幽閉王女物語

白雪みなと

文字の大きさ
上 下
1 / 1

幽閉王女物語

しおりを挟む
「……」

 家庭教師はいる、何でもモノを与えてくれる。だけど、一回も外に出してくれたことも無い。
 私はこの扉の向こうの景色すら知らなかった。
 ただ窓の外に浮かぶ月や星などを見ることが楽しみだった。
 月明かりに照らされて本を読むとどこか安心する。
 安全が保証されているような部屋にいてもどこか不安が付きまとうのだから不思議なものだ。

『パタン』

 何度目か分からない物語を今日もなぞった。
 私の外の世界はこの本に圧縮されている。ただただ惨めで仕方なかった。

『ドゴォォォォォ』

 聞いたことのない音だ。
 だが何となく何の音か分かってしまう。これは――。

 爆弾だ。

 窓の光に赤色が混じる。
 不謹慎ながら綺麗だと思ってしまった。
 見たことのない光の色に心を奪われていると。

『コンコン』
『ガチャガチャ……』
『キィィ――』

 誰か見知らぬ人が入ってきた。
 何だろうか、私はついに殺されてしまうのだろうか。
 だが、その人は私の所に近づくと一言。

「ここから逃げよう」

 とだけ言った。
 火の手は回ってくる。
 どうせどう殺されるのかの違いだろう。だったら私は外の世界に行ってからそうなりたい。

「はい」

 私は確かに一言そう発した。
 と同時にその人――男は窓を蹴破って外へ飛び出した。
 私のいたところは意外と地面に近くて空から遠くて、それに――狭すぎた。
 ロクに体力をつけてなかったからか、それだけで私はクラクラしてしまう。

「君は心だけでなく、身体的にも自由になった。好きなところに行けばいい」

 そんな事言われてもやりたい事とか無い。
 ならばこの人に付いていきたい、そう願った。

「ではあなたの隣にいたいです」

 私はやっと人生で初めてワガママを言うことが出来た。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

まんまるたまご

更新を楽しみにするには充分な出だしです待ってます(*`・ω・)ゞ

解除

あなたにおすすめの小説

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

婚約破棄された悪役令嬢は聖女の力を解放して自由に生きます!

白雪みなと
恋愛
王子に婚約破棄され、没落してしまった元公爵令嬢のリタ・ホーリィ。 その瞬間、自分が乙女ゲームの世界にいて、なおかつ悪役令嬢であることを思い出すリタ。 でも、リタにはゲームにはないはずの聖女の能力を宿しており――?

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

愛のゆくえ【完結】

春の小径
恋愛
私、あなたが好きでした ですが、告白した私にあなたは言いました 「妹にしか思えない」 私は幼馴染みと婚約しました それなのに、あなたはなぜ今になって私にプロポーズするのですか? ☆12時30分より1時間更新 (6月1日0時30分 完結) こう言う話はサクッと完結してから読みたいですよね? ……違う? とりあえず13日後ではなく13時間で完結させてみました。 他社でも公開

攻略対象の王子様は放置されました

白生荼汰
恋愛
……前回と違う。 お茶会で公爵令嬢の不在に、前回と前世を思い出した王子様。 今回の公爵令嬢は、どうも婚約を避けたい様子だ。 小説家になろうにも投稿してます。

夜会の夜の赤い夢

豆狸
恋愛
……どうして? どうしてフリオ様はそこまで私を疎んでいるの? バスキス伯爵家の財産以外、私にはなにひとつ価値がないというの? 涙を堪えて立ち去ろうとした私の体は、だれかにぶつかって止まった。そこには、燃える炎のような赤い髪の──

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。