12 / 17
11 あ、それ。熟成しておいたんですけど……、だめでした?
しおりを挟む
ベーシュにグレーを程よく合わせたような彼女の髪色は、日の光を馴染ませ、透明感を帯びている。
ワンピースをの袖から伸びる手足は、滑らかな白い肌をしており、歳は、少年と同じくらい、もしくは年下といったような見た目をしているその少女は、憂鬱そうに溜め息を吐くと、
「多分、私が最初だったんですけどね……」
声をかけた順番の話だろう。
この街に来て始めて初めて、他人に声をかけられたときのことを思い出して、少年は少女の言っている意味を推測する。
「そしたら、いきなり逃げちゃうんだもん」
少女は頬を膨らませると、不機嫌そうに話を続けた。
「探しても、見つからないし。そしたら、ちょっとだけ腹が立って。それで、今日のお昼は少し、やけ食いをしちゃったんですよね」
ポンポンと、少女は自分のお腹を叩くと、円を描くように撫でる。大切なものを扱うような、優しい手の動き。
それを目で追っていた少年は、そこはなとなく、強烈な不安感を覚える。
「けど、そのおかげで……、出そうなんです」
少女はそう言いながら、少年の目の前でしゃがみ、ゆっくりとした動きで、少年の耳に口を近づけていくと、
「あっつーい……」
言葉をそこで区切り――「ふぅ」と、少女は息で、少年の耳をくすぐる。
「――っ」
少女のいたずらに、少年の目は死んでいるようでありながらも、動揺に瞳が揺ゆれた。
少女に対して、いたずらをするようなイメージを抱いてなかったのもあり、そのギャップも合わさって、強い驚きが、少年のぼやけた意識を鮮明にさせていく。
そして、鮮明に――させてしまった。
そのせいで、少年の耳は、はっきりと聞いてしまう。
~ すっ――すううぅぅ――ぅぅ――っかああぁぁ
聞いただけでわかってしまう――“やばい”やつだ。
「では……。今度は、逃げないでくださいね……」
そう言うと、少女は少年の後頭部に――左手を回し、後ずさろうとする動きを止める。
そして、もう片方――右手はいつの間にか、おしりの方へと回されており、
「ふふっ……。これは多分。一度嗅いだら、二度と忘れられないかもしれません……」
少女は薄く笑い、少年の鼻先へ、柔らかく握った右手を持っていくと――『カップケーキ』で、少年の鼻を、ふんわりと、閉じ込めしまった。
「――――」
白目を向く少年。
ねっとりとした、暖かい空気が少年の鼻を包んだかと思えば、腐卵臭のかたまりのようなものが鼻腔へと流れ込んできたのだ。
その衝撃は、少年の脳内に火花を生み、脳震盪を引き起こし、
「――うっ……、おげええええっ!!」
ついに、少年はうずくまり、胃の中身を吐いてしまう。
ここまで、少年は嘔吐することなく堪えていたのだが、今まで蓄積していた気持ち悪さも手伝って、少女の一発は、ややオーバーキル気味に、少年の精神をへし折ったのだった。
そんな少年の様子に、少女は特にドン引した様子も見せず、
「あらら……。ちょっと、刺激が強すぎたんでしょうか。大丈夫ですか? せめて――もう一発くらい、嗅いでほしいんですけど……」
「……っ!?」
少女の言葉に、少年の体がピクッとはねる。
その反応に、少女は「ふふっ」と可笑しそうに笑った。
「なんちゃって」
少女の言葉に、安堵したのもつかの間、
「残念ながら、――一人、一発までなんですよね」
「…………」
少年は唖然とする。
『一人一発』。
それは少年にとって、初耳なルールだった。
思い返せばそれは守られていて、それがなかったら――と想像し、
「――おっ、ごええぇぇ……」
胃が締め付けられたかのように、彼はえずいた。
そんな少年へ、少女はなぜか切なそうな表情を向けると、
「だから、これを掃除したら、お別れです。……今日のところは、ですけどね」
少女はそう言い残し、少年の失態の片付けをするため、どこからともなく、せい清掃道具を持ってきて、掃除を始める。
「…………」
聞き逃せない言葉に、少年が呆然としていると、周りにいいた女性達も掃除に協力し、その場所はあっというまに、綺麗になった。
そして、
「あの。お時間いだだきまして、ありがとうございました。それでは、また……」
と、少女と入れ替わるようにして――また別の人影が、少年の前へとやってくる。
そして、それからも少年の地獄は続き――。
ワンピースをの袖から伸びる手足は、滑らかな白い肌をしており、歳は、少年と同じくらい、もしくは年下といったような見た目をしているその少女は、憂鬱そうに溜め息を吐くと、
「多分、私が最初だったんですけどね……」
声をかけた順番の話だろう。
この街に来て始めて初めて、他人に声をかけられたときのことを思い出して、少年は少女の言っている意味を推測する。
「そしたら、いきなり逃げちゃうんだもん」
少女は頬を膨らませると、不機嫌そうに話を続けた。
「探しても、見つからないし。そしたら、ちょっとだけ腹が立って。それで、今日のお昼は少し、やけ食いをしちゃったんですよね」
ポンポンと、少女は自分のお腹を叩くと、円を描くように撫でる。大切なものを扱うような、優しい手の動き。
それを目で追っていた少年は、そこはなとなく、強烈な不安感を覚える。
「けど、そのおかげで……、出そうなんです」
少女はそう言いながら、少年の目の前でしゃがみ、ゆっくりとした動きで、少年の耳に口を近づけていくと、
「あっつーい……」
言葉をそこで区切り――「ふぅ」と、少女は息で、少年の耳をくすぐる。
「――っ」
少女のいたずらに、少年の目は死んでいるようでありながらも、動揺に瞳が揺ゆれた。
少女に対して、いたずらをするようなイメージを抱いてなかったのもあり、そのギャップも合わさって、強い驚きが、少年のぼやけた意識を鮮明にさせていく。
そして、鮮明に――させてしまった。
そのせいで、少年の耳は、はっきりと聞いてしまう。
~ すっ――すううぅぅ――ぅぅ――っかああぁぁ
聞いただけでわかってしまう――“やばい”やつだ。
「では……。今度は、逃げないでくださいね……」
そう言うと、少女は少年の後頭部に――左手を回し、後ずさろうとする動きを止める。
そして、もう片方――右手はいつの間にか、おしりの方へと回されており、
「ふふっ……。これは多分。一度嗅いだら、二度と忘れられないかもしれません……」
少女は薄く笑い、少年の鼻先へ、柔らかく握った右手を持っていくと――『カップケーキ』で、少年の鼻を、ふんわりと、閉じ込めしまった。
「――――」
白目を向く少年。
ねっとりとした、暖かい空気が少年の鼻を包んだかと思えば、腐卵臭のかたまりのようなものが鼻腔へと流れ込んできたのだ。
その衝撃は、少年の脳内に火花を生み、脳震盪を引き起こし、
「――うっ……、おげええええっ!!」
ついに、少年はうずくまり、胃の中身を吐いてしまう。
ここまで、少年は嘔吐することなく堪えていたのだが、今まで蓄積していた気持ち悪さも手伝って、少女の一発は、ややオーバーキル気味に、少年の精神をへし折ったのだった。
そんな少年の様子に、少女は特にドン引した様子も見せず、
「あらら……。ちょっと、刺激が強すぎたんでしょうか。大丈夫ですか? せめて――もう一発くらい、嗅いでほしいんですけど……」
「……っ!?」
少女の言葉に、少年の体がピクッとはねる。
その反応に、少女は「ふふっ」と可笑しそうに笑った。
「なんちゃって」
少女の言葉に、安堵したのもつかの間、
「残念ながら、――一人、一発までなんですよね」
「…………」
少年は唖然とする。
『一人一発』。
それは少年にとって、初耳なルールだった。
思い返せばそれは守られていて、それがなかったら――と想像し、
「――おっ、ごええぇぇ……」
胃が締め付けられたかのように、彼はえずいた。
そんな少年へ、少女はなぜか切なそうな表情を向けると、
「だから、これを掃除したら、お別れです。……今日のところは、ですけどね」
少女はそう言い残し、少年の失態の片付けをするため、どこからともなく、せい清掃道具を持ってきて、掃除を始める。
「…………」
聞き逃せない言葉に、少年が呆然としていると、周りにいいた女性達も掃除に協力し、その場所はあっというまに、綺麗になった。
そして、
「あの。お時間いだだきまして、ありがとうございました。それでは、また……」
と、少女と入れ替わるようにして――また別の人影が、少年の前へとやってくる。
そして、それからも少年の地獄は続き――。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
扉のない部屋
MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・
出口のない部屋に閉じ込められた少女の、下品なお話です。
そこは、何の変哲もない村だった
MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・そこは、なんの変哲もない、村だった。そして、なんの面白みのない、ただの村だった。自然に囲まれ。綺麗な空気にかこまれ。ただぼんやりとしていて。のんびりと過ごすには、丁度いい、そんな村だ。村民は、建物を円状に建て、静かに暮らしているようだ。建物の並び方としては、些か歪とも思えるよう形だが、原因は村の中央にある、建物が原因だろう。人が住むには小さすぎるような、そんな建物だった。それが、何かを祀るかのように、ぽつんと、たれられているのだった――。
お隣さんの、お話
MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・
壁の薄いアパート内で起きた、とある下品なお話です。
モノクロ
MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・
とある白黒の生物が獣人化している、とある世界でのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる