上 下
1 / 17

00 プロローグ

しおりを挟む
「はあっ……はあぁっ……」

 石畳の道を、少年が息を切らし、全力疾走していく。
 長くも短くも無い黒髪はぼさっとしており、服装は、パーカーにデニム。
 見知った街を散歩するような、ラフな格好だ。
 しかし、その視線はきょろきょろとしており、道がわかっていない様子である。
 表情には、緊張が滲んでおり、時折背後を気にする様は、まるで何かから逃げているようだ。

「なんで……こんな」

 少年の声に震えが混じる。
 額には、大粒の汗が浮かんでおり、切羽詰った表情で、横道へと入ってく。

「つーか……まじで……どこなんだよ、ここ」

 少年ぶつぶつ言いながらも、必死で足を動かし、横道を探しては、適当に入っていった――それがいけなかった。
 物事を冷静に判断せず、行き当たりばったりに行動した結果、少年はついに――、

「……は?」

 少年の進んだ先には、四、五メートルほどの高い壁があった。
 左右も然り、少年を背の高い壁が囲んでいる。
 残された道は背後だけであり、少年は行き止まりに来てしまったのである。

「……嘘だろ」

 呆然とする少年。
 と――その背後から、

「――ひっ!」

 足音が聞こえ、それに反応するように、少年の肩が震えた。
 その音は、一人分、二人分――と、少しずつ数を増やしていく。

「……なんで」

 足音の正体を理解し、少年は疑問に表情を歪める。
 その正体は、決して恐いものではない。
 だが、少年は本能的に、危機感をおぼえていたのだった。

「いや、おかしいだろう」

 少年は現状のおかしさに、笑いが込み上げてくる。
 追いかけられる理由が、思い当たらない。
 追いかけて“もらう”ような要素なんて、何一つ無いのだ。
 思い過ごしなんかではない。それを、十数年、自分という人生を生きてきたからこそ、はっきりとわかる。
 いや、自分でなくても、おかしい。
 何故なら――。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件

フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。 寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。 プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い? そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない! スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

しばりプレイ

MEIRO
大衆娯楽
金縛りにあった者は、夢であるのような現実を見る――という説がある。 それが本当だとして、目を覚ましたまま見る悪夢というのは、どんなものなのだろうか。 それは――金縛りにあったものしか、わからないのである。 ※大変下品な内容となっておりますので、閲覧の際には、タグのご確認の方、よろしくお願いいたします。

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

一目ぼれした小3美少女が、ゲテモノ好き変態思考者だと、僕はまだ知らない

草笛あたる(乱暴)
恋愛
《視点・山柿》 大学入試を目前にしていた山柿が、一目惚れしたのは黒髪ロングの美少女、岩田愛里。 その子はよりにもよって親友岩田の妹で、しかも小学3年生!! 《視点・愛里》 兄さんの親友だと思っていた人は、恐ろしい顔をしていた。 だけどその怖顔が、なんだろう素敵! そして偶然が重なってしまい禁断の合体! あーれーっ、それだめ、いやいや、でもくせになりそうっ!   身体が恋したってことなのかしら……っ?  男女双方の視点から読むラブコメ。 タイトル変更しました!! 前タイトル《 恐怖顔男が惚れたのは、変態思考美少女でした 》

悪役のミカタ

MEIRO
ファンタジー
いわゆるチート系の能力を授かった日本人の少年の物語。 しかし彼は、困難を極めた生活を、異世界でおくる事になる。 力を使えば、異世界での生活も、余裕だと思うかもしれないが――魔力がなければ、チートクラスの力も、ガラクタ同然なのだ。 つまり、彼は魔力を持たずに、チートの力を手に入れてしまったというこのなのである。 ただ、魔力を補充する方法がないわけではない。 とある方法にて、それは可能なのだが、その方法と言うのが――。 ※下品なお話なので、タグをご確認のうえ、閲覧の方よろしくお願いいたします。

勇者パーティーを追放された俺は腹いせにエルフの里を襲撃する

フルーツパフェ
ファンタジー
これは理不尽にパーティーを追放された勇者が新天地で活躍する物語ではない。 自分をパーティーから追い出した仲間がエルフの美女から、単に復讐の矛先を種族全体に向けただけのこと。 この世のエルフの女を全て討伐してやるために、俺はエルフの里を目指し続けた。 歪んだ男の復讐劇と、虐げられるエルフの美女達のあられもない姿が満載のマニアックファンタジー。

処理中です...