悪役のミカタ

MEIRO

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はじまりまして

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「――やっほー」

 唐突に、そんな少女のような声が響く。

「だれ? って顔をしてるね? ……けど、そんなことはどうでもいいじゃない。そんなことより、目の前にある――それなんだけど、なんだかわかる?」

 くふふ――と、その者は独特な笑い声をあげ、言葉を続けた。

「そうそう。おんにゃのこの、お・し・り、だよ。――あ、逃げようとしても無駄無駄。今のあなたは――『魔力タンク』なんだから」

 ぐひゅひゅ――と、その者はは下品に笑うと、

「状況は――理解できたかな?」

「まあ、できてなくても」

「始まっちゃうんだけどね」

 同じ声が三方向にわかれる。
 そしてその者は、

「「「それじゃ、ばいびー」」」

 と、言うと、それらの気配は煙のように、ふっ、と消えていったのだった。

 *――*――*――*――*

「――い、いいんですか? この状態ですと……顔に、かかってしまいますよ?」

「構いません。これもしっかりと魔力を受け取るために、必要なことなんです」

 ヴェルゼは魔族の少女Aの背後でしゃがみ、『魔力タンク』を彼女の尻の前で持ちながら言う。
 彼女はそうやって、魔族の少女Aのおならを、魔力へと返還する準備をしているのである。

「そんなことよりも、心配なのは、むしろあなたの方です」

 ヴェルゼはそう言って、穏やか調子で言葉を続けていく。

「緊張されているようですが……、大丈夫ですか?」

「はっ、はい。恥ずかしいですが……、頑張れます!」

「流石ですね。素晴らしい勇気だと思います」

「あっ、ありがっ……、――あっ、ちょっとまってください! なんだかいま、出っ――!」

 と、魔族の少女Aが唐突に声をあげた――すぐあと、

 ~ ぷっ――ぷう!

 彼女の尻から、そんな音が鳴った。
 と、場面はそんなところから始まり――別の場面へと移っていく。

 ――――。

「ちょっ、これは……、少々キツいのが、出てしまうかもしれません……」

「大丈夫です。安心して、力を抜いてください」

 ヴェルゼはそう言うと、優しい手つきで目の前にある――魔族の少女Bの尻に触れた。

「――んっ。……ヴェルゼさま?」

「ほら……、大丈夫ですから……」

「……。はい……」

 ~ むっすうぅ

 と、熱を感じるようなすかしっ屁が、魔族の少女Bの尻から開放されたところで。
 場面また――別の場面へと移っていった。

 ――――。

「ヴェルゼ様……。っ、す――すみません!」

 ~ ぶっ! ぶっ! ぶう!

「はあ、三連発も……、ヴェルゼ様の顔に……」

「い、いいのですよ。お願いしているのは、わたくしなのですから、なんの問題もありません」

「ヴェルゼ様……」

 ヴェルゼは魔族の少女Cの尻から、魔力補充をすると――、

 ――――。

 ~ ぼぶおぉっ!!

「――っ!? ああ、すみません! ヴェルゼ様、大丈夫ですか!?」

「……っ、大丈夫です。心配はいりません」

 魔族の少女Dから補充する。
 しかし、これはまだ始まったばかりというところ――、

 ――――。

 ~ ぶばっ!

 それからも、ヴェルゼは次々と魔族の少女達に声をかけては――、

 ――――。

 ~ ぶびぃ!

 魔力を補充していき――、

 ――――。

 ~ ぶっ――ぶうぅ!

 時にめまいを起こし――、

 ――――。

 ~ ぶべぇ!

 時に吐き気を覚えたような表情をしながらも――、

 ――――。

 ~ ぶぼおぉっ!

 具合の悪そうな素振りは見せず――、

 ――――。

 ~ ぷっ――ぷぷっ――ぷぷぷぷぷうぅ

 ヴェルゼは『魔力タンク』を使い――、

 ――――。

 ~ ぶびっ! ぶばっ! ぶぼっ!

 おならを魔力へと変換し続けていく。
 そして――『魔力タンク』となっている“傍観者”の苦しみは、彼女以上であり、“彼”は意識をぼんやりとさせながら、そんな光景をみていたのだった――。
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