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一、 ルームシェア

一、 ルームシェア ④

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「でもなるべく早めに、本当の水咲さんを見ないとなあ。お互いの親がうるさいだろうし」

「え? 親がうるさいの? お見合いに親が口出したら駄目なんじゃあ」

「そうはいっても、親がお見合い法に携わってる政治家同士なら口は出すでしょ。俺たちは拒否権はあるけど、俺は断れないし彼女も断れない。だから頭で納得するしかないんだけどねえ」

整った顔立ちで、この人何を言っているんだろう。

王子様だって思っていたのに、一瞬で夢から覚めた。

聞いちゃいけないし、言ってほしくなくて聞かない。

聞かないけど、水咲にはこの人はやめてほしかった。

だって、親が決めた相手だから結婚するって断言してる。

水咲だから結婚するんじゃない。

「あの、今日は会わない方がいいです。お互い頭を冷やしてください」

「あー、うん。ありがとう。そうする」

あっさりと孔一くんは水咲と会うのを止めてしまった。

執着も何もない。きっと親に言われたからご機嫌伺いに来たに違いない。


彼を追い返し水咲の隣に戻る。

それでももやもやしてしまう。

私に二人のお見合いについて口出す権利はもちろんない。

ないけど、今の孔一くんだけは水咲と結婚してほしくなかった。

「やばい。エプロン忘れた」

 しっかりしている水咲からそんな言葉が出てしまう始末。

 どちらかと言えば私が忘れて、小言を言いながら水咲が予備を貸してくれるぐらいなのに。

「一河に借りる? 男子は午前中でしょ。終わったら貸してもらおう」

「5月からは男女ペアで料理だったっけ。良かった、4月で」

立ち上がって渋々水咲は一河にエプロンを借りに行く。

男子が群がっている一河の机の周りが、覇気のない水咲に驚きながら距離を置く。

いつもなら怖がってすぐさま退くのに、それほどまでに覇気のない水咲は、見ていられない。

そんな風に、いつもの日常を奪われてしまうぐらいなら結婚なんてしたくない。

したくないけど、水咲はお見合いをしてしまう気がする。

恋愛に夢見ていないから、恋愛結婚憧憬症候群になっていなんだもん。

恋よりも自分と相性がいい人と結婚してしまうんだろうなって思う。

そう思うと、なんだかすごく悲しくて、嫌だ。

自分で自由を放棄してほしくなんてない。




放課後は、一河は亜里沙先輩とお見合いセンター内でデートらしい。

自分たちで電車に乗って本格的なデートをするらしい。

亜里沙先輩は、男女ともに憧れる学園一のミステリアスな美女だと思う。

亜里沙先輩が微笑みながら一河と並んで駅に向かう姿は、お似合いだなって思ってしまう。

水咲はおじいさまに呼ばれて、隣の県に。

水咲のおじいさまは――お見合い法を成立させ、人口回復に努めた元内閣総理大臣。今もなんちゃら派の黒幕だの、なんちゃらなんちゃら……実は難しくて全く分からないけど、今も発言力が大きいと水咲は言っていた気がする。

「もう花巻さんは部屋を掃除していましたよ」

私は仲人さんの車に乗り、お見合いセンターへ向かう。

途中、空港があるが、全国からお見合いセンターに来る人達用らしい。

全国各地にもあるのだけど、やはり都内のお見合いセンターが一番楽しいのと全国スタンプラリーもあるとか。

「ブレスレットは寝ている時も外さないでくださいね」

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