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立崎 流伽の場合。
立崎 流伽の場合。②
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「立崎、凛口、篠田、仲人が中で待っているぞ」
会議室から担任の園田先生が顔を出した。
そして続けて保険医でお見合いカウンセラーの佐々木先生も顔を出す。
園田先生もお見合い賛成派で、一回目のお見合いで結婚したと言っていた体育教師。
佐々木先生は指名されたお見合い相手と結婚した白衣の似合う美人。
二人がドアを開けて私たちを促す。
「ひえ。どうしよ。私、一番むり」
「お前―、俺を押すなよ」
「誕生日順なら、流伽が先でしょ。気張ってきなさい」
4月生まれの私を先頭に、一河と水咲も中を覗く。
校長先生と談笑しているのは、政府が管理しているお見合いセンターの白いスーツ姿が特徴の通称『仲人』だ。
どんな人かと思えば、真っ赤な唇が印象的なショートヘアの綺麗な女性だった。
「生徒手帳と個人カード、そして身分証明書の提示をお願いします。先生方、確認をお願いしますね」
私たちは言われた通り、身分証等の確認をされている間、ぼーっと立って待っていた。
が、この部屋にはお相手はいないようだった。
「まず初めに、貴方たちには拒否権があります。貴方たちが、補助金のためや親に脅迫されてお見合いを受けていないか判断するために、腕に測定器を装着させていただきます。こちらは、貴方たちが少しでも心に負担になった場合、ブザーがなります」
渡された真っ赤なブレスレットを手に持つと、毛糸のように軽かった。
素材が何かもわからないまま、腕に装着する。
「ただし、16歳の初めてのお見合いだけは、義務だから。断るのは問題ないけど、お見合い自体をしたくない、という場合は親立会いの下強制的に行います。拒否権があるのは、結婚するかしないか、だけです」
拒否権がある義務ってなんだ。意味が分からない。
義務だからまずは受けろって、結局は強制じゃない。
でも腕に付けた測定器が鳴らないのを見ると、授業で散々お見合いを習ってきたせいで抵抗感がない。
当たり前だと私たちは受け入れている。
「身分証明の確認が取れました。3人とも問題ありませんね」
仲人は私たちの書類と生徒手帳を返すと、優雅に微笑んだ。
いや、緊張している私たちを笑ったように見える。
「まず今日は顔合わせです。直感を信じて。もし少しでも気になったら、次はお見合いセンター内の施設でデートを二回、三回目のデートは施設外も許可します」
「デート……。それって施設内にカメラがあって監視されるってことですか?」
水咲が嫌そうに尋ねるが、仲人さんは真っ赤な唇でにんまり笑う。
「いえ。施設内には映画や水族館、遊園地、図書館となんでもあるので、水族館で会話が続かなかった場合、映画に切り替えたり、遊園地に付き合ったら図書館に付き合ってもらったりと、お互いの趣味を把握しやすいように作られているんです」
「へえ。無料ですか」
「もちろん。お見合いで結婚した方には解放されています」
「ほお。いいねー、一河」
バンバンと肩を叩くと『授業で習ったけどね』とあきれた声で言われた。
「じゃあまずは、立崎流伽さん、貴方を案内するわ。ほかの二人は、先生と保険医の指示に従って」
「ええ、私からですか」
二人は別々の部屋に案内され、立会人だった校長もさっさと職員室へと戻ってしまった。
「あの二人の相手は同じ高校なの。でも貴方の相手はここの生徒ではないのよ」
「指名してきた人、ですよね」
私も仲人さんの隣に並んで歩く。
なぜか体育館の方へ向かっているので、躊躇した。
確か今日、バスケ部は他校と練習試合だ。私の相手って他校のバスケ部?
「貴方をずっと待っていた人よ」
「ずっと待っていた、人」
私のもとにやってきた、政府からのお見合い招待状には指名者としか記されていなかった。どんな人なんだろう。
やはり階段を降りて体育館へ向かっているので、バスケ部で間違いない。
ちょっと強引な王子様かな。がんがんゴールを決めちゃう素敵で、イケメンで、背景に薔薇が舞うような人かな。
で、『私の方が彼を好きなのよ』ってバスケ部のマネージャーとライバルになっちゃったり。
「彼の歳は十八。今まではお見合いは免除されていた。彼の場合は、もうお見合いしないかと思っていたの」
体育館の入り口で仲人さんは立ち止まって、少し目を伏せた。
「お見合いで結婚した人たちが、離婚する確率は三パーセント。わずか100人に3人なの。信じられる?」
「離婚率の低下は教科書で習いましたよ」
それを考えると、お見合いの義務化って成功なのかなって思う。
でも仲人さんの顔は急に悲し気になった。
今にも泣き崩れそうなほど、目を潤ませている。
「離婚したら、莫大な補助金が停止される。ただし子どもを産んでいた場合、引き取った親には引き続き援助はある」
「補助金が停止されたくなくて離婚できないって問題ですか」
それなら昔、ニュースで少しだけ話題になったことがある。
補助金目当てで結婚し、子どもを授かったために子供に愛はなく虐待を受けていた子がいたとか。
「――虐待を受けていた子は、父親や母親になりたくないって意志があれば免除される。でもそのトラウマを跳ね返し、指名できる立場の子もいる」
会議室から担任の園田先生が顔を出した。
そして続けて保険医でお見合いカウンセラーの佐々木先生も顔を出す。
園田先生もお見合い賛成派で、一回目のお見合いで結婚したと言っていた体育教師。
佐々木先生は指名されたお見合い相手と結婚した白衣の似合う美人。
二人がドアを開けて私たちを促す。
「ひえ。どうしよ。私、一番むり」
「お前―、俺を押すなよ」
「誕生日順なら、流伽が先でしょ。気張ってきなさい」
4月生まれの私を先頭に、一河と水咲も中を覗く。
校長先生と談笑しているのは、政府が管理しているお見合いセンターの白いスーツ姿が特徴の通称『仲人』だ。
どんな人かと思えば、真っ赤な唇が印象的なショートヘアの綺麗な女性だった。
「生徒手帳と個人カード、そして身分証明書の提示をお願いします。先生方、確認をお願いしますね」
私たちは言われた通り、身分証等の確認をされている間、ぼーっと立って待っていた。
が、この部屋にはお相手はいないようだった。
「まず初めに、貴方たちには拒否権があります。貴方たちが、補助金のためや親に脅迫されてお見合いを受けていないか判断するために、腕に測定器を装着させていただきます。こちらは、貴方たちが少しでも心に負担になった場合、ブザーがなります」
渡された真っ赤なブレスレットを手に持つと、毛糸のように軽かった。
素材が何かもわからないまま、腕に装着する。
「ただし、16歳の初めてのお見合いだけは、義務だから。断るのは問題ないけど、お見合い自体をしたくない、という場合は親立会いの下強制的に行います。拒否権があるのは、結婚するかしないか、だけです」
拒否権がある義務ってなんだ。意味が分からない。
義務だからまずは受けろって、結局は強制じゃない。
でも腕に付けた測定器が鳴らないのを見ると、授業で散々お見合いを習ってきたせいで抵抗感がない。
当たり前だと私たちは受け入れている。
「身分証明の確認が取れました。3人とも問題ありませんね」
仲人は私たちの書類と生徒手帳を返すと、優雅に微笑んだ。
いや、緊張している私たちを笑ったように見える。
「まず今日は顔合わせです。直感を信じて。もし少しでも気になったら、次はお見合いセンター内の施設でデートを二回、三回目のデートは施設外も許可します」
「デート……。それって施設内にカメラがあって監視されるってことですか?」
水咲が嫌そうに尋ねるが、仲人さんは真っ赤な唇でにんまり笑う。
「いえ。施設内には映画や水族館、遊園地、図書館となんでもあるので、水族館で会話が続かなかった場合、映画に切り替えたり、遊園地に付き合ったら図書館に付き合ってもらったりと、お互いの趣味を把握しやすいように作られているんです」
「へえ。無料ですか」
「もちろん。お見合いで結婚した方には解放されています」
「ほお。いいねー、一河」
バンバンと肩を叩くと『授業で習ったけどね』とあきれた声で言われた。
「じゃあまずは、立崎流伽さん、貴方を案内するわ。ほかの二人は、先生と保険医の指示に従って」
「ええ、私からですか」
二人は別々の部屋に案内され、立会人だった校長もさっさと職員室へと戻ってしまった。
「あの二人の相手は同じ高校なの。でも貴方の相手はここの生徒ではないのよ」
「指名してきた人、ですよね」
私も仲人さんの隣に並んで歩く。
なぜか体育館の方へ向かっているので、躊躇した。
確か今日、バスケ部は他校と練習試合だ。私の相手って他校のバスケ部?
「貴方をずっと待っていた人よ」
「ずっと待っていた、人」
私のもとにやってきた、政府からのお見合い招待状には指名者としか記されていなかった。どんな人なんだろう。
やはり階段を降りて体育館へ向かっているので、バスケ部で間違いない。
ちょっと強引な王子様かな。がんがんゴールを決めちゃう素敵で、イケメンで、背景に薔薇が舞うような人かな。
で、『私の方が彼を好きなのよ』ってバスケ部のマネージャーとライバルになっちゃったり。
「彼の歳は十八。今まではお見合いは免除されていた。彼の場合は、もうお見合いしないかと思っていたの」
体育館の入り口で仲人さんは立ち止まって、少し目を伏せた。
「お見合いで結婚した人たちが、離婚する確率は三パーセント。わずか100人に3人なの。信じられる?」
「離婚率の低下は教科書で習いましたよ」
それを考えると、お見合いの義務化って成功なのかなって思う。
でも仲人さんの顔は急に悲し気になった。
今にも泣き崩れそうなほど、目を潤ませている。
「離婚したら、莫大な補助金が停止される。ただし子どもを産んでいた場合、引き取った親には引き続き援助はある」
「補助金が停止されたくなくて離婚できないって問題ですか」
それなら昔、ニュースで少しだけ話題になったことがある。
補助金目当てで結婚し、子どもを授かったために子供に愛はなく虐待を受けていた子がいたとか。
「――虐待を受けていた子は、父親や母親になりたくないって意志があれば免除される。でもそのトラウマを跳ね返し、指名できる立場の子もいる」
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