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症状二、判断力低下。
症状二、判断力低下。⑧
しおりを挟む「菊池さんはまだ帰らないんですか?」
出ていこうとして、入り口で手を振る菊池さんに尋ねた。
「店長に此処の鍵渡すから最後までいるよ」
「私、もう少し此処に用事あるので、代わりに渡しておきますよ」
「ソレは駄目!」
強い口調で断った菊池さんは、しまったと明らかに表情を変えた。そして取り繕うに笑うけど、目が泳いでいる。
「あのね、今日は皆と一緒に出た方が良いんじゃないかな」
「どうしてですか?」
「その、えっとね、向かいのカフェに居たよ」
一瞬迷った様子で、教えてくれた。
「笹谷くん、華寺さんを待ってるんじゃないかな」
「柾が……?」
さあーっと血の気が引いてしまう。昨日の今日で私を送って行くつもりなのかな。でも、そんなはずないし。
「だから、華寺さん、怖がってるみたいだし、一緒に皆と帰りなよ。
人の目があれば笹谷くんも強引に来ないでしょ?」
「だ、大丈夫です。大丈夫、ですから、菊池さん、鍵を貸して下さい」
不安で、変な汗は飛び出して来たけど、大丈夫。もし来ても、ちゃんと言う。
柾を恋愛感情では見れないって。婚約者のフリをしてくれる颯真さんだっているし。
「ねえ、笹谷くんが急にこんな積極的になったのって、今日の小説家の御手洗さんと関係あるの?」
「ええ?」
「二人で話してたよね? 見ちゃった。いや、イケメンだから目で彼を追ってたらね、視線の先が華寺さんだったの」
「あ、あはは」
「今度、飲みながら教えて貰おーっと」
笑顔でそう言いながら、私に鍵を渡して振り返らずスタッフルームへ帰って行く。
どうしよう。菊池さんが始終格好良いって言ってたのに、知らないふりしてた人みたいに思われたかな? 嫌な人に見られたらどうしよう。
ただでさえヤス君のことで嘘を吐いていたのに。
店長を一人で待つ間、颯真さんに会えるドキドキと、菊池さんを追いかけたい不安で、おろおろしてばっかりだった。
22時を過ぎれば、カフェは閉店だ。きっと柾も諦めてくれるよね?
「華寺さん、貴方まだ残ってたの」
「あの、鍵を」
「そんなの居るスタッフルームに頼めば良かったのに。お疲れ様。明日は休み?」
早口で捲し立てる店長は、一番働いているはずなのに、疲労が見えない。
それどころか私を気遣ってくれている。
「明日は休みです。では、失礼します」
「――待って。今からもしかして颯真くんの所へ行くの?」
颯真くん。親しく呼ぶ店長に、思わず動揺してしまう。店長に肯定だとばれると、大きく溜息を吐かれた。
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