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第二章
放物線状のシナリオ
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二メートル弱先の距離に、何かの的になるように置かれた置物があった。
それはまるで、古時計のような形をしており、その時計番の部分に、様々な数字が書き込まれている。その文字の並びを見てみれば、時計のような規則性のあるものとは違っていて――ダーツを知っている人であれば、その数字の意味を理解できるだろう。
つまり、そこにあったのは――、
「……おお。ちょうど、8のトリプルですね」
そう言って、楽しげな笑みを浮かべる少年。
彼の名前は――不明。
黒いシルクハットと白い手袋、そして赤いネクタイがトレードマークのように、似合っている少年だった。
それは、前作――【URAGAWAのOMOTE。】の時とは少し違った衣装のようだが、その違いははほとんどなく、ほんの少しだけ、華やかさが加わった感じだ。
そして、そんな彼が笑みを向けた先には、
「……」
真っ青な表情を浮かべた男が、呆然と立ち尽くしていた。どうやら今の回で、ゲームの勝敗が決まってしまったようだ。
その男は、シンプルな上下の服装をしている、気弱そうな男だった。
そんな男の様子に、シルクハットの少年は心配げな表情を浮かべると、
「リックさん? 大丈夫ですか?」
彼は気遣わしげな声を、リックへと投げかける。
「まあ、リックさんの気持ちも分かりますけどね。白金貨――270枚分もの借金をしたら、僕だって参ってしまうと思いますし」
シルクハットの少年はそう言って肩をすくめるが、その状況に陥っても、彼ならどうにかしてしまうのではないだろうか。と、そう思わせるような笑みが、その表情には浮かんでいた。
ちなみに、この世界の白金貨は、一枚あたり、日本円にして約十万円ほどだ。要するに、先ほどの会話が本当なのであれば、リックは日本円にして、約――二千七百万という額の借金を、シルクハットの少年にした、といった話のようで、加えて、リックという男は資産家というわけでなく、彼は後先を考えずに行動を選択した結果、このような事態になってしまったというのだから、救いようのない話なのである。
ただ、この場所での借金には、一つの――救済処置があった。
そして、その救済処置というのが――、
「ではリックさん。約束通り、そろそろ覚悟を決めてーー始めちゃいましょうか」
シルクハットの少年は落ち着いた声のトーンでそう言うとーー
ぱちん。と、指を鳴らしたのだった。
それはまるで、古時計のような形をしており、その時計番の部分に、様々な数字が書き込まれている。その文字の並びを見てみれば、時計のような規則性のあるものとは違っていて――ダーツを知っている人であれば、その数字の意味を理解できるだろう。
つまり、そこにあったのは――、
「……おお。ちょうど、8のトリプルですね」
そう言って、楽しげな笑みを浮かべる少年。
彼の名前は――不明。
黒いシルクハットと白い手袋、そして赤いネクタイがトレードマークのように、似合っている少年だった。
それは、前作――【URAGAWAのOMOTE。】の時とは少し違った衣装のようだが、その違いははほとんどなく、ほんの少しだけ、華やかさが加わった感じだ。
そして、そんな彼が笑みを向けた先には、
「……」
真っ青な表情を浮かべた男が、呆然と立ち尽くしていた。どうやら今の回で、ゲームの勝敗が決まってしまったようだ。
その男は、シンプルな上下の服装をしている、気弱そうな男だった。
そんな男の様子に、シルクハットの少年は心配げな表情を浮かべると、
「リックさん? 大丈夫ですか?」
彼は気遣わしげな声を、リックへと投げかける。
「まあ、リックさんの気持ちも分かりますけどね。白金貨――270枚分もの借金をしたら、僕だって参ってしまうと思いますし」
シルクハットの少年はそう言って肩をすくめるが、その状況に陥っても、彼ならどうにかしてしまうのではないだろうか。と、そう思わせるような笑みが、その表情には浮かんでいた。
ちなみに、この世界の白金貨は、一枚あたり、日本円にして約十万円ほどだ。要するに、先ほどの会話が本当なのであれば、リックは日本円にして、約――二千七百万という額の借金を、シルクハットの少年にした、といった話のようで、加えて、リックという男は資産家というわけでなく、彼は後先を考えずに行動を選択した結果、このような事態になってしまったというのだから、救いようのない話なのである。
ただ、この場所での借金には、一つの――救済処置があった。
そして、その救済処置というのが――、
「ではリックさん。約束通り、そろそろ覚悟を決めてーー始めちゃいましょうか」
シルクハットの少年は落ち着いた声のトーンでそう言うとーー
ぱちん。と、指を鳴らしたのだった。
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