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第四章
打ち明けられた秘密
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「……まずはジンタのことだ」
「えっ、仁太がどうしたの?」
彼に何かあったのだろうか。
ウィニーは戸惑いが感じられる様子で腕組みをしている。
ただならぬ様子に次の言葉を待つと、彼は重たそうに口を開く。
「この後に話すことにもつながるが、あいつはいずれおれたちを裏切る」
「……裏切る?」
ウィニーの言葉は断定的だった――まるで未来を見通せるかのように。
まさか、彼も魔眼に近いスキルを……そんなことはありえない。
思いもよらないことを耳にして、動揺しているのだと気づく。
「お前にどう見えるか分からんが、こう見えて海千山千の男なわけよ。そんなおれの経験からすれば、あいつは何かあった時に裏切る可能性が高い――ということだ」
「そう言われてもどうすればいいのか……。ちなみにもう一つの内容は?」
根拠がウィニーの直感ではどうすることもできない。
まずは別の話題も聞いておいた方がいいと判断した。
「頃合いを見計らって話すつもりだったが、エリーはとある国の王女だ」
ウィニーはそう打ち明けると、そのまま説明を続けた。
元々エリーは王女でウィニーは彼女に仕える剣士だった。
ある日、国家転覆を図る勢力に国を追われて、ガスパール王国の王都にたどり着いた。
彼らは捲土重来を期するために反攻のタイミングを窺っていたという。
「ルチアとサリオン、ミレーナは協力するために」
「そうだ。事情は話してあるが、協力は取りつけてある」
「サリオンは弓の使い手としては優れていても、大規模な作戦に向いているようには思えないけど」
一対一ならばともかく、規模が大きい状況で活躍する姿が想像できなかった。
こちらの投げかけた疑問にウィニーは首を横に振って応じる。
「いいや。お前は知らないだろうが、人族は風の森のエルフを無下にできない。あいつが一緒にいるだけで、色んなことがやりやすくなる」
「……それも本人が同意しているってこと」
「その通りだ」
ウィニーは内川がいずれ裏切る可能性が高いと言った。
しかし、俺からすればウィニーに重要なことを隠されていたような印象が拭えなかった。
王都での生活に困らずに済んだことについては恩人だが、それで全部が帳消しにできるとも思えない。
「少し時間がほしい。大きな話をされてもよく分からないから」
「もちろんだ。お前がジンタを同行させることにしても構わないが、おれの言葉も忘れないでくれ」
「分かった」
「話は以上だ。明日には出発するから、今日中に結論を知りたい」
俺はウィニーに頷いて返して部屋を出た。
いつもの部屋に戻るとエリーに加えて、内川とルチアが訪れていた。
この状況でどんな顔をすればいいのか。
そんな気持ちを知るはずもなく、内川が声をかけてくる。
「よっ、おはよう」
「……おはよう」
「どうした? 今日は元気がないな」
「いや、いつも通りだよ」
本人を前にして考えないようにしたものの、先ほどの内容が脳裏をよぎる。
内川が裏切る可能性が高いのならば、俺はどうすればいいのだろう。
少なくとも今は何ごともない風を装うことぐらいしかできない。
内川の近くにいると打ち明けてしまいそうで、ルチアの方に近づく。
彼女はテーブルに置かれたブドウを食べているところだった。
「それ美味しい?」
「なかなかいけるっすよ」
ルチアは一つの房を掴んで、こちらに差し出した。
みずみずしい果実に魅力を感じるが、食欲は湧かなかった。
「今はいいかな」
「そういえば、カイトはどうするんすか?」
「えっと、どうって?」
不意を突かれたような反応になった。
ルチアがウィニーの計画について話していることが分かったからだ。
「遠征のことっすよ。ジンタにはあたしから説明してあるっす」
「どうしようか考え中かな」
内川の方にちらりと視線を向けると、彼は落ちついた様子だった。
今初めて聞いたわけではないようで、ルチアから大まかなことは教えられたように見える。
もちろん、いずれ裏切るかもしれないとは本人に伝えていないはずだ。
それに加えてウィニーとルチアの話がどこまで共有しているかは不透明だった。
「僕は行ってみるつもりだ。これ以上、ルチアにしごかれるのも大変だし」
「分かった。俺も行こう」
「よしっ、決まりっすね! 団長に伝えてくるっす」
ルチアは足早に部屋を出ていった。
内川と並んで椅子に座り会話を続ける。
できる限り話すことで、ウィニーの話を打ち消したい気持ちがあった。
「僕は別々に行動するのはよくないと思うんだ」
「俺も同じ考えだよ。目的地までの地理もよく分からないし」
「ウィニーに何か事情があると思ったが、想像以上だった」
内川は遠くを見るような目で窓の外に顔を向けた。
エリーは席を外しており、彼女の姿は見当たらなかった。
「そっちは実戦に近いことをしているみたいだな。僕の方はルチアとのトレーニングばかりで、何かあった時にどれだけやれるか不安だらけだ」
「危ない時はスキルがあるじゃん。それで隠れたら無敵だよ」
フォローしたつもりだったが、内川は複雑な表情を浮かべた。
何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
「えっ、仁太がどうしたの?」
彼に何かあったのだろうか。
ウィニーは戸惑いが感じられる様子で腕組みをしている。
ただならぬ様子に次の言葉を待つと、彼は重たそうに口を開く。
「この後に話すことにもつながるが、あいつはいずれおれたちを裏切る」
「……裏切る?」
ウィニーの言葉は断定的だった――まるで未来を見通せるかのように。
まさか、彼も魔眼に近いスキルを……そんなことはありえない。
思いもよらないことを耳にして、動揺しているのだと気づく。
「お前にどう見えるか分からんが、こう見えて海千山千の男なわけよ。そんなおれの経験からすれば、あいつは何かあった時に裏切る可能性が高い――ということだ」
「そう言われてもどうすればいいのか……。ちなみにもう一つの内容は?」
根拠がウィニーの直感ではどうすることもできない。
まずは別の話題も聞いておいた方がいいと判断した。
「頃合いを見計らって話すつもりだったが、エリーはとある国の王女だ」
ウィニーはそう打ち明けると、そのまま説明を続けた。
元々エリーは王女でウィニーは彼女に仕える剣士だった。
ある日、国家転覆を図る勢力に国を追われて、ガスパール王国の王都にたどり着いた。
彼らは捲土重来を期するために反攻のタイミングを窺っていたという。
「ルチアとサリオン、ミレーナは協力するために」
「そうだ。事情は話してあるが、協力は取りつけてある」
「サリオンは弓の使い手としては優れていても、大規模な作戦に向いているようには思えないけど」
一対一ならばともかく、規模が大きい状況で活躍する姿が想像できなかった。
こちらの投げかけた疑問にウィニーは首を横に振って応じる。
「いいや。お前は知らないだろうが、人族は風の森のエルフを無下にできない。あいつが一緒にいるだけで、色んなことがやりやすくなる」
「……それも本人が同意しているってこと」
「その通りだ」
ウィニーは内川がいずれ裏切る可能性が高いと言った。
しかし、俺からすればウィニーに重要なことを隠されていたような印象が拭えなかった。
王都での生活に困らずに済んだことについては恩人だが、それで全部が帳消しにできるとも思えない。
「少し時間がほしい。大きな話をされてもよく分からないから」
「もちろんだ。お前がジンタを同行させることにしても構わないが、おれの言葉も忘れないでくれ」
「分かった」
「話は以上だ。明日には出発するから、今日中に結論を知りたい」
俺はウィニーに頷いて返して部屋を出た。
いつもの部屋に戻るとエリーに加えて、内川とルチアが訪れていた。
この状況でどんな顔をすればいいのか。
そんな気持ちを知るはずもなく、内川が声をかけてくる。
「よっ、おはよう」
「……おはよう」
「どうした? 今日は元気がないな」
「いや、いつも通りだよ」
本人を前にして考えないようにしたものの、先ほどの内容が脳裏をよぎる。
内川が裏切る可能性が高いのならば、俺はどうすればいいのだろう。
少なくとも今は何ごともない風を装うことぐらいしかできない。
内川の近くにいると打ち明けてしまいそうで、ルチアの方に近づく。
彼女はテーブルに置かれたブドウを食べているところだった。
「それ美味しい?」
「なかなかいけるっすよ」
ルチアは一つの房を掴んで、こちらに差し出した。
みずみずしい果実に魅力を感じるが、食欲は湧かなかった。
「今はいいかな」
「そういえば、カイトはどうするんすか?」
「えっと、どうって?」
不意を突かれたような反応になった。
ルチアがウィニーの計画について話していることが分かったからだ。
「遠征のことっすよ。ジンタにはあたしから説明してあるっす」
「どうしようか考え中かな」
内川の方にちらりと視線を向けると、彼は落ちついた様子だった。
今初めて聞いたわけではないようで、ルチアから大まかなことは教えられたように見える。
もちろん、いずれ裏切るかもしれないとは本人に伝えていないはずだ。
それに加えてウィニーとルチアの話がどこまで共有しているかは不透明だった。
「僕は行ってみるつもりだ。これ以上、ルチアにしごかれるのも大変だし」
「分かった。俺も行こう」
「よしっ、決まりっすね! 団長に伝えてくるっす」
ルチアは足早に部屋を出ていった。
内川と並んで椅子に座り会話を続ける。
できる限り話すことで、ウィニーの話を打ち消したい気持ちがあった。
「僕は別々に行動するのはよくないと思うんだ」
「俺も同じ考えだよ。目的地までの地理もよく分からないし」
「ウィニーに何か事情があると思ったが、想像以上だった」
内川は遠くを見るような目で窓の外に顔を向けた。
エリーは席を外しており、彼女の姿は見当たらなかった。
「そっちは実戦に近いことをしているみたいだな。僕の方はルチアとのトレーニングばかりで、何かあった時にどれだけやれるか不安だらけだ」
「危ない時はスキルがあるじゃん。それで隠れたら無敵だよ」
フォローしたつもりだったが、内川は複雑な表情を浮かべた。
何か気に障ることを言ってしまっただろうか。
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