婚約破棄令嬢の雨模様

白雪みなと

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婚約破棄令嬢の雨宿り

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「はぁ……」

 私は思わずため息をついてしまう。
 最愛の人から婚約破棄を言い渡されて15分の事だった。私は止まってしまった汽車を呆然と見ながら雨に打たれ続けていた。

「オーブ様……」

 私はおぼろげにそう呟く。
 だが、いくら呟いても、いくら嘆いてももうオーブ様の隣の席は帰ってこない。
 もうこのままでは終わることが出来ない、早く立ち直らなければ。そう思えば思う程雨は強くなっていき、私の想いはオーブ様から離れてくれない。
 終わる事のない無限ループに突入している。

『ザァァァァァァァァァァァァァ』

 今私を打ち付けているこの雨はいつかは止むだろう。
 けれど、私の心に打ちつけている針の雨は止むことを知らない。
 レールの無くなった恋はここまで悲哀に満ち溢れるものなのか。
 私は蒼い眼に透明の雫を蓄え、右手にある蒼い宝石の指輪を見る。
 いつか私に婚約を誓ってくれた時の指輪だった。もう愛しいあの人は付けていないけれど。
 私はその爛々と輝く悲しみも喜びも知らない無機質な冷たい宝石をしばらく淀んだ眼で見つめていた。
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