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14 終電? ……いやいや、今日はオールっしょ? うーい、飲んで飲んで――
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例えばの話。
人の意識をあっという間に刈り取るような、毒ガスのようなおならが存在するなら、少年がここまで苦しむことはなかっただろう。
弱火で、火あぶりにされるような――いや、そこまでいう必要はないが、例えとしてはそれに近く、強い毒で一瞬で息の根を止めるのか、弱い毒で、じわじわと蝕まれていくのか、どちらのほうが辛いかということなのである。
「――――」
最後に少年が発した言葉は、なんだっただろうか。
まるで眠っているかのように、少年はそこに座っている。
と、そんな少年の前に、
「……うぃ。……ひっく」
アルコールを少々多めに摂取してしまったのか、女性がふらりとした足取りで、歩いてきた。
日は随分前に沈み、辺りはすっかり暗くなっている。
それでも、視界がはっきりしているのは、広場を照らす無数に灯る明かりのおかげであり、女性は真っ直ぐに、少年の目の前へとたどり着くことができた。
ぼさっとしたセミロングの髪に、だらしなく気崩した服。
人によっては、女性らしさを欠いているように見える格好だが、それでも、長いまつげの奥には、サファイアを思わせるような綺麗な瞳が美しく光を反射させている。
そして、端整な顔つきに、透き通るような白い肌といった、だらしなさをギャップにしてしまえるほどの魅力が、彼女にはあった。
普段であったなら、その女性に色香に見惚れ、少年は挙動不審になってしまっていたかもしれない。が、今はそんな余裕もなく、
「こんばんわ……。綺麗な月ね」
ひっく――と、その女性はムードを壊すようなしゃっくりをすると、
「あら……、眠っちゃってるの? まあ、そうよね……」
女性は少年の返事がないことを気にした様子もなく、話を続ける。
「今日は人がいっぱいで、大変そうだったものね。混雑してるから、時間潰してから来てみたけど……」
まだすごい人だかりだわ――と、女性はぐるりと広場を見回す。
「だから、寝たままでもいいわ。そのままでいいから……」
女性は『カップケーキ』で臭いを嗅がせようと、
~ むっ――すううぅぅううぅぅうぅ――ぅ
手の中に、ほとんど無音で出したそれを込める。
ねっとりとした熱の塊。
彼女それをは握りこむと、
「しっかりと……」
受け取って――と、女性は長くて綺麗な手の中に、少年の鼻を閉じ込めた。
「――――」
ぴくっと反応する少年。
その反応に、女性は驚いたように目を見開いた。
女性はしばらく硬直していたが、宝石のように綺麗な瞳を瞼の裏に隠すと、
「ちゃんと反応してくれて……。ふふ、優しいのね。……ありがとう」
女性はなぜか嬉しそうにに笑みを浮かべると、少年に背を向け、その場を立ち去ったのだった。
人の意識をあっという間に刈り取るような、毒ガスのようなおならが存在するなら、少年がここまで苦しむことはなかっただろう。
弱火で、火あぶりにされるような――いや、そこまでいう必要はないが、例えとしてはそれに近く、強い毒で一瞬で息の根を止めるのか、弱い毒で、じわじわと蝕まれていくのか、どちらのほうが辛いかということなのである。
「――――」
最後に少年が発した言葉は、なんだっただろうか。
まるで眠っているかのように、少年はそこに座っている。
と、そんな少年の前に、
「……うぃ。……ひっく」
アルコールを少々多めに摂取してしまったのか、女性がふらりとした足取りで、歩いてきた。
日は随分前に沈み、辺りはすっかり暗くなっている。
それでも、視界がはっきりしているのは、広場を照らす無数に灯る明かりのおかげであり、女性は真っ直ぐに、少年の目の前へとたどり着くことができた。
ぼさっとしたセミロングの髪に、だらしなく気崩した服。
人によっては、女性らしさを欠いているように見える格好だが、それでも、長いまつげの奥には、サファイアを思わせるような綺麗な瞳が美しく光を反射させている。
そして、端整な顔つきに、透き通るような白い肌といった、だらしなさをギャップにしてしまえるほどの魅力が、彼女にはあった。
普段であったなら、その女性に色香に見惚れ、少年は挙動不審になってしまっていたかもしれない。が、今はそんな余裕もなく、
「こんばんわ……。綺麗な月ね」
ひっく――と、その女性はムードを壊すようなしゃっくりをすると、
「あら……、眠っちゃってるの? まあ、そうよね……」
女性は少年の返事がないことを気にした様子もなく、話を続ける。
「今日は人がいっぱいで、大変そうだったものね。混雑してるから、時間潰してから来てみたけど……」
まだすごい人だかりだわ――と、女性はぐるりと広場を見回す。
「だから、寝たままでもいいわ。そのままでいいから……」
女性は『カップケーキ』で臭いを嗅がせようと、
~ むっ――すううぅぅううぅぅうぅ――ぅ
手の中に、ほとんど無音で出したそれを込める。
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彼女それをは握りこむと、
「しっかりと……」
受け取って――と、女性は長くて綺麗な手の中に、少年の鼻を閉じ込めた。
「――――」
ぴくっと反応する少年。
その反応に、女性は驚いたように目を見開いた。
女性はしばらく硬直していたが、宝石のように綺麗な瞳を瞼の裏に隠すと、
「ちゃんと反応してくれて……。ふふ、優しいのね。……ありがとう」
女性はなぜか嬉しそうにに笑みを浮かべると、少年に背を向け、その場を立ち去ったのだった。
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