞いた後、脇を固めた兵士に指示を出した。
記録のようなものが書き留められて、具体的な対処が取られるように思われた。
「この身に何かあれば、ヴィルヘルムの命はないと言ったのだ。まだ強がりを言う気か」
「やれやれ、論より証拠をってか」
ウィニーは頭をかいて、俺たちが入ってきた扉の方を向いた。
閉じられた扉が開くと、兵士に付き添われて一人の男性がやってきた。
少しやつれて髪の毛も乱れがちだが、風格のある顔立ち。
その佇まいからはフリッツよりも威厳と気品を感じる。
説明がなくとも誰であるかは一目瞭然だった。
「おい、そこの兵士! 幽閉したヴィルヘルムを連れ出すとは何ごとだ!」
「お言葉ですが公爵殿。私が仕えるのはこの方のみ」
兵士の明確な意思表示を前にフリッツは言葉を返せない様子だった。
ここまで連れてきた兵は一歩引いて、ヴィルヘルム王だけがこちらに歩いてきた。
王様は心配そうな顔でウィニーに問いかける。
「ウィニコット、エリシアは無事なのか?」
「陛下、もちろんですぜ」
「やはり、そなたに任せて正解だったか」
王様に公爵、それに兵長。
そんな面々が対話する中で普通の高校生に割って入る余地はない。
部屋の雰囲気も相まって、まるで物語の一幕のように感じるような状況だ
王様側の人たちの崇高な信念に心を揺さぶられた。
そして、血の通った人間である彼らの対話が続く。
「これでもまだ諦めないのか?」
人質であるヴィルヘルム王が解放されたことで、ウィニーはフリッツへの圧力を強めている。
それに対して、フリッツは苦々しげな表情で悔しさを露わにした。
「くそっ、ウィニコットと縁の深い兵士は除隊させたが、十分ではなかったか」
「そっちの一番強い手駒がルヴィンって時点で積んでたな。兵士の何割かを寝返らせたところまではよかったが、ヴィルヘルム陛下への忠誠心を越えられるわけない」
フリッツは床に手を突いてうなだれた。
いよいよ万策つきたといった様子で、高慢な態度は鳴りを潜めていた。
ヴィルヘルム王はそんな彼にじっと目を向け、神妙な面持ちで口を開く。
「フリッツよ、そなたの野望は看過できぬ。処刑は見逃してやるが、流刑は覚悟しておくのだな」
「……ぐっ」
フリッツはこれ以上の抵抗は見せず、うなだれたまま動かなかった。
威厳のある王の宣告はとても重たく響いた。
少しして申し合わせたようなタイミングで、数人の兵士が部屋にやってきた。
いずれもウィニーの仲間のようで、フリッツを拘束して連行した。
ルヴィンもフリッツと一緒にどこかへ連れていかれた。
黒幕二人がいなくなり、部屋の空気がどこか明るくなった気がした。
しばらく王の間がざわついていたが、状況が落ちついたところでヴィルヘルム王が玉座に歩いていった。
まるで、ソファーにでも腰かけるように気軽な感じで座った。
この場にいる大半の人がそれを見ていて、腰を下ろした瞬間にいくつもの声が沸き上がった。
「皆、集まってくれぬか。あっ、ひざまづいたりせんでいいから」
風格のある佇まいを前にして緊張するが、意外とフランクな一面があるようだ。
王様の娘であるエリーよりも人当たりはよさそうに見える。
呼びかけに応じて部屋にいる全員が集合して、ウィニーが先頭に立った。
俺を含めた旅団の面々はその後ろで横並びになる。
「ウィニコット、そなたを手助けしてくれた仲間たちの名を教えてくれ」
「へい、もちろん! 風の森のエルフ――サリオン。獣人族のルチア。優れた魔法使いのミレーナ。あと、イチハ族風の見た目のカイトです」
「おいおい、カイト少年はもうちょっとマシな紹介をしてあげてもよいだろう」
幽閉されていたとは思えないほど、ヴィルヘルム王は元気そうに笑った。
出会ったばかりで緊張しているが、そんな俺を気遣ってくれているようだ。
初対面の相手が萎縮しないように接してくれているのが伝わってきた。
「エリシア王女はミスティアに隠れてるんで、クラウスと合流して連れてきます」
「では早速、ウィニコットはエリシアを迎えてに向かってもらおう」
「はっ、失礼します」
ウィニーは王様の前を離れると俺たちのところに近づいた。
「ちょっくら行ってくるわ。また後でな」
彼はそれだけ告げて、足早に王の間を後にした。
ウィニーが部屋を出たところで、王様は俺を含めた旅団の面々に声をかける。
「さて、そなたたちに礼を贈ろう。ほしいものがあれば率直に申すといい」
ヴィルヘルム王は解放されたことで上機嫌な様子を保っている。
にこにこした笑顔を浮かべて、手始めにサリオンを指名した。
彼は戸惑いながらも申し出に応じた。
「風の森が周辺国の伐採で困っています。マルネ王国の力添えで解消をお願いできれば幸いです」
「風の森に面した国はいくつかあるわな。この後で詳しいことを聞かせてもらえるか?」
「はい、もちろんです」
サリオンの故郷が困っていることは初耳だった。
おそらく、重要なことだからこそ打ち明ける機会がなかったのだろう。
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